[台本]不死身伯爵会議
不老不死者、通称“不死身伯爵”。それはカリオストロが設立した不死身たちの結社。
彼らが目指すは世界の終焉、その先。
そこに至るた為の“不死身”は、まだまだ不完全である。
故に、本日も彼らは集う。
○カリオストロ伯爵
年齢不詳、男性
稀代の詐欺師であり錬金術師であり変装の名手であり吸血鬼……だったドッペルゲンガー。
異端である不死者でありながら、表社会でも顔が広い。
妙に傲慢で上からな印象な物言いが多いが、根はとても良いヤツで仲間に対して情に厚い。
……が…………。
○ロード=サン・ジェルマン
年齢不詳、女性?
碩学の頂点にして、最も有名な不老不死者……と都市伝説になっている人物。
博識で知らない事が無いが、それを鼻にかけることは無く、丁寧な口調で話す。
普段は瀟洒で知的だが、時折快楽主義者的一面が顔をだすいたずらっ子。
“我々”は一人称。
○プレラーティ
年齢不詳、性別不詳
享楽悦楽快楽の為に死んでは生き返り続ける魔術師で殺人教唆者。
現在の身体で“プレラーティ”としての意志が宿ったのは最近で、
ついこの前まで主人格と共同していたが、つい先日、完全にプレラーティに乗っ取られた。
敢えて言うなら、甘いものが好きで苦いのが苦手なのは主人格の名残。
カリオストロ伯爵 ♂:
ロード=サン・ジェルマン ♀:
プレラーティ 不問:
↓これより下が台本本編です。
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サン・ジェルマン:不死者、不死身、不老不死者。
それは世界の終焉に立ち会い、その先を見る為に様々なアプローチで、
己が意志を現在に存続させる存在。
プレラーティ:そんな不死者たちは真に不死という事は無く。
必ず欠点が、死が、存在してしまっている。
カリオストロ:故に、僕は真理探究結社“不死身伯爵”を設立した。
権力に縋る“公爵”では無く、繁栄を願う“男爵”では無く、
知識を求める“伯爵”が、不死身を探究し、手に入れる為に。
カリオストロ:「本日も──」
~喫茶店の一角にて~
カリオストロ:「すいません、このビッグカツサンドを一つと、“ストジェビューなブレンドコーヒー”を一つ。」
プレラーティ:「アイスミルク一つとショートケーキ二つ。」
サン・ジェルマン:「我々は霊薬を口にする他は、食事は必要ないので。」
カリオストロ:「こらサンジェルマン。店員さんを困らせるな。」
サン・ジェルマン:「……では、この“える特製!柑橘スムージー”で。」
カリオストロ:「あー……えっと、一旦これで以上です。
……はい、はい。はーい、お願いしまーす。」
間。
プレラーティ:「サンジェルマンくん申し訳ないのだけど、おてふきを一つくれないかい。」
サン・ジェルマン:「ん、ああ。気が利かなくてすみま──」
カリオストロ:「第n回!不死身伯爵会議!!」(遮るように)
サン・ジェルマン:「……。」(びっくりして固まる。)
プレラーティ:「……。」(ジトっとした目で見てる。)
カリオストロ:「第n回!不死身伯爵会議!!!」
プレラーティ:「うるさい。」
サン・ジェルマン:「不死身伯爵って……”我々”の代名詞じゃないですか。
勝手に名前使って、“我々”許可出してないのですが。」
プレラーティ:「そもそもオレは伯爵じゃないし“不死身伯爵”の会員じゃないんだけど。」
カリオストロ:「黙れ黙れ!!
サンジェルマン!僕も不死身伯爵だから良いのだ!
プレラーティ!伯爵である僕がキミに爵位を進呈する!君も伯爵!
そして君は僕が最初から目を付けていたから設立当初から会員だ!
