[台本]改造戦屍ファルシファイ~第一話:試験起動(テストドライブ)~
世界設定、場面情景
日常の中に潜む狂気、或いは凶器。
これは、不条理にも巻き込まれてしまった青年が、『狂鬼』と化す物語。
物語はとある研究室での出来事から語られる。
おおおおおおおおおおお―ッ!!“断片解錠(リリース)”ッ!!
登場人物
〇亘理 進一(わたり しんいち)/“改造戦屍(かいぞうせんし)”ファルシファイ
22歳、男性
兄貴肌で頼りになる青年。
勝手な都合で殺され、勝手な都合で改造され、“改造戦屍ファルシファイ”となる。
ファルシファイに変身してる時は攻撃的な性格となり雄たけびと唸り声しかあげれなくなる。
主人公。
〇Dr.ラプラス(ドクターラプラス)
年齢不詳、女性
研究施設クレアシオンの所長にして唯一の研究員。
天才であり愚者。傲慢、ウザいそして何より色々とワガママな女性、を装っている。
殺された進一を勝手に改造し、改造戦屍ファルシファイに仕立て上げる。
自称する名である“Dr.ラプラス”は「当然ですが仮名です。」とのこと。
〇トラース
年齢不詳、男性
謎の秘密結社“マクスウェル”によって改造された一般男性。
粗暴で乱暴な言動をしており、戦闘能力が高い。
Dr.ラプラスの命を狙い研究所クレアシオンを強襲する。
〇ナレーション
年齢不問、性別不問
作中のナレーション。そして改造戦屍ファルシファイの言葉と技名を代弁する。
☆亘理 進一/☆ファルシファイ ♂:
Dr.ラプラス ♀:
トラース♂:
ナレーション 不問:
※進一とファルシファイは☆を参照していただければ追い易いと思います。
これより下からが台本本編です。
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N:名も無い森の中に人知れず佇む巨大施設。
それを眺める一人の男が居た。
トラース:「へぇ~……あれが……
……了解~」
N:そう言って、男は携帯をしまう。
トラース:「さ……って……お仕事と行きますかねェ」
トラース:「………………変身……ッ」
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N:ここは研究施設クレアシオン。
物語はここから動き出す。
そこで一人の女性が腕を組み、独り言を呟く。
ラプラス:「うーん……これで大丈夫だと思うのだけど……」
☆進一:誰だ……身体が……動かない……何も、見えない……
ラプラス:「何かやらかしたかしら?やらかしたかもしれないわね……。」
☆進一:何を……やらかしたんだ……
ラプラス:「う~~~~ん……ま、いいわ!”試験起動(テストドライブ)”!開始!!」
☆進一:なんだ……視界が明るく……
N:女性の声に呼応する様に施設が唸りを上げる。
ラプラス:「さあ!起きなさい!」
☆進一:「――うっ……!うぁ……!!」
ラプラス:「起きた!起きたわ!!実験成功よ!!」
☆進一:「……え……?……なんなんだ……?」
ラプラス:「ねえ?意識はしっかりしてるかしら?
言ってる事分かる?指何本に見える?喋れる?」
☆進一:「えっ……と……2本……」
ラプラス:「指は5本でーす。」
☆進一:「うざァ!!」
ラプラス:「意識はしっかりしてるわね。それに言ってる事も分かってるし、喋れる。
動作にも問題は無いようね。」
☆進一:「……なあ、ここはどこでアンタは誰で俺は何があったんだ?」
ラプラス:「ん?そうね……良いでしょう。貴方には知る権利があります。
亘理 進一(わたり しんいち)、貴方の質問全てに答えましょう。
ここは私の”研究施設(ラボ)”クレアシオン。そして私はここの所長にして唯一の人員……
……そうね、“Dr.ラプラス”、とでも呼んでください。
そして、貴方に何があったか……なのだけど……」
☆進一:「……。」
ラプラス:「……躊躇っても仕方ないわね……。
貴方にとってはとても残念な話ですが、ワタリ シンイチ、貴方は一度死にました。
いえ、殺されました。」
☆進一:「………………は?俺、死んでる……?殺されてる……?
