令和7年1月11日 管理者(名取)投稿
64回生 林 義祐氏の短歌がふと思い出させたスウェーデンの青年医師の言葉
オランダで生活されている林 義祐氏(64回生)に寄稿いただいた「2024年12月 歌日記」の中に、太陽の光の恵みをテーマにした以下のような短歌がありました。オランダの生活・歌日記: 2024年12月
林氏の太陽の光を希求されている気持ちが伝わってくる気持ちがしました。
12月17日(火)<北ヨーロッパの冬>
☆ 一日中太陽見ない日が続く 今日で8日もまだ続きそう
☆ 過去の記録14日間日照無し 北欧の冬 鬱もむべなるや
12月20日(金)<10日ぶり太陽が出た>
☆ 樹間より朝8時半太陽が 顔を覗かす11日目なり
☆ 日照の無い日の記録10日間 新記録ならず安堵複雑
12月26日 (木)
☆ 冬至過ぎこれから日々に陽が延びる 妻話す声明るく響く
☆ 一日に4分ぐらい延びるのを 毎日ノートにつけた日々あり
とりわけ、12月26日に詠まれた歌は印象的で、冬至が過ぎたことで奥様の話すお声自体が明るくなったのは確かでしょうけれども、何よりもそれを聞く林氏の心情を反映した結果ではないかと私には思えました。
また、毎日日の出から日没までの時間を記録し、着実に日が延びていることを実感されて、春の到来を待ち望む林氏の気持ちの強さに共感を覚えました。
さて、2006年の4月ですから、もう19年も前の話で恐縮ですが、当時製薬会社に勤務していた私は、自分が臨床開発を担当していた医薬品のシンポジウムがスウェーデンのストックホルムで開催されましたので、臨床試験を指導していただいた私立医大の小児科教授と一緒にシンポジウムに出張しました。現地滞在が1週間くらいだったと思います。
同行の教授から出発の前に、「ストックホルムの若い医師が手紙をよこしていて、私の医局に留学を希望している。現地で面会するから名取君も一緒に立ち会ってほしい。彼の印象や人物の感想など聞かせてほしい」というようなことを言われていました。私は、とても人物を評価できるような人間ではないと断りましたが、印象だけでいいからということで、同席することに了解していました。
何日目か忘れましたが、お昼にストックホルムのビアホールで教授とともにその医師に会うのに同席しました。もう一人、提携会社社員のスウェーデン人がいて、全部で4人でした。青年の年齢は忘れました。確か30歳前だったと思います。
誠実そうな青年で、熱心に教授と教授の専門の先天代謝異常症の話をしていましたが、いつしか話はスウェーデン人がいかに冬季のうつ病に苦しんでいるかということに移りました。英語でしたが、なんとか大筋は聞くことができた記憶があります。青年によるとスウェーデン人の多くが冬季にうつ病にかかるとのことで、深刻な問題だとのこと。そしてその原因が日照不足によることを国民は知っていて、裕福な国民は冬季は南仏など地中海の別荘やホテルで過ごし、スウェーデンにはいない。一般国民は毎年、不可避的に来るうつ病に悩んでいるけれども解決のしようがないと言っていた記憶があります。
さて、冬至の頃のストックホルムの太陽の状況はどんなものなのか、今更ではありますが調べてみました。ご存じのように冬至では太陽が真南に来た時の高度が1年で最も低くなります。
下表に日本の各地及び林氏が在住のオランダの首都のアムステルダムとストックホルムの冬至における太陽の南中高度を一覧にしてみました。
冬至の南中高度は緯度がわかれば簡単に計算できます。太陽の南中高度はどうやって計算する? | 国立天文台(NAOJ)
(本文は以下の画像の下に続きます。)
ストックホルムの冬至の太陽南中高度は、諏訪や大阪の約1/4、札幌の約1/3で、アムステルダムの約1/2になります。太陽が真南に来ても太陽の高さがわずか7度というのですから、とりわけストックホルムなどの都市部では晴れていたとしても、冬至の頃に直射日光に当たるのはかなり難しいと想像されます。
