[台本]東西東西・噺屋:天犬 大火の興行 ─第四幕:犬猿であれど重なる力─
駒は揃い、終わりが始まった。が、終わるのは今ではない。
これは小休止だ。
小休止であれど、進まねばならない。
小休止、それは“平和”である。
しかし、終わりを前提とした“平和”が、小休止が増えれば増える程、
“興行(ちゃばん)の終わり”の絶望感は増す。
いやはや、何もかも私の思い通りだ。
登場人物
○天犬 大火(あまいぬ たいが)
17歳、男性
天狗の半妖で、怪談を雑談に挿げ替える“噺屋”。
皮肉屋で毒舌家で陰湿な性格。
頭が悪くて留年して高校一年生を二回やって、今年やっと二年生。
主人公。
〇鬼嫁 弓燁(おにとつぎ ゆみか)
16歳、女性
元気で純粋無垢で、要領が良く品行方正な高校二年生。
噺屋になるべく大火に教えを請うている少女。
祓い屋としての才能は群を抜いてるし 、師である大火よりうんと強い。
○ノウン・ヤン・アモーク
16歳、女性
突如転校してきた高校二年生。
世界の意志を聞き、教義とする“ヘネラリザドゥ教”の信徒であり、断罪者。
生真面目で融通の効かない性格をしているが悪い子ではない。
不真面目で不良な大火によくつっかかる。
○ニキータ・マクスウェル
??歳、女性
大火たちの学校の校長にして前回大火にゴスロリを着せた張本人。
天才であり愚者。傲慢でウザく飄々としている。
そんな人格の持ち主だが生徒たちの事は真面目に考えている。
噂ではなんか凄い研究をしているし、他の学校の校長もしているらしい。
好きなタイプは兄貴肌。「ちゃんと本名ですよっ♪」とのこと。
○亘理 進一(わたり しんいち)
??、男性
大火たちの学校で体育と化学の教諭をしている。
兄貴肌で頼りになる青年でニキータの暴走を止める役割をしている。
実はただの人間では無く、ニキータによって改造された“改造人間”。
戦闘能力を有し、戦闘時は黒い魔鎧を瞬時に身に纏い、凄まじい力を振るう。
○妖1
??、??
亘理 進一が兼任。
○妖2
??、??
ニキータ・マクスウェルが兼任。
○妖3
??、??
亘理 進一が兼任。
○女子生徒
16歳、女性
ニキータ・マクスウェルが兼任。
天犬 大火 ♂:
鬼嫁 弓燁 ♀:
ノウン・ヤン・アモーク ♀:
♥ニキータ・マクスウェル/妖2/女子生徒 ♀:
♠亘理 進一/妖1/妖3 ♂:
※兼任の役の方は♥、或いは♠を辿るとやりやすいかもです。
↓これより下が台本本編です。
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♥ニキータ:「開錠。」
間。
♠進一:物語はとうに開かれた。
♥ニキータ:私たちの敗北は決した、という事ですね。
♠進一:さて、それはどうだろうな。
どうなるかは、アイツら次第だ。
♥ニキータ:それもそうですね。
何はともあれ、“終わり”を迎えない限り、どの道です。
♠進一:ああ、故に始めようか、彼の興行を。
♥ニキータ:ええ♪
♠進一:「ではでは、皆々様、隅から隅まで、
ずずずい~っと希い上げ奉りまする(こいねがいあげたてまつりまする)。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
弓燁:こんにちは!いえ、今はこんばんは、ですね!
今、私と大火くんとノウンちゃんの三人でチームを組んで……──
♠妖1:「ぬ……!ぬりかべぇ……!!」
(妖1、大火から逃げる。)
大火:「──ノウン!そっち行ったぞ!!」
ノウン:「ああ!
…………。
何処にも居ないではないか!!」
(妖1、壁に擬態している。)
大火:「ああ!?お前何見逃してんだボケ!!」
ノウン:「何を!!ワタシはしっかりとこちらを警戒していた!
