令和7年4月1日掲載 64回生 林 義祐氏寄稿(第六十回目掲載)
オランダ在住の 林 義祐氏(64回生・岡谷市出身)のご寄稿「オランダの生活・歌日記: 2025年3月 序文」を下記に掲載いたします。林様、今月もご寄稿いただきありがとうございます。
文中、林様も言っておられるように私も今回のトランプ大統領の日本に対する要求は、170年前の黒船来航をはるかに凌ぐものとなると個人的には考えます。
数日以内に第六十一回目掲載として「オランダの生活・歌日記 2025年3月」を掲載いたします。
同窓の皆様のコメントやご感想をお待ちしています。(名取宛メール: antimarck@yahoo.co.jp)
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3月歌日記 : 序文
◆ トランプ米大統領は就任以来、次から次へと大量の大統領令や覚書を発令して、大きな変革に挑戦している。
それらは広い範疇に亘るが、主なところでは;
①通商関係では、メキシコ、カナダへの関税発動、アルミニウムや鉄鋼への関税発動、また、他国による不公正な貿易慣行、為替操作などを 調査する。結果によっては関税をかけることも検討する
(1/20、覚書)などというのもある。
②移民問題や国境管理では国境に国家非常事態を宣言し追加の壁の建設を命じた(1/20、大統領令)。また麻薬カルテルを外国テロ組織に指定し、早速にギャング団 200 人以上をエルサルバドルの監獄に送り込んで、世界を驚かせた。グアンタナモ基地にある不法移民収容所もまた 3 万人収容の計画で準備されている。
③エネルギー資源は国内のあらゆる資源を活用するとして、EV の普及策は撤廃し液化天然ガス
(LNG)は新規輸出許可を再開、アラスカの LNG も開発を優先的に進めるとしている。
④連邦政府の改革では「政府効率化省」(DOGE)を大統領府内に新設し、そのトップにイーロン・マスクを据えた。イーロンは閣僚ではないが、財務部門、軍事部門等あらゆる情報にアクセスを許可されており他閣僚でさえ戦々恐々である。特に USAID からの国内外への巨額の援助金『2023 年度約 400 億ドル(約 5 兆円)』の 83%のプログラムを廃止するということである。USAID は、海外援助や人道支援を目的とする政府機関であり、災害救援、医療支援、経済開発など、世界中の人道支援プログラムに使用されている。USAID の閉鎖は、アメリカの国際的な人道支援に大きな影響を与えると懸念されている。その資金運用の透明性や活動内容に疑問が呈されていることから、閉鎖が検討されているのだ。しかし、連邦地裁はこの解体が憲法違反の可能性があるとして、差し止め命令を出した。それでもトランプはこの差し止め命令に、「地裁には大統領命令に異を唱えることは出来ない」と涼しい顔である。トランプには三権分立などというものは意味がないかの如くである。かくしてアメリカの大統領(W/H)の独裁者ぶりは司法、議会をも圧倒しつつあると言える。
DOGE(イーロン・マスク)はやり過ぎだ、ということでアメリカ中にテスラ車や、充電スタンドの打ち壊しなどが頻発しており、トランプは「テスラ車を壊したりするとエルサルバドル行きだ」と示唆したものだから、アメリカ国内は不穏な空気に溢れている。トランプがイーロンを支持したことから、イーロンの、トランプ政権における立場はより確固としたものになったと言える。
⑤その他にも、国際関係で WHO、「パリ協定からの離脱」、米軍関係で米軍からトランスジェンダー思想を排除することや、DEI の取り組みの廃止、ミサイル防衛システムの開発、地名の変更等々、全部を渉猟するだけでも大変である。
このようにトランプ政権の動き・影響の大きさが、速くて広範囲に渡ってることから、政府支出の削減と
