オランダ在住の 林 義祐氏(64回生・岡谷市出身)のご寄稿「オランダの生活・歌日記: 2022年10月 序文」を下記に掲載いたします。
1週間以内に第十二回目掲載として「オランダの生活・歌日記 2022年10月」を掲載いたします。
掲載を了解いただいた林様のご好意にお礼申し上げます。
同窓の皆様のコメントやご感想をお待ちしています。(名取宛メール: antimarck@yahoo.co.jp)
なお、林様は今夏、久しぶりに帰国され、岡谷で生活された由ですが、そういった経緯について序文の末尾に記しておられます。まずこれからお読みいただければ、ご事情等が分かると思いますので、この文章を抜き出したものを下記に挿入しました。よろしければ最初にお読みいただければ幸いです。
オランダの生活:歌日記 2022年10月
10月 序文
ウクライナ戦争:人類史上最大の危機
1.これまでの経緯:
■初期の経緯
今年2月24日にロシアがウクライナに侵攻してから8ヶ月が経った。核兵器を持った大国ロシアが、核を持たない隣国ウクライナに侵攻するという、<<たとえどんな理由があろうとも>>言語道断の侵攻だった。当初ロシアは72時間でウクライナ首都キーウを奪取して、ロシア寄りの傀儡政権を設立するという目論見でいたというが、ウクライナ軍の抵抗に遭い思惑通りにはいかず、ロシア軍は戦術を変更して、3月25日にはキーウから撤退して、ウイクライナ東部のハリキウ市、ルガンスク州、ドネツク州に兵力を集中した。ロシアは東部一帯で優勢となり、4月20日にマリウポリを掌握後更にザポーリージャの原子力発電所を支配したり、7月にはウクライナから中東諸国への小麦の輸出を妨害し、輸出港のオデッサを攻撃したりして、双方の攻防は激しく、戦況は一進一退のようにも見え、長期戦の様相を呈してきている。今ではこの戦争がいつ、どのように終わるのかはその兆しも見えない状態である。
しかしながら侵攻までは、ロシアとウクライナの戦力の差は圧倒的にロシアが優勢だったので、ロシア軍の意外な躓きに世界の注目が集まった。兵士の士気が低いとか、戦車の燃料が足りない、ロジスティックに欠陥があるとか、果てはプーチンと軍トップとのコミュニケーションの欠如だのとかが問題だとまで言われた。またプーチンの健康問題、精神状態にまでメディアは論考を加えていた。
戦局が長期化しそうな様相を見せ始めて春から夏ころにかけて、ロシア、ウクライナ双方の情報合戦はヒートアップしていった。特にプロパガンダ作戦は、我々部外者にはどちらが正しいのかというようなことはほとんど分からず、ただ両者が相手が撃ってきた、攻撃してきたと言い募るばかりで、マリウポリにおける人道回廊に対する攻撃などは何が何だか分からず、遠くから見ている野次馬でしかなかった。その代り、これでもかこれでもかと言わんばかりの、破壊された家や町、逃げ惑う人々、或いは道路に放置された遺体などの写真に言いようのない怒りを覚えるばかりであった。
■最近の動き・ロ軍ハリキウで大敗
戦局が大きく動いたのは9月11日、ウクライナが南部へルソン近辺の奪還を目的とした攻撃の動きを見せ始め、ロシア軍がそれに対抗して兵を動かし布陣を敷いていた時、突如ウクライナ軍が一転して、東部ハルキウ方面に一大攻撃を仕掛けた時だった。ウクライナの作戦は成功し、ロシア軍はハルキウやイジュームを奪還される大敗北となった。ハリキウはロシアからウクライナへの補給路の要衝で、ウクライナ侵攻以来ここを拠点としてルガンスクやドネツクへ攻撃を続けていたのが不可能になってしまったのだった。このウクライナの攻撃には西側が支援した高性能武器が使用され、正確にロシア内の目標を攻撃するものだった。これはプーチン陣営にとっては大きな衝撃であった。このあたりからロシア側の戦局不利が報じられるようになった。
■プーチン、部分的動員令の発動
プーチンは9月21日、「部分的動員令」を出した。30万人を動員するという計画であった。そして9月30日にルガンスク、ドネツク、ザポリージャ、へルソン、4州の併合に関する条約に署名した。
ロシア政府内においては、ウクライナ侵攻強硬派が、長らく動員令発令を主張していた。国民は政府のプロパガンダにより、ロシアが優勢であり、すぐにもロシアの勝利でウクライナ侵攻は終わるものと信じ込まされていたが、政権内の事情を知悉していた軍や政権首脳レベルでは戦況不利ということで危機感を持っていた。彼らはこのままでは増々旗色が悪くなると危惧して、動員令を主張して本格的に戦争に勝つことを主張していたが、プーチンは、「動員令」という言葉を使うのを忌避した。大袈裟に聞こえることであるし、ロシアが負けている状態を国民に知られるのを避けたかったのである。プーチンは自分のメンツを大事にすることから、公の事項に関しては国民に嫌われることは避けようとする傾向があり、その代わり、国民に知られないこと、或いは国政運営上自分が必要だと思うことはこっそりと(たとえ暗殺でも)実行した。そもそも最初から「戦争」という言葉を使うのを禁止して、「侵攻」という言葉を使っていた。プーチンは自分のメンツがつぶれるのを怖れて、戦争を「侵攻」、或いは「特別軍事作戦」と呼び、戦争という言葉を使えば摘発したりした。「動員令」はさらに国民にロシアが分が悪くて苦境に陥っていることを知らせてしまう。それで「部分的動員令」などという言葉を使って、いかにも大した問題ではないというふりを装っていたのである。