天犬 大火(あまいぬ たいが)!!貴様の目が節穴だったんじゃないか!?」
大火:「んだとォ!?」
ノウン:「何を!!」
大火:「んぎぎぎぎぎぎぎ!!」
ノウン:「ぬぬぬぬぬぬぬう!!」
(大火、ノウン、取っ組み合いになる。)
♠妖1:「ぬりかべぇ~~~~」
大火:「ぎゃいぎゃい!ぎゃいぎゃい!」
ノウン:「ぎゃいぎゃい!ぎゃいぎゃい!」
♠妖1:「ぬ~~~り~~~か~~~べぇ~~~~!!」
大火:「ああ!?」
ノウン:「うるさいぞ!」
間。
ノウン:「あ……」
大火:「つ……潰される……!!」
♠妖1:「ぬりかべ~~~~!!」
ノウン:「あああああああああ~~~~!!」
大火:「あああああああああ~~~~!!」
弓燁:「ほぉあっちょオ!!」
(弓燁、妖1に飛び蹴りをかまし、廊下の端までぶっ飛ばす。)
♠妖1:「ぬ!ぬりかべーーー!!!」
弓燁:「フゥーーーー……」
♠妖1:「ぬ……ぬり……かべ……」
(妖1、消滅する。)
ノウン:「……た、助かった、ありがとう鬼嫁 弓燁(おにとつぎ ゆみか)……。」
弓燁:「どういたしまして!
さ!今日はこれだけじゃないよ!行こ!」
ノウン:「あ、ああ!」
大火:「おう……!」
◇
♥妖2:「いったんもめ~~~~~ん」
大火:「クッソ!すばしっこいヤツめ!
狙いが…………よしッ!捉えた……!!」
大火:「二重結界ッ!展k──」
ノウン:「結晶惑星(けっしょうわくせい)!!」
大火:「どぅわッ!?が!!か、身体が重いッ!!」
♥妖2:「い゛……!い゛っ゛た゛ん゛も゛め゛~~~~ん゛!!」
ノウン:「よし!あれの動きを止めたぞ!さあ、アマイヌ タイガ!
……って、あれ?」
大火:「ばッ……馬鹿……ッ!!
俺もお前の術の中なんだが!!!?」
ノウン:「すっ、すまない!解除!!」
♥妖2:「いったんもめぇ~~~~ん!」
大火:「あっ!逃げた!!おい!ノウン何やってんだ!!」
ノウン:「ああ!?貴様が引っかかってしまったから解いたんだろうが!!」
♥妖2:「いったん……?」
大火:「うるせぇ!!」
♥妖2:「い~~~ったんもめんもめんもめん!」
大火:「ほら!笑われてっぞ!!」
ノウン:「あれは笑っているのか???」
弓燁:「三重結界ッ!」
♥妖2:「もっ!もめ~~~~ん!?!?」
大火:「あ。」
ノウン:「あ。」
弓燁:「ふぅ~~~~」
♥妖2:「も、もめ~~~~ん……」
弓燁:「はぁー……」
弓燁:「も~~~二人共!!任務中に!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♥ニキータ:「──ケンカはあまりしないでくださいねー♪」
大火:「ちっ……」
ノウン:「はい……」
弓燁:「はぁー……」
弓燁:──と、いうことで、私と大火くんとノウンちゃんの三人はマクスウェル校長先生の提案でチームを組み、
この学校の夜に妖(あやかし)が大量出没しているという状態に対して対応中なのですが、
この様に、任務の次の日である今、マクスウェル校長先生にお叱りを受けてます……。
♥ニキータ:「まったくー
私的には良いパーティだと思ったんですけどねぇー
もぅーおふたりは何が気に食わないのですー?」
大火:「……。」
ノウン:「……。」
大火:「別に──」
ノウン:「気に食わないワケじゃ……」
♥ニキータ:「う~~~ん……シンプルにウマが合わないといった感じでしょうかね~
おふたりとも、ユミカさんとはちゃんと連携が取れるのに、何故なんでしょー」
ノウン:「…………。」
大火:「……コイツの能力の範囲が広すぎんだよ。」
ノウン:「なに?」
大火:「んだよ?何か間違ったこと言ったか?」
ノウン:「そういう貴様は発動までに時間が掛かりすぎじゃないか?
オニトツギ ユミカの結界展開は素早いが、貴様のはなんだ?」
大火:「ああ?」
弓燁:「ちょっと!やめてよ!!」
♥ニキータ:「そーですよ。
ノウンさんの埒外(らちがい)兵器であるANGEL(えんじぇる)はそれが強みなのですから、
それに、ユミカさんは段違いに強いお人なのですからタイガくんと比べるのは可哀想ですよ。」
大火:「ぐ……」
ノウン:「そ、それは些かアマイヌ タイガをフォローしきれていないのでは……」
♥ニキータ:「事実ですから♪」
弓燁:「あ……あはは……」
大火:「くっ……!」
ノウン:「だっ!大丈夫だぞアマイヌ タイガ……!