「アメリカ第一主義」の政策に基づいていると言っても、あまりにも混乱が大きく、拙速すぎるのではないかと思ってしまう。これでは必ずどこかで躓くのではないか?と思う人は多いだろう。政府の政策が急速かつ予測不能に変化している環境下では何が起こっても不思議ではない。
そんな中で、日本に関連する話題もいくつかあり、中でも「輸出税還付金制度」と「米軍の⾧期的戦略」が目についたので、そこのところの概略に触れておきたい。
「輸出税還付金制度」は、通商関係のいくつかの大統領令の中にある、「他国による不公正な貿易慣行、為替操作などを 調査する。結果によっては関税をかけることも検討する」(1/20、覚書)という趣旨から調査されたものだろう。
また「米軍の⾧期的戦略」は、3 月 9日にトランプが、「私たちは彼らを守らなくてはならないが、彼らは私たちを守らない。私たちは日本を防衛しなければならないが、日本はどんな状況でもアメリカを守ってくれない。誰がこんな取引をしたんだ?」と発言してから、日本のメディアが、トランプは日本にもっと国防費を増やすことを要求している。もっとアメリカの武器類を買わせようとしている。これは米軍の
⾧期的戦略に沿ったものに合わせることを要求している、と話題になったものである。
◆トランプ政権は、日本の消費税が、自動車輸出の際には、輸出還付金としてトヨタやホンダなどへの支払いに使われているとのことで、「不公平な輸出補助金」として批判した。(激怒したとの報道もあり)
トランプ政権が問題視しているのは、日本の消費税の輸出還付制度である。この制度では、輸出品に対して消費税が結果として課税されず、企業は仕入れにかかった消費税の還付を受けることができる。例えば、トヨタやホンダなどの大企業は、国内で支払った消費税を還付されることで、国際競争力を高めている。
トランプ政権は、この還付制度を「不公平な輸出補助金」として批判し、アメリカの企業に不利な条件を強いると主張している。アメリカの売上税にはこのような還付制度がないため、トランプ政権は日本の消費税制度を問題視し、報復関税の可能性を示唆しているのだ。この仕組みがなぜ問題視されるかというと、輸出企業が国内で支払った消費税を還付されることで、実質的に輸出補助金を受けていると見なされるためである。これにより、アメリカの企業が不利な立場に置かれると考えられている。【図ー1】参照
◆ 消費税の輸出還付制度。 なぜ企業は還付されるのか?またアメリカの企業はなぜ不利になるのか?
消費税の輸出還付制度の仕組み
1. 消費税の納付:
o 国内で商品やサービスを販売する際、消費者から消費税を徴収する。
o 企業は仕入れや外注などで支払った消費税を差し引いた差額を納付する。
2. 輸出時の消費税免除:
o 輸出する商品やサービスは、国内で消費されないため消費税が免除される。
o 企業は輸出時に消費税を徴収しない。
3. 還付の理由:
o 輸出企業は国内で商品を仕入れる際に消費税を支払っている。
o 輸出時に消費税を徴収しないため、支払った消費税が還付される。
【国内企業と輸出企業との違い】
・国内販売:
消費者 → 企業 (消費税徴収) → 税務署 (消費税納付)
・輸出販売:
企業 (消費税支払い) → 税務署 (消費税還付)
◆アメリカ企業が不利になる理由
1. 消費税制度の違い:
o アメリカには消費税(VAT)が存在しないため、輸出時の還付制度がない。
o アメリカ企業は輸出時に消費税を還付されないため、コストが高くなる。
2. 競争力の低下:
o 他国の企業は消費税還付を受けることでコストを削減できるが、アメリカ企業はその恩恵を受けられない。
o その結果、アメリカ企業は国際市場で価格競争力が低下する。
【C】 エルブリッジ・コルビー氏の 「拒否戦略」 と 「軍事拡大戦略」
◆ トランプ政権で国防省ナンバー3の エルブリッジ・コルビー氏 (Elbridge Colby) は、アメリカの軍事戦略の方針策定・実行の推進役と言われる。彼の理論・主張は軍事拡大賛成派とのことだがなぜなのか?