じょ、冗談だよな?」
ラプラス:「冗談じゃありません。事実です。
自分の姿をよく見てみてください。」
N:そう言って、Dr.ラプラスはシンイチの後ろにある鏡を指差す。
そこに映る彼の姿は、全身継接ぎだらけで、接合されている皮膚と皮膚との
色が合っていない。それどころか人間の皮膚では無い部位まである。
☆進一:「なッ、なんだ……ッ、これは……ッ!」
ラプラス:「ワタリ シンイチは死ぬ直前の記憶は覚えていますか?」
☆進一:「え?……お、覚えてない……」
ラプラス:「やはり、ですか……では、貴方がどの様に亡くなったか、話しましょう。
どういう経緯であの場所に居たかは知りませんが、
映画館にて爆破事件に巻き込まれ、
爆心地の近くにいた貴方は身体がバラバラになってしまったのです。」
☆進一:「バ……バラバラ……
……な、なぜアンタは俺を助けてくれたんだ……?」
ラプラス:「死んじゃってるので助かったとは言えないですけどね。
理由は単純です。爆心地近くに居たものの、
巻き込まれ死亡した中で最も状態の良い死体で脳の損傷が少なかったからですね。」
☆進一:「そうなのか……なあ、この姿……もうずっとこのままなのか……?」
ラプラス:「そうねーそうでもないです。
では、ポチっとな。」
N:Dr.ラプラスは手元のリモコンを動かす。
すると、見る見る内にシンイチの身体の継接ぎが見えなくなっていく。
☆進一:「おお!おおお!元に戻った!!」
ラプラス:「外見だけですけどね。てへぺろ!
……それ以外は人とは言えないでしょうね。」
☆進一:「それは、どういうことなんだ?」
ラプラス:「そのままの意味です。体温は人肌とは思えない程に
冷たくなったり熱くなったりしますし、身体能力も人並み以上ですし
心臓は動いていません。」
☆進一:「えぇ……?
動いてない……?」
ラプラス:「動いていません。」
☆進一:「やば……じゃあ、俺はどうやって活動して、こんな感じに、外面(そとづら)は普通通りなんだ?」
ラプラス:「お教えしましょう。
まず、どうやって活動しているのか、
それは貴女の……いいえ、貴方の“正義の心”に呼応して生きながらえてます。」
☆進一:「正義の心……?それは、どういうことだ?」
ラプラス:「こちらもそのままの意味です。
私は天才なのです。天才さ故に、概念のエネルギー化に成功したのです。」
☆進一:「概念のエネルギー化……?なんだそれ……わけわかんねぇんだけど……」
ラプラス:「ふふーん、そもそも、かつて”ニコラ・テスラ”が提唱した様に物質も非物質もエネr……
……まぁ、分からなくても大丈夫です。説明も難しいですし。
とにかく、貴方の正義の心が生きる灯(ともしび)となっています。
次に外面に関してですが、これもまた私の天才的頭脳の賜物です。
この世界は様々なモノで構成されていますよね?」
☆進一:「あ、ああ。そう、だな……?」
ラプラス:「様々なモノとは気体、或いは液体、或いは固体。
それら物質に語り掛け、借り受け分解し、己の物として瞬時に構築する超技術。
アトム・リインカーネイト・トリガー・システム(※)、縮めて”ARTS(アーツ)”によるものです。」
※Atom Reincarnate Trigger System(原子転生発動機構)
☆進一:「”ARTS(アーツ)”……。」
ラプラス:「”ARTS(アーツ)”は名前の通り、端的に言えば、原子に働きかける機構です。
原子たちが貴方に集まり足りないモノや無いモノを補い新たな形として構築されるの。
そして今、原子たちはシンイチを外見だけですが、元の姿に構築したのです。」
☆進一:「へ、へぇ~……なんかよく分かんないけど、すげぇことは分かった。」
ラプラス:「まぁ、それくらいの理解で問題ないですよ。
ですが、その姿を保てるのは一時的です。
それはあくまでも借りているだけなので。」
☆進一:「そうか……一時的……なのか……」
ラプラス:「はい、それに”ARTS(アーツ)”はただ姿を変えるだけの機構ではありません。
真骨頂は兵器としての面です。」
☆進一:「兵器?なんでそんな物騒な面が?」
ラプラス:「それは、ふむ、そろそろですかね。」
☆進一:「?」
N:Dr.ラプラスがそう言って一拍、大きな爆発音が鳴った。
☆進一:「なッ、なんだッ!!?」
ラプラス:「襲撃者です。”マクスウェル”からの刺客です。
このラボを、私を、貴方を始末しに来たのでしょうね。」
☆進一:「な、なんだってー!!!」
N:爆発音がした方向から“一人”、否、“一体”やってくる。
トラース:「ご明察。流石はラプラス博士様だ事。
相変わらず良い女だ……」
ラプラス:「当然です。その不敵な空気、下劣な発言、相変わらずですねトラース。」
☆進一:「ッ!!
