[台本]東西東西・噺屋:天犬 大火の興行 ─第三幕:鏡合わせであれど鉢合う事は無く─
一つ、二つ、三つ……そして今回で四つ目。
私たちは何故、駒を揃えるのか。
それは何のためか、誰のためか。
最初から決まっている、最初から示されている、最初から定めている。
そう、全ては、彼の為の”興行(ちゃばん)”だ。
さあ────開演せよ。
登場人物
○天犬 大火(あまいぬ たいが)
17歳、男性
天狗の半妖で、怪談を雑談に挿げ替える“噺屋”。
皮肉屋で毒舌家で陰湿な性格。
頭が悪くて留年して高校一年生を二回やって、今年やっと二年生。
主人公。
〇鬼嫁 弓燁(おにとつぎ ゆみか)
16歳、女性
元気で純粋無垢で、要領が良く品行方正な高校二年生。
噺屋になるべく大火に教えを請うている少女。
祓い屋としての才能は群を抜いている。
○ノウン・ヤン・アモーク
16歳、女性
突如転校してきた高校二年生。
世界の意志を聞き、教義とする“ヘネラリザドゥ教”の信徒であり、断罪者。
生真面目で融通の効かない性格をしているが悪い子ではない。
不真面目で不良な上に半妖の大火によくつっかかる。
○青咲 翔太郎(あおさき しょうたろう)
??歳、男性
大火たちの担任で現代文の教諭。
誰にでも平等に、誠実に接し、先生生徒双方から信頼が厚い先生。
途中からはその先生の姿をした怪異。
その正体は──
※????と兼ね役
○????
??歳、??
青咲 翔太郎の姿をした怪異を通して大火たちに話しかけてくる人物。
天犬 大火♂:
鬼嫁 弓燁♀:
ノウン・ヤン・アモーク♀:
青咲 翔太郎/????♂:
↓これより下が台本本編です。
───────────────────────────────────────
????:「東西東西(とざいとうざい)。」
????:「閑話休題(かんわきゅうだい)。」
????:「結晶惑星(けっしょうわくせい)。」
????:また一つ、駒が揃う。
それは何のためか、誰のためか。
最初から決まっている、最初から示されている、最初から定めている。
そう、全ては──
????:「天犬 大火(あまいぬ たいが)……君の為の“興行(ちゃばん)”だ……。」
間。
????:さて、“終わり”へ向かう為に“始め”よう。
間。
????:「さあ──」
????:「──開演せよ。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
弓燁:こんにちは!
私、鬼嫁 弓燁(おにとつぎ ゆみか)です!
今年から冬台(ふゆうてな)高校の二年生です!!
大火:「ふぁ~……」
弓燁:そしてこちら!この人は私の師匠でもある同級生!
アマイヌ タイガくんです!
翔太郎:「アマイヌーここ、分かるかー」
大火:「…………ばなな」
翔太郎:「よーし、廊下に立ってろー」
大火:「うぃーっす。」
(大火、立ち上がって廊下に向かう。)
弓燁:「ぁ……」
弓燁:スゥーーーーーーーーーーーーーー……けど、タイガくんはすんごく馬鹿なんです……
◇
大火:「あぁ~……授業だりぃ……
…………ん?ありゃ……校長と……誰だ……?」
ノウン:「……。」
(ノウン、大火を一瞥し、そのまま校長と共に大火たちの教室に入る。)
大火:(……?
俺らのクラスに入っていったな?)
◇
弓燁:タイガくんが外へ出ていって一拍し、誰かが入ってきた。
翔太郎:「ん?校長先生?どうしたんですか?
……。
え?てっ、転校?急に?えっと、オレそれ聞いてないんですけど……
……。
……はぁ……まぁ、分かりました。」
弓燁:「……?校長先生と青咲(あおさき)先生、何話してるんだろう……?
それに、あの子……初めて見る子……」
翔太郎:「──んじゃあ、そういう事で、ちょっと待っててくれ。」
ノウン:「はい。」
翔太郎:「アマイヌー」
大火:「はいー?なんですかー」
翔太郎:「ちょっと急で済まないんだが、先生と一緒に机と椅子、教室に持ってくるの手伝ってくれ。」
大火:「あああ~~~~~~???」
翔太郎:「ムッとするなよ。」
大火:「してませんが~~~~????」
翔太郎:「ほら、行くぞー」
大火:「……は~~い」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
翔太郎:「──と、いうわけで……
本当に急なのだが、今日から皆と学び舎を共にすることになった──」
ノウン:「ノウン・ヤン・アモークです。
こちらへは父の仕事の事情で引っ越してきまして、
色々とバタバタしていて、やっと皆さんと顔合わせすることができました。
以後、お見知りおきを。」
大火:ノウンと名乗る女が機敏で綺麗なお辞儀をする。
それを合図にパラパラと拍手をする生徒たち。
弓燁:「はぁ~~~……!」(嬉しそうに拍手する。)
大火:「……?