エルブリッジ・コルビー氏は、トランプ政権下で国防総省の首脳として知られ、彼の主張や理論は、特に中国や北朝鮮といった脅威に対する防衛力の強化に焦点を当てている。
コルビー氏の主張
1. 防衛費の増額:コルビー氏は、日本や台湾などの同盟国に対して防衛費の増額を強く求めている。彼は、日本の防衛費を GDP 比で 3%に引き上げるべきだと主張している。
2. 中国や北朝鮮への対抗:彼は、中国や北朝鮮の軍事的脅威に対抗するために、アメリカとその同盟国が防衛力を強化する必要があると考えている。
3. アメリカの核心的利益:台湾の防衛はアメリカの核心的利益であるとし、防衛費を 10%程度まで引き上げるべきだと強調している。
軍拡賛成の理由
コルビー氏が軍拡を支持する理由は、主に以下の点にある:
• 抑止力の強化:彼は、強力な軍事力が敵対国に対する抑止力となり、戦争を未然に防ぐと考えている。
• 同盟国の防衛力強化:同盟国が自国の防衛に多くの費用を費やすことで、アメリカの負担を軽減し、より効果的な防衛体制を構築できると主張している。
• 新たな脅威への対応:技術の進歩に伴い、サイバー攻撃や宇宙空間での脅威に対処するための防衛力強化が必要だと考えている。
コルビー氏の理論や主張は、アメリカとその同盟国が直面する現代の複雑な安全保障環境に対応するためのものである。彼の視点は、強力な軍事力が平和を維持するための重要な要素であるという考えに基づいている。
◆ Elbridge Colby 氏 プロフィール
2017 年~2018年中国・ロシアとの大国間競争を強調し、アメリカの防衛戦略を再構築。
具体的には、中国の軍事的脅威に対抗するため、インド太平洋地域での同盟国との協力強化を提言。
2018 年~2021年
複数のシンクタンクと協力し、中国の経済・軍事的台頭に対抗する戦略を提言。
2021 年
著書『The Strategy of Denial: American Defense in an Age of Great Power
Conflict』を出版。
ウォール・ストリート・ジャーナルの 2021 年のトップ 10 冊に選出される。
米国の防衛戦略における「拒否戦略(Strategy of Denial)」を提唱。
「拒否戦略」とは、敵対国が軍事行動を起こしにくくする抑止戦略であり、中国の台湾侵攻を防ぐための重要な概念として注目された。
2023 年
著書の日本語版『拒否戦略:中国覇権阻止への米国の防衛戦略』が出版され、日本の防衛政策にも影響を与える。
日本の防衛費増額議論にも影響を及ぼし、自衛隊の役割拡大についての議論が活発化。
2024 年 12 月
ドナルド・トランプ次期大統領より「政策担当国防次官(Under Secretary of Defense for Policy)」に指名される。
これにより、米国の国防政策における実務的な決定に大きく関与する立場となる。
2025 年 3 月現在特にインド太平洋地域の安全保障に注力し、日本や韓国との同盟強化を推進している。
フィリッピンの米国拠点を 9 カ所に増やし、へグセス国防⾧官がフィリッピンを訪問。同盟強化を図る。(2025 年 3 月 27 日)
台湾防衛の強化策として、米軍の駐留拡大や軍事支援の増額を検討。
◆ Elbridge Colby の軍拡戦略で言われる 拒否戦略 と 軍事拡大戦略。 特に拡大戦略がなぜ有効なのか。
エルブリッジ・コルビーの「拒否戦略」と「軍事拡大戦略」についての説明。
・拒否戦略エルブリッジ・コルビーの「拒否戦略」は、中国の地域覇権を阻止するための防衛戦略である。この戦略の主な目的は、中国がアジアで圧倒的な覇権を握ることを防ぐことである。具体的には、以下のような要素がある:
1. 反覇権連合の形成: 中国の周辺国と連携し、反中国同盟を形成する。
2. 同盟国の軍事力強化: 同盟国の軍事力を強化し、中国への対抗力を高める。
3. 侵略のリスク認識: 中国に侵略のリスクを認識させ、侵略を思いとどまらせる。
4. 部分的な勝利の確保: 万が一中国が侵攻した場合でも、標的国が完全に占領されないように部分的な勝利を収め、中国の目的達成を阻止する。
5. 政治的解決: 最終的には、中国が地域への侵略を思いとどまるよう、政治的に解決することが重要である。
軍事拡大戦略は、国家が自国の軍事力を増強し、他国に対する抑止力を高めるための戦略である。この戦略の有効性は以下の点にある:
1. 抑止力の強化: 軍事力を増強することで、他国が攻撃を思いとどまるようにする。強力な軍事力は、潜在的な敵国に対して攻撃のリスクを高めるため、抑止効果が期待できる。いずれにしても
2. 防衛力の向上: 軍事力の増強は、自国の防衛力を向上させ、侵略に対する防御を強化する。これにより、国家の安全保障が確保される。
3. 国際的な影響力の拡大: 軍事力の増強は、国際社会における影響力を高める手段となる。強力な軍事力を持つ国家は、他国との交渉や協力において有利な立場を築くことができる。
4. 同盟国との協力強化: 軍事力の増強は、同盟国との協力を強化するための基盤となる。強力な軍事力を持つ国家は、同盟国に対して信頼性のあるパートナーとして認識され、協力関係が深化する。
これらの要素が組み合わさることで、軍事拡大戦略は国家の安全保障と国際的な影響力を高めるための有効な手段となるのである。
◆ 日本に関連する話題のうち、「輸出税還付金制度」と「米軍の⾧期的戦略」の2 点について
D-1 日本の消費税と輸出還付制度
2025 年の日本の税収内訳は消費税 24.9 兆円、所得税 23.2 兆円, 法人税 19.3 兆円・・となっていて消費税収入が最大である。一部の経済学者や団体からの提言では、将来これを税率 19%にまで高めることになっている。(図―2 参照) 19%になったら、日本は主要国中最貧国になるのではないか。これで財務省、自民党、経団連はどのように日本を再生しようとしているのだろうか・・?
