令和6年4月6日 管理者(名取)投稿
【改めて感謝したい日本の医療と国民皆保険-胃癌の手術を受けて-】
私事で恐縮ですが、先月の3月に胃癌の手術で市立豊中病院に入院しました。そのため、3月10日の関西支部総会に出席できず、関係の皆様にご迷惑をかけたことをこの場を借りてお詫び申し上げます。
さて、私は今まで病院とはそれほど縁のない人間で、高校3年になる前の春休みに蓄膿症の手術をしたことと30代に痔の手術をしたくらいで、今まで過ごしてきました。つまり、入院の経験はありましたが、命にまでは関係のないものでした。
この度、癌の手術という私にとっては重い目的で入院し、受けた医療について様々な思いがありましたので、ご参考までに思いつくまま書いてみたいと思います。
あくまで個人の感想であり、見方に皮相的な面があることや感傷に流されている面があることは私自身も承知しておりますので、ご容認いただければ幸いです。
1.入院と手術のあらまし
昨年12月に受けた健康診断の胃カメラでの病理検査で胃癌の疑いを指摘され、市立豊中病院の消化器内科で精密検査を受けて、胃癌であるとの確定診断を受けました。消化器外科に回り、さらに検査を受けた後、主治医によると、ステージⅠAの早期の胃癌でCTでは転移なしとのことでした。3月初旬に腹腔鏡による摘出手術を受け、10日後に退院しました。先日、退院後の初外来で診察を受け、主治医より原発巣切除とともに郭清・切除したリンパ節の病理検査で転移などの異常を認めず、化学療法の必要なしとの診断を受けました。
2.入院中に感じたこと
●主治医及び手術担当医師
私の主治医は、40歳前くらいであったが、丁重に接してくれる方であった。最初の外来の時にすでに暫定手術日を決めてくれており、必要な検査も様子を見ていると、最短で入れてその日のうちに実施する段取りをつけてくれるなど、私を治療する熱心さのようなものが伝わってきた。実際の手術はこの主治医の指導でさらに若い外科医によって行われたが、この二人の医師は手術後、多いときは1日数回様子を見に来てくれた。手術後、リハビリで病棟を歩いていると病室の前に患者名と担当医師がデジタル表示されていたので、数えてみるとこの二人の医師は私が認めただけでも各自6から7人の受け持ち患者を持っていた。
ナースセンターで話を聞くと、二人の医師はほぼ週2回の手術があるとのこと。最近よく言われる「働き方改革」で定時になったら帰るというのでは、恐らく彼らの仕事は不可能と思います。私がたまたま良い医師にあたったのかもしれない。それはともかく、今回彼らが施してくれた医療に心から感謝したいと思います。
●間近で見た病棟看護師の激務
私の娘は大学医学部の看護学科を卒業した看護師ですので、病棟の看護師の大変さはよく聞いていました。卒業後3年間は娘が言うところの「お礼奉公」で、卒業した大学の大学病院で病棟の看護師として働きました。娘が言うところによると夜勤を含む病棟看護師の確保の一つがこの「お礼奉公」だそうです。人員の確保が困難なことを思わされました。娘は今は、子供もいるので、看護師勤務をやめ、やはり大学時代に資格を取った保健師で企業に勤務しています。
さて、今回、入院して間近で病棟の看護師の仕事を見ると、私が見るところ3日に1回は夜勤がある中で、相当な重労働と見えました。夜間のナースコールでの呼び出し対応や夜間の点滴補充やチェックなど本当に激務です。
詳細は省きますが、その中で患者の心に安らぎと安心感を与えようとする会話や穏やかな態度は患者という立場になると本当に身に沁みるものでした。
また、患者情報の共有という点は電子カルテにより十分されているようですが、それ以上に各看護師が医師とスムーズに連絡できる状況を築いているようで助かりました。感心したのは、主治医が来た時に私が聞き忘れたことや、主治医が知らせに来るといったきり、そのままになっていることを、たまたま来た看護師に問い合わせると必ず、主治医や他の医師に連絡を取って回答をもってきてくれたことです。職種を超えた信頼と良好な関係がなければできないことと感じました。