なんでそんな嬉しそうなんだよ。」
弓燁:「んぇ?だって──」
翔太郎:「じゃ、ヤン・アモーク、席はオニトツギの後ろだ。」
ノウン:「はい。」
弓燁:「──だからだよ……!」(目きらきら)
大火:「あー……話し相手か。」
弓燁:「うん!新しいお友達!」
大火:「お前……割と友達出来てんのにまだ作んのかよ。」
弓燁:「作る友達に制限は必要ないもの、だから、ノウンちゃんとも友達になるの!」
大火:「……。」
大火:(そういやコイツ、元々居た場所じゃ友達とか作れる環境じゃなかったもんな……。)
大火:「そうか、頑張れよ。」
(大火、寝ようとする。)
弓燁:「あ、タイガくん!まだじゅぎょ──」
ノウン:「おい。」(大火が座っている椅子の脚を蹴り飛ばす。)
大火:「どぅわっ!!」(尻餅をつき、背中を打つ。)
弓燁:「きゃっ!」
大火:「──いぃ──ッ!!
て、てめぇ……!急になにしやがる……!」
ノウン:「ワタシの事情で授業を中断させたのは申し訳ないと思うが、
まだ授業中だぞ。寝ようとするんじゃない赤髪。」
大火:「あァ??
お前どこの目線で物言ってんだ?あァん??」
ノウン:「お前と同じ学生としてだが?
知らないのか?授業時間というのは睡眠時間とは違う意味なんだぞ?」
大火:「てめェ……!」
(大火、ノウンと胸倉を掴む。)
ノウン:「ん。」
弓燁:「ちょっ!ちょっと!タイガくん!!」
翔太郎:「こら!アマイヌ!やめなさい!!」
ノウン:「どうした?その握った拳をどうしたいんだ?」
弓燁:「タイガくん!ダメだよ!!」
大火:「…………ッ!!!!
……チッ」
(大火、ノウンを離す。)
ノウン:「……フン」
弓燁:「ほ……」
翔太郎:「……すぅーーー……はぁー…………
アマイヌ、いくら頭に来たからって暴力はダメだぞ。
確かにヤン・アモークの言うとおり、授業中に寝ようとしたお前も悪いんだ。」
大火:「…………へーへー……」
翔太郎:「ヤン・アモーク、お前もだ。
さっきも言ったが、確かに“お前の言い分は正しい”。
だが、暴力はダメだ。転校早々だというのに、問題を起こそうとするな。」
ノウン:「はい。申し訳ありません、お騒がせしました。」
(大火、席に座る。)
弓燁:「タイガくん大丈夫?」
大火:「あ?あれくらいどーってことねェよ。」
翔太郎:「それじゃ、授業を再開するぞー」
大火:「本当は一発くらい殴りたかったがな。」
ノウン:「フッ、口だけならなんとでも言える。」
大火:「……ほりゃ。」(ノウンが座っている椅子の脚を蹴り飛ばす。)
ノウン:「ひゃっ!!いっでッ!!」(尻餅をつき、背中を打つ。)
弓燁:「ちょっ!タイガくん……!」
ノウン:「きっっっっっっっっさまァ!!」
大火:「あァ~~~???どうしましたか転校生スァン~~~~???
もう授業始まってますよ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~???
授業時間って休憩時間とは違うって知らないんですくぁ~~~~~~~~~?????」
ノウン:「~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」
(ノウン、怒りで顔を真っ赤にし頬をぷくーっと膨らませながら席に着く。)
大火:「へっ、勝った。」
ノウン:「ん!!」(大火が座っている椅子の脚を蹴り飛ばす。)
大火:「だびんちっ!!!」(尻餅をつき、背中を打つ。)
ノウン:「へっ!」
大火:「フン!!」(ノウンが座っている椅子の脚を足払いする。)
ノウン:「どびゅっしっ!!」(尻餅をつき、背中を打つ。)
大火:「…………。」
ノウン:「…………。」
(大火、ノウン、互いにメンチを切り合う。)
翔太郎:「二人共廊下に立ってろ!!!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
弓燁:こんな感じで、この二人は、体育の授業も──
(大火がサッカーボールを保持し、ノウンがそれを奪おうとしている。)
大火:「がるるるる!!!」
ノウン:「シャーーーーッ!!!」
翔太郎:「お前らー!!サッカーは味方同士でボールを取り合うスポーツじゃないぞぉ!!」
弓燁:自販機の前でも──
(大火、ノウン、自販機の前で鉢合う。)
ノウン:「ん。」
大火:「あァ?」
ノウン:「ワタシが先だ。」
大火:「いいや俺が先だ。」
ノウン:「ぐぐぐぐぐっ」
大火:「ぎぎぎぎぎっ」
(取っ組み合いになる。)
翔太郎:「もう授業始まってるぞぉー」
弓燁:掃除の時間も──
大火:「どうだ!!俺の方が雑巾で拭いた面積が広いぞ!!」
ノウン:「たわけ!掃除とは如何に丁寧にするかだ!