首都キーウが侵攻後3~4日で陥落するとの予想をたがえて、逆にロシア軍がキーウを撤退して東部戦線に注力したころは、ロシア国民はそれでも、戦略的な撤退だと説明されていたが、「動員令」となると部分的動員であろうと、「国民総動員」であろうと、ロシア男性の働き世代の国民にとっては、いきなり自分が戦争の中に放り込まれる可能性が出ることである。それまでは外野席から見ていた国民もこれは大変なことになりそうだということで一斉に反発したのだった。家庭内の女性たちにとっても自分たちの夫・息子・兄弟たちが戦場で死ぬかもしれないという可能性に怯えることになった。動員令へのロシア国民の反発はこれまでにない強いものがあった。ある者は危険を冒して動員反対の抗議活動に走り、また召集を恐れたロシア人が、大挙して外国に脱出している。旅客機の席はすぐ埋まってしまったため、多くの人は、陸路で逃げる道を選んだ。具体的には、フィンランド・EU、ジョージア、カザフスタン、モルドバ、モンゴル等へこれまでに4月時点で4百20万人以上が脱出している。プーチンもできることならこれも禁止したかったであろう。しかし彼はそんなことをしたら国中挙げての一大暴動が惹起されるかもしれないことを怖れていた。国境閉鎖などはとてもできない話だったのである。
■第三勢力による搦め手からの攻撃(複雑な裏事情)
さらには9月26日には、バルト海底に敷設されたパイプライン・ノルドストリームNo1.とNo2.が何者かによって爆破され使用不可となってしまった。このパイプラインはロシアからドイツに天然ガスを送るもので、No2.は完成したばかりでまだ使用されていなかった。それが爆破されて当分復旧はできないとなるとドイツにとっては死活問題である。ドイツは2020年に、天然ガス55%がロシアからの輸入だった。特に、天然ガスは国内需要の9割以上を輸入に頼り、加えて輸入の半分以上をロシアに依存していたのだ。ロシアのウクライナ軍事侵攻が理由で、ロシアが天然ガスの輸出を停止、またはEUがロシアからの天然ガスの輸入を禁止した場合、ドイツは長期的には供給不足に耐えることは不可能である。差し当たっては現在あるガス貯蔵量に頼り、ロシア以外の国からの液化天然ガス輸入を図り、また今冬が暖冬であることを祈るだけの窮地である。ショルツ政権の絶望的焦りが目に浮かぶ。
ところが、最近、ウクライナ戦争をめぐるウソを暴露し続けている米国のジェフリー・サックスが、ザポロジア原発を攻撃しているのはウクライナ軍であり、ノルドストリームのガスパイプラインを爆破したのは米国だという事実を暴露し、番組を降板させられたりしている。ジェフリー・サックスはハーバード大学の教授で経済学の重鎮と言われる。1990年代のロシアの“経済的虐殺”を主導した米国政権のアドバイザーとして知られている。その彼が暴露しているのだから嘘だとは思えないが、もしそれが事実なら、アメリカも非情なものである。オバマの頃からロシア・プーチンを潰しにかかっていて、ロシアとドイツの接近を極度に嫌っていたのだ。メルケルが、原発を廃止してロシアの化石燃料に転換した時はパイプライン敷設に再三にわたって警告をしていたのだ。メルケルがそれを蹴ってロシアと共にパイプラインを設置した時は、苦虫を嚙みつぶして見ているだけだったが、ロシアのウクライナ侵攻でチャンス到来とばかりに実力行使に出たということだろう。それは、ドイツに対して米国産の天然ガスを売りつける絶好の機会でもあるからである。大国の論理というものは全く非条理で冷徹なものである。とても理解できない。ショルツはそれでもEUの一員として「反ロシア」として振舞っている。何と哀れなことか。ドイツ国民はこれをどう思っているのだろう? もしこの米国犯人説が本当だったら、そして今冬の国民生活が大災害にでもなったとしたら、ドイツはもう米国を憎むのは当然であろう。仮定の話だがEUが将来分裂した時はドイツはロシアと組んで別の枠組みに入るのではないだろうか。そんなことまで考えてしまう。
いずれにしてもドイツにとっては国を挙げての大問題であり、同時にロシアも「パイプラインを止めるぞ」というこれまでの脅しの切り札が使えなくなってしまったことになる。
■クリミヤ大橋爆破
10月8日、クリミア大橋で爆破テロが起きた。クリミア半島とロシア本土をつなぐこの橋は、ロシアが2015-18年に建設した。2014年に米国の裏工作で当時のヤヌコービッチ政権が転覆され、米国の傀儡となった新政権はロシア敵視国に転向した。対抗策としてロシアが、重要なセバストポリ軍港を擁するクリミアを自国に併合した後建設したもので、開通式にはプーチンは自分でもトラクターを運転して橋を渡って祝い、「プーチンの橋」とも呼ばれていた。クリミア半島はウクライナと陸続きだが、ロシアとは海を隔てており、ロシア併合後の流通の円滑化に橋の建設が必要だった。クリミアはもともとロシア領で、ロシア系住民が多いが、1950年代に権力者だったフルシチョフが政策の一環としてウクライナに編入した。ソ連時代はロシアもウクライナもソ連国内だったため、クリミアがどの共和国に属しているかは大した問題でなかった。ソ連崩壊後、ロシアは、外国となったウクライナがクリミアを領有することを認めたが、その条件は、ウクライナがロシア敵視の国に変質しないことだった。
