[台本]素敵で素晴らしい貴女と
世界設定、場面状況
謎の流行り病、人々の奇行、異常気象が世界を混沌へと誘う。
しかしそんなものでは変わらない人々の日常もあった。
これは九つの砕かれた物語の断片の一つ。
しかしアンハッピーエンドが語られなかった未然防止の冒涜的物語。
登場人物
○凛優院 はなび(りゆういん はなび)
高校一年生、16歳、女性
世界に退屈している普段は無気力な話を聞かない女性。
退屈故か世界がどうなろうとどうだっていい冒涜的人物だが好奇心旺盛。
突如現れた最羽日葵に強い興味を示している。主人公。
○最羽 日葵(さいはね ひまり)
26歳、女性
イレギュラーを名乗る突如現れた未来人。
元々は優しい性格だったらしいが、冷徹な人間。或いは子供とも言える。
自分を戦闘において地球史最強と称し、世界を救う為に現れたと宣う。
凛優院 はなび♀:
最羽 日葵♀:
これより下から台本本編です。
───────────────────────────────────────
授業中の一幕。
はなび:この世界は混沌に包まれている。
謎の流行り病。人々の奇行の横行。天災級の異常気象。
それが日夜“跋扈(ばっこ)”している。まさに世界崩壊の危機だ。
当然学校なんか行ってる場合じゃない。
はなび:「…………その筈なんだけど……」
はなび:わたしは学校で授業を受けている。
馬鹿げてる。とても馬鹿げてる。
どうやら世界崩壊の危機程度では学校は休みにならないらしい。
はなび:「まぁ、当然なのかな。」
はなび:だって、わたしが住むこの町は依然平和なままだし。
なんかこの間、何処かの廃工場が大爆発を起こしたり、
また何処かの廃工場でヤンキーだかギャングだかヤクザの抗争があった程度で、
結局わたしの日常はなんにも変わってない。
はなび:「…………いっそのこと、この学校に隕石でも落ちてこないかな。」
はなび:そんなわたしの願いは虚しく、今日も授業を一通り寝て過ごし右から左に流し、帰路に着く。
そういえばお昼休みも寝ててお弁当食べてない……。
そんなのどうだっていいけれど……それにしても、
退屈だ。退屈退屈退屈……
日葵:「きゃーーーーーー!!
あなた!左でも右でも良いからそこにつっ立ってないで避けて!!」
はなび:「え?」
はなび:上から声がした。
とりあえずその場から退避する。
すると、そこに結構な高さから誰かが落ちてきた。
日葵:「いっ―……ってって……
……あの男……雑な転送なんかして……!!
帰ったら絶対に“折檻(せっかん)”してやるわ……!」
はなび:「……。」
はなび:呆然。
何故人が空から降ってきたのか?
何故あの高さから落下してきたのに平気なのか?
折檻って今日日聞かなくないか?
状況が飲み込めない。だけど分かることがある。
日葵:「まぁ、今はいいわ……。
さて……転送年代は合ってるかしら……?
……分からない……わね……私ってばタイムジャンプなんて初めてだもの。
仕方ないわ……って、あなた。何を見ているのかしら?」
はなび:「……。」
日葵:「…………?
大丈夫?聞いてる?」
はなび:「……綺麗。」
日葵:「……へ……?」
はなび:突如空から降って現れた彼女はとても綺麗だ。
そんな彼女にわたしは強く惹かれた。
はなび:「お姉さんとても素晴らしく綺麗ですね!
あ、わたしの名前は凛優院(りゆういん) はなびです!
お姉さんは??」
日葵:「えっ……ありがとう。
名前は最羽 日葵(さいはね ひまり)よ……あ゛!じゃなくて、イレギュラーよ……!」
はなび:「最羽 日葵(さいはね ひまり)さんですね!よろしくです!」
日葵:「くっ……ああ……名前は伏せるように言われてたのに……
やってしまったわ……。」
はなび:「ところでヒマリさんは何者ですか???