勿論最っ初からサンジェルマンも会員だぞ!」
サン・ジェルマン:「……。」(じとーっと見ている。)
プレラーティ:「はぁー……カリオストロくんは200年前から何も変わらないね……。」
カリオストロ:「不死身だから、僕の人格形成は筋が一本通っているどころではない!」
サン・ジェルマン:「そうですか。
で、何の用ですかカリオストロ。
”我々”は割と忙しい身なのでさっさと終わらせたいのですが。」
プレラーティ:「右に同じく。
オレは別に忙しくないけれど、不死身の老人共は面白くないから嫌いだ。」
カリオストロ:「そんな事言うなよプレラーティ。
さて、本題に……と言いたい所だが、“徐福(じょふく)”はどうした?
さっきまで居たのに。」
プレラーティ:「彼ならカリオストロくんがお手洗いに行っている間に──」
サン・ジェルマン:「『ああ!あれはかぐや姫!?かぐや姫じゃね!?』(大袈裟にリアクションする。)」
プレラーティ:「──と、あそこの窓を割って飛び出していったよ。」
サン・ジェルマン:「彼は何故かぐやさんを追いかけるのでしょうかね。」
プレラーティ:「不死の霊薬を持ってるからだろ。」
サン・ジェルマン:「嗚呼、理解。
そういえば彼、“我々”の霊薬についてもしつこく聞いてきてましたね。」
カリオストロ:「かぐや嬢が地球に還ってくるワケないだろうがっ……!
てか窓……!
ちょ、ちょっと待ってろよ君たち!」
(カリオストロ、店員の所へ行く。)
カリオストロ:「あ、あの!すいません……
実は、私の連れが、その窓を割ってしまって……はい……はい……
誠に申し訳ございません……あっ、弁償は私が致しますので……」
間。
プレラーティ:「…………。カリオストロくん……何やってんのアレ?」
サン・ジェルマン:「お店の方に謝罪しているんではありませんか。
律儀ですよね。そういう所は彼の美徳であると“我々”は思います。」
プレラーティ:「ふむ……仕方がない。
ジョフクくんとかいうヤツの暴走を止めなかったオレたちにも非はある。
この店に免じて、アイツの話を聞いてやろうサンジェルマンくん。」
サン・ジェルマン:「是非もないですね。
了承いたしました。」
間。
サン・ジェルマン:「……それにしても、彼、何か違和感ありません?」
プレラーティ:「サンジェルマンくんもそう感じてたかい。ちょっと観察してみようか。」
サン・ジェルマン:「ええ、そうしましょう。」
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カリオストロ:「え~……はい、では気を取り直して、
一人欠けてしまいましたが、不死身伯爵会議をやっていこうと思います~」
サン・ジェルマン:「ぱちぱち」
プレラーティ:「わ~」
カリオストロ:「さて、まずは、今回の議題を伝えよう。
今回の議題はズバリ“真の不死身になろう!”だ……!」
サン・ジェルマン:「ほう。」
プレラーティ:「なるほど、世界の終焉に立ち会う為に、完全なる生命を目指すオレたちの本懐だね。」
サン・ジェルマン:「しかし決して有意義とは言えない議題ですね。」
プレラーティ:「確かに。」
カリオストロ:「泣き言を吐くな。」
サン・ジェルマン:「そも“我々”の不死身は実質完成していますし、
貴方たちの目指す方法とは全くアプローチが違いますよ。」
カリオストロ:「サンジェルマンの不死身の仕組みは……
たしか、“日毎に平行世界の自分と入れ替わる”だったか。」
サン・ジェルマン:「ええ、補足するならば、
“我々”がいない平行世界にも一日ずれで生まれる様に、
或いは“我々”の適正がある人間が必ず存在する様になっています。」
プレラーティ:「概念的不死者、といったところか。
更に言えば、サンジェルマンくんは平行世界との自分とも知識を共有しているんだっけね。」
サン・ジェルマン:「ええ、その通り。」
カリオストロ:「だが、結局は“実質”ではないか。」
サン・ジェルマン:「……。」(眉がピクリとする。)
カリオストロ:「はっきり言おうサンジェルマン。
運命とは収束するモノだ。君はいつかそのうち同時に死を迎えるだろうな。」
サン・ジェルマン:「…………。」
カリオストロ:「ん?」
プレラーティ:「はぁー……カリオストロくん、君はどうしてそうやって人のサカシマウロコに触れるのか。
サンジェルマンくん、ここで暴れないでくれよ?