お前も十二分に強い……!それに素早い……!」
大火:「なんでお前がフォローすんだよ……」
ノウン:「え……いや……」
♥ニキータ:「とーにーかーく!
今後もお三方には協力して頂かなければなりません。
なので、おふたりには連携出来る様にこれからも精進してもらいますよっ!」
大火:「は~~い……」
ノウン:「はい……」
♥ニキータ:「ということなので、ユミカさん、おふたりのフォロー、よろしくお願いしますね。
さて、そろそろ休み時間が終わってしまいます。
今日はここまでにしておきましょう。」
弓燁:「はいっ!
では、失礼します!」
ノウン:「失礼しました。」
大火:「うぃ~」
ノウン:「こら!ちゃんとしろアマイヌ タイガ!」
大火:「はいは~いシーツェシャッシャ~~」
ノウン:「おい!」
(大火、弓燁、ノウン、退出。)
♥ニキータ:「は~~い♪
授業に遅れないようにですよ~」
間。
♥ニキータ:「……にしても、何故唐突に、この学校、妖が大量出没し始めたのでしょうか……
本当はタイガくんたちの師匠さんにお願いしたいのですが……
まあ、出来ないモノはどうしようもありませんよね~」
間
♥ニキータ:「やはり彼に…………いいえ、もうこれ以上は……」
間。
♥ニキータ:「でもどうやって……う~~~~~~~~~~~~ん……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~体育の時間~
大火:たいいくのじかーん
♠進一:「は~~いそこ~ファール~~あんまあぶねーことすんなよー」
大火:「……。」
ノウン:「……。」
♥女子生徒:「ユミカちゃん!パス!」
弓燁:「ナイスパス!!」
♥女子生徒:「いっけー!ユミカちゃんの最強つよつよジャンピングダンク!!」
弓燁:「ほっ!」(最強つよつよジャンピングダンク)
♠進一:「はーいAチーム2点追加~」
♥女子生徒:「やったー!さっすがユミカちゃん!」
弓燁:「えへへ~///」
ノウン:「……。」
大火:「……。」
ノウン:「なあ。」
大火:「なんだ。」
ノウン:「オニトツギ ユミカは何故あんなに強いのだ。」
大火:「知らん。ノウンこそ、なんでオニトツギは強いんだ。」
ノウン:「知らない……」
間。
ノウン:「なあ。」
大火:「なんだ。」
ノウン:「どうすればワタシたち、連携取れるんだろうな。」
大火:「…………。」
♠進一:「どーしたー二人共ーまだ授業中だってのに、何しけたツラしてんだ。
連携だなんだって聞こえたけど。」
ノウン:「あ、ワタリ先生……いや……」
大火:「オニトツギ、つえーなーって見てただけっス。」
♠進一:「あ~……確かに、今回のバスケも、どのスポーツやらせてもアイツ無双するよな。」
大火:「それもそうなんスけど……」
間。
大火:「はぁー……」
ノウン:「はぁー……」
♠進一:「……なんだか分かんねぇけどよ……連携かぁ……
そうだな、まずは相手の特性を考えるのはどうだ。」
大火:「相手の」
ノウン:「特性……?」
♠進一:「ああ、今回だったらタイガとノウンがお互いのを、だな。
試合中はどうしても自分の事を中心に考えてしまうが、
仲間の事を考えてやると、選択肢が増える。すると戦略が増え、勝ち筋も増える。」
大火:「……。」
ノウン:「……。」
♠進一:「どうだ?やれそうか?」
ノウン:「……やってみるか、アマイヌ タイガ。」
大火:「……そうだな。」
♠進一:「よしっ!じゃあ、次はタイガ、ノウンのCチームとユミカのAチームで試合だ!」
大火:「えっ」
ノウン:「えっ」
弓燁:「ほぇ?」
間。
大火:「シャーーーーーーッ!!!」
ノウン:「がるるるる!!!」
♠進一:「お~い~お前ら~バスケは味方同士でボールを取り合うスポーツじゃないぞぉ~」
弓燁:「……この流れ……前にも……あははは……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
弓燁:そして本日の夜……
大火:「へっ!」
ノウン:「ふん!」
弓燁:「も~二人共~」
大火:「俺、コイツと連携組むのは無理だぜ。」
ノウン:「ワタシも同意見だ。オニトツギ ユミカには悪いが、ワタシは一人でやる。」
♥ニキータ:「いいえ、ダメですよー」
(ニキータ、現れる。)
弓燁:「え、マクスウェル校長?