アマイヌ タイガ!貴様が拭いた場所、まだこんなに埃が溜まってるぞ!ほら!!」
(ノウン、指をビシッと大火に突き出す。)
大火:「くっ!!」
翔太郎:「掃除に全力なのは良いが、協力しろよぉー」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
弓燁:そ、そして下校時間……
(ノウン、隣の席の大火にメンチを切っている。)
ノウン:「……。」
大火:「……。」
弓燁:「あ……え……えっと……」
(大火、ノウンからそっぽ向いている。)
大火:「……。」
ノウン:「……。」
弓燁:「えー……っと……そのー……あ!
そういえばまだ自己紹介出来てなかったね!
私は、オニトツギ ユミカ、よ、よろしくね……!」
(ノウン、スッと爽やかな雰囲気になり、微笑む。)
ノウン:「ああ、よろしく、オニトツギ ユミカ。
ワタシはこの町はおろか、この国自体初めてで、分からない事が多い。
だから何かと迷惑を掛けてしまうと思うが、その時は言ってくれ。
しっかりと自分を正そうと思う。」
弓燁:「う、うん!」
弓燁:(よ……良かった……!思ったより普通に喋ってくれる……!!)
大火:「じゃあ、その気取った態度やめろよ。」
ノウン:「不調法者(ぶちょうほうもの)の言葉など聞く価値は無い。」
大火:「ああッ!?」
弓燁:「もう!タイガくん!!不調法者(ぶちょうほうもの)って意味分かってないのに怒らないの!」
大火:「てめぇ!地味に馬鹿にしてんじゃねぇよ!!
確かに意味分かんねぇけどどうせ良い意味じゃねぇだろ!!」
弓燁:「そ……それはそうなんだけどさ……」
ノウン:「…………。」
大火:「ああ?何ガンつけてんだよ。」
ノウン:「アマイヌ タイガ、貴様──」
翔太郎:「オニトツギー、アマイヌー、校長先生が呼んでるぞー」
弓燁:「あ!はい!じゃ!そういう事だから!また明日ね!ノウンさん!」
ノウン:「あ、ああ。」
弓燁:「ほら!行くよ!タイガくん!!」
大火:「チッ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
????:冬台(ふゆうてな)高校の校長からの依頼。
それは、“吸血鬼が校内に潜んでいる”という疑惑の浮上。
日中に襲われた生徒、夜間に襲われた警備員、などなどの被害報告が出ている。
幸いまだ死者は出ていない。
被害者はいずれも血を吸われた後があったが故に、“吸血鬼が校内に潜んでいるのでは?”
弓燁:「──と、いうわけで今夜、私たちは吸血鬼退治する事になりました。」
(大火、弓燁、祓い屋モード。大火は何故か女装している。)
大火:「あ~……だりぃ……」
弓燁:「もう、ロウコさんがいなくてもやる気出してよー」
大火:「いや、師匠がいねぇのは別に良いんだけどよ。」
弓燁:「?」
大火:「なんで俺が女装する必要があるんだよ……。」
弓燁:「それを私に言われても……
提案は校長先生だし……」
大火:「たく……なァにが──
“吸血鬼は美女が大好物です。だから餌にはタイガ君がもってこいと思いません?
という事で、私のゴスロリコレクションをお貸ししましょう!!”
──だよ……あの変態がよ……」
弓燁:「あ……あはは……ど、どうする……?