トランプは、日本の消費税は関税と同じと考えられる、と言っている。要するに輸出補助金だと。確かにこれは部分的に正しい。輸出補助金は GATT の時代から禁止事項なのだ。
トランプが日本の消費税を「関税」とみなし、輸出補助金に等しいと主張した背景には、消費税(付加価値税、VAT)の輸出還付制度がある。この制度では、輸出品に課される消費税がゼロ税率となり、企業が国内で支払った消費税が還付される仕組みになっている。このため、輸出企業は税負担を軽減でき、国際競争力を高める効果があるということになる。
一方で、アメリカにはこのような還付制度がないため、トランプはこれを「不公平」と捉え、事実上の輸出補助金と批判した。 彼の主張は、消費税が輸出を促進し、輸入品には課税されることで、貿易上の障壁を生むというものである。この議論は、国際貿易の公平性や税制の在り方について考えさせられるテーマで、トランプ政権もよく見つけたものだ。
大多数の日本国民が消費税で苦しんでいるのに、大手輸出企業は莫大な輸出還付金を受け取っているのは、それこそ不公平だ。消費税の抜本的見直し(減税とか廃止とか)をするべきだと日本国内でも議論が盛り上がっているが、財務省も自民党も無視を決め込んでいる。そういうタイミングの時にトランプ政権から強烈なパンチが飛んできたので、ハッとなった。これはチャンスではないかと思ったのだった。外圧に乗っかるのは忸怩たるものがあるが・・、国民生活が第一であるからして、この外圧を利用すべきだと思ったわけである。
そもそも日本の消費税にはいろいろな疑問がある。一つにはスタートからして、消費税は社会保障費に充てると言われていたが全額がその目的に使われているかについては疑わしい。また還付金制度の恩恵にあずかれない中小企業や個人労働者などは人件費を外注にすると、消費税が少なくなると言われる。また低所得者層への負担が大きく、逆進性が問題になっているのはよく知られている。いずれにしても、この外圧をチャンスと捉えて、消費税の軽減や廃止、または透明性のある公平な制度にしてもらいたい。そのためにはトランプ政権とも協議する必要があるかもしれない。例えば消費税は存続させるとしても、輸出還付制は廃止またはミニマムにするとか、国民生活を苦しめるものにならないように低所得層を除外するとか、品目別の税率を考えるとか、いろいろ出きることはあるのではないだろうか。いずれにしても、消費税の抜本的な見直しや改革は必須要件である。
実現の方向性としては、一つにはこの外圧を利用し、減税の施策をトランプ政権にも日本国内にても知らしめ、更に夏の衆議院選挙で反緊縮財政派の適切なリーダーを首相に選んで財務省や消費税推進派を封じ込め、国の内外から進めることが出来ればそれが一番良い方向ではないかと思った次第である。そこへ行くまでは紆余曲折があるだろうが、この機を逃がしたら、当分チャンスは無いだろう。
D-2 アメリカの「拒否戦略」 と 「軍事拡大戦略」
◆ 拒否戦略とは何か?これまであまり聞いたことがない言葉であるが、これは中国の地域覇権を阻止するための防衛戦略であって、主な目的は、中国がアジアで圧倒的な覇権を握ることを防ぐことだという。
その内容は「反覇権連合の形成」で反中国同盟を形成し、その同盟国の軍事力を強化し、中国への対抗力を高めることだという。それで中国に、侵略してもリスクが大きいと分からせ、それを以て抑止力を高めることだという。一つ一つはよく聞く言葉であるが、それぞれの概念がバラバラに理解されているだけでは何も起こらないだろう。つまり中国はどんどん覇権遂行に向かって進んでいくことになる。例えば中国は南シナ海でベトナムやフィリッピンと領海を巡って争っているが、中国としては圧倒的な海軍力があるから、ベトナムが来たらそれを撃退し、フィリッピンが来たらそれを撃退していれば済む話であるが、これがベトナムとフィリッピンが提携して向かってきたらどうだろうか?少しは焦るかもしれないが、しゃらくさい、と撃退するだろう。それではその 2 国に加えて、インドネシア、マレーシアも加わり、インド、オーストラリア、アメリカまで加わり、果ては日本、韓国まで加わったらどうなるだろう。