人じゃ……ッ、無い……ッ!?」
トラース:「人じゃないたァひでぇ事言ってくれるじゃねェかよー。
テメェと同じだよ。坊主。」
N:トラースと呼ばれる男は全身が鱗に覆われて青く、
髑髏の様な顔をしており、眼球が本来ある部分は黄色く光っていた。
トラース:「テメェと同じ、改造人間だよ。」
☆進一:「……ッ!」
ラプラス:「それで?貴方の目的は?
私を殺しに来たのですか?」
トラース:「事と次第によってはその通りだな。
だが、俺が命じられてるのはラプラス博士様を連れ戻す事だ。
大人しく着いてくるのであれば荒事はしないぜ?」
ラプラス:「当然ですが、抵抗しますよ。」
トラース:「ほう……じゃあーとりあえず四肢(しし)を切り落としておくかァー……
手足なんて後で適当にくっつけときゃ良いもんなァ!!」
☆進一:「!!」
N:トラースが駆ける。Dr.ラプラス目掛けて。
そして彼の腕に付いた刃が彼女を襲う。
が、しかし――
トラース:「……ほう?」
☆進一:「ぐ……ッ!」
N:トラースの刃を、シンイチが防ぐ。
☆進一:「こ、これが、改造人間の、力……か……!」
ラプラス:「シンイチ!貴方の力はそんなものじゃありません!そのままトラースを撃退するのです!」
☆進一:「相分かった……!うおおおおおおッ!!!」
トラース:「なァにッ!?ぐッ、ぐおおおおおお!!!」
N:シンイチは力任せに、掴んだ刃を、掴んだ右腕を、握り潰し、引き千切る。
トラース:「テンメェエエエ!や、やりやがったなァ!!」
☆進一:「よし!勝てるぞ……!」
トラース:「くッ!甘ェよッ!!オラァ!!!」
☆進一:「ぐああああ!!あッ、あああ……!う、腕がァ……!!」
N:引き千切る際に生まれたシンイチの隙を狙い、トラースはもう片方の腕に付いた刃で
シンイチの左腕を切り落とし、千切り取られた自身の腕を奪い返す。
☆進一:「くッ……ああ、だ、だが……!この状況、五分と五分だ……!」
N:両者、共に睨みあう。
トラース:「ああ?考えが甘ェよ。俺たちはただの人間じゃあないんだぜ。
人造人間ってのはなぁ、千切れちまった腕なんてくっつけときゃあ──」
☆進一:「……!!」
トラース:「──治るんだよォ!!!」
N:トラースの右腕が彼の身体と結合した。
☆進一:「な、なんだって……!」
トラース:「見たところ、まだお前は”試験起動(テストドライブ)”したばかりで力を上手く扱えてねぇみてぇだな。
だったら……!!」
☆進一:「あ“、あ”あ“……!」
N:トラースの拳がシンイチの身体を貫き抉る。
トラース:「これがコイツの核か……
これ以上生きるな。それが、坊主の為にもなる……。」
N:トラースはシンイチに囁き、核を握りつぶす。
☆進一:「がっ────」(倒れる。)
トラース:「…………。(進一を一瞥する。)
さて、ラプラス博士様。アンタの作った改造人間は壊れた。
抵抗も虚しかったな。」
ラプラス:「そんな事ありません。”試験起動(テストドライブ)”にしては十分な動きですよ。
それに、貴方は弱いですからね、まだ壊れてないかもしれませんよ?」
トラース:「ああッ!!?」
N:トラースには言われるのが大嫌いな事がいくつかある。
そのうちの一つが“弱い”。
先ほどの優しい言葉から一変し、憤怒を露わにする。
トラース:「へッ!そんじゃあ、四肢(しし)を切り取ってやるよ博士様ッ!
あーそうだァ!後でくっつける四肢は何が良い?
俺のオススメは牛か山羊、或いは犬猫でも良いなぁー……!
──────……あ?」
☆進一:「ま……まだ、だ……」
N:これ以上進むな、とトラースの足を掴む。
トラースは訝しげに潰したはずの核を見る。
トラース:「ああ……?……どういう事だ……。
コイツ……どうやって動いてんだ……?」
ラプラス:「教えてあげましょう。彼は“正義の心”で動いているのです。」
トラース:「正義の心……?
ッ!!まさかッ!”概念炉心(がいねんろしん)ジャイ・レート ”……ッ!?
