令和7年10月18日 管理者(名取)投稿
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ヒルビリー・エレジー _アメリカの繁栄から取り残された白人たち・J.D.ヴァンス (著)を読んで
ー強烈な印象ー
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前から読みたいと思っていた「ヒルビリー・エレジー」Amazon.co.jp: ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち : J.D.ヴァンス, 関根 光宏, 山田 文: 本 ですが、豊中市立図書館への借りだし希望が多く、4か月待ってようやく手にすることができたので、先週までに一気に読みました。著者のJ.D.ヴァンスJ・D・ヴァンス - Wikipedia は現在のアメリカ副大統領であり、自身の自伝です。
グローバル化で産業が、海外に移転し空洞化したアメリカのラストベルト地域に住む白人労働者階級(ヒルビリー)の文化と苦悩を描いた半生記ですが、書かれている現実に驚きました。自身だけで受け止めているには少し重く感じたので、この場を借りて情報共有させていただくことにいたしました。
本文は下記画像の下に続きます。
まずは生成AIであるGrokに「ヒルビリー・エレジー」の要約を作成してもらいました。以下になります。
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要約
J.D.ヴァンスは、オハイオ州の工業都市ミドルタウンで、ケンタッキー州の貧困地域出身の祖父母に育てられた自身の人生を振り返ります。ヒルビリー文化に根ざした彼の家族は、貧困、薬物依存、家庭内暴力などの問題に直面していました。特に、母親の薬物中毒や不安定な生活が、幼少期のJ.D.に大きな影響を与えました。祖父母(特に祖母「マモー」)の厳しくも愛情深い支えにより、J.D.は困難な環境を乗り越え、高校を卒業後、海兵隊に入隊。その後、オハイオ州立大学とイェール大学のロースクールで学び、成功を収めます。本書は、彼の個人的な成功物語であると同時に、ヒルビリー文化が抱える社会経済的問題—産業衰退、教育機会の不足、文化的孤立—を浮き彫りにします。ヴァンスは、ヒルビリーコミュニティの価値観(家族への忠誠、誇り、個人主義)と、自己破壊的な傾向(責任転嫁、努力の欠如)を分析。アメリカの労働者階級が直面する構造的な課題と、文化的・心理的要因がどのように機会を制限するかを考察します。また、個人の努力と社会の支援が成功に不可欠であると強調します。
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Grokの要約は立派な文章になっていますが、書かれている内容はそんなきれいごとばかりではありません。
ヴァンスが生まれた時すでに薬物中毒だった母親は次々と男性を取り換えるように離婚を繰り返し、激しい夫婦喧嘩をしょっちゅう夜中に演じるという有様でした。ヴァンスは父親違いの姉とともに不安で不安定な生活を余儀なくされます。次々と見知らぬ男性を父親として同居させられました。
また、薬物依存のため、神経が過敏となっていた母親の気に障ることを言ったため、12歳のころ銃を携帯している母親に追いかけられて射殺されそうになり、見も知らぬ民家に飛び込んで助けられています。母親は逮捕され、親権が取り上げられます。
このため、母方の祖父母の家で姉とともに生活します。しかし、祖父母はヴァンスへの愛情は強いもののやはり不和で、特に祖父はアルコール依存になりしょっちゅう激しい夫婦喧嘩をします。ある夜、思い余った祖母は酔ってソファで寝ている祖父にガソリンをかけ、マッチの火を腹部に落とし、焼き殺そうとしたそうです。その有様を見ていたヴァンスの姉がすぐについた火を消して、大事には至らなかったそうです。
この祖母の生き方がどうも大きな影響をヴァンスに与えているようです。
この祖母は14 12歳の時、実家で一人で留守番をしている時に家で飼っている牛を盗んでトラックに積もうとしている二人組の牛泥棒を目撃します。牛は家族の生命線と聞かされている祖母は直ちに家からライフルを持ち出し、二人に向かって連射し、一人の足に当たって倒れましたが、もう一人はトラックで逃げ去りました。祖母はとどめを刺そうとゆっくり近づいて頭を撃とうとした時、帰宅した兄にすんでのところで止められたそうです。
家族や一族の生活や名誉を守るためには銃による攻撃もいとわないという人で、ほぼ日常で拳銃を携帯している人だったようです。しかし、信仰や社会について大きな教えを受けたとヴァンスは言っています。
貧困の中でのすさまじい家庭内暴力と薬物中毒。ヴァンスはトラウマを抱えます。このような破滅的な状況ではおそらく現代の日本では家庭や血縁のきずなは雲散霧消し、跡形もなくなるのではないでしょうか。
しかし、驚くことにこのような中でヴァンス一族のきずなは現在に至るも強固に保たれています。ヴァンスの実父(別家庭を遠方で営む)、おじ、おばはもちろん、大おじ、大おば、いとこ、はとこなどが入れ替わり立ち代わり、熱心にヴァンスを助け、励ますのです。(母から聞いたところでは、戦前の富士見(本郷)の農村ではこういう感じだったと言います。)
カリフォルニアに住んでいる大おじなどは「お前も大変だ」と自宅に長期滞在させます。日本で大おじと言えば、遠縁で会うのはほとんどの場合、葬儀のみです。
このようなきずなの中で貧困から脱出することのできたヴァンスは家族や血縁の大切さを重んじるあまり、子供のいない女性を侮蔑するような発言をしています。以下のような発言です。
「バンス氏が過去の発言で炎上、ハリス氏らを「子なしの猫好き」と批判…女性票に影響の可能性」⇒バンス氏が過去の発言で炎上、ハリス氏らを「子なしの猫好き」と批判…女性票に影響の可能性 : 読売新聞
このような差別発言は、とても容認できるものではありません。