やっぱり私が囮役しようか?」
大火:「…………。
いや良い。吸血鬼と言やぁ、血を吸った相手を眷属にする、なんて話もあるしな。
だが俺はそういう類のは効かない。怪異が相手なら、俺の方が囮は向いてるだろう。
だから、しっかりと吸血鬼とやらの頭カチ割れよ。」
弓燁:「はい!」
大火:「んじゃ、怪しいと言われてる場所を散策するか。」
弓燁:「そうだね、手分けする時はインカムでちゃんと随時報告してねタイガくん。」
大火:「わーってるよ。」
弓燁:「じゃあまずは──」
間。(二人の眼前に、断罪者モードのノウンが現れる。)
ノウン:「“呼応せよ(レハギール)”。」
弓燁:「──え?ノウンさん?」
大火:「オニトツギ!構えろ!!」
弓燁:「ッ!!」
ノウン:「これは魔を滅する光、“浄罪(クライムリバティ)”。」
????:彼女がそう唱えた瞬間、アマイヌ タイガの左肩を閃光が撃ち抜く。
大火:「──ぐッ!!!」
弓燁:「タイガくんッ!!」
大火:「俺は大丈夫だ!!ヤツから目を離すな!オニトツギ!!」
弓燁:「──ッ!!」(大火の方を向くのを堪え、ノウンを視界から外さない様に注力する。)
ノウン:「……やはりな。ワタシに遣わされた銃を模した兵器、“ANGEL(エンジェル)”は、
人を傷つけず、魔を滅する。
アマイヌ タイガ、どうやら読み通り、ワタシが断罪すべき“悪魔”は、お前か。」
弓燁:「だん、ざい……?」
ノウン:「オニトツギ ユミカ、ソレから離れてください。
ソレは人間じゃない、人を誑かし惑わす、滅すべき存在、“悪魔”、
君たちの言い方を借りるなら、“怪異”だ。」
弓燁:「で、でも!タイガくんは悪い人じゃないよ!!」
ノウン:「……。可哀想に。オニトツギ ユミカ、貴女は彼に騙されている。
怪異は……“悪魔”は絶対悪だ。この地上から滅せねばならない存在だ。
ワタシは……アマイヌ タイガ、お前たち“悪魔”を許さない!」
大火:「へぇ……言ってくれるじゃねェか……。
……ッ!!(左肩の風穴を妖力で塞ぐ。)
お前にとっちゃ、俺がターゲットなのかもしれんが、俺は違う。」
ノウン:「そうか、だがお前の事情なんぞ知らない、興味も無い。
──ワタシは世界の意志を聞き、人々を導く者、悪を滅する天使の代行司(だいこうし)、
断罪者ノウン・ヤン・アモーク。天使に代わり、貴様を滅する。」
大火:「……へッ……!お前とは絶対に気が合わねぇと思ったが……
全然話聞かねぇなァお前……!!」
ノウン:「たった一日とは言え、如何にいけ好かないヤツだったとは言え、
ほんの一瞬でも同じ学生として共に過ごしたお前を殺すことになって、本当に残念だよ。
さよなら、アマイヌ タイガ、件(くだん)の吸血鬼。」
(ノウンの背後から何かが音も無く迫り来る、ノウンは気づいていない。)
大火:「ッ!!」
弓燁:「タイガくん!」
大火:「わーってるッ!!」
ノウン:「ッ!抵抗しても無駄だッ!!」
大火:「伏せろ!ノウン!!」
ノウン:「ッ!?──ッ!!」(一瞬戸惑うが、大火の目を見てその場を退避する。)
大火:「怪異化!!うらァ!!!」(ノウンが避けた先に向けて攻撃をする。)
翔太郎:「くォオッ!!バレたか!!流石は天狗の子ッ!!」(大火の攻撃を弾く。)
弓燁:「なッ!?アオサキ先生!?」
ノウン:「何!?アマイヌ タイガ!その姿……!吸血鬼ではないのか!?」
大火:「ちげぇって!!」
ノウン:「でも悪魔だろ!!」
大火:「それは半分正解だけどッ!なッ!!」(翔太郎に向けて再び攻撃を仕掛ける。)
翔太郎:「おっとォ!!」
弓燁:「タイガくん!ノウンさん!大丈夫!?」
大火:「俺は大丈夫だ。」
ノウン:「あ、ああ。
オニトツギ ユミカ、貴方たちは一体……!」
弓燁:「私たちは祓い屋。怪異を退治する事を生業にしてるの。
だから多分、同業者、なのかな。
あとタイガくんは天狗の半妖だけど良い子じゃないけど悪い人じゃないよっ!」
ノウン:「な、なるほど。」
大火:「そういうのは後だ。おい、アンタ。誰だ。」
翔太郎:「……。やだなー何を言っているんだ?オレだよ。
君たちの担任、青咲 翔太郎(あおさき しょうたろう)だ。
オレが吸血鬼の正体さ。」
大火:「俺の眼は騙されねぇよ。姿形、匂いもアオサキ先生だが、全くの別人だ。」
ノウン:「なに?どういうことだ?
ヤツはアオサキ先生と瓜二つだが、無関係なのか?」
大火:「それは知らんが、少なくとも俺たちが知るアオサキ先生は、
今頃家に持ち帰った仕事に忙殺されてるハズだからな。
こんな風に暇はしてねェハズだ。なあ?そっくりさんよォ??」
翔太郎:「……。ははは、本当に、流石だよ。天狗の子、アマイヌ タイガ。
オレはアオサキ ショウタロウじゃァない。」
間。
翔太郎:「僕は不死身の吸血鬼、“カリオストロ”!!