まだ妖退治終わってませんよ!」
ノウン:「そ、そうですよ!危ないです!」
♥ニキータ:「いえ、その心配は無用ですよ♪
何故なら!」
♠進一:「──今日は俺が全員退治した。」
大火:「なっ!ワタリ先生!?」
弓燁:「ワタリ先生が妖退治を!?」
♥ニキータ:「キャー!シンイチー!さっすがですー!」
♠進一:「おい」
(進一、ニキータにアイアンクローをキメる。)
♥ニキータ:「きゃいっ!い……いたいデス……シンイチ……」
♠進一:「おい、なんでまた俺の身体、“変身”出来る様になってんだよ。
全然生身でやろうと思ってたのに急に“変身”して……てか元に戻してくれたんじゃねぇのかよ。」
♥ニキータ:「え……えへへ~」
♠進一:「えへへ~、じゃねぇよ……」
ノウン:「あ、あの、“変身”って……」
♠進一:「ああ……実はな……俺、“改造人間”なんだよ。
この馬鹿に改造されたんだ。」
♥ニキータ:「いたい!いたいいたいいたい!いたいですよ~シンイチ~~!!
あと私は天才です!馬鹿じゃありません!すんごく天才です~~~~!!」
♠進一:「それで──
“完全開錠(リリース)”。」
大火:先生がそう呟くと一瞬にして、赤黒いマフラーが首に、黒い鎧の様なモノが先生の身を包んだ。
♠進一:『こんな感じに、変身出来る様になったんだ。』
弓燁:「か……改造人間……」
ノウン:「か……カッコイイ……!」
弓燁:「ノウンちゃん?」
♥ニキータ:「ああ~んユミカさん!引かないでください!
彼を改造人間にしたのは不可抗力!不可抗力なんです!」
大火:「不可抗力ゥ?」
♠進一:『そうだな、不可抗力だな。まあ、詳しい話は省くが、
今俺が生きてんのは間違いなくコイツのお陰だからな。』
ノウン:「不可抗力とやらが発生すればワタシもそういうカッコイイの身に纏えるのか!?」
弓燁:「ノウンちゃん?」
♠進一:『あー……おすすめはしないぜ。
で、俺を呼んで、妖とやらの退治をさせて、
この子たちに時間を作った理由、教えてやれニキータ。』
♥ニキータ:「その前に離してください……痛すぎて気が遠くなりそうデス……」
♠進一:『おっと悪い。』
(進一、ニキータを離す。)
♥ニキータ:「あいたた……こほん、気を取り直して、本題に入りましょう!」
大火:「本題?」
♥ニキータ:「はい!
結論から言いますと、皆さんにはシンイチと戦ってもらいます!」
弓燁:「え!?」
ノウン:「ワタリ先生と!」
大火:「戦う!?」
♠進一:『まあ……そういうことだ。』
♥ニキータ:「ちなみに今の彼は貴方たちよりもうんと強いです!