今日もナースセンターでほぼ満室の入院患者に対応している看護師の方に敬意と感謝を申し上げたいと思います。
●医療保険の有難さ
今回、12日間の入院と手術で私が支払った費用を日割りにすると、その費用は果たしてビジネスホテルに一泊するのも無理だろうというくらい低いものでした。現役時代から延々と保険を支払い続けての今の支払いですから、当然という感じがしないでもありませんが、一方で世界で屈指の国民皆保険に感謝する気持ちも強いです。
終末医療や過剰医療といった問題は解決していかなければなりませんが、この国民皆保険の制度は国が財政出動しても継続していくべきものではないかと思います。
3.余談(スティーブ・ジョブズ)
Appleの創始者であるスティーブ・ジョブズスティーブ・ジョブズ - Wikipedia は40歳台で膵癌と診断され、即座の手術をすすめられたにもかかわらず、それを拒否し、民間療法を続けたといいます。その結果9か月後には癌組織が大きくなり、あわてて摘出手術を受けました。後に肝臓に転移を招いたのはこの9か月の手術の遅れといわれ、本人は相当後悔したようです。結局2011年に50歳台で生涯を終わりました。
しかし、私はスティーブ・ジョブズの気持ちがわからないでもありません。やはり手術せずに済む方法があるなら、それにすがりたい。スティーブ・ジョブズという希代の合理主義者でさえそうだった。人間は弱いものです。ただ、癌はおできやにきびや吹き出物とは異なる遺伝子に変異を起こした反逆者です。やはり民間療法は通じないという常識は私にもあり、手術に躊躇はありませんでした。
スティーブ・ジョブズ
Steve Jobs
以上、ここまでお目通しいただきありがとうございました。(了)
京都の藤森です。
寄稿文拝読いたしました。
健康診断を受け早期発見、早期治療の重要性、日本の誇るべき皆保険制度に関して理解できました。
豊中病院の患者を中心とした、医療スタッフの素晴らしさも感じました。医療機関における働き方改革はなかなか難しい問題と感じております。
我々高齢者はこれ以上若い世代に借金を背負わせないためにも、各自の健康に留意する必要がありますね。
小生は毎年検診を受けておりますが、ガンの宣告を受けたとき、冷静に判断できるかどうかは疑問です。その時は名取さんのこの寄稿文を思い出しながら対応したいと思います。
予後問題なく快方に向かわれることを信じております。
今後とも宜しくお願いします。
藤森様
目を通していただき、ありがとうございます。
ただ、自慢になりませんが、私は決して冷静ではありませんでした。
頼まれもしないのに偉そうに、HPで蘊蓄を傾けたりするような図々しいところのある私ですが、精神面は意外と脆弱な面があり、今回、健康診断で指摘されてから、市立豊中病院で確定診断を受けるまでの間、宙ぶらりんということもあったのでしょうか、大変動揺し、不安に苛まれました。
妻や子供、孫たちの前では平静を装っていましたが、心中に渦巻く「嘘だろ、まさかこの俺が!」、「何とか良性であってくれ!」、「母より先には死ねないぞ!」といった感情やあがきはここに書くのが、はばかられるほどでした。
しかし、市立豊中病院で精密検査の結果、確定診断された後は、現実を受け入れ、心も穏やかになっていったと思います。
多分、自分が覚悟することやすることが定まったからだと思います。
確定診断された次の日から手術に備えて、ランニングなどの体力づくりを始めました。
偶然かもしれませんが、私の母親が私より1歳上の71歳の時、やはり早期の胃癌で手術を受けました。諏訪中央病院で手術を受け、私は摘出した原発巣も主治医に見せてもらい、説明を受けました。私と同様に胃を半分以上切除しましたが、90歳の今も健在です。
遺伝かどうかはわかりませんが、少なくとも母は自分から遺伝したと固く信じているようです。
長々と書き連ね失礼しました。
掲載(了)