天使?天使だったりします???」
日葵:「……違うわ。
私は天使なんかじゃない。
ま、右も左も分からない状況だったしむしろちょうど良かったかもしれないわ。
えっとあなた?質問良いかしら?」
はなび:「なんでしょう!」
日葵:「今この世界は崩壊の危機というのは本当かしら?」
はなび:「え?あー……そうですね。そうらしいですね。」
日葵:「急に落ち着いたわね。その変わりよう怖いわ。
でも、まぁ、転送は成功ということね。
先程は質問に答えずに質問を返してごめんなさいね。
私が何者かというと、この時代の人々に警告し、この世界を救い、歴史を変える為に来た未来人よ。」
はなび:「……未来人……。」
日葵:「…………。
別に信じる必要はないわ。
突飛な話だものね。別に馬鹿にしてくれても良いわ。」
はなび:「信じます!」
日葵:「……そう。」
はなび:「だって面白いですもの!」
日葵:「そう…………そう??」
はなび:「はい!世界を救いに来たとか歴史を変えるとかはクッソどうだっていいですけど、
未来人……!なんて甘美な響き……!」
日葵:「未来人云々より世界を救いに来たとか歴史を変えるとかのがどうだって良くないって
私思うのだけど。私がおかしいのかしら?」
はなび:「それで???未来からの警告ってなんですか???わたし、気になります!」
日葵:「うわぁ……話聞かない子だわ……私この子苦手だわ……。
こほん……良いでしょう。まず警告しましょう。」
はなび:「はい!」
日葵:「あなた、早くこの町から出なさい。
数時間と待たずにこの町は“無知全能(むちぜんのう)の神”の手により火の海になるわ。」
はなび:「え……!じゃあ!明日から学校はお休みですか……!?」
日葵:「えぇ??まぁ、そう、ね?
授業とかやってる場合じゃないというか、
きっとあなたの学校消し炭になってるでしょうし。」
はなび:「良いですね!」
日葵:「良いのかしら!?」
はなび:「退屈なわたしの世界は終わり、ついに混沌が日常になるんですね……!
待ち望んでいた状況が……もうすぐ……。」
日葵:「…………なんて不謹慎な子なのかしら……」
はなび:「そんなの関係ないですよ!
それよりも!もっと色んな話を聞かせてくださいよ!」
日葵:「…………周りの人から私はこう見えてたのかしら……
って!話なんかしてる場合じゃないの!
この町に居たらあなた死ぬのよ?早く逃げなさい。」
はなび:「いやです!間近で見てみたいです!ヒマリさんを!」
日葵:「そんなキラキラした目で直視しないで欲しいわ。
であれば、実力行使であなたを町の外に…………え?駄目なの??
ターゲット以外への実力行使は出来ない制約になってるの???
何よそれ!イレギュラーって死ぬ程不便ね!?」
はなび:「……イレギュラーってなんですか?
さっきも口にしていましたけど。」
日葵:「…………。
現地人に話すのは協力を得る為にも許されてるのね……
ハァ…………で、あれば、話すわ。話すわというか、
さっきこの町から出て行ってと言ってたのにこういうのもなんだけども、
思ったよりも色々と融通効かなそうだし、あなた協力してくれないかしら?
であれば──」
はなび:「協力します!聞かせてください!」(食い気味で)
はなび:日常を壊したいハズのわたしは、日常を守る為に動くという矛盾を抱えた。
けれど、そんな事は瑣末な問題で、ただこの人と一緒に居たいと思った。
日葵:「……そういうと思ったわ。
私は、いえ……私たちはこの世界の員数外、内側に居ない者。
本来であればこの世界に干渉する事が出来ない存在の私たちだけど、
様々なルール違反を行い、様々な制約下の元で例外を起こしているの。
そして、今回私たちがこの世界に干渉した理由が──」
はなび:「──さっき言っていたこの時代の人々に警告し、この世界を救い、歴史を変える為。」
日葵:「そう、その通りよ。
そして、私が行使出来る例外は”過去・未来・現在問わず、地球上に置いて最も強い存在となる”事。
今回のターゲットである“無知全能(むちぜんのう)の神”とやらに対してピンポイントなカウンターということよ。」
はなび:「へぇー!ヒマリさんカッコイイ!!