オレは結局のところ、そこらの人間と耐久性は変わらないし、
何よりもこの店に申し訳ない。」
サン・ジェルマン:「ははは、“我々”はそんな野蛮じゃないですし、
カリオストロの様に武闘派ではありませんので。
それにしても、プレラーティは普通に死んでしまうのですね。」
プレラーティ:「ええ、まあ。
オレは君たちと違って、“不死身か?”と問われたら困ってしまうね。
オレはシンプルに自分の子孫たちの身体を乗っ取ってるだけだからな。」
サン・ジェルマン:「えげつないですね。」
プレラーティ:「サンジェルマンくんには言われたくないね。」
カリオストロ:「そうだろう?
プレラーティは自分の血筋が薄まり途絶えてしまったら終わりだ。
そうするとどうだ?世界の終焉に立ち会える者がいなくなってしまう。」
プレラーティ:「そうだな。
唯一完全な不死身と言えるかぐや姫は今や故郷である外宇宙の何処かへ旅立ってしまった。」
サン・ジェルマン:「そのかぐや姫のそっくりさんを先程追いかけていったジョフクも、
プレラーティと同じタイプの反魂術なので課題は同じですね。」
プレラーティ:「うんうん、だからオレは今回の会議で多少は何か掴めたら御の字だね。」
カリオストロ:「うむ!そして僕、カリオストロ伯爵様だが、
よくわからない仕組みでの不死者になってしまった。」
サン・ジェルマン:「?」
プレラーティ:「?」
サン・ジェルマン:「それはどういう?」
プレラーティ:「なんだ?実験に失敗でもしたか?」
カリオストロ:「まあ、そういう事にしておいてくれ。
実は僕、ドッペルゲンガーになってしまった。」
プレラーティ:「?」
サン・ジェルマン:「?」
プレラーティ:「…………。
イカれてるのかな?カリオストロくんたしか吸血鬼だったよね?
それに不死身とドッペルゲンガー、なんの関連がある。」
カリオストロ:「本当だよ!なんで僕こんな事になってるんだ!!」
サン・ジェルマン:「知りませんよ。」
カリオストロ:「さて、仕組みを話すと、
プレラーティ、ドッペルゲンガーがどんなものか言ってみてくれ。」
プレラーティ:「……。
自分自身の姿を自分で見る幻覚の一種で、「自己像幻視」とも呼ばれる現象、
或いはその現象が怪異と昇華した存在だね。
そして、自分自身のドッペルゲンガーを見てしまった人は死ぬ……。」
サン・ジェルマン:「……なるほど。“死に方を限定した”のですね。」
カリオストロ:「まあ、僕の場合“された”が正しいのだけれど、
ともかくサンジェルマンの言うとおり、
僕はもう一人の僕に鉢合ってしまわない限り死なない身体になった。」
プレラーティ:「なんだ、じゃあカリオストロくんの不死身化は完成しているも同然じゃないか。」
カリオストロ:「愚か者!分身が勝手に意志を持ってしまった上に今どこにいるかも分からない状況だ!
僕は殊勝だからきっと今頃は地球の反対側に居るだろうが──」
サン・ジェルマン:「“運命とは収束するモノだ”?」
カリオストロ:「そうだ!その通りだとも!
僕はいつかもう一人の僕に鉢合ってしまうだろう……!
そうなれば僕は死ぬ!それは是が非でも回避したい!