ウクライナは、冷戦後の当初、ロシアとの関係がわりと良好で、セバストポリ軍港をロシアに貸与していた。だが、2014年の政権転覆でクライナがロシア敵視の米傀儡国になった後、ロシアへの軍港貸与をやめると発表した。ロシアは、クリミアをウクライナ領のままにしておく条件が失われたと判断し、ロシアへの編入を問う住民投票を経てロシアに併合した。その後、クリミア大橋が建設された。米傀儡のウクライナ政府はクリミアが自国領であると主張し続け、クリミアを武力で奪還する、クリミア大橋を破壊する、と言い続けてきたと いう経緯がある。
これとは別に、米国の報道によると、匿名のウクライナ高官が、大橋の爆破がウクライナ当局によるものだと認めている。また、ウクライナ政府は爆破の数時間後、爆破を祝賀する記念切手の発行を発表している。発表のタイミングからみて、ウクライナ当局は大橋の爆破を計画・挙行し、記念切手の発行まで事前に決めていた可能性が高い。ロシア政府は10月10日、クリミア大橋の爆破はウクライナ(内務省)の秘密警察(諜報機関)によるテロ行為だと発表した。これらの状況からみて、大橋を爆破したのはウクライナ当局であろう。ロシア軍は10月10日、クリミア大橋へのテロ攻撃への報復として、ウクライナ国内20都市のインフラをミサイル攻撃して破壊した。 これはこれまで過去に見られなかったような、ウクライナ全土に対する広範な攻撃であった。大橋を爆破されたプーチンの激怒が見て取れる。
ウクライナのゼレンスキー政権は米国の傀儡だ。ウクライナの軍事行動は、米諜報界(とその傘下にいる英諜報界)の指示で行われている。ウクライナは、米英がやれと言った作戦をやり、米英が反対する作戦はやらない。クリミア大橋の爆破も、米英の指示もしくは許可のもとで行われたはずだ。米諜報界は2014年にウクライナを政権転覆してロシア敵視の米傀儡国に変質させた後、CIAや米軍特殊部隊などの諜報要員・軍事顧問が多数ウクライナに駐留し、東部の露系住民との内戦を激化してロシアを怒らせる策略をやり続けてきた。米国の軍事諜報要員たちは今年2月のウクライナ開戦前にいったん引き揚げたが、その後戦争の長期化とともに再びウクライナに戻り、今では開戦前より多くの米要員がウクライナに駐留し、ウクライナの軍や極右民兵団、内務省などのために、戦闘やプロパガンダの戦略を練っている。この戦争の実体は、米国がウクライナの皮をかぶってロシアと戦争しているという図式なのである。米国が直接ロシアと戦争すると核戦争になってしまうので、代わりにロシアとウクライナの代理戦争となっているわけである。
■スロヴィキン将軍がロシア作戦総司令官に任命される
10月9日ロシア航空宇宙軍の司令官であるスロヴィキン将軍が公式に露軍全体の司令官に任命された。それまではウクライナへの軍事侵攻をロシアでは“特別軍事作戦”としていたせいもあるだろうが、公式には10月まで誰が全体の司令官なのか明らかにされていなかった。全く異例のことである。スロヴィキン総司令官は今後全軍の司令官となるだろうが、彼はシリア内戦の時にも化学兵器使用などの冷酷無比な作戦を実行して、“アルマゲドン将軍“(最終壊滅将軍)などという綽名(悪名)をもらっている。
前述のクリミヤ大橋爆破後のウクライナ全土へのミサイル攻撃時には、スロヴィキンは既に総司令官に任命されており、彼はウクライナ軍の継戦能力を削ぐために、無人機はすでに8000回出撃し、攻撃用ドローンはすでに600以上の敵の施設を破壊した、と報告されている。ゼレンスキーの発表では、ウクライナのインフラ中核の電力施設が30%も破壊されたということである。
彼はこの他にも、侵攻初期に占領したへルソン(州都)地帯からのロシア軍をドニプロ川の東側に集結させようとして今精力的に動いている。その目的は、彼によれば、ウクライナ軍の反撃侵攻によってへルソンが奪還される恐れがあり、軍やロシア系住民を川の東側に避難させるということのようであるが、その真意は今一つはっきりしない。ロシア系住民がいなくなったへルソン州都を川向うからミサイルで思い切り攻撃することもあり得る。ロシア軍の今の戦術は、ウクライナのインフラを出来る限り破壊し、ウクライナ民間人を最大限に殺すことであるから、ロシア系住民がいなくなったへルソンは格好の目標となってしまう。また川の上流にあるカホフカダムを爆破して、下流にあるへルソン市街を水攻めにする恐れもあり得るからである。このダムの水はザボリージャ原発の冷却水として非常に重要な役割を担っているとのことである。
またロシアが長期戦を狙うならオデッサ港を攻撃或いはクリミヤ半島からオデッサにかけて海上封鎖を行ない、ウクライナの穀物輸出を妨害することも可能だ。中東・アフリカで食物飢饉を引き起こし、世界的に厭戦気分を盛り上げ、米国もEUも停戦に向かって手を打たざるを得ない状況が出る可能性もある。食料不足はロシアにとって天然ガスに次ぐ強力な武器になり得るからだ。
