お妃(きさき)さまが
お妃さま:かがみよかがみ、この世で一番美しいのは、だあれ?
かがみ: おお、お妃さま、今回は思い切ったアングルで鏡の前に立たれましたね。
お妃さま:かがみよかがみ、私の質問にこたえてくれればいいのよ。
かがみ: 回を重ねるごとにお妃さまの表情も迫力が増してきたように感じます。スマホを持ったお妃さまのドラスティックなお姿、タマキタイムズの作者もこの絵をつくりこむには、かなり時間がかかったでしょうね。
お妃さま:かがみよかがみ、よけいなことは言わなくていいのよ。
かがみ: お妃さまの美への固執と白いものへの対抗心、いやはや敬服いたします。
お妃さま:あのね、かがみよかがみ、この世で一番美しいのが誰かを答えてくれれば、それでいいのよ。
かがみ: もちろん、お妃さまが一番きれいです。そうでなければ、死んだことになっている白雪姫も、うかばれません。
お妃さま:ええい、シャーラップ!何百年も、かがみに美しいかどうかを聞き続けなければならない私の立場も理解してよ!
スマホで
かがみ: お妃さま、どこでそんなスマホをお求めになったのですか?
お妃さま:そんなこと、どうでもいいじゃない。若さと美しさを保つのに、スマホがとても役に立つときいたから…。
かがみ: お妃さまの若さと美への執着心は、とどまることを知りませんね。
お妃さま:ねえ、そんなことより、どうやってスマホを使えば若くなれるの?
かがみ: 例えば、スマホは万歩計の役目もしますし、楽しみながら歩く目的なら「テクテク・ライフ」という地図をぬりつぶしていくゲームもあります。日々のストレッチを管理するには「からだセイバー」というアプリが、不調を感じる体の部位に合わせておすすめのストレッチを提示してくれます。
お妃さま:私、実は、この世で一番美しいのが誰かが心配で、よく眠れないことがあるのよ。
かがみ: そんな方には「スリープ・サイクル」。スマホを枕元に置いておくと睡眠の時間や寝返りを計測して、その人の睡眠の質を分析してくれます。
お妃さま:これも内緒にしておいてほしいのだけれど、私、実はいびきがすごいのよ。
かがみ: そんな方にはこれ。「いびきラボ」。年をとってくると肺活量が減って喉が細くなってくるのでいびきをかきやすくなります。このアプリはどの時間にどれだけ大声でいびきをかいているかをグラフ化してくれます。
お妃さま:特にお酒を飲んだ日は、私のいびきがすごいようなの。
かがみ: 存じ上げております。お酒の影響はもちろん、睡眠時無呼吸症候群の発見もしてくれます。
お妃さま:枕も悪いような気がするわ。
かがみ: スマホではありませんが、韓国の企業10minds が開発した特殊なまくら「モーション・ピロー」なんてのは、いかがでしょう。いびきを感知すると、呼吸を正常に行えるようにまくらがゆっくりとその形状をかえて、いびきをかかないように動いてくれるのです。
食事の管理を
お妃さま:実は、私は食事も心配なの。このまま食べ続けてたら、おデブにならないかって、とても不安になるの。
かがみ: それならこれ「カロミル」。食べるものを写真に撮るだけでOKです。写真を分析してAI(人工知能)が栄養素を解析し、体重計や血圧計を撮影すれば自動で記録、3か月後の体重を予測してくれます。
お妃さま:体重計や血圧計なんて、毎日測定するのは、じゃまくさいわ。
かがみ: それなら「アップル・ウォッチ」やグーグルの「フィット・ビット」がおすすめです。腕時計としていつも手首に巻いているので、睡眠時間の把握や心拍数、最大酸素摂取量の記録もできます。さらにアップルの「シリーズ9」では、心電図を測定し続けます。いずれも正確なデータを常にとり続けることができるので、運動選手やトレーニングをしている人たちは必須の医療機器となっています。
お妃さま:ち、ちょっと待ってよ。アップルウォッチが医療機器だっていうの?
かがみ: はい、アップルウォッチの心電図機能は医療機器としての認証をうけています。
便秘・下痢、尿意の管理
お妃さま:かがみよかがみ、絶対秘密にしておいてほしいのだけれど、私、慢性的な便秘なの。
かがみ: それならこれ、「腸note」。スマホに内蔵されたマイクを60秒間おなかにあてると、収集した腸の音をAIが解析。最適な腸活にむけてのアクションを提案してくれます。腸の状態が点数化されるために、不調の理由を突き止めやすいと評判です。
お妃さま:なんだか、最近おしっこも近くて…
かがみ: それならこれDFree(ディーフリー)。26グラムの小型機器を下腹部につければ、膀胱(ぼうこう)のふくらみをリアルタイムで測定してくれます。
お妃さま:ど、どういうこと?
かがみ: 尿がどれくらいたまったかを10段階で表示してくれるのです。
お妃さま:ということは「おしっこがしたい時期」を予測できるってこと?
かがみ: その通りです。トイレが近い人、介助しなければならない人などももちろんですが、認知症の人でもトイレへスムーズに誘導できます。
目の管理
お妃さま:私、近ごろ目がかすむの。
かがみ: ええと、お妃さまはおいくつになられたのでしたっけ?
お妃さま:グリム童話に登場して、かれこれ200年、おほん、おほん、かがみよかがみ、レディーに年齢をきくなんて失礼よ。
かがみ: スマートフォンにとりつけると、目の角膜、結膜、水晶体、硝子体を観察して、白内障などの眼科疾患を診断してくれる「スマート・アイ・カメラ」という医療機器があります。
お妃さま:ご、ごついやないの。
かがみ: お妃さまは関西のご出身だったのですね。
お妃さま:動揺すると、なまりますのや。
かがみ: 慶應義塾大学医学部発の ベンチャー企業OUI Inc. (ウイインク)というところが開発しました。
お妃さま:大学発のベンチャー企業?
かがみ: そうです。発展途上国での眼科診療を通じて「こんなものがあれば」と創り出したそうです。
お妃さま:スマホで目の精密検査ができて、さらにその結果を離れた場所の医師が見ることができるということになれば、眼科診療がごっつい身近になるのとちゃいまっか?
かがみ: お妃さま、かなり動揺が続いているようですね。
進む高齢化の中で
お妃さま:スマホやウエアラブル機器は、日常生活を測定し続けられる、まさに医療機器ね。
かがみ: その通りです。個人個人がスマホで日々の自分の体のデータを蓄積しているならば、医師が正確な診断を下せます。
お妃さま:とても素敵ね。…よくわかったわ。かがみよかがみ、明日から私も体のデータをどんどんスマホで蓄積していくことにするわ!
かがみ: お妃さまは、あまり急がなくても…
お妃さま:どうしてなの?私だって健康で若さを保っていたいわ。
かがみ: いや、お妃さまはウエアラブル機器を持たない方がむしろ…
お妃さま:何をぐだぐだ言ってるのよ!はやくアップルウォッチも用意して!…まさか、白雪姫はもう使ってるのじゃないでしょうね?
かがみ: い、いえ、そういう意味ではなくて…
お妃さま:じゃあ、いったい何だっていうのよ!
かがみ: お妃さまの蓄積された体の数値が、この世で一番でなかったとき、私がどうお伝えすればいいのか、考えるだけで恐ろしゅうございますので…。
文責 玉木英明