……。
そして──」
(翔太郎、弓燁、ノウンの方を見る。)
翔太郎:「元・鬼の擬似半妖、祓い屋トウトウミ ロウコの最高傑作、オニトツギ ユミカ。」
弓燁:「ッ!!」
翔太郎:「“ヘネラリザドゥ教”の断罪者、“ANGEL(エンジェル)”の所有者ノウン・ヤン・アモーク。」
ノウン:「ッ!」
間。
????:「──これで駒が四つ。
上手いことおびきよせる事が出来た。よくやったカリオストロ。」
大火:「ッ!!」
弓燁:「雰囲気が明らかに……!!」
ノウン:「これは……!!」
????:「だが……ふむ、君一人で同時に三人相手するのは酷か。
であれば──」
(弓燁、ノウンの足元が光りだす。)
弓燁:「なに!?」
ノウン:「ッ!?」
大火:「ッ!!
オニトツギ!!ノウン!!」
(大火、咄嗟にノウンの腕をひっぱり、自身に寄せる。)
ノウン:「きゃっ!!」
大火:「くッ!!オニトツギ!!手を伸ばせ!!」
弓燁:「タイガ──」
(弓燁、消える。)
大火:「オニトツギ!!
ッ!!(インカムを使う。)
オニトツギ!オニトツギ!応答しろ!!」
ノウン:「ッ!!貴様ァ!!オニトツギ ユミカを何処へやった!!」
????:「ふむ……片方は失敗したか。
安心してくれ、アマイヌ タイガ君。
あの子はこの学校の敷地の何処かへ転移させて頂いただけだよ。」
弓燁:『タイガくん!私は無事だよ!!カリオストロって名乗ってる人と対峙してる状態で、
ここは──音楽室みたい!!』
大火:「カリオストロがそっちに?」
(大火、翔太郎を見る。)
大火:「じゃあこっちのはなんだ……?」
????:「君たち三人相手では、彼……カリオストロには荷が重いからね。
分散させてもらっただけだよ。
本当は一対一にしたかったが……まあ、仕方が無い。
こっちは君たち二人を相手しよう。そして、アマイヌ タイガ君、君を確保する。」
大火:「!!」
翔太郎:「はァ!!」
大火:「ッ!!(避ける。)
──ッチ!気を付けろよ!オニトツギ!!」(通信が切れる。)
翔太郎:「──と、いうワケだ。」
大火:「ッ」
ノウン:「ッ」
翔太郎:「……んー?それにしても随分と可愛らしい格好だな、アマイヌ。」
大火:「うるせぇ!」
ノウン:「そうだぞ!人の戦闘装束を馬鹿にするな!!」
大火:「ちげぇよ!」
ノウン:「なっ、違うのか!?じゃあなんでそんな可愛らしいフリフリを!?」
翔太郎:「よそ見している場合かなッ!!?」
(翔太郎、ノウンと大火に向けて攻撃を仕掛ける。)
ノウン:「ひゃっ!」
大火:「おっと!!」
翔太郎:「あのお方はアマイヌの確保を望んでいる。
そして君たちは僕を退治する事が仕事。
さあ、来なよ。僕を退治しに来たんだろ?アマイヌ、ヤン・アモーク。」
大火:「だそうだ。俺を断罪するのは後で良いな。
ここは一旦共闘だ、ノウン。」
ノウン:「了解だ。だが先んじて言っとくが、お前も危険と判断したらまとめて滅するからな。」
大火:「そうかい!とにかく、行くぞ!!」
ノウン:「ああ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大火:『じゃあこっちのはなんだ……?』
弓燁:「え、そっちにももしかしているの……!?」
翔太郎:「はァ!!」
弓燁:「ッ!!(避ける。)
腕が伸びた……!これも吸血鬼の……!!」
弓燁:(タイガくんとの通信が切れた……!きっとあっちでも戦闘が再開されたんだ……!)
翔太郎:「さて、オニトツギ。
あちらは天狗の子に天使の代行司(だいこうし)と、中々に大変だが、
君は殆どただの人間。
どうやって吸血鬼たる僕を倒すのかな!!」(弓燁の元へ駆ける。)
弓燁:「ッ!
三重結界ッ!展開ッ!!」
翔太郎:「ッ!!強固な結界じゃないか!!
流石は優等生なオニトツギ!!祓い屋としては確かに戦えそうだな!!