この文章を書くにあたって、出張時の写真を探したところ、なんとか出てきました。以下はビアホールで教授とともに青年に面会した時の写真です。
(本文は以下の画像の下に続きます。)
懐古趣味で掲載したわけではなく、久しぶりに写真を見て、私が黄色人種であるので当たり前ですが、あらためて肌の色の克明な違いを認識し、それぞれの民族が何千何万年の間、その状況に応じて受けた太陽光の違いが実感できるのではないかという、大変大げさな、芝居がかったような気持ちで掲載してみました。
この時期は4月で、私も教授も日に焼けていたわけではなく、おそらく日本人として平均の肌の色だったと思います。
さて、これも今更ですが、冬季うつについて調べてみるとスウェーデン人の9割が冬季に「うつ」を訴えるという報告があるとのことで、今もまったく変わらぬ悩みであるようです。コラムVol.39 冬季うつ(ウインター・ブルー)|トピックス
(本文は以下の画像の下に続きます。)
その青年医師はその年の秋に日本に留学して、私も東京で再会しましたが、それきり会っていません。
私が開発に携わっていた医薬品が厚労省に承認され、プロジェクトが終了して教授との契約も終了したからです。その医薬品は今は私が勤務していた会社から別の会社に販売移管されています。α-ガラクトシダーゼ酵素製剤「リプレガル点滴静注用3.5mg」の製造販売承認の承継および販売移管について | 住友ファーマ株式会社
さて余談になりますが、同窓の皆さんはスウェーデンといえばどのようなイメージをお持ちですか。北欧の神話。フィヨルド。ゆりかごから墓場までという高福祉国家。国は違うけれどムーミンの物語のような国。人によって思い浮かべるイメージはいろいろあると思いますが、以下のような面もある国です。
スウェーデン政府は2017年に、2010年に廃止していた徴兵制を復活させました。18歳の男女で、女性も徴兵されます。ロシアがバルト海周辺で活動を活発化させるなど、世界的な安全保障環境の変化に対応するのが理由とのことです。スウェーデン徴兵制復活 ロシアの脅威に対応、女性も対象 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
(本文は以下の画像の下に続きます。)
また、スウェーデンは、世界有数の武器輸出大国であり、「北欧の軍事強国」と言われています。「軍事強国」、集団防衛に寄与 先進兵器やサイバー防衛―スウェーデン:時事ドットコム
最後までお目通しいただきありがとうございました。
ご感想やご意見をお寄せいただければ幸いです。(了)
名取 和一さん
拝復
オランダ在住の林 義祐氏の太陽の光を渇望する気持ちが伝わってきますね。
僕は北欧の冬は経験ありませんが、オスロで白夜を経験しました。夜中の11時に地下のレストランから地上に上がったら、高いビルは夕日が染まっていました。逆に午後の2時や3時に日が沈む北欧の国でうつになる人が多いのも分かるような気がします。直接関係ないがこんなことを思い出しました。
世界で一番売れている(一流の医学雑誌に掲載された)プロバイオティクス(整腸剤)は、ヤクルトのシロタ株ではなく、スウェーデンのバイオガイヤ社のロイテリ菌だだそうです。日本にはシロタ株を始め優秀なプロバイオティクスが沢山あるので、ロイテリ菌は有名ではありませんが、バイオガイヤ社がロイテリ菌を日本に売り込む時に「小児の機能性便秘症に対する有用性」を証明する他施設共同研究をするように僕のところに依頼が来ました。僕は小児外科を辞めた後、小児の便秘症で糊口を凌いでおりました(今でも本職は便の専門外来です)。勿論、ロイテリ菌の有用性はdouble blindのRCTで証明し、英文論文で発表しました(ある小児科の開業医にすべてあげたのに僕の名前はsecondauthorにもなっていませんが)。バイオガイヤ社のキャッチコピーは「夜泣きに効く整腸剤」でした。