これはもう中国としては焦りまくるに違いない。一つ一つ撃破していけばいい、という話しではなくなる。一対複数 (国)となり、それぞれの国が軍事力強化しているとなると、中国としてはそれまでは軽くあしらってフィリッピン船を沈没させていたような単純な戦術はとれない。一つの国に対応している間に他の国が別の方面で攻撃してくる、という形では中国軍部もげんなりしてしてしまうだろう。台湾に侵略する時は、台湾だけを相手と見ていてはいかなくなるからだ。つまり全方面戦法で行かないと成功はおぼつかなくなる。それが侵略のリスクを認識させ、容易に侵略を決意させないようにするということになる。またもし台湾に侵攻したとしても、その間に南シナ海の諸島に展開してきた中国の基地が攻め取られたら、完全な勝利とは言えなくなり、さらなる戦争の拡大か、外交的交渉になるかもしれない。
標的国(台湾)が中国に攻められても、完全に占領されないように部分的な勝利を収める、というのはどのくらい難しいことなのかは分からない。が、「部分的な勝利の確保」ということになれば中国としては完全な勝利ではないから、まだ交渉や部分的戦闘は続くのを想定しているのかもしれない。そういうケースでは、中国は覇権を奪取したとはとても言えないから、アメリカから見ればそれはそれで勝利の一方式と言えるかもしれない。つまり中国の覇権奪取はならず、アメリカの覇権は守られたということになる。
この筋書きを、誰でも分かり切ったようなことを、実際に有機的に体系を設定し、行動(Operation) に移せるようにすることは言うは易しだが、かなりな熱意とコストを必要とするに違いない。それをコルビーは進めているのだ。
「拒否戦略」とは、敵対国が軍事行動を起こしにくくする抑止戦略であり、中国の台湾侵攻を防ぐための重要な概念だということのようだ。「最終的には、中国が地域への侵略を思いとどまるよう、政治的に解決することが重要である」としているが、これは勿論当然のことであり、いつまでも戦争状態で対峙しているわけにもいかないということだろう。
◆ 軍事拡大戦略
当たり前の話だが、強力な軍事力は、潜在的な敵国に対して攻撃のリスクを高めるため、抑止効果が期待できる。その上、軍事力の増強は、自国の防衛力を向上させ、侵略に対する防御を強化する。これにより、国家の安全保障が保たれる。それゆえコルビーは日本の国防予算をGDP の 3%にするべきだと主張している。台湾には何と GDP の 10%を主張している。これは同盟国が自国の防衛に多くの費用を費やすことで、アメリカの負担を軽減し、より効果的な防衛体制を構築できるとの考えからである。 台湾の場合は、中国が直近の敵国であるから、精一杯の国防力増強を図れというわけである。いつ侵攻されるか分からない。お花畑にいるわけではなく国家の非常事態なのであるからして 10%でも何でもできるだけのことはしなければならない、と鼓舞している感じである。あたかも台湾島をミサイルと防空システムで海に浮かぶ要塞化にするようなイメージである。そうなったときには中国は簡単には台湾侵攻を決断できないだろう。中国の人海戦術も効果少なくリスクが大きくなるだけだから。
コルビーの理論や主張は、アメリカとその同盟国が直面する現代の複雑な安全保障環境に対応するためのものである。それは、強力な軍事力が平和を維持するための重要な要素であるという考えに基づいている。つまり力による平和の維持である。
しかし、コルビーは力による平和維持だけではなく、同盟国との協力強化も必要だと説いている。強力な軍事力を持つ国家は、同盟国に対して信頼性のあるパートナーとして認識され、協力関係が深化するからである。現に今月末(3 月 28 日)フィリピンを訪問したヘグセス米国防⾧官はマニラでマルコス大統領と会談し、またテオドロ国防相とも会談した。南シナ海で威圧的な行動を続ける中国を念頭に、比軍の装備強化の支援を続けると表明した。トランプ米政権がアジア地域への関与に後ろ向きだという懸念の払拭に努めた。そしてヘクゼス⾧官は「同盟国はアメリカにとってとても重要である」と語った。トランプに聞かせたい言葉である。
◆ 軍拡の果ては・・?