だが──」
翔太郎:「フン!!」
弓燁:「くっ!!一撃で破壊された……!」
翔太郎:「ふふふ……さあ、どうする?オニトツギ。」
弓燁:「……。」
間。
弓燁:「──限定顕現(げんていけんげん)。」
翔太郎:「?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大火:「チィッ!!これで四回目ェ!!!」
翔太郎:「ぐああああ!!!!……なんてな。」
ノウン:「はぁ……はぁ……驚異の再生速度、不死性……厄介だ……!」
翔太郎:「ははははは。
ヤン・アモーク、君の埒外(らちがい)兵器“ANGEL(エンジェル)”も大した事無いな。
いや、魔を滅するそれなら僕でもただでは……
ああ、そうか!アマイヌに気を遣っているからかな?
そうだな、そうだよな。仲間は傷付けたくないよなー」
ノウン:「くっ!!」
大火:「おい!なんか他に手はねェのか!!」
ノウン:「すまない!こちらは打ち止めだ!!
対吸血鬼用に持ってきた十字架も銀の弾丸もにんにくも効かない!
こいつは本当に吸血鬼なのか!?
ああ……!クソ……!思いの外力を使い過ぎて……!」
翔太郎:「ああ、吸血鬼だとも。
ただ、そうだな。ただの吸血鬼じゃないだけだ!!」(ノウンに攻撃をする。)
ノウン:「ッ!?しまったッ!!」
大火:「うらァ!!」(翔太郎の攻撃を弾く。)
翔太郎:「チッ!!」
ノウン:「アマイヌ タイガ!!」
大火:「大丈夫かっ!ノウン!」
ノウン:「あ、ああ!……お前……何故ワタシを助けるのだ!
ワタシは!お前も殺そうとしたんだぞ!?」
(大火、翔太郎に気を配らせながら首だけノウンの方を向く。)
大火:「あァ!?今ンなことァどうでも良いだろうが!!」
ノウン:「……ッ」
(大火、翔太郎の方を向く。)
大火:「俺は……!俺の手の届く範囲のモノはぜってぇー失わねぇって決めた……!
もう二度と!失って溜まるかよ……ッ!!」
ノウン:「……!」
翔太郎:「流石は天狗の子!反対側に居たのに……素早い動きだ。」
大火:(クソッ!!どんどんオニトツギが居るっていう音楽室から遠ざけられる……!)
翔太郎:「どうしたんだアマイヌ。何を考えている。
お前は馬鹿なんだから、考えるだけ無駄じゃないか。
考えるのはお前の性に合ってないだろ?」
大火:「うるせぇ!!
おい!ノウン!!」
ノウン:「っ!なんだ!!」
大火:「コイツムカつくからもう俺の事気にせず
さっきのすげぇいてぇやつやりまくれ!!」
翔太郎:「何ィ!?」
ノウン:「正気か!?あれは魔を自動的に追尾し、滅する光だ!まともに受けたらお前──」
大火:「知るかァ!!
俺の心配よりお前の心配をしろッ!!」
ノウン:「えええ!?なんだ急に!」
大火:「俺は全て避けてみせる!!さァ!やるぞ!!」
ノウン:「ッ!ああ!!“呼応せよ(レハギール)”!
魔を滅し給え!!“浄罪(クライムリバティ)”!!!」
翔太郎:「くっ!!」
大火:(どうやら俺の選択は正解みたいだな……!
……オニトツギの方は大丈夫か?こんな不死身野郎と一体一で……
一体一……ん?分身の様な事が出来るなら、
何故こっちで二人に分身しないんだ?)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
弓燁:「はァアッ!!」(思いっきり翔太郎をぶん殴る。)
翔太郎:「ぐああああああああああああああッ!!!!」(吹き飛ばされる。)
弓燁:「ほあ~~~!!」
翔太郎:「ぐふっ!!
……ぐぼォあァ……!!」
弓燁:「……ッ」
翔太郎:「ぐ……ああ……
ま……まさかオニトツギが鬼に変身するとは……!!」
弓燁:(これで三十回目……!死なないのは吸血鬼だから……!?)
翔太郎:「どういう事だ!?もうオニトツギは鬼じゃないはずなのにどうやって!!」
弓燁:「秘密!です!」
????:「限定顕現(げんていけんげん)。」
弓燁:「っ!また変わった……!」
????:「仮説でしか無いが、鬼であった過去を今に再演し、実際に顕現させる術。
まるで私の……おっと、危ない危ない。口を滑らす所だった。
ともかく、恐ろしい力だ。
だが──」
翔太郎:「一体いつまで続けれるんだろうな!!」(攻撃を仕掛ける。)
弓燁:「フッ!!」(弾く。)
翔太郎:「くっそォ!!」
弓燁:「ヘェア!!!」(蹴り飛ばす。)
翔太郎:「ぐおおおおお!!!!それはそれとして強すぎるゥウウ!!!」
弓燁:「それでも死なない……!」
弓燁:(タイガくんの口ぶりから、あちらにもこの男がいるのは間違いない……。
つまり増える事が出来る……。
そして一体一の状態で一応私が優勢なのになんで増えないんだろう……。)
翔太郎:「ぐ……今のは……中々に痛かったなァ……流石に……!!」
弓燁:(二人までしか増やせないから?