なので、協力して倒してくださいね!」
♠進一:『だ、そうだ。よし、やるか。』
大火:「おいおい先生、やけに乗り気じゃねぇスか……」
♠進一:『ああ、せっかくの機会だからな。
ルールを定めておこう。制限時間は一時間。時間内に俺を倒す、変身を解除させる、30秒間拘束する。
この三つのうちどれかを達成したらお前らの勝ちだ。』
大火:「あ?変身を解除?30秒間拘束?先生、俺らの事舐めすぎじゃないスか?」
♠進一:『まあまあ、本気で殺し合いってわけにも行かないだろ。
とにかく……さ!行くぞ!構えろタイガ!ユミカ!ノウン!』
大火:「ッ!」
弓燁:「ッ!」
ノウン:「ッ!」
♥ニキータ:「では私は退避しておきますね~
あ!あと──」
♥ニキータ:「ポチっとな!」
弓燁:「え!?あ、あれ??ゆ、床が降りてく???」
ノウン:「オニトツギ ユミカ!」
大火:「どういうことだ!」
♥ニキータ:「今回ユミカさんは見学でーす♪」
弓燁:「なっ、なんでぇ!?」
♥ニキータ:「ユミカさん頼りな戦術になったら面白くないからです♪」
弓燁:「そっ!そんなぁ~~~!き、気を付けてね!タイガくん!ノウンちゃん!」
ノウン:「あ……ああ……」
大火:「お、おう。」
♠進一:『あー……だそうだ。じゃ、改めて、行くぞ!』
大火:「しゃー無しだ!やるぞノウン!」
ノウン:「分かったっ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♥ニキータ:「さ!ユミカさんはここで私と一緒に三人の戦いを見ていましょう!」
弓燁:「う、うう……大丈夫かな……あの二人大丈夫かな……」
♥ニキータ:「ユミカさんの心配はごもっともですが、今回は信じてあげてください。
その為に今日こんな時間を設けたのですから。」
弓燁:「……はい。」
間。
♥ニキータ:「……ユミカさん、賭けをしませんか。」
弓燁:「賭け……?」
♥ニキータ:「シンイチとお二人、どちらが勝てるかどうかです♪
お二人が勝ちましたら、美味しいケーキ屋さんを教えてあげます。
もし負けたら──」
弓燁:「それは聞く必要ありません。」
♥ニキータ:「あら。」
弓燁:「不安は不安ですけれど、タイガくんとノウンちゃんが勝ちますから。」
♥ニキータ:「……ふふふ♪
私のシンイチだって凄いですよ?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大火:「二重結界!展開!」
♠進一:『おせぇ!!』
大火:「チッ!」
ノウン:「アマイヌ タイガ!先生から離れろ!」
大火:「おう!──なッ!?」
♠進一:『何をする気は知らねェが、だったら離れねぇよ!!』
ノウン:「くっ!こ、これではワタシの力を使えない……!」
大火:「俺の事は気にするな!やれ!!」
ノウン:「ッ!分かった!!
“結晶惑星(けっしょうわくせい)”!侵食開始ッ!!
かの者を地に縛り付けよ!!」
♠進一:『おォっと!これはッ!』
大火:「がァ!!おっっっっっっっっもッ!!」
ノウン:「すっ!すまないアマイヌ タイガ!だが耐えてくれ!」
♠進一:『くっ……!だがこれしき!!!』
大火:「なっ!立ち上がった!?」
ノウン:「なんだと!?」
大火:「ノウン!もっと強くしろ!!」
ノウン:「ダメだ!これ以上やったらお前の頭蓋骨を粉砕してしまう!」
大火:「良いから!!」
♠進一:『いやいや良くないだろ。』
ノウン:「へ?いつの間に目の前に──」
♠進一:『デコピンと』
ノウン:「っぐぁ!うわああー!!」
大火:「ノウン!」
♠進一:『あらら、吹っ飛ばしすぎた。
ま、重力増加は解除出来たみたいだし結果オーライか。
大丈夫かー?タイガー』
大火:「くそっ!」
♠進一:『天狗の半妖であるお前は他の人よりも丈夫なのかもしれねぇ。
だからこその捨て身の作戦だったんだろうが、言っておくけどノウンの心の負担半端じゃねェからな?』
大火:「……ッ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
弓燁:「あわわわ……!」
♥ニキータ:「もうシンイチったら……お前が言うなってやつですよ……」
弓燁:「……。
あの、ワタリ先生は何があったんですか?」
♥ニキータ:「んー?