いずれにしてもスロヴィキンの登場は今後の戦局に大いに影響があるような気がする。というのは、航空宇宙軍というのは戦術核兵器と作戦上、強く結びついていることから、戦術核兵器の使用権限がスロヴィキン総司令官に、プーチン大統領から与えられることもあるかもしれないからだ。失敗したら責任はスロヴィキンに持たせるかもしれないが、もしかしたらスロヴィキンはロシア国民からは英雄扱いとなるような戦果を残すかもしれない。そんな悪い予感もある。しかしもしそんな状況になればプーチンとの軋轢も生じて、ぎくしゃくするかもしれない。プーチンは自分以外の者が国民に歓迎されるのは決してよしとしない人間であるからである。そうなるとロシア内部の混乱は倍加するであろう。
■ロシア、ウクライナ4州に戒厳令発動
10月19日プーチンはウクライナ東部4州に戒厳令を宣言した。これまでにも既に外出制限や行動の自由の制限などは強制されていたが、戒厳令を敷くということは戦争状態を認めるということであり、国民にそれを宣言することは、状況によっては国民総動員もあるということを国民に覚悟させることにもつながる。また主権と領土の一体性を守るということは敵が攻めてきたら、最後まで戦い、場合によっては戦術核使用も辞さないという意思表示もしていることになるだろう。戒厳令は敵に対してかけるものではなく自国内での規制だから、プーチンもやはりかなり追い詰められた状態にあるということだろう。
2.プーチンの焦り:
■ロシア国民のプーチン離れ
プーチンの国外に対する行動は、国内に避けがたい影響をもたらしている。プーチン政権はこれまで長年かけて「プーチン氏=安定」というイメージを国民に対して作り上げてきた。プーチンが国を仕切っている限り、国民は安全だと、そう信じるようロシア国民に促してきたのだ。そして国民は熱烈にプーチンを支持してきたのだった。今となっては、それはそう簡単には通用しない。
2021年「プーチンのための宮殿」動画で、プーチンがいかに不正工作で私腹を肥やし、巨大な宮殿を築いていたかが暴露され、「プーチンは、クリーンな政治家だ」という「神話」は崩壊した。ロシア国民の驚きと怒りは大きなものだった。しかし、プーチンには、もう一つの「神話」があった。それは、「プーチン常勝将軍神話」である。プーチンはこれまで、
・第2次チェチェン戦争 (1999年)
・ロシアージョージア戦争 (2008年)
・クリミア併合 (2014年)
・シリア内戦介入 (2015年)
・ウクライナ介入・侵攻 (2022年)
などで、常に勝利してきた。そして、戦うたび、プーチンは支持率をあげてきた。彼の戦いぶりは冷酷非情そのもので、勝利するためにはどんな手段を取ってでも成し遂げるというものであった。チェチェン紛争では、当時のエリチン大統領も驚くほどの非情だったという。しかしそれでプーチンはエリチンの信頼を得て、大統領にまでなったのだ。(2000年) 第2次チェチェン戦争の時は、大統領であったプーチンは2002年にチェチェン武装勢力がモスクワの劇場を襲撃・占拠した時、軍の特殊部隊を突入させ、テロリスト42人を非致死性ガスで昏倒させ、全員射殺したが、人質(観客922人)も129人が死亡した。しかし後日事件の真相が明らかになるにつれ、銃弾で死亡した人質はいなくてガスで昏倒した後の処置のまずさから窒息死したものだと分かった。更に全員射殺されたはずの武装勢力者のうち一人は生き残ったことが秘密にされており、その者はクレムリンの顧問であったと証言された。その男は武装勢力を挑発する訓練を受けていたとのことで、クレムリンが敵側に忍び込ませたのだという。何のことはない。事件はクレムリンが仕組んだ敵側陣営を攪乱・挑発するものだったというのだ。その男は後日2003年自動車事故で死亡し、その男を取材していた女性記者も2006年自宅エレベーター内で射殺体で発見された。(Wikipedia) まるでスパイ映画そのもののようなプーチンの闇である。プーチンにはこの類の黒い噂がいくつかあり、特に英国では、英国の主権を侵すような事件がいくつかあり、プーチンは非常に嫌われている。真相は闇の中だが、少なくともプーチンは自分や国の名誉のためには秘密裡に、国民に広く知られてしまわない限りは、何でもやるというようなタイプの指導者のようだ。「プーチンの宮殿」を暴露した反プーチンのナワリヌイは全ロシアに知られたYouTuber(フォロワーが700万人いる)なので、殺されずにシベリアの刑務所に入っている。死んでしまったら、プーチンが殺した、と当然思われることから殺せないのだ。ナワリヌイもそこら辺をよく知っていて、外国から敢えて帰国したと考えざるをえない。
しかしながら、プーチンが外国勢力と戦争をする限り、ロシア国民はあまり気にせず、むしろプーチンを「大国ロシアを復活させる英雄」のように畏敬の念を持ち、「国民を守る愛国者」のように見ていたと言える。今回のウクライナ侵攻でも、プーチンの支持率は上がり、動員がはじまる直前まで83%だったのだ。ところが、今回のウクライナ戦争で、戦局不利から動員令を発動したため、「プーチン常勝将軍神話」も完全崩壊しそうである。国民はプーチンに対する敬愛の念は全くなくなったばかりか、いよいよ強まる独裁政治に反発するばかりとなってしまった。動員令発動でこのプーチン離れは決定的なものとなったと言えよう。
■動員で戦局は変わるか?