軍拡をどんどん果てしなく続けることはどういう意味があるのだろう? そもそも果てしなく続けることなんてできるのだろうか?核兵器を持つ国は果てしなく続ける必要性は無いのでは・・?と思ってしまう。
しかし現実問題として、核保有国同士が戦争をしたことはこれまで一度もない。その手前の代理戦争で終わりである。北朝鮮が核兵器を持った時、トランプ(一次政権)は、ボルトン首席補佐官が北朝鮮を攻撃するべきだと進言してもその考えを退けた。その代りトランプは3 回も金正恩と会談した。トランプは戦争が嫌いだとはよく言われるが、本当はどんな信条を持っているのかは定かではない。しかし北朝鮮を攻撃しなかったことは、大統領としてしっかりした資質を持っていたと言えるのではないか。なぜならもし北を攻撃したら、金正恩はどうしただろうか? 最後は勝ち目が無いということで、核ミサイルを撃って自死したかもしれない、と思うととやはりいい気分ではない。その核はまずはソウルを標的にするだろうし、次は東京かもしれない。或いは当時の北のロケットの性能からして佐世保あたりかもしれない。しかしトランプはそうしなかった。
北野幸伯氏によれば、核保有国同士は戦争になっても核を使わないということである。なぜそう言えるかは説明が無いが、通常兵器で極限までいくらやっても核は使わないということである。つまり使えない兵器である。その代り抑止力は抜群に強い。核を持っていると言うだけでその保有国に侵略することは考えられない、ということのようである。だからコルビーの言う軍事拡大戦略は、通常兵器においてはいくら拡大しても構わない、と言ってるようである。それが中国においては、台湾侵略のリスクを冒しにくい事になるということであろう。
◆ 日本はどうする
私はトランプは、いざ中国が台湾や尖閣諸島に侵攻した時、日米安保条約に則り米軍を派遣するとはとても思えない。トランプは「日米安保条約では、アメリカは日本を守らなければならないが、逆の場合は日本はアメリカを守らない。誰が決めたのだ?」と頓珍漢なことを言っている。彼は日本の国防費が少ないと不満を言ってるのだ。日本が思いやり予算で精一杯米国基地を支援しているのなんかは勿論わかっていて言ってることだ。彼のディールのやり方なのだ。NATO 諸国には GDP 比で5%拠出せよと言ってるが、最初に吹っ掛けてるのが見え見えだから、これは 3~3.5%ぐらいに落ち着くのではないか・・?