故に!君たちを呼んだのだ!あとジョフクも!どっか行ったたけれど!」
プレラーティ:「なるほどね。
今のカリオストロくんは“不可避の死”がついて回っている状態なんだね。
それに関してはサンジェルマンくんと一緒だもんね。」
サン・ジェルマン:「カリオストロが元の吸血鬼になっても、
更に高位の生命体になったとしても、世界の法則に殺されてしまいますからね。」
カリオストロ:「ああ、そうなってくると、高位の生命体を凌駕し、高次元存在になるしかない。
が、そうなってくると世界の終焉とかの前に全てを知ることが出来る。
であればそもそっちを目指さば良いではないか、となる。
うむ、難しい問題だ。」
プレラーティ:「そうだね。
オレたち不死者は別に集合記録帯になりたいワケじゃないからね。
で?どういうアプローチで行きたいんだいカリオストロくん?」
カリオストロ:「ん?そうだなーそれこそ、僕の元々のアプローチの仕方で行ければ本望だな。」
サン・ジェルマン:「“生物として不死者”、ですね。
“我々”の様な“概念的に不死者”や、
プレラーティの様な“精神的に不死者”じゃない方向性であり、邪道の中では正道な方法。」
カリオストロ:「ああ!その通り!正道!
正道、つまり正しい形で完全なる生命体になりたいのだ!!
あっ……お品物、ありがとうございます。(店員に向かって)」
サン・ジェルマン:「ありがとうございます。」
プレラーティ:「おお~ここのケーキは本当に大きいね!良い。」
カリオストロ:「こちらのビッグカツサンドもでかいぞ!」
サン・ジェルマン:「フフフ……長く生きる者共がこんなにも目をキラキラと……」
カリオストロ:「なんだ、刺のある物言いだな。」
サン・ジェルマン:「いえ、“我々”の感性はどうにも枯れ切っている様で、
貴方たちの様に一つのことにそこまで盛り上がれるのは、素直に羨ましいな、と。」
プレラーティ:「これだから不死身の老人は言うことが一々気に障るんだよね。
心が動かないなら適当な墓場で眠っていれば?」
サン・ジェルマン:「当たりの強いこと。」
プレラーティ:「良いかいサンジェルマンくん。
人間の食という文化は常に進化し続けている。
それはまさにオレたちの対局だ。
だのにそれに目を向けず儚(はかな)むお前は愚者だ。」
サン・ジェルマン:「しかし“我々”は先にも言った様にそも食事を必要としません。」
プレラーティ:「だから愚者だと言っている。
食という文化は既に生きる為の栄養補給という側面を逸脱し、
享楽悦楽快楽を充足する為の成長欲と相違無い。」
カリオストロ:「こらこらプレラーティ、気持ちは分かるが熱くなるな。
せっかくの食事の味が落ちてしまうではないか。」
プレラーティ:「……………………。
それもそうだね。
ぱくっ。
……~~~っ!」
サン・ジェルマン:「……。
(一口飲む。)
……これは中々。」
カリオストロ:「ふー……やはり珈琲は良い。
落ち着く。
………………これでは?」
プレラーティ:「?」
サン・ジェルマン:「?」
カリオストロ:「食によって不死身を目指すのはどうだ?」
サン・ジェルマン:「……。」
プレラーティ:「……。」
カリオストロ:「原点回帰だ!」
プレラーティ:「そうだね。いやそうなんだけどさ。
それってさ、オレがさっき言った、
“食という文化は既に生きる為の栄養補給という側面を逸脱し、
享楽悦楽快楽を充足する為の成長欲と相違無い”、の逆を行っていると思うのだけれど。」
カリオストロ:「だから原点回帰だと言っているだろう。」
サン・ジェルマン:「食による不死化……
現代のこの世界の知識では未だ成し得てない方法であり、
継続的な摂取が必要不可欠という点で“非効率”と300年前に断じたのは、
他でも無い貴方ではないですか。」
カリオストロ:「それはそうだが、それは300年前の環境では到底叶えられないと思ったからだ。
だが今の時代はどうだ。
不完全な不死者となった僕たち以外にも多くの天才が現れ、
人類のステージを何段階もアップデートした。
300年前とは可能性が段違いに違う。」
プレラーティ:「それは確かにそうだが……あむっ。
オレは反対だね。