”埒外異端技術(らちがいいたんぎじゅつ)”かッ!!!」
ラプラス:「その通りです。
非物質さえもエネルギーと変換する技術、新たなフリーエネルギー技術。
私の最高傑作です!」
トラース:「なんでもあり女がァ!!」
ラプラス:「それだけではありません!
シンイチ!今こそ真の力を発揮するのです!」
☆進一:「真、の力……?」
トラース:「させねぇよ!オラァ!!」
N:シンイチを蹴り飛ばし、飛ばした方向に跳躍する。
☆進一:「くっ!!」
トラース:「オラオラオラァ!!死ねやァ!!“人で無しの殺戮鬼(ブルツゥメンリッパー)”ッ!!!」
N:トラースの両腕の刃の連撃がシンイチの身体をズタズタに切り裂く。
四肢は小間切れに、胴と首は完全に切り離された。
血飛沫で辺りが塗りたくられる。
トラース:「――ふぅー……これくらいしとけば流石に死んだろ……。」
ラプラス:「甘いわ。」
トラース:「!?」
ラプラス:「貴方たちは人間じゃないんですよ。」
トラース:「……!」
ラプラス:「改造人間はそう簡単には死なないわ。」
☆進一:生きてはいるが、どうしろっていうんだ……!!
くっ……死んでたまるか……!殺させてたまるか……ッ!!」
ラプラス:「彼の”正義の心”は、”灯(ともしび)”は、こんなものでは消す事は出来ません!!」
☆進一:正義の……心……。
☆進一:このままでは駄目だ!
変わらなければ!ヤツを倒せる俺に!!
☆進一:「お、おおおおおおお……―」
トラース:「コイツ!不死身か……!!」
ラプラス:「そう思って良いですよ。彼の正義の心が砕けぬ限り、不死身よ!
さあ!シンイチ!いいえ、”改造戦屍(かいぞうせんし)ファルシファイ”!断片解錠(だんぺんかいじょう)よ!!」
トラース:「改造……戦屍……!?俺と同じッ!!!!」
☆進一:「――おおおおおおおおおおお―ッ!!“断片解錠(リリース)”ッ!!」
N:世界がシンイチに呼応する。
バラバラにされた身体が再構築され、新たな姿を形成する。
身体が黒い鎧に包まれ、禍々しいフルフェイスの兜が顕現する。
☆進一:変われッ!!
N:塗りたくられた血が彼の首元に集まり、マフラーの形を成す。
☆ファルシファイ:変われッ!!替われェ!!!
N:そしてッ!己の兜の口元を自身で破壊し、凶暴な顎(あぎと)が露出するッ!!
☆ファルシファイ:「「キッシャアアアアアアアアアアアッ!!!」」
トラース:「変身ッ、しただとぉッ!?」
ラプラス:「これが!」
N:これがッ!
ラプラス:「改造戦屍(かいぞうせんし)!」
N:ファルシファイだッ!!
☆ファルシファイ:「「クオオオオオオ……!」」
トラース:「くっ……!だが!改造人間と言えど人間は人間!
ちょちょいとパワーアップが出来て堪るかよ!」
N:ファルシファイは思った。
ヤツを倒さねばならない、とッ!
☆ファルシファイ:「「アッシャアアアアアッ!!」」
トラース:「ぐッ!!なんつぅ重い拳!!」
☆ファルシファイ:「「キアアアアア……!」」
トラース:「この拳ごとぉ!腕を切り落とすッ!!」
N:トラースの刃がファルシファイの左腕を切り落とさんと振り落とす!
がッ!腕を切り落とす事は無かったッ!!
トラース:「くおおおお!!?かっっってぇ!!!」
N:そして!逆にトラースの腕を掴むッ!!
トラース:「や、やべぇ!!」
N:ファルシファイは覚悟を決めるッ!!
やるしかないッ!やるんだッ!!、とッ!!!
黒銀(くろがね)の拳でトラースを殴り続けるッ!!
☆ファルシファイ:「「ウォオオオオオオーーーームッ!!!」」
N:トラースの首根っこを掴み、ファルシファイが猛(たけ)るッ!
トラース:「グッ!!ガアァッ!!!」(首を強く掴まれる。)
N:身体は燃える様に熱を帯び、更に力が篭るッ!!
敵だ!敵だ敵だ敵だ敵だッ!
殺す!殺してやるッ!!
ラプラス:「さあ!ファルシファイに呼応しなさい!世界よ!”ARTS(アーツ)”よッ!!」
N:”ARTS(アーツ)”が発動し、ファルシファイの右手に赤く燃え猛る剣が構築されるッ!!
