[台本]ツァイフェル家のご主人様
登場人物
○クーニス・ロスト・ツァイフェル
18歳、男性
上流貴族ツァイフェル家の令息。
ツァイフェル家が代々持つヒト科魅了体質を持たない。
非情にわがままで口が悪いが頭の