まあ、本当に色々あったんですよ。
……最初は、お願いされたからだけだったんです。」
弓燁:「お願いされただけ……?」
♥ニキータ:「ええ、シンイチと彼の幼馴染、この二人のどちらかしか……
いえ、両方とも到底救える様な状況ではありませんでしたね。
そんな中で、彼の幼馴染は“彼を助けてください”、と懇願したのです。自分ではなくシンイチを。」
弓燁:「……。」
♥ニキータ:「シンイチも、彼の幼馴染も、凄く良い人でしたね。
当時の私は、そんな彼らを……」
弓燁:「……。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♠進一:「ぅおらッ!!」
大火:「ぐああああああああ!!!」
♠進一:「ふぅー……まずは一人……って……」
大火:「ぐああーやられたーやられたー」
♠進一:「にせもの……?」
ノウン:「はあッ!!」
♠進一:「おーっとー、(ノウンの蹴りを受け止める。)
いーよっと。(ぽいっと、ノウンを投げ捨てる。)」
ノウン:「きゃっ!」
大火:「おい!ノウン!もっと早く攻撃しろよ!」
ノウン:「お前の式神、精度悪すぎて早々にバレたのだろうが!」
大火:「んだとぉ!?」
ノウン:「何をー!」
大火:「んだよ!」
♠進一:『ケンカすんなって。』(大火とノウンに攻撃をする。)
大火:「ぐあっ!!」
ノウン:「きゃっ!!」
♠進一:『お前らがそーやってぎゃいぎゃいやってェ、そーやっている内にぃ、ユミカが倒す。
それで良いと思ってんのか。』
大火:「……。」
ノウン:「……。」
♠進一:『言っとくがお前ら、ずっとそのままだと、本当に誰か死ぬぞ。』
大火:「……ッ!!」
♠進一:『それはお前らも分かってるだろ。
お前らのやってる事は、自分だけじゃなく、相手の死に直結させてるんだぞ。』
ノウン:「なッ!また一瞬で!!」
♠進一:『こんな風にな。はァッ!!』
(進一、ノウンに手刀する。)
ノウン:「ぐ……!!」
間。
ノウン:「……あ……アマイヌ……!」
大火:「……ッッッ!!」
♠進一:『ほう。』
大火:「させるかよ……!!」
♠進一:『やるじゃん。
そんな感じに!皆を守っていけ!タイガ!』
大火:「何ッ!?マフラーが動いて!?クソッ!防げねぇ!!」
ノウン:「“結晶惑星(けっしょうわくせい)”!!かの者たちを引き離せ!!」
♠進一:『ぐおおッ!?』
大火:「のわぁあっ!?」
♠進一:『重力増加に次は引力……いや俺とタイガを反発させている……斥力(せきりょく)か!!』
大火:「何が何だか分からんが助かったぜノウン!」
ノウン:「ああ!」
大火:「しっ、こっから逆転……!と行きたいところだが、状況は変わんねぇ……どうする!」
ノウン:「さて……どうしようか……
そうだ!アマイヌ タイガ!」
大火:「なんだ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
弓燁:「そ……そんな……」
♥ニキータ:「ふふふ……私ってば、酷い人でしょう?
かつての私はとても愚かでした。いえ、今も変わらず愚かですけどね。」
弓燁:「……。」
♥ニキータ:「彼は、間違いなく貴方たちよりも数段、いいえ数十段、数百段強いです。
だったら貴方たちではなく彼に妖退治を任せれば良いって思いませんか?」
弓燁:「え……?あ……えっと……」
♥ニキータ:「ふふふ……やっぱり彼のこれまでを話してしまったら、そういう風に思えないですよね。
彼の友人も、彼の時間も、私が奪ったみたいなモノなのに。」
弓燁:「……。」
♥ニキータ:「けど、今回の特訓を提案してくれたのは、彼なんです。」
弓燁:「え?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♥ニキータ:「でもどうやって……う~~~~~~~~~~~~ん……」
♠進一:「失礼します。」
♥ニキータ:「は、はいっ!……ってシンイチじゃないですかー」
♠進一:「“ってシンイチじゃないですかー”じゃねぇよ。
今夜の、タイガたちの任務についてだが……ん?どした?」
♥ニキータ:「んえ?な、なんですか?」
♠進一:「いや……なんか悩んでる風だったから。」
♥ニキータ:「あー……実はですねー……」
◇
♥ニキータ:「──と、いうことなんです。」
♠進一:「なるほどなータイガとノウンの連携がねー……
アイツら性格は正反対でよく衝突しているが、別段仲が悪いワケでもねェのに、
なんでかねぇー」
♥ニキータ:「わかりません。
というか、私的にはあんな子供達にこの異常を任せてるのも正直……」
♠進一:「…………。
じゃあ俺がアイツらの代わりに妖退治とやらをやろうか?」
♥ニキータ:「それは絶対にダメです!却下です!免職にしますよ!!」
(ニキータ、立ち上がる。)
♠進一:「なんでだよ!多分変身出来なくても俺のが強いだろ!てか免職はやりすぎだろ!」
♥ニキータ:「貴方は十分、いいえ!十分過ぎるくらい戦いました!私の為に!世界の為に!