トランプは戦争を起こさなかった唯一のアメリカ大統領ということを言われるが、戦争を起こさなければ、戦場に兵を送ることも無かったということになる。彼は戦場に兵員として若者を送ることは本当にやりたくないようである。中国と紛争になったときでも、若者(兵士)を送ることはないのではないか、そんな気がする。 第一次政権の時、シリア政府軍と反政府軍の戦いのとき、トマホーク巡航ミサイル 59 発を発射したのが唯一の紛争への直接介入であるがその時も、「誰もいない砂漠に向けて撃て」と指示を出していたという逸話が伝わっている。事実かどうかは分からないが、直接相手を殺傷すればそれだけで憎しみの連鎖に繋がるからやりたくないということだろう。トランプの別の一面である。
日米安保条約が当てにならないのなら、日本は出来る限り自力で国を守らなければならない。それこそコルビーの言うような同盟国或いはできるだけ同盟に近い関係を持つ国を増やすべきだろう。コルビーは日本は 3%にするべきだ、と言ってるがこれは、日本のためにもアメリカのためにもなるというレベルと言える。3%と言えば約 16.7 兆円と大きいが、アメリカからの外圧となれば今の日本は受け入れざるを得ないのではないか。外圧によって何かを成すということは気に入らないが、先に「消費税は関税と同じようなもの」といったトランプの圧力が、それを受け入れることが国民の生活にプラスに作用するケースと同じく、逆に外圧を利用することも構わないと割り切ればいいと思う。戦後 80 年も経っていまだにアメリカの属国の地位にあって、アメリカの核の傘によって守られていることから全て重要なことはアメリカによって押し付けられることの方がよほど屈辱的で、日本も自分の国は自分で守る、という原則に少しでも近づくためには、これは良いチャンスと捉えるべきだろう。
というわけでトランプが色々打ち上げた、大統領令や今回のトランプの大改革の中で、日本にとっては国の利益や国民生活への利点が考えられる 2 点(消費税の減税 or廃止の件と国防費増加の件)は外圧を受け入れることが良いチャンスとなりそうだということで進めてもらいたいと思うのである。特に国防費増加では、憲法 9 条の問題もあり簡単な話ではないが、トランプのように大鉈を揮う改革を実施する覚悟が必要であろう。80 年も何もしなかったと言う方がよほど異常であると思うべきである。
(了)林 義祐
*文中敬称略
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オランダ在住の 林 義祐氏(64回生・岡谷市出身)のご寄稿「オランダの生活・歌日記: 2025年3月」を下記に掲載いたします。
寒さが厳しかった今年の冬も過ぎ、花々が咲きそろう季節が始まりました。林様のこれからの作歌が楽しみです。3/29 の歌。子供のころよく、田んぼですくってみたどろどろのカエルの卵を思い出しました。
林様、今月もご寄稿ありがとうございます。同窓の皆様のコメントをお待ちします。
(名取宛メール: antimarck@yahoo.co.jp)
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2025 年 3 月:歌日記
3 月 1 日 (土)
☆ 庭の隅若い針ネズミ死んでおり 冬を越せずに逝ったか哀れ
☆ 一匹で自然の中を生きていく 給餌不足か悔やまれてならず
3 月 2 日(日)
☆ 月変わり弥生となりて一斉に スキラ芽を出し群落の始め
☆ 冬の間 庭を守りしパンパスは まだまだ元気現役主張
3 月 3 日(月)
☆ 人影が霧の中から現れて すぐ消え去り行く朝餉の庭先
☆ 庭に咲く小さなスイセン摘み取って 妻は写真のディバに話しかけ
3 月 4 日(火)
☆ 街なかのクロッカス通り咲きだして カメラ片手にお花見に行く
☆ 写真撮る我に寄り来る高校生 話が弾んで思わぬ交歓
3 月 5 日(水)
☆ 春の陽に鳥の動きはいや増して お相手探しチェイス忙しく
☆ 鳥巣箱カップル中を覗いたが 気に入らないか飛び去ってしまい
3 月 6 日(木)
☆ この町の役所がくれる花壇土 良質なれば今年も出かけ
☆ 先客が一組ありて二人して スコップ揮いトレーラーいっぱいに
☆ 車後部1キュービックの薪バッグ 妻と二人でバケツで運ぶ
☆ 黒い土ウイールバローで庭に撒く 11 回運び今日はそこまで
3 月 7 日(金)
☆ 枯れ花のアジサイ大株新芽見え 急いで刈り込み小さくし
☆ 刈り込んだつもりが妻はもっとと言う 今年駄目と次回に回し