これは難しいだろう。その理由の一つは、動員された兵士の質が最悪であること。動員された人は、現時点では遠いシベリア方面の町村から徴兵された者が多い。2週間の訓練を受けウクライナに送られる。しかし彼らが戦場で役立つはずはなく、動員された人たちは、死ぬ可能性が非常に高い。プーチンの私兵と言われるワグネル部隊も現在は、戦士が不足して、公募に躍起となっている。ワグネル部隊のような真に戦争のために育成されたような戦争プロが不足では、その下で戦う俄か兵士は簡単には戦力にならないだろう。
二つ目の理由は、戦争の形態が昔とは変わったことだ。現代の戦争は、市街戦以外、敵と味方の距離がかなり離れた状態で行われている。ウクライナが劣勢を挽回できた大きな理由は、欧米から高性能の武器が供与されていることだ。たとえば携行式対戦車ミサイル「ジャベリン」のおかげで、ウクライナ軍は、首都キーウに迫っていたロシア軍戦車の大軍を撃退することができた。トルコ製ドローン「バイラクタル」も、戦車部隊撃退に活躍している。さらに、前述のように東部南部の戦闘でウクライナ軍が劣勢を挽回できたのは、米国から高機動ロケット砲システム「ハイマース」が供与されはじめたからだ。ハイマースは、トラックにロケット弾の発射装置を搭載した形になっていて、射程距離70kmの「GPS誘導ロケット弾」を撃つことができる。つまり、70km先にある標的を正確に破壊することができる。そして、ミサイル発射後、すばやく別の場所に移動することができる。これらの事実から、ウクライナ戦争では、「兵士の数」が勝敗を決める決定的なファクターではないということがわかる。それよりも、衛星、ドローン、通信傍受などによって、敵の情報を正確に知ることができること、その情報を活かして正確に攻撃できる兵器があることが、とても重要なのだ。というわけで、動員でロシア軍が勝利することにはならないだろう。死人が激増することで、プーチン常勝神話は崩壊していく。
更に三つ目の理由として、ロシアの人心がプーチンから離れていくことによって、プーチンはそこから派生する負の局面をカバーしようとして、様々な施策を打つだろう。例えば情報統制で人々の言論の自由を今以上に厳しくし、人の移動の制限、女性兵士の徴兵、あるいは国民総動員法発令からくる国民の反発を抑え、人権活動家による反政府運動を抑圧し、国民の生活は非常に制限を受けるようになる。即ちプーチンの国を統治する原点は、国民を”恐怖で統治”するしかなくなり、政権が長続きするとはとても思えない。動員法発令は結果的に政権瓦解に繋がるのではないだろうか・・?
■プーチンは何を考えている
プーチンは9月30日、ルガンスク州、ドネツク州、ザポリージャ州、ヘルソン州を、一方的に併合した。この決定は、何を引き起こすのか?既述のように、ハリキウ州での敗北は、ロシアの政権トップに大きな衝撃を与えた。「このままでは、ロシア軍が実効支配している地域も、ウクライナ軍に奪還させる可能性がある」とプーチンは恐れた。そこで、9月23日から27日まで、「“無茶苦茶”住民投票」を実施し、併合を強行したのだ。銃で脅して住民に投票させるという前代未聞の茶番だった。
併合すると、何が変わるのだろうか? ゼレンスキーは、「4州はロシア領になったから、攻撃をやめよう」とは、絶対に言わない。では、併合した意味はあるのだろうか? それはある。ロシアは、4州を併合した。つまり、4州はすでに「ロシア領」だ。そこにウクライナ軍が攻撃すれば、「外国からロシア領が攻められている。これは自衛の戦いだ」となる。メチャクチャな話だが、プーチンのロジックでは、そういうことになる。「自衛戦争」になると、戦況は変わるのか?ロシアの軍事ドクトリンによると、「自衛戦争」なら「核兵器」が使えるのだ。そして、プーチン自身も、繰り返し核兵器使用の可能性について言及している。
■核による脅し
9月30日 プーチンは30日、ウクライナ東・南部4州の併合を宣言する演説で、米国が第二次世界大戦末期に広島と長崎に原爆を落とし、核兵器使用の「前例」を作ったと指摘した。プーチンは最近、自国の領土を守るために核兵器を使用する用意があると述べ、核兵器使用が懸念されている。彼は演説で「米国は日本に対し核兵器を2回使用した」とし「米国が核兵器使用の前例を作った」と述べた。
ここでプーチンは、「77年前に米国が核兵器を使った。我々が使ってもおかしくない。ロシアにも使う権利がある」と主張しているわけだ。つまり使う場合に備えての伏線を張っているとも解釈される。今後、ウクライナ軍が、4州への攻勢を強めれば、ロシアが戦術核を使う可能性が出てくる。
では、ロシアが戦術核を使ったら、米国やNATOはどうするのか?米国のサリバン大統領補佐官は9月25日、核を使えば「ロシアに破滅的な結果を与える」と警告した。このことは、ロシア側にもはっきり伝えているという。「破滅的な結果」が何を意味するのかはわからない。しかし、ホッジス元米陸軍欧州司令官は以下のように語っている。
〈 米国の反撃は核兵器ではない通常兵器かもしれない。しかしそうであっても極めて破壊的な攻撃になるだろう。例えばロシアの黒海艦隊を殲滅させるとか、クリミア半島セバストポリのロシアの基地を破壊するようなことだ。〉
NATOのトップも、もしロアが核を使ったら、ロシアを全滅させると返している。売り言葉に買い言葉としても、全く何が起こるか分からない恐ろしい事態が目の前にあるのだ。