なのにまだ傷付くかもしれない戦場に送るの?そんなの嫌よ!」
(ニキータ、進一に抱き着く。)
♠進一:「うぉっと。に、ニキータ……?」
(ニキータ、ボロボロ泣く。)
♥ニキータ:「いつ消えてもおかしくない……そんな貴方に今も触れられる……
それだけでも私には過ぎた奇跡なのよ……?
もう、シンイチが理不尽に消えるなんて嫌なの……」
♠進一:「……。」
間。
♠進一:「あー……悪かった悪かった。そんなグズグズになる程泣くとは思わなかった。」
(進一、ニキータの頭をポンポンする。)
♠進一:「じゃあ、代案だ。
今夜だけは俺が片付ける。その後、ちょこっとだけ特訓しよう。
これならどうだ?」
♥ニキータ:「シンイチ……?」
♠進一:「今夜限定だし、お前が心配にならない程度の動きしかしない。
今夜のでアイツらが何も掴めなかったら、それで終い。
けれど掴めたら御の字、良いだろ?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♥ニキータ:「──という感じに、ね♪」
弓燁:「ほ……ほぉ~~~……」(顔を赤らめる。)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♠進一:『いててて……結構吹っ飛ばされたな……』
(外の時計台を確認する。)
♠進一:『ふむ、そろそろ一時間か。タイムオーバーでも俺の勝ちだが……
それよりは、せっかくだししっかり勝ちてぇよなぁ……』
大火:「見つけた!」
♠進一:『お?』
ノウン:「もう時間がないぞアマイヌ タイガ!大技で決めよう!」
大火:「ああ!──“東西東西(とざいとうざい)”!!」
ノウン:「“結晶惑星(けっしょうわくせい)”!!侵食開始ッ!!」
♠進一:『大技ァ?良いねぇ!!そういうの大好きだ!!
だったら俺もそーっすかぁッ!!』
大火:「今宵お話しますは、とある少女の英雄譚!!
彼女の名はノウン・ヤン・アモーク!!天使の代行司(だいこうし)にして断罪者!
彼女の武器であり、天使からの授けもの“ANGEL(えんじぇる)”は
どんな魔をも祓う最強の武器でございます!」
ノウン:「30……29……28……」
♠進一:『なるほど!噺屋(はなしや)の興行は概念改竄(がいねんかいざん)の力!
ここでノウンの英雄譚を嘯(うそぶ)いて、瞬間的なバフって事か!良いねェ!!』
ノウン:「22……21……20……」
♠進一:『だァが俺には通用しねぇぞォ!!集い、顕現(けんげん)せよ!我が刃!!』
(進一の右手に赤く燃え猛る剣が構築される。)
♠進一:『これは“世界(すべて)”を焼却し、改竄(かいざん)する魔剣!!』
ノウン:「16……15……14……」
大火:「──さあ!さあさあさあ!今!只今!
彼女の“ANGEL(えんじぇる)”の本領発揮でございます!!
よし!やれ!ノウン!!」
ノウン:「“結晶惑星・総てを射抜く星(ベドラハ・ケシェット)”!!!」
♠進一:『”改造されし炎の巨人の剣(ファルシファイ・レヴァンテイン)”ッ!!!』
ノウン:「はああああああああああ!!」
♠進一:『うおおおおおおおおおおおお!!!』
ノウン:「くっ!」
大火:「おい!押されてるぞ!!」
♠進一:『わりぃが!俺の勝ちだァ!!!!!』
大火:「ぐああああああああああああ!!!」
ノウン:「うわああああああああああ!!!」
間。
♠進一:『スゥーーーー……ハァーーーーー……』
大火:「ぐ……」
ノウン:「う……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♥ニキータ:「勝負あり、ですね。」
弓燁:「……。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♠進一:『……。
ん……大技って程の威力でも無かったな……ま、いっか。
二人共身動き取れなさそうだし……よし、これで俺の──』
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
弓燁:「いいえ。」
♥ニキータ:「え?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♠進一:『あれ?なんで動けない……あ?足に結界……?』
ノウン:「9……8……7……」
♠進一:『ッ!?