だったらわざわざ一体一でやらずに一体複数の状況を作った方が良いのに、
なんでそれをしない……?)
弓燁:「ッ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大火:「ッ!」
大火:(いいや──)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
弓燁:(しないんじゃない……!出来ないんだ……!)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大火:「ノウン!!」
ノウン:「なんだ!」
大火:「ヤツを倒す方法が分かった!!」
翔太郎:「ッ!!」
ノウン:「何!本当か!!」
大火:「ああ!仮に違っても方法を固定する!」
翔太郎:「噂の“噺屋(はなしや)”の興行……
“世界を納得させる”とかいう埒外(らちがい)な力……!
だがさせるワケには──」
ノウン:「──結晶惑星(けっしょうわくせい)、侵食開始!」
翔太郎:「どわァあ!?重力がッ、無くなったのか!?」
ノウン:「結晶惑星(けっしょうわくせい)、それがワタシのANGEL(エンジェル)の真の力。
この場を“天使の世界”が侵食する機構、今この場は、ワタシが支配しているッ!」
翔太郎:「なァ!!そんな無茶苦茶な事が!!」
大火:「助かるぜノウン!!
よしッ!!」
大火:「オニトツギ!!(インカムの電源を付ける)」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
弓燁:「三重結界ッ!!」
翔太郎:「ぐっおおおおお!?さッ!さっきよりも圧倒的に強固な結界ッ!!!
はッ、破壊できないッ!!」
弓燁:「よしッ!!今の、鬼の私ならッ!!──」
大火:『オニトツギ!!』
弓燁:「インカムが繋がった……!
という事はッ!タイガくん!私の方の準備は出来てる!!」
大火:『そうか!察しが早い!流石だぜ!
じゃ!行くぜオニトツギ!!』
弓燁:「うん!!」
弓燁:「東西(とざい)──」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
大火:「東西(とうざい)ッ!!」
(大火、弓燁の足元に陣が現れる。)
翔太郎:「く……ッ!!」
大火:「皆々様!ご機嫌よろしゅうございりまする!
私の名は天犬 大火(あまいぬ たいが)──」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
弓燁:「私、鬼嫁 弓燁(おにとつぎ ゆみか)と言うものでございます。
師はアマイヌ タイガ、鬼の半妖もどきな祓い屋。
“噺屋(はなしや)”……噺屋・鬼嫁 弓燁でございます!!」
翔太郎:「なッ!?オニトツギも噺屋(はなしや)の興行を発動だと!?
アマイヌ タイガだけではないのか!?」
弓燁:「やっぱり、私が鬼に変身したのに驚いた時に、
まだ噺屋見習いの私には出来ないって思ってるんじゃないかと予想してましたよ!」
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ノウン:「この陣は……“ANGEL(エンジェル)”と同じ世界侵食の力……!!」
大火:「さァてさて、我らが相対(あいたい)する者、吸血鬼“カリオストロ”の正体を──」
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弓燁:「赤裸々に暴いてみせましょうッ!!
これは怪談でも、雑談でも無い。敢えてこの興行に名を与えるなら、
そうでしょうね~……
フフフ、そう、これは──」
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大火:「これは推理ショーにございまする!!」
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弓燁:「これは推理ショーでございます!!」
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大火:「──この吸血鬼の正体を日の下に暴いてみせましょう!!」
翔太郎:「クソォ!!二人同時の噺屋(はなしや)の興行だとォ!?
これは流石にマズイ!!」
大火:「この男、不死身の吸血鬼を名乗っていて奇妙な事ばかりですが、
特に私が奇妙と思っていた事がありまする!
それは分身分裂の類が使えるというのに“その場には一人しかいない”。」
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弓燁:「増えれるならもっと増えて制圧するなり、
仮に二人三人程度しか増やせないとしても、一体複数の状況を作れば有利に事が運べるでしょうに。
いやはや、何故そうしないのでしょうか?」
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ノウン:「確かに、それはワタシもずっと思っていたが、
何かしらの制限が掛かっているからじゃないのか?」
大火:「流石は断罪者様でございます。」
ノウン:「えっ」(ちょっとだけ赤くなって戸惑う。)
大火:「断罪者様が言う通り、分身する為の制限、条件がございまする。
それは、“本体と分身体が同じ空間に存在してはならない”。」
翔太郎:「ッ!!」
大火:「だからこそ、私たちと私の弟子をどんどん遠ざけていた……
いいや、遠ざけたかったのは自分自身なんでしょうがね!!