私は以前は、ロシアが戦術核を使うのは、立ちはだかる困難や、事後の混乱、或いは壊滅的になるかもしれないロシア軍や社会、ひいてはロシアが受ける国家としての計り知れないダメージから、とてもその可能性は低いだろうと思えた。たとえプーチンが強行しようとしても、周りの支配者層の状況がそれを許さないだろうと見ていた。
しかし度重なるウクライナの逆襲と、それによるロシア軍の敗退で追い詰められてもプーチンは決して停戦・終戦の妥協は考えていない。彼にとっては、ウクライナが西側の支援を受けて戦っていようとも、ロシア帝政時代、ソビエト連邦時代、現ロシア連邦時代を通じて、常に政治・経済・外交・国力で世界の一方の雄であったロシアが、自分たちの下にあったウクライナごときに負けるわけにはいかないのだ。特にプーチンは自分では”常勝将軍神話”の自負があるから、何としてもこの危機を乗り越えなければならないわけである。狂気のうちにも冷徹に打開策を練っているプーチンは、今や初期のころと違って長期戦に持ち込もうとしているようだ。
一方のウクライナのゼレンスキーにしても、一歩も引かずにこれまで戦って来て、今では2014年に併合されたクリミヤ半島まで奪回すると宣言している。両者がこれだから、停戦、休戦の糸口も見えない状態なのだ。米国は、自国の為に有利、或いは必要な事態になればゼレンスキーを抑え込んで停戦に持ち込むこともできるだろうが、今のところはその兆しは全く見えない。
またロシアは10月26日にプーチンの指揮で戦略核戦力の使用を想定した年次演習を実施している。ロシア国土と北極圏のバレンツ海からICBMを発射して、極東カムチャッカの実験場に向けて発射し、目標に到達したという。ショイグ国防相は「敵の核攻撃に対する報復として核攻撃を練習した」と言っている。核戦力使用の演習はこれまでにも何回か実施しているので、用意万端と脅しているわけである。究極にして、最大の脅しである。
しかしまた、わかるのは、ロシアが戦術核を使えば、米軍、NATOが出てくるということだ。当然、米軍、NATOには核がある。ウクライナ軍に対して劣勢なロシア軍が、米軍、NATO軍に勝てるだろうか?絶対に勝てるはずがない。しかしそれは第三者である我々がそう思うだけで、プーチンには別のものが視えているのかもしれない。狂気と冷徹がパニックによって一大憎悪に燃え上がったら何でもやろうとする可能性だってある。
3.最悪のケース:
冗談ではなく、現在 【人類史上最大の危機】 が進行していると言える。 つまり、「ウクライナ戦争で負けそうなプーチンが戦術核を使うかもしれない」ということである。
ロイター9月30日。<ロシアのプーチン大統領は30日、ウクライナ東・南部4州の併合を宣言する演説で、米国が第二次世界大戦末期に広島と長崎に原爆を落とし、核兵器使用の「前例」を作ったと指摘した。プーチン大統領は最近、自国の領土を守るために核兵器を使用する用意があると述べ、核兵器使用が懸念されている。プーチン氏は演説で「米国は日本に対し核兵器を2回使用した」とし「米国が核兵器使用の前例を作った」と述べた。>
要するにプーチンは、「アメリカも核を使ったよね。だから、俺が使っても文句ないよね」といっていることになる。
アメリカは現在、「核を使ったらロシアにとって破滅的な結果になるぞ!」とプーチンを脅している。追い詰められたプーチンがアメリカの脅しを聞くことを、願わずにはいられないが、これこそどうなるか分からない。
プーチンの周りにはプーチンの意に適わぬ意見を述べる人は誰もいない。2月の侵攻に先立つ安保会議で、プーチンの質問に異を唱える者が誰もいない中で、一人ナルイシキン対外情報庁長官だけが、「ミンスク合意を履行しろとウクライナに圧力をかけるべきだ」と述べたところ、プーチンの鋭い悪意のある反論を受け震え上がってしまっている動画を見た。長官はしどろもどろとなっていた。しかし長官の言うことは正しい。2014年にドンバスでの内戦を停戦するためにロシアとウクライナが結んだミンスク合意だが、合意された時点では双方守る意思はあったのだが、ゼレンスキーは大統領選で合意を無視すると言って当選している。合意を破棄したゼレンスキーが悪いのであって(アゾフ大隊の横車があったにしても、理由はどうであれ)、ドンバス2州に合意通りの法的地位を賦与していたら話はそれで終わりだったのだ。今となっては、歴史の不可逆性を考えれば、メンツをつぶされたプーチンが同意できないのも当然で、部下にやりきれない怒りをぶつけるのも分かるが・・・
プーチン皇帝の意向に沿わない意見は言ってはならぬということだという。他にもプーチンに阿って、侵攻にあたり、「全ウクライナが、解放者としてのプーチンを待ち望んでいる」とプーチンに報告し、その後戦況が思うように進まない誤算の結果、責任を取らされたFSB(KGBの後継組織)の局長は自宅軟禁されたというニュースもある。プーチンを怒らせることを怖れ、聞き心地の良いことだけを報告していれば、勝てる戦争も負けてしまうことがあるだろう。プーチンは間違った情報を基に判断を下した、その結果がキーウを2~3日で陥落させ終わる筈だった特別軍事作戦が、悲惨な状態になり、それを挽回するために、更に無理・暴走を重ね、遂には「核を使うぞ」と脅迫しなければならないほど追い詰められているのである。