……でも、“最強の存在になる”って別にピンポイントってわけでもなくないです?」
日葵:「純粋な武力というか力に対して私は絶対的勝利権を持ってるけれど、
例えば撃退方法が“ターゲットを見つけること”だった場合は私のこれは大して意味を成さないわ。
そして、基本的にそういった概念的撃退しか通じないのよ。
私たちが相手取っているのは力押しする事なんて基本的に無いの。
今回がレアケースなだけで。」
はなび:「????
…………????
……!!
…………。
………………?」
日葵:「分からなくても仕方が無いわ。
私も説明されても全然理解できてないもの。
さて、話は切り替わるけれども協力して欲しい事があるの。良いかしら?」
はなび:「え、あ、はい!なんでも言ってください!」
日葵:「この町で一番高いところに連れてって欲しいの。
その間に聞きたい事があれば話してあげるわ。」
はなび:「はい!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~道中~
はなび:「うわぁ……皆避難してる……。」
日葵:「言ったでしょう?“私たち”と。
今回は私以外のイレギュラーたちも総出で対応してるの。
というか、私はよく知らないけれどイレギュラーたちにとって“決戦”らしいわよ。」
はなび:「へぇーじゃあ、そのなんとかかんとかの神と直接対峙するヒマリさんは詰まるところリーサルウェポンなんですね!」
日葵:「そういうことになるかしら。
で、いろいろな話を聞かせて、と言っていたけど何を聞きたいのかしら?」
はなび:「そうですねーじゃあ、やっぱり。
ヒマリさんのことを聞きたいですね。」
日葵:「私?私の事って言われても何を話せば良いのかしら……」
はなび:「そうですねー……例えば家族とか。」
日葵:「…………家族、かぁ……。
私、自分の家族……母や父、そして妹を1人……私を除いて4人居たうちの
3人の家族を殺したから、話せることは無いわ……。
それに、その3人の事ももう忘れてしまったわ。」
はなび:「そうなんですねー」
日葵:「……あなた本当にあっけらかんとしてるわね……。
私は家族を殺した残酷な人間なのよ?なんとも思わないの……?」
はなび:「え?特になんとも思わないですよ?
どういう理由があったかは知らないですけど、殺しちゃう事だってありますよ。」
日葵:「…………あなた本当に怖いわね……。」
はなび:「だって、この世界はとても退屈で変哲が無いんですもの。
仕方が無いです。」
日葵:「…………そう。」
はなび:「それで4人のうちの3人を殺したんですよね?
残りの1人はどうしたんですか?」
日葵:「残りの1人……その子も妹なの。
私が殺したのが一番下の子で、真ん中の子は殺さなかった……
理由は、分からないわ。気まぐれかしらね。
今はどうしてるかは知らないけれど、多分この世界のこの時代の何処かで
生きてるのかしらね。」
はなび:「え?未来の人……ですよね?なんでこの時代に?」
日葵:「あの子がこの時代で生きたいと思ったからよ。
理由は知らないし、分からないけれど、あの子がそれを望んだ結果が、”今”なの。」
はなび:「色々あるんですねー。」
日葵:「……まぁ、その、“実は”な話なのだけど……あの子が生きるこの世界を救う為、
それが私の動いている理由の一つよ……。」
はなび:「妹思いじゃないですかー!」
日葵:「……少し、気恥ずかしいわ……。」
はなび:少しの沈黙が生まれた。
流石のわたしもなんとなく何か言葉を挟む空気では無いと分かった。
“気恥ずかしい”……嘘では無いとは思う。
だけど、あの言葉の音に含まれる感情は“気恥ずかしい”というモノだけでは無かった。
なんだろう、罪の意識、そんなものも感じ取れた、気がした。
はなび:「あ、着きました。
ここがこの町、”九門(くもん)“町で一番高い場所です。
ついでにこの鉄塔を登ればもっと高い位置に行けますよ。」
日葵:「ありがとう。
まぁ、町を一望できるなんて少しロマンチックね。
…………。
こうして見ると、広い町ね。」
はなび:「そうかもしれませんね。
わたしはあまり気にしたこと無いのでよくわかんないですけど。」
日葵:「…………普通の空……。」
はなび:「……そうだ。未来のことも聞きたくなってきました。
ヒマリさんの生きる時代ってどんなところなんですか?