はてさて、互いが鉢合わせしてしまったらどうなるのでしょうか!」
ノウン:「なに!その互いが会ってはいけないという特性は、
吸血鬼では無く、まるで──」
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弓燁:「──そう、吸血鬼カリオストロ、その正体は、
自分自身の姿を自分で見る幻覚の一種で、「自己像幻視」とも呼ばれる現象、
或いはその現象が怪異と昇華した存在“ドッペルゲンガー”!
……いえ正確には“ドッペルゲンガーの鉢合ったら死ぬ”という性質を逆手に取った……
“自分自身に会わなければ死ぬ事は無い”不死者なのです!!」
翔太郎:「く……ッ!
ちッ、違うッ!!」
弓燁:「無駄ですよ。
知っていますよね。例え“本来”は違ったとしても、
私たちの発言に筋が通ってしまえば、“本当”に挿(す)げ替えられる、と。」
翔太郎:「ぐっ……!!」
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ノウン:「ドッペルゲンガー……もしやアオサキ先生に化けてるのも、そういう性質だからか……!」
大火:「多分な。
さて……さてさてさてさて、そろそろ終いにしましょうか!!
ノウン!東方向に音楽室がある!そちらまでこの男をぶっ飛ばせ!!
校舎の事は気にするな!俺の師匠がなんとかしてくれる!!」
ノウン:「分かったッ!!
水晶惑星(すいしょうわくせい)ッ!!かの者を東へ!!!!」
翔太郎:「ぐおおお!!身体が……引っ張られるゥわぁあああああ!!!」
(翔太郎、東方向に引っ張られ、校舎の壁を破壊し飛んでいく。)
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弓燁:「東方向……じゃあ!貴方もあちらへぶっ飛ばしてあげます!!」
(弓燁、翔太郎を結界ごと西方向に蹴り飛ばす。)
翔太郎:「なッ!ぐああああ!!!」
弓燁:「いっけぇ!!!」
????:二人の噺屋(はなしや)に看破され、断罪者と鬼もどきに吹っ飛ばされ、
ドッペルゲンガーに上書きされた吸血鬼が今、同じ空間で鉢合う状況が出来た。
翔太郎:「くっ!!」
翔太郎:「このままではァ!!」
弓燁:「さて、では〆としましょう!!
今回の推理ショーもとい、噺(はなし)はこれにて終幕。
先(せん)づ今日はこれ切り!」
翔太郎:「ぐあああああああああああああああ!!!」
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(大火の足元の陣が消える。)
大火:「フゥーーーーーー……つっかれたァ……」
弓燁:「タイガくーん!」(音楽室から)
大火:「おーう、上手くいったなー!」
弓燁:「うーーーん!!」
ノウン:「アマイヌ タイガ。」
大火:「あー?なんだー?
ああ、吸血鬼退治出来たし、次は俺の番か?」
ノウン:「フフ、いいや、そんな事はしないさ。
君たちには大分助けられたしな。
本当に、ありがとう。」
大火:「……おう。」
ノウン:「──ぐっ……!」
大火:「っ、おい大丈夫かよ。」
ノウン:「あ、ああ、大丈夫だ……ちょっと、力を使い過ぎて、疲れただけだ……。」
大火:「そうか、それだけなら良かった。」
ノウン:「……。
アマイヌ タイガ。」
大火:「んだよ。」
ノウン:「お前が、良い“人間”で、本当に良かった。」
大火:「…………へっ……そうかよ。」
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????:冬台(ふゆうてな)高校から、遠い遠い場所にて。
間。
翔太郎:「……ッハァ……!ハァ……!ハァ……!!」
間。
翔太郎:「たッ……助かりました……!
我々を咄嗟に遠くへ別々に転送してくださったお陰で……
あッ、ありがとうございます……ッ!!」
????:何、お安い御用さ。
私自身の想定外が多かったからね。
カリオストロ、君は悪くない。
翔太郎:「は……ははァー……!!貴方様からの温情、慰めのお言葉、有難い限りでございます……!!」
????:うんうん。
間。
????:うんうん……!
翔太郎:「?」
????:いやァーーー……嬉しい……嬉しいよアマイヌ タイガくん……
君の成長、本当に嬉しくて仕方がない……!!
翔太郎:「……???」
間。
????:アマイヌ タイガ……全ては君が完全完成する為の“興行(ちゃばん)”だ。
次へ繋ぐ為にも、今は終わろう。
????:「今日はこれにて終幕。」
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