トラース:「なにィッ!?”ARTS(アーツ)”だとォッ!!?
ラプラス貴様ァ!!この坊主になんて無茶なモノをォッ!!!」
☆ファルシファイ:「「ギギ、ギギギ……!」」
N:ファルシファイの斬撃がトラースを襲う!!
☆進一:喰らえェエエエッ!!!
N:”改造されし炎の巨人の剣(ファルシファイ・レヴァンテイン)”ッ!!!
☆ファルシファイ:「ダッシャァアアアアアアアアアアアッ!!!!」
トラース:「ぐあああああああ!!」
N:トラースの斬られた部分から炎が噴出し、全身が焼ける。
トラース:「おお……ッ!おおおおおお!!
燃える!燃える!死ぬ!死ぬ!このままでは死ぬッ!!
ぐおおおお……!こんな所で死んでたまるかッ!こんな所でェエエエエエ!!!」
N:トラースは窓を割り、川に落ちていく。
ラプラス:「あれではきっと生きてはいられないでしょうね。」
☆ファルシファイ:「「ギギギギ、アアアア……。」」
ラプラス:「……”改造戦屍(かいぞうせんし)ファルシファイ”の”試験起動(テストドライブ)”終了。
”ARTS(アーツ)”を停止し、非戦闘態勢へ戻ってください。」
N:Dr.ラプラスの声で”ARTS(アーツ)”の武装が解かれ、ファルシファイからシンイチに戻る。
☆進一:「……。」
ラプラス:「……消耗が激しくて休眠状態に入ったのね。
お疲れ様です。シンイチ。」
N:Dr.ラプラスは休眠状態に入ったシンイチを膝枕し、頭を撫でる。
ラプラス:「貴方のおかげで、私は今生きてます。
……あの時も、今も、ありがとうございます……。」
N:柔らかく優しい笑顔をしていたDr.ラプラスだったが、すぐに顔を曇らせる。
ラプラス:「……巻き込んでしまって、ごめんなさい……。」
~~~~~~~~~~~~~~~~
N:翌日、Dr.ラプラスの運転する車の中、シンイチが目を覚ます。
☆進一:「ん……んぁ……」
ラプラス:「あら?起きました?
貴方が休眠状態に入ってから一日が経ちましたよ。」
☆進一:「え……?あ、ああ……
えっと……Dr.ラプラス……さん……」
ラプラス:「呼び捨てで良いですよ。シンイチ。」
☆進一:「……はい。
…………昨日のは、夢じゃ、ないのか……。」
ラプラス:「はい、残念ながら夢じゃありません。現実です。」
☆進一:「そっか……なあ、俺ってこれからどうなるんだ?」
ラプラス:「……そうですね。
とりあえず、普通の生活には戻れません。
普通の食事も行えません。
今日から、シンイチは私の護衛兼助手をしてもらいます。」
間。
☆進一:「そっか。分かった。」
ラプラス:「……結構平気そうですね。」
☆進一:「平気なもんかよ。
俺は死んじまってて、改造されて息を吹き返して、よくわからん技術で色々あって、
なんか敵襲あって……頭ぐちゃぐちゃだよ。」
ラプラス:「そうですよね……」
☆進一:「だけど、なっちまったもんはなっちまったもんだ。
受け入れるよ。」
ラプラス:「……ありがとうございます。」
☆進一:「……それで、これからどうするんだ?ラプラス。
研究施設は……もう安全じゃないだろ?
それに、マクスウェル……だっけ?そっからの刺客を撃退するのは良いけどよ、
このままでいいのか?」
ラプラス:「当然ですが、そのままは駄目ですね。襲われる度に居場所を追われては、
おちおちティータイムをする事も出来ませんからね。
とりあえず、このまま西へ、第二研究施設で色々と準備を済ませてマクスウェルをぶっ潰します!」
☆進一:「おう!そうしようぜ!!」
N:こうして、改造戦屍(かいぞうせんし)ファルシファイの物語は始まった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
N:研究施設クレアシオン跡付近の川。
トラース:「―─ハッ!
…………はぁはぁはぁはぁ……!なんとか死なずに済んだか……ぐ、ぐあああ……
身体が動かねぇ……クソォ……!
亘理 進一(わたり しんいち)……!ファルシファイ……!!……ハハハ、ハハハハハ!!
つえーじゃねぇか……!俺が!俺がお前を殺す!!!
待っていろよ……ッ!ファルシファイッ!!!」
───────────────────────────────────────
To Be Continued…