有効性の機序は、腸内フローラの異常で腸内ガスが増えたり蠕動亢進が起きたするのをロイテリ菌が防ぐというもので、整腸剤で夜泣きが防げれば大きな福音だというものでした。それなりに納得しておりましたが、未だに納得ができないことは、実はというキャッチコピーになる「夜泣き」はオリジナルの論文は"twilight colick"となっていることです。誰も「夜泣き」に疑問を持たなかったように思いますが、「夜泣き」と「日暮れ泣き」は明らかに違うように思います。大人でも日暮れになると何となくメランコリックな気持ちになりますが、林 義祐氏の短歌を読んで確信しました。スウェーデン人が書いた”twilight”は決して「夜」ではなく「日暮れ」だと! 赤ちゃんでも短い陽の光が終わる日暮れになるをうつになって泣きたくなるのではなないでしょうか? ロイテリ菌が効く機序は知りませんが・・・・
そう言えば、大昔、佐藤千夜子という歌手が「~日暮れになると涙が出るのよ~」と歌っていたのが、頭の片隅にありました。前後脈絡全く覚えていませんが、「日暮れになると涙が出るのよ」というフレーズはだけが脳裏に刻まれました。
草々
窪田昭男拝
土橋さん、名取さん、
私の歌日記に対して、名取さん、窪田さんのレスポンスをお送りいただき、ありがとうございました。
名取さん、窪田さんのお二方とも理系(医系)が専門分野の方のようで、興味深く読ませていただきました。
名取さんの太陽南中時における緯度による角度(高度)の違いの話は、全く聞いたことが無かった話なので引き込まれてしまいました。言及されていた国立天文台のサイトへ行っていろいろ新しい知見を得ましたが、いやー難しい話が多いですね~ 私にとっては縁のない世界だったということです。でもこうやって私の話から、他の分野の方が感想・エッセイ等を記して、送ってくれるというのはとても嬉しいものですね。これまで得たことのなかったほのぼのとした気持ちが湧くのを覚えました。
清陵関西支部は、土橋さん、名取さん、窪田さん等、多士済済ですね。
これからも皆さん、ご健勝でご活躍されますことを祈念いたします。
林義祐
PS: 窪田さんにも私のコメント・謝意をお伝えしてください。お願いします。
林様
HPへの掲載をご了解いただきありがとうございました。
さて、HPに投稿してから、少し振り返ったのですが、自分についてうすうす感じていたことが少しはっきりしてきました。
どうして、林様の短歌に感動し、スウェーデン出張の話など投稿したのか。
やはりそれは私自身が冬季になると程度は少ないけれども「うつ」の状況が出てくることにあると思います。
ですから、敏感に反応したのだと思います。
自分の内面を少し正直に振り返ると、原因はおそらく小中学校を通じて、私がスケートが下手だったことにあると思います。
あの頃、スケートが上手な子は英雄でした。女子にももてます。変に負けず嫌いの私は素質がないにもかかわらず、かなり努力したつもりでしたが、結局ダメでした。例えば、上手な同級生のカーブワーク(チドリと言っていました)を見ていてマネするのですが、どうしてもうまくできないのです。
勉強はある程度努力すれば結果は出るのに、なぜスケートはダメなのか。天性というものをあの時ほど感じたことはないと思います。中学の冬の体育は毎回スケートですし、集落のスケート大会もあり、いやだけれども出ざるを得ませんでした。いわば冬の間中、うまい子のスケートを見せられ、「俺はなんでダメなんだ」とずっと思っていたという感じでした。
多分、これが大げさに言うとトラウマになっていると思います。
林様の短歌に触発されて、事実とは言え、唐突に20年も前の海外出張を持ち出したのは上記のような思い出から逃れるためだったのかもしれません。
突然何十年も前のことを書き連ね恐縮です。
今後も歌日記を楽しみにしておりますのでどうかよろしくお願いいたします。
75回生 名取和一