やっぱり宇宙人と交流してたりするんですか???
というか、宇宙人っていますか?」
日葵:「えぇ、いるわ。
だけど、この星の人々は外宇宙との交流を拒絶して殻に閉じこもっていたわよ。」
はなび:「あーそうなんですねー
それは残念な気がしますね。」
日葵:「そうかしら?怖いものから目を背けるのはごく自然な事よ?」
はなび:「そうですねー。
だからこそ、わたしたちの町は世界の危機とは関係無いと言わんばかりに日常を維持してきた訳ですし。
ヒマリさんの言う様に自然なんでしょうねー。」
日葵:「口では納得した様な言葉を並べてるけれど声が不服そうね。
どうしてかしら?」
はなび:「どうしてって、つまらないからですよ。
驚異に対抗でも無く、逃走でも無く、ただただ今を維持する。
わたしはそんな選択をしたこの世界がどうしようも無くつまらないです。」
日葵:「現状を維持するのは“逃走”と違うの?」
はなび:「違いますね。全然違います。
“逃走”は次の一手を打つための一時的後退です。まだ次があります。
“維持”は先にも前にも動かない。変化がありません。ただ詰むのみです。」
日葵:「なるほど?」
はなび:「あ、さっきの状況で例えるといいかもしれませんね!」
日葵:「さっき?」
はなび:「はい!
ヒマリさんが空から降ってきた時です。
わたしは降ってくるヒマリさんから退避するという選択をしました。
その結果今に至ります。生死で言うのであれば生きています。
でも、あのままあの場に留まる、つまり“現状維持”をしていたら
ヒマリさんとごっつんこして死んでいたかもしれません。」
日葵:「あーなるほど。
それは分かりやすいかもだわ。」
はなび:「えへへ。
もしもあそこでごっつんこして死んでいたら
こんな面白い体験は出来ません。
だから嫌なんです。
現状維持はつまらない、詰む事がつまらない。」
日葵:「あ、でもあれじゃないかしら?
このままこの町にいたらあなた死んじゃうかも、つまり詰み、
引いてはあなたが嫌いな現状維持を今やってる事にならないかしら?」
はなび:「なりません!
だってヒマリさんと出会えて嬉しくて楽しくて面白いですもの!
つまらなくないので現状維持じゃないです!」
日葵:「そう……。」
はなび:「それに、この町は火の海になりませんよ。」
日葵:「何故かしら?」
はなび:「だってヒマリさんがいますから!」
日葵:「あら、私の事信じてくれてるのね。
会って間もない仲だというのに。」
はなび:「それでもです。
だってその方が面白いものが見れそうですからね。」
日葵:「そう……あなた本当に冒涜的ね。
ま、構わないけれども。」
(日葵、お腹が鳴る。)
間……ッ!!
日葵:「ッ!…………///」
はなび:「お腹鳴りました?」
日葵:「な、鳴ってない……」
はなび:「鳴りましたね!」
日葵:「くっ……!!」
はなび:「一応お弁当持ってますけど。
食べます?」
日葵:「え、それはとても好都合だわ。
お言葉に甘えて頂くわ。」
はなび:「いえいえ、どうぞ―」
はなび:わたしがそう言った瞬間だった。唐突に空が紅く染まった。
空が変色したと認識していたが、実は空を覆うほどの滅茶苦茶大きな手が出現したのだと気付くのにしばらく時間を要した。
はなび:「えっ……。」
日葵:「タイミング……恐ろしく悪いわね……。」
はなび:ヒマリさんは真剣な表情になり空を睨む。
日葵:「“無知全能(むちぜんのう)の神の手によって町が火の海となる”。
まさか、物理的に手が現れるとは思いもしなかったわ。
ま、そんなのどうだっていい……
……はなび。」
はなび:「は……はい!」
日葵:「アレ、すぐにどうにかするから、
お弁当なくさないようにしっかり抱えてなさい。
分かったかしら?はなび?」
はなび:「り……了解です!ヒマリさん!」
日葵:「良い返事ね。
行ってくるわ……ッ!」
はなび:そう言ってヒマリさんは跳躍する。
人間離れした跳躍力。もはやこれは飛行ではないだろうか、と錯覚する。
これがヒマリさんの言うイレギュラーなのだろうか。
多分、そうなのだろう。
…………。
はなび:「…………わたしの名前を、呼んでくれた……。」
はなび:胸が高鳴る。
いままでに無い体験をしているからか?