プーチンも、西側の制裁を受け戦局不利の中、何年も戦争を続けることは無理だ。どこか落としどころを見つけて終戦なり休戦に持ち込みたいところだろうが、配下からはそれを言い出す者はいない。配下の者はプーチンが怖くて本音を言えないのだ。正直なところを言えば命が無いかもしれない。大袈裟ではなく本当にあり得る話のようだ。西側諸国から調停を買って出る国も殆ど役不足の感じで期待はできない。マクロンも今や全く手詰まりのようである。つまり今の状態は悪くなることはあっても良い方向には決して向かわないだろうということである。
そのような状態で強行派のスロヴィキンが、他のタカ派、例えばチェチェン首長国のカディロフ首長(チェチェン紛争より前からの、全くの親露派で、プーチンと非常にウマが合う)などと組んで暴れまくったら目も当てられない惨事になる可能性がある。スロヴィキンの主導でさらに苛烈・残酷な攻撃が行われれば、プーチン以外もう誰も止めることができない事態になるかもしれない。そんな時にいつ誰が戦術核を使おうと画策してもおかしくないだろう。指揮系統が乱れた混乱時には、意図的であれ間違い(偶然)であれ、危機は起こる可能性がある。全くもって最悪のケースが現出することもある。
2月の侵攻時点のことを思い出せば、プーチンは、バイデンの警告を無視して、ウクライナ侵攻を開始した。だから、今回もアメリカの警告を無視して戦術核を使う可能性がある。使った場合のアメリカの反応は・・????? わからない。
ホッジス元米陸軍欧州司令官は、「核は使わないが、黒海艦隊を全滅させる」と語っている。これは、NATO軍が全滅させると言ってるから大いに可能性はある。そうなると、ロシア 対 ウクライナの戦争は、NATO/USA 対 ロシアの戦争に変わり、第三次世界大戦が勃発となる。通常兵器で絶対勝てないプーチンは、NATO諸国に対し、戦術核を多用する可能性がある。そうなると、NATO側も、戦術核で反撃する可能性がでてくる。その次のステップは、プーチンによる戦略核使用ということになればもう終わりだ。ここまで行くと、「人類滅亡」の可能性すら出てくるということである。
数年前、いや去年でも、このような見解は、「陰謀論!」「トンデモ論!」「煽るな!」などと批判されたことだろう。しかし、今は、プーチン自身が戦術核使用の可能性に何度も言及している。だから、書いても誰も「陰謀論者」と批判しない。冗談ではなく、私たちは今、【人類史上最大の危機】の中にいる。プーチンが破滅的な核使用を思いとどまるよう、祈るしかない。
林義祐
PS:
*文中敬称略。
*10月分の「最悪のケース」は北野幸伯氏のメルマガ及びBBC Newsを参照しています。
*私は今年(2022年)の夏は6月下旬から9月末まで日本に帰省しました。コロナ禍のせいで2年10ヶ月も日本に帰れず、様々な案件が片付かないまま残っておりました。しかし帰省しても、パソコンは不具合で使えず、固定電話は廃止されており、携帯電話も従前のものはSoftBankの没収で使えず(3年間不使用であったため)、岡谷に居りながら陸の孤島に住んでいるような状態になってしまいました。
パソコンが何とか使えるような状態になってから、何人かの人から、「もう何か月も歌日記をもらってないがどうしたのか?」というメールをもらいました。私は過去日本には盆暮れには必ず帰省していて、その帰省月には歌日記は発信していませんでした。オランダに移住してからずーっとそのようにしてきました。コロナ禍の時は帰省できなかったので毎年フルに発信していたわけです。
しかしこの手順は私一人のルールであって、誰にも連絡しないまま続けてきたことでした。それで心配した人からメールをもらって、「このやり方はまずかった」と反省しました。すみませんでした。
今年最後に発信したのが5月分で、今日10月分を発信いたします。
今後もよろしくお願いします。
第十一回掲載(了)
オランダ在住の 林 義祐氏(64回生・岡谷市出身)のご寄稿「オランダの生活・歌日記: 2022年10月」を下記に掲載いたします。
林様、ありがとうございます。同窓の皆様のコメントをお待ちします。(名取宛メール: antimarck@yahoo.co.jp)
歌日記 2022年10月
9月28日(水) <オランダに帰る>
☆ 妹は千切れるほどに手を振りて 我乗るバスは成田に向け発つ
☆ 妹よ寡婦になりてはめっきり老け 頼りの兄はオランダですまぬ
☆ 両親亡く夫も亡くし妹を 帰省の時にはせめて大事に
9月29日(木)
☆ 朝6時ビジネスホテル近くには 定食屋ありて湯気立つご飯
☆ 定宿はビジネスホテル星2つ 小さいながら清潔な部屋
☆ 今夕に飛行機乗れば "ワープ" して 明日は異次元 オランダにおり
9月30日(金)
☆ ヘルシンキ乗り継いだ機中気がつけば マスクは我だけ急いで外す
☆ テイクオフ厚い黒雲突き抜けて サッと飛び出す光の世界に
10月1日(土)
☆ 発つときは新緑庭に溢れいて 帰り来て見る樹々の紅葉色
☆ 居間の前鳥餌スタンド新設し 野鳥と我ら一緒に食事
☆ 2メートル先食卓から見る鳥餌台 四十雀たち絶えず訪れ
☆ ヒマワリも赤いリンゴも収穫期 我の日常一気に戻る
10月2日(日)
☆ 笹ブッシュ新芽たくさん伸びており まるで笹薮の怒髪のごとく
☆ 初仕事怒髪を切り取り丸くする 藪はすっきり品良く見える
10月3日(月)
☆ 帰り来て最初の芝刈り芝濡れて 負荷が重いか時々止まる
☆ オランダの典型的な秋の空 我の日常も戻りつつあり
10月4日(火)
☆ ヘーゼルは留守の間によく伸びて 根元から切る大量徒長枝
☆ まだ2本ヘーゼルの木あり少しずつ 作業進める日常世界
10月5日(水)
☆ この季節鉛色した空の雲 これも日常オランダの日々