3 月 8 日(土)
☆ ヒメリンゴミーロ最後の食糧庫 もはや終わりで自然の餌はなし
☆ 自然果実終わるも人の給餌にて ミーロは元気もう一羽増え
3 月 9 日(日)
☆ パンジーをシリンダーポットに植え込んで 終われば辺りに夕闇迫る
☆ シリンダーの穴にパンジー通すのは 株が大きく根気の仕事
3 月 10 日(月)
☆ 樹間より真っ赤な太陽昇りだす 庭は目覚めて希望の園に
☆ 大空を二つに分ける飛行雲 夜明けの空に光り輝き
3 月 11 日(火)<オランダ版・花泥棒>
☆ フェンス外スイセンの群れが咲き出して 道行く人の目を楽しませる
☆ 朝食中スイセンを摘むカップルあり 妻憤慨し抗議の叫び
☆ フェンスまで距離が遠くて声届かず カップル去りぬ摘んだ花を手に
3 月 12 日(水)
☆ 引き込み道大生垣は山茱萸で 花が満開意外な主張
☆ ヘルボラス季節を間違え春に咲く クリスマスローズの名前を忘れ
3 月 13 日(木)
☆ キツツキが見えるクルミは全て食べ 隠れたクルミ探すに熱中
☆ チャフフィンチ春の陽射しを浴びて鳴く 営巣始める時はもうすぐに
3 月 14 日(金)
☆ 新しく隣家を購入した人が 庭を更地にし一から始め
☆ どんな庭出来るか早く見たいもの 進捗遅くヤキモキと見る
3 月 15 日(土)
☆ 壊れたる庭木戸修理ペンキ塗り 春の陽射しに作業捗る
☆ 廃材利用見た目に何も遜色なし 様子見に来た妻にこにこと
3 月 16 日(日)
☆ 庭仕事枯れ花片付け大仕事 グラスやパンパス刈るには惜しく
☆ もう少し残しておいてと言われれば トラの尾ルドベッキアそちらを先に
3 月 17 日(月)
☆ 寒桜心細げに咲きだして 観る人なかり我だけ愛しむ
☆ この桜サクラというは名ばかりで 山桜とてもまだ花多し
3 月 18 日(火)
☆ 葉が枯れた樫の垣根はどこにでも オランダの人枯れ葉を愛でる
☆ 冬にては枯れ葉のままで葉が落ちず 5 月に芽が出て緑が覆う
☆ 日本では枯れ葉の垣根違和感も いつの間に樫 力強く見え
3 月 19 日(水)
☆ 隣家との垣根コニファー⾧大で 庭師に依頼1m低くし
☆ ⾧年の懸案やっと解決し 今後は剪定簡単になり
3 月 20 日(木)
☆ ローズアーチ今年は足場確保して 高い細枝思い切り切る
☆ 以前には威容堂々のバラの門 17 年経て柱ボロボロに
3 月 21 日(金)
☆ 笹薮の竹の⾧さ3mほど 藪に潜りこみ半日奮闘
☆ 藪の中古い竹茎掻き分けて 根元から切るは至難の作業
3 月 22 日(土)
☆ 落蝶は悲しからずや冬眠を 終えて目覚めず永遠に眠りぬ
☆ クジャク蝶哀れと思いせめてもと ヒヤシンス上にそっと乗せてやり
3 月 23 日(日)
☆ チューリップ第一号は恒例の 小さな赤花池端に咲く
☆ スカビオザ何を勘違い春に咲く 夏はどうすると聞きたいものぞ
3 月 24(月)
☆ ひと頃は香りビバーナム樹勢落ち 心配したが今年持ち直し
☆ 昼間にはあまり目立たぬ花なれど 夜には匂い立つ良い香りにて
3 月 25 日(火)
☆ 珍しやムクドリ 1 羽がやって来る 常に群れてるに初めてのこと
☆ ジャックドウこちらも珍し 1 羽だけ 敵情視察か歓迎できず
3 月 26 日(水)
☆ ヒアシンス、スイセン、スキラ、レンギョウと 続々咲きだし春の爆発
☆ サクランボ植えて 4 年目花も咲く 初の実は生るか今年の期待
3 月 27 日(木)
☆ 日の出位置どんどん北に移動して 春から夏に向け日が延びる
☆ 日が延びてサクラも一気に 3 分咲き 月日は早く春また駈け足
3 月 28日(金)
☆ 夏に向け温室水性白ペンキ 隈なく塗ってブドウを守る
☆ 室温が 30 度超え無風だと ブドウは成熟しなくなるため
3 月 29日(土)
☆ 池の中さざ波立つ日が続いたのち 見れば蛙の卵びっしり
☆ この池に金魚もいればヤゴもいる オタマジャクシには厳しい世界
3 月 30 日(日)
☆ 庭の通路両側スキラびっしりと 妻は名付けてスキラ小径と
☆ チューリップ様々な花ある中に 星の花咲く春は盛りに
3 月 31 日(月)
☆ 春の蝶コヒオドシ来て飛び回る 歓喜の飛翔近ずくと逃げ
☆ シータテハも現れこちらは悠々と 地面におりて陽射し楽しむ
(*)実際には 「33 キツツキ2」が、スライドショー作成後ファイルが壊れて削除した。
それゆえ 53 番まで番号を振ってあるが No.33はスライドショーには存在しない。======================================
<終わり>