令和7年12月6日 管理者(名取)投稿
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映画「盤上の向日葵」鑑賞後に思わず再読した『立川談春 著「赤めだか」』-少し羨ましい強固な師弟関係ー
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映画「盤上の向日葵」のことは以前、拙文を書かせていただきました。タケヤ味噌や諏訪地方でロケの映画「盤上の向日葵」 少しネタバレになりますが、映画では裏社会の賭け将棋に命を懸ける東明 重慶という実力では最強と言われる男に理不尽な仕打ちをされ、危険性を感じつつも主人公の上条 桂介はその生き方と真の棋力に魅かれ、(私の解釈では)やがて師として仰ぐようになります。この人から将棋を学び成長したいと思う心情の側面が描かれていたと私は解釈しました。
この映画を見た後、なぜか無性に立川談春 著の「赤めだか」赤めだか | 立川 談春 |本 | 通販 | Amazon が読みたくなり、例によって図書館から借りて一気に読んでしまいました。
この本を読むのは実は2回目でした。10年くらい前ですが、この本を原作とした二宮和也主演のテレビドラマ相関図|TBSテレビ:TBS年末スペシャルドラマ『赤めだか』 を見て興味が湧き、読んでいました。その時の記憶が今回の「盤上の向日葵」で呼び起こされたのかもしれません。口はばったいことを言って恐縮ですが、呼び起されたのは、師弟関係の難しさと厳しさそしてその関係による成長と言っていいかもしれないと思います。
本文は下記画像の下に続きます。
立川談春(以下、談春)立川談春 - Wikipedia は、中学時代から図書館で落語全集を読み漁るなど、落語に強い興味を持っていましたが、高校生の時、立川談志(以下、談志)立川談志 - Wikipedia の落語を目の前で実際に聞き、信じられないくらいの強い衝撃を受けて感動し、親と相談してせめて高校を卒業してから来いという談志のアドヴァイスを受け入れず、高校2年で中退して談志に弟子入りします。
そして弟子入りの当日から不条理の扱いと生活のオンパレードとなります。談志の自宅の雑用とかばん持ちなどで日々が過ぎていきます。そしてある時、「お前らには愛想が尽きた。気が回らねえし、行儀も身についていねえ。築地で修行してこい」と、落語とは何の関係もない魚河岸の築地に働きに出されます。毎日働くだけの日々。連絡は一切なく、俺は本当は見捨てられたんじゃないかと談春は時に思いますが、自分の談志は本物だという直感を信じて働き通し、やがて1年が過ぎるころようやく引き上げろとの使いが来ます。
頼りは自分の直感。私は今まで自分の人生でこういうことはあまりありませんでした。仮に私のような人間が入門しても即座に破門になっていたことでしょう。この人間になら、自分の人生を賭けられる。談春はそういう直感を持ったのだと思います。そして、自分の直感を信じ、不条理に耐えて前座から二つ目に昇進し、やがて真打に昇進していきます。
読んでいて思ったのですが、談志は弟子を便利遣いしていたわけではなく、どうも不合理・不条理なことを押し付け、その中にはまらせて弟子を試していたのではないかと思います。立川談志くらいになると、弟子になることでうまいこと落語界で活躍できるとか、よい目にあえるとかの打算で弟子入りしてくる人間も大勢います。それらをより分け、本当に談志の芸に真底惚れこみ、落語を極めたいと心底思っている人間を選び出していたのではないかと思います。そしてそういう弟子にだけ真髄を教えられると思っていたのかもしれません。それには不条理が必要だった、そんな気がします。
パワハラとかモラハラなどというコンプライアンス用語では理解できない世界がこの本にはふんだんに描かれていました。
2年位前になりますが、ある大学での公開シンポジウム に参加し、終了後に何人かでその大学のある准教授と酒屋で話す機会がありました。その先生は外部から来た方なので、特にその大学に批判的だったとも思いますが、言われたことが少し衝撃で今も覚えています。
先生が言うには「もう学生に知識は伝えられるが実質的な指導はできない状態と思います。少し熱心に指導し、ちょっと厳しいことを言うとすぐパワハラと言われるし、相手が女子学生だとセクハラ、モラハラだと言われる。大げさに言うと大学の教官は皆、多かれ少なかれ、学生と接触することはある種リスクと考えておびえているのです」と。
これには驚きました。ただ上記は真実の側面はあるのかもしれませんが、一部だと信じたいですし、多分一部でしょう。今年も嬉しいことに大学所属の二人の日本人ノーベル賞受賞者がありました。偉そうに言って恐縮ですが、大学では上記のようなリスクに留意は必要と思いますが、過度に恐れず、信念を持っていただいて伝えるべきは伝えていってほしいと思います。
話しがいろいろ飛んでしまいましたが、「赤めだか」は落語家が書いたこともあって、軽妙な文章で、私の場合、気が付いたら引き込まれていました。よろしければ是非手に取っていただければ幸いです。
最後までお目通しいただきありがとうございました。(了)