食の進化は不死から到底離れていっている。
たしかに?健康志向的な食も勿論大分進化した。
が、だ……時にカリオストロくん。」
カリオストロ:「ん、どうしたプレラーティ。」
プレラーティ:「現代における一般的人類の食による長寿の秘訣、分かるかい。」
カリオストロ:「それは勿論、代謝を抑え、テロメアの消費を控え──
…………。(自分が食べてるビックカツサンド、“ストジェビューなブレンドコーヒー”を見る。)
……スゥーーーーーーーーーーーーーー……」
プレラーティ:「カリオストロくん、珈琲好き?」
カリオストロ:「……好物だな…………。」
プレラーティ:「お肉は?」
カリオストロ:「………………大好き……です……。」
サン・ジェルマン:「お肉は高カロリーですし、カフェインは代謝を大幅に上げますもんね。」
プレラーティ:「耐えられるかい?カロリー制限。」
カリオストロ:「……くっ!無理だ!!」
サン・ジェルマン:「本当に愉快なお人。」
プレラーティ:「まあ、そもそも今言ったレベルの話では“長生きしたね~”くらいで
不老不死には到底及ばないけどね。」
カリオストロ:「う~~~~ん……僕は君たちの様に正しく錬金術師でもなければ
碩学の使徒では無いからな……」
プレラーティ:「……?」
サン・ジェルマン:「ふふふ、正道での不死身はやはり難しいですね。
脳みそを弄って神経細胞休眠化させます?」
カリオストロ:「休眠状態に入ってしまっては意味無いだろう。」
サン・ジェルマン:「ふふふ♪」
プレラーティ:「そうなってくると、どうにかしてドッペルゲンガーとなってしまったのを、
解除するのが一番丸いんじゃないかな。」
カリオストロ:「うむ、それはそうなんだがなー
実は結構色々やっているのだよ。
だがどうにも上手くいかない。」
サン・ジェルマン:「そうでしょうね。
何せ、世界に介入した法ですからね。
“我々”以上の高位、いえ高次元存在によるモノは中々難しいです。」
カリオストロ:「う~~~~む……
出来ればやりたくはないが、反魂の術で一旦死んで復活!は無理だろうか……。」
プレラーティ:「無理だろうね。
反魂術は飽くまでも肉体の死からの対象方法に過ぎない。
カリオストロくんの今の状態の死、
詰まるところドッペルゲンガーに鉢合うのは精神の方が死んでしまうからね。」
カリオストロ:「やはりそうか……はぁー……どうしたものか……」
プレラーティ:「なに、オレたち、いや人類が何千年何万年という歳月を要しても、
完全なる生命には手が届かないんだ、一朝一夕でどうにかなるものじゃないさ。」
サン・ジェルマン:「その通りです。
“我々”の実質不死身も、カリオストロから言わせればまだまだ不完全、ですしね。」
プレラーティ:「根に持ってやるなよ。」
サン・ジェルマン:「“我々”の英知の積み重ねをなじられたのですから、向こう千年は根に持たせていただきます。」
プレラーティ:「陰険だなー」
カリオストロ:「んー……ん、なんですか店員さん?」
間。
カリオストロ:「あ……窓の件……!はい……はい……」
間。
カリオストロ:「サンジェルマン、プレラーティ。
ちょっと行ってくる。」
サン・ジェルマン:「はい。」
プレラーティ:「うん。」
カリオストロ:「あーついでにお勘定もしてくる。
お前たちはゆっくりしているが良い。」
サン・ジェルマン:「分かりました。今お金を出します。」
カリオストロ:「あ~待て待て、今回は僕が払おう。
何せ僕が開催したからな。」
プレラーティ:「太っ腹だなカリオストロくん。」
カリオストロ:「まあ、僕は君らと違って社会的地位がちゃんとあるからなっ!」
プレラーティ:「お前なァ……」
サン・ジェルマン:「“我々”もありますよ、社会的地位。」
カリオストロ:「とにかく、行ってくる。」
(カリオストロ、去る。)
間。
プレラーティ:「……どうだった。君、友愛結社で一緒だったんだからオレより分かるでしょ。」
サン・ジェルマン:「“我々”が知るカリオストロと比べてネガティブになっている印象でしょうか。
あと妙に他人に腰が低いし、地味に言葉の端々がトゲトゲしい気がします。」
プレラーティ:「やっぱり?