アイツらはもう伸びて──!!』
大火:「ぐあああやられたーやられたー」
ノウン:「やられためぅーやられためぅー」
♠進一:『な!タイガが作った偽物か!!まっ!まずい!!』
大火:「二重結界!展開ッ!!」
ノウン:「結晶惑星(けっしょうわくせい)!侵食開始ッ!!」
♠進一:『ぐっぐおおおおお!!動けねぇ!!!!』
大火:「3」
ノウン:「2」
大火:「1」
ノウン:「0!!」
♠進一:『……くっ!』
(進一、変身解除する。)
♠進一:「30秒間、身動きを止められた……俺の負けだ……」
大火:「よっしゃー!!俺たちの──」
ノウン:「ワタシたちの──」
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弓燁:「──勝利です。」
♥ニキータ:「…………!
これはこれは……ふふふ……参っちゃいましたね~~~~」
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ノウン:「やったな!タイガ!」
大火:「おう!上手くいったな!お前の考えたオトリ作戦!」
ノウン:「ああ!お前の作った即席のワタシの式神人形、中々に迫真だったぞ!」
大火:「へっ……これくらい、どうってこたぁーねぇぜ!」
(弓燁、ニキータ、現れる。)
弓燁:「タイガくーん!ノウンちゃーん!やったねー!!やった!やったねー!!」
ノウン:「あ、ありがとうオニトツギ ユミカ……!」
♥ニキータ:「お疲れ様です~タイガくん、ノウンさんお見事でした~
シンイチも、本当にお疲れ様です♪」
♠進一:「おう。完敗だったわ。
タイガの術の発動が遅い、ノウンの術の範囲が広過ぎる。
その両方の欠点を囮作戦で解消出来ているし、良さも出ていたな。」
♥ニキータ:「……ああ~~~~~!!お三方のゴスロリ姿!見たかったです~~~!!」
♠進一:「何の話?」
♥ニキータ:「こっちの話です♪」
♠進一:「そっか。
すぅ~~~~……あ~式神を使っての囮戦法は一回破ったのになー」
♥ニキータ:「夜の暗さと距離を取られた事で気付くのを遅れさせたのですね。」
弓燁:「更に“大技”という嘘で偽物の二人に注意を逸らし、思考を狭めさせ、真の目的を……」
間。
弓燁:「……なんか、嫌だね……タイガくん……」
大火:「ああ……なんか嫌だな……」
ノウン:「こ、こういうのは駄目だったか……?」
大火:「い、いや駄目とかじゃないんだ……ただ、嫌なヤツを思い出すなーって……」
弓燁:「私、あの適当そうな人の名前思い出せない……」
大火:「長かったし、難しそうだったもんな……」
ノウン:「???」
♥ニキータ:「ともかく!おめでとうございます!
これでお二人も何かしら掴めたのではないのですか?」
大火:「……。」
ノウン:「……。」
大火:「まあな。」
ノウン:「ええ、これからはやっていけると思います。」
♠進一:「そうか、なら俺が身体張った甲斐があった。
タイガ、ノウン、お互いの特性を考え、良い連携ができたな。」
大火:「先生、ありがとうっす。」
ノウン:「ありがとうございます!」
♥ニキータ:「これで明日から安心ですね♪」
弓燁:「はいっ!」
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♥ニキータ:そして次の日♪
♠妖3:「赤い紙と青い紙……どちらがお好き?」
大火:「おおおおおおい!!ノウン!俺に息を合わせろよ!!」
ノウン:「何をー!タイガ!貴様がワタシに息を合わせろ!!」
♠妖3:「あ……あの~……赤いのと青いの……」
大火:「ぎゃいぎゃい!!」
ノウン:「ぎゃいぎゃい!!」
♠妖3:「え……えっとぉ……」
弓燁:「も~~~~~~~~~~!!妖さんも困ってるよ~~~~~~~~~~!!!
波ァーーーー!!」
♠妖3:「ぐあああああ!!ちなみに私は緑のが好きィ~~~~~~~~~!!!」
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♥ニキータ:「スゥーーーーーーーーーーーーーー……」
♠進一:「本当にいつか死んじまうぞ……ま、しゃーねェのかなー……
はぁー……もうしばらくはユミカ頼りで、連携は厳しそうだな……」
♥ニキータ:「そ……そうですねぇー……」
♥ニキータ:「き……今日はこれにて終幕……。」
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