☆ 2本目のヘーゼル剪定気張りたり 薄暗い庭黙々と剪る
10月8日(土)
☆ 留守の間にマウスが開けた穴無数 芝が哀れとひたすら塞ぐ
☆ 細枝を何本も切って打ち込めば 最低2年マウスは寄らず
☆ 庭仕事やること多くエンドレス マウスと共生アイデアも要る
10月9日(日)
☆ 猫シンバ庭で遊んで池に落ち 息子偶然目撃ラッキー
☆ 首輪にはボール付き紐付いていて 息子見なければ溺死の恐れ
10月10日(月)
☆ シュウメイギク アネモネにも似た その姿 オランダ語では 日本アネモネ
☆ 夕闇に ひっそり浮かぶ 白い花 シュウメイギクは 清楚そのもの
10月11日(火)
☆ 運河の面夜の静寂に鏡のよう 上下に2つ輝く月が
☆ 犬二匹と夜の散歩は人影も 見えず我らの貸し切り道に
10月12日(水)
☆ 瞼閉じ全身に朝陽受けたれば 黄金の世界脳に炸裂
☆ 朝の陽は輝くばかり明るくも 仮想世界は何十倍も
10月13日(木)
☆ ナナカマド熟れた実に来るツグミたち 何百もの群半端ではなく
☆ カメラ手に近づけばすぐ逃げ出して 良い写真撮れず四苦八苦する
10月14日(金)
☆ 玄関にカボチャを据える習慣は 何の意味ある我異邦人
☆ このカボチャ水っぽく味は悪いゆえ 誰も食べずにただ飾るだけ
10月15日(土)
☆ 公園の栗の実熟れる頃合いで 夜の散歩時足を伸ばしたり
☆ 地面には一面イガが落ちており 2人と犬と夜の栗拾い
10月16日(日)
☆ キキョウ花見事に咲いたと妻は言う 留守した我を紅葉が慰め
☆ タチアオイ最後の一輪これもまた 我のため咲くか晩秋の庭
10月17日(月)
☆ 壁掛けのポットにヴィオラを植えこんで 冬に入りても咲く花確保
☆ 2番目の柿の木初めて柿生りて 見れば大玉縦筋もなく
☆ 葉を分けて数えてみれば22個 干し柿作り希望が持てる
10月18日(火)
☆ リンゴの実 通るたび見上げ心する 自然の恵み得難きものと
☆ クリやリンゴ・クルミも天からもらいもの 秋の収穫感謝に堪えぬ
10月19日(水)
☆ 秋の花コムラサキ・アコニーツ元気よく アスター・セダムも今を盛りに
☆ アコニーツ、トリカブトの名は恐ろし気 園芸品種は町中に咲く
☆ モンクスカップ僧帽の名はぴったりも お伽噺の小人にも似る
10月20日(木)
☆ 公園の黒鳥2羽の子が育ち 人見知りせず親と大違い
☆ 鹿もまた少し見ぬ間に角伸びて 睥睨するさま威圧感あり
10月21日(金)
☆ アジサイは季節外れに咲き続け 冬まで咲けば勲一等の出来
☆ フクシャにはフアンが多いと言われるが 花見れば合点優雅で豪華
10月22日(土)
☆ 秋盛り燃えるニシキギ知りたるか 明日にもモミジ一気に変わるを
☆ ダーリヤの花はつましく白い色 秋の庭には逆に異彩なり
10月23日(日)
☆ これまでは我流で作った栗ご飯 ネットを見れば目から鱗落ち
☆ 栗ご飯手間をかければ思い出す 遠い昔に父母と作りしを
☆ 異国にて日本酒ミリン隠し味 旨味を出せば郷愁ほのか
10月25日(火)
☆ 救急車サイレン鳴らし二軒先 急にストップし不気味な沈黙
☆ 何事ぞ妻が様子を見に行けば 家の改築2階で出火と
10月26日(水)
☆ ハリネズミ夜の帳に2匹来る 猫がいなくてリラックスしており
☆ 小さいのは子供らしくてちょこちょこと 動き回るは愛嬌のあり
10月28日(金)
☆ 予報では思わぬ夏日戻るとて あれこれ思う今日の庭仕事
☆ ポーチにてクルミを全部天日干し リンゴ残らず収穫せんと
☆ リンゴの実高いところに生るものを いかに取るかと思案しどころ
☆ 高い枝梯子届かぬ場所もあり 危険な時は放置も考慮
10月29日(土)
☆ 義妹が腰骨手術人工の 骨に変えると驚くばかり(*)
☆ 入院は一晩だけで今日帰宅 これまた驚き見舞いを送る
(*)妻の妹が腰骨の右半分を人工の骨と取り換える手術を受けて、
一晩入院しただけで今日帰宅した。大変な手術と思えるがこちらでは
時々”腰骨手術”の話を聞くから、結構一般的にも知られた手術のようだ。
10月31日(月)
☆ 夏時間終わりて今日から冬を待つ 庭の枯れ花ドッと侘びしく
☆ クルミの葉シラカバに続き落ちだして 両者大木半端ではなく
☆ クルミ葉は大きく厚く大量で 落ち葉掃き続く12月までも
☆ 平屋根は落ち葉と雨水溜まり場で 梯子も危険年齢との勝負
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10月の庭内外の写真 スライドショー (55枚) → https://img.gg/nqKJ99I
(*)6月20日に日本に帰省したが、出発前の2週間は結構写真を撮っていたのでこれも掲載。
6月の写真 スライドショー (69枚) → https://img.gg/uyLV97y
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以上
第十二回掲載(了)
林様 ご寄稿いただき有難うございます。歌日記、楽しく読ませていただきました。いずれも素晴らしいお歌と感じましたが、とりわけ冒頭の妹様とのお別れを詠まれた歌は胸に迫りました。そして、9/30に詠まれた「ヘルシンキ乗り継いだ機中気がつけば マスクは我だけ急いで外す」ですが、マスクの是非は置くとして、(私の勝手な想像ですが、)これから全く文化の異なる世界へ帰って行かれる林様の緊張感が伝わってきて味わい深かったです。とりとめない感想で恐れ入ります。今後もよろしくお願い致します。