あとあんなに運命運命言ってたっけか。
あれなのかな、吸血鬼からドッペルゲンガーになった事で性格、性質が──」
(カリオストロ?が入店する。)
カリオストロ:「ん?おや!サンジェルマンにプレラーティではないかー
君たちがこんな所に居るなんて珍しいじゃないか~」
サン・ジェルマン:「へ?」
プレラーティ:「え?」
カリオストロ:「君たちがこんな所にいるなんて、
はっ!まさか不死身伯爵会議を!?」
サン・ジェルマン:「えっと、カリオストロ?」
カリオストロ:「どうしたのだねサンジェルマン?まるでドッペルゲンガーでも見たような顔をして。」
プレラーティ:「き、君、今頃地球の裏側にいるのでは……」
カリオストロ:「ん?
…………。
ああ、なんだ、僕が今ドッペルゲンガーになってる事を知っているのか。
そうだな。もう一人の僕は殊勝だからきっと今頃は地球の反対側に居るだろう……、と考えて逆にこちらに留まっているのだ。」
プレラーティ:「スゥーーーーーーーーーーーーーー……サンジェルマンくん。」
サン・ジェルマン:「ええ、プレラーティ。」
プレラーティ:「これはつまりそういうことだよね。」
サン・ジェルマン:「そうですね。多分一緒に居たほうが偽物……もとい、ドッペルゲンガー側……。」
プレラーティ:「多分偽物って自覚無いタイプだよねー……」
サン・ジェルマン:「そんな気がします……。」
カリオストロ:「?」
プレラーティ:「どうする?」
サン・ジェルマン:「このまま鉢合わせるのも面白いと思うのですが、
ここのお会計をして頂いた手前、殺してしまうのは忍びないですね。」
プレラーティ:「そうだね……じゃ……」
カリオストロ:「どうしたのだね?コソコソと話をして。」
プレラーティ:「カリオストロくん、他の店に行こう。」
カリオストロ:「え?僕は今ここに来たばかりなのだが?
僕はここのビッグカツサンドと“ストジェビューなブレンドコーヒー”を……」
サン・ジェルマン:「“我々”の奢りでジャジャエンにでも行きましょう。」
カリオストロ:「なに、ジャジャエン!高級焼肉店ではないか!」
サン・ジェルマン:「はい、日頃お世話になっているので。」
カリオストロ:「君に会うのは200年ぶりでは?」
プレラーティ:「老人は時間間隔壊れてるから気にしないで!!さ!行こう!!」
サン・ジェルマン:「殴りますよ。」
カリオストロ:「うむー納得行かないが、ま、良いか。」
サン・ジェルマン:「それにしてもプレラーティ。
畢竟(ひっきょう)、やはり何も進みませんでしたね。」
プレラーティ:「分かっていた事さ。
オレにとっては総て来るべき日の為の暇潰し。
そう、進展しようとしまいとね。
だが、最後はほんのちょっぴりだけ面白かった。」
サン・ジェルマン:「それもそうですね。」
カリオストロ:「何の話だー?」
プレラーティ:「いや、何でもないさ。
ま、せっかくだ、カリオストロくん。
今君が悩んでいる事を、ジャジャエンに行くまでの道のりで聞いてあげようじゃないか。」
カリオストロ:「む?悩み?僕は君らに久々に会えて悩みなど無いぞ!」
サン・ジェルマン:「あー……これが違和感の正体。」
プレラーティ:「これは本当にカリオストロくんだわ。さ、行こうカリオストロくん。」
カリオストロ:「うむ!」
間。
サン・ジェルマン:「では、ご馳走様でした、自覚無き偽物のカリオストロ。」
間。(カリオストロ、サン・ジェルマン、プレラーティ、去る。)
カリオストロ:「待たせたな!」
間。
カリオストロ:「………………あれ?サンジェルマン?プレラーティ?」
間。
カリオストロ:「二人共、どこいったのだ???」
───────────────────────────────────────
END