しかし、ヴァンスの生い立ちやスコッツアイリッシュアイルランド系アメリカ人 - Wikipedia と呼ばれる民族の伝統から見ると、「なぜ子孫をつくらないのだ?家族や血縁がすべてじゃないか」というところかもしれません。こういうところにもアメリカの分断がみられる気がします。
全体を通して読むと、ヴァンスは資本主義の行きつく先を見ている可能性があると感じます。効率と合理性の徹底的追及。ヴァンスは、これを強力に推し進めれば、自分の人生を楽しむために費用と手間のかかる子育てを忌避する考えも出てくるし、資本家は、地元に仕事がなくなろうとかまわず安い労賃の海外に工場を移転してしまう。また、自身の収入に関係しない面倒な親戚づきあいや地縁・血縁の人々(同窓会もこれに該当?)とも関係を築くことを厭うようになると考えているようです。
ヴァンスは、このようなことでよいわけがないと、歯止めをかけ、国民に新たな生き方を提案しようとしている節があると私は見ています。
ヴァンスの言うことがすべて正しいわけではないと思います。お読みいただければ、行き過ぎたところや認識のおかしいところも多々あることがお分かりになると思います。盲信は決してできません。ただ、次期米大統領となる可能性が最も高い人物がこういう考えであることは日本人の念頭にあってもよいと思います。
一度、本書をお目通しいただければ嬉しいです。
最後までお目通しいただきありがとうございました。
よろしければ、コメント等お願いいたします。(了)
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上記の本文で祖母が牛泥棒にライフルを発射したのは14歳の時と書きましたが、12歳の間違いでした。訂正してお詫びします。これはたまたま別の記事から間違いが分かったのですが、上記の感想文は本書を図書館に返してから、本書なしで記憶で書いたため、細かいところで間違いがあるかもしれません。その節はご容赦をお願いします。
さて、読み終わってから、ネットで関連情報を見ていると以下の2件の情報が目につきましたのでご紹介します。
1.ヴァンス、母親を副大統領就任式に招待
ヴァンスは断薬治療10年を達成した母親、ベヴ・バンスを大統領就任式に続いて行われた自身の副大統領就任式に招待しました。母親は最終的にはヘロイン中毒までいきましたが、決心して断薬治療に入りました。
昨年の7月にトランプに副大統領候補に指名された際、来年の就任式のころ母の断薬治療10年が達成されるので、ぜひ就任式に招待したいとトランプに要望し、了承を得ていたそうです。
以下の写真のヴァンスが宣誓している前にいる赤い服の女性が母親です。トランプやバイデン、ハリスが立ち会っています。Xからの引用です。⇒ https://x.com/AgentFree2B/status/1881422303948636209
この件の詳細な解説がyoutubeにありますのでよろしければご覧くださいますよう。⇒ https://youtu.be/3vckD-GFxj4
本書を読んでいる私には、この写真を見た時、胸に来るものがありました。
2.本書の映画化
本書は2020年に、ロン・ハワード監督により、「ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌」という題名で映画化されました。ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌 - Wikipedia 私はまだ観ていません。日本では Netflix で観ることができるそうです。Netflix に加入されている方は、よろしければご覧になって、感想を教えていただければ嬉しいです。
日本語版の予告編が youtube にありましたので以下に掲示しました。元動画は ロン・ハワード監督、エイミー・アダムス&グレン・クローズ主演『ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌-』予告編 - Netflix です。
よろしければご覧くださいますよう。
掲載(了)
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名取 様
田中啓資です。
いつもお世話になります。
ヒルビリーエレジーを何とか読み終えました。感想(読後記?)について書いてみました。
400ページにもなる厚い本で読み通せるか不安を持ちながらもなんとか1か月ほどかけて終わりまで辿りつきました。前半200ページほどはバンス氏の育った中西部の小さな町の白人労働者社会(ヒルビリー)の苦しみやそこで暮らした氏の苦しい家庭環境などが書かれており、重たい内容なので最後まで読み通せるか?不安な状態が続きました。しかし後半はその苦しさが抜けて氏が海兵隊へ入隊するころから急に視界が開けてすいすい読み終えて、最後はすっきりしました。
筆者バンス氏は苦しい環境から抜け出し、海兵隊入隊を境にして、州立大学、ロースクール、法律家と大きな夢をかなえました。後半の成功体験も同じような環境で暮らす人々には勇気づける内容であると思いますが、前半のふるさとであるアパラチアン西部の白人労働者階級の人々のつらく苦しい問題やそこで生まれて、そこから出ることが難しい人々の実情を生の記録として残したくて書かれたように感じました(それに類するような内容で「後世になって参考になる本になるであろう」と本の中で誰かが言っていたようにも記憶)。多くのヒルビリーの人々が希望を失っており、どうしようもないと感じている点は重たい話だなあと感じました。バンス氏はヒルビリーの社会を変える方策は難しく見つかっていないと言っていたと思いますが、氏のようなそこで生きてきた人が考えないとなかなか解決できる問題でもないといわれていたと思います。トランプ政権の米国ファーストの考えで解決になるとも思えてきませんが、このような背景もそうせざるえない要因なのかと1つ合点がいったような気がします。米国の知らなかった実情を読めて参考になりました。
田中 啓資 様
ご連絡ありがとうございます。
ヒルビリーエレジーの内容全体を俯瞰された心に響くご感想をいただきました。感謝申し上げます。