分からない。
だけど、分かることがある。
日葵:「…………ッ!」
はなび:「綺麗……。」
はなび:空を翔ける彼女はとても綺麗だ。
そんな彼女を見ていると心が躍る。
はなび:「ヒマリさん……!」
はなび:溢れる。
声が、感情が、留まらない。
はなび:「いっけぇぇぇぇぇえええええ!!!」
はなび:わたしの声がヒマリさんに届くとは思ってない。
だけど素晴らしく、美しく、綺麗に輝く彼女の進撃を見て衝動を抑えることは出来なかった。
◇
日葵:「もう……恥ずかしい子ね……。
ホント、私あの子苦手だわ。」
日葵:けど、悪い気はしないわ。
厳しい世界で優しいあなた。
私の存在を肯定してくれた子。
その肯定が決して正しいモノで無くても、
私は素直に嬉しかった。
日葵:「だから……!」
日葵:守らなければ。
贖罪の為の使命であったけれど、
それ以外に理由が出来てしまった。
日葵:「だから……!!」
日葵:神とやらを屠って帰ろう。
未来にじゃない。冒涜的で素敵なあの子の、はなびの元に。
日葵:「はぁああああああああッ!!!」
はなび:「うわぁ……!」
はなび:紅い空は破裂する様に消滅していった。
元の空。
ヒマリさんの言う通り“すぐ”に、瞬く間に撃退してしまった。
勿論わたしから見える景色は火の海なんかでは無かった。
はなび:「……ッはぁーーー……
凄い……。」
はなび:知らぬ間に息を止めていた様で、
一気に息を吐いた。
呆然としていた。
終わったからか、なんとなくいつもに増して静けさを感じる。
はなび:「……はっ、ヒマリさんは……?」
◇
日葵:「きゃーーーーーー!!
はなび!避けて!!左にでも右にでも良いからそこにつっ立ってないで!!」
はなび:聞き覚えのある展開だった。
で、あれば、わたしは──
はなび:「受け止めます!さあ!ヒマリさん!」
はなび:以前とは違い、落下してくるヒマリさんを避けずに受け止めてみよう。
日葵:「はぁあああああ!!??何言ってるのよ!!??
立ち向かうという選択肢は素直に頭悪いわよ!!??
死ぬわよ!!??」
はなび:「大丈夫!……な気がします!」
はなび:手を広げ、ヒマリさんを受け止める体勢で
彼女に向かい駆ける。
日葵:「いやぁあああああーーー!!!」
はなび:「&日葵:「ぐえぇッ!!」」
はなび:激突する。
なんなら激突なんて優しい表現じゃない気がする。
日葵:「うぐぅッ!」
はなび:当然体勢は崩れ、後ろに向かって四転五転し、
はなび:「ぎげぇえええッ!!」
はなび:鉄塔の柱にぶつかり停止する。
幸い、とりあえず二人共死んでない。
日葵:「いったた……」
はなび:「いッ───……ッ」
はなび:言葉が出ないほどの激痛。
だけど、とりあえず言わなければ。
はなび:「──────っ、ひ、ヒマリさん……
おかえりなさい……。」
はなび:世界は救われた。
後日、ヒマリさんが慌てていたのだが、どうやらさっきのは
言うなれば前哨戦的なものらしい。まだ、終わったわけではない。
終わってはいないが、依然日常は壊れていない。
これじゃあ、明日も学校あるだろうけど。
でも、彼女がいるのであれば、きっと、もう、つまらなくはないだろう。
日葵:「…………フフ、ただいま。はなび。」
日葵:今回限りだと思っていたけれど、
この子とはまだまだ付き合いそうだわ。
だけど、良いわ。
何度だって守りましょう。この子と、この子の世界を。
はなび:守られ続けるこの日常を享受しよう。
素敵で素晴らしい貴女と。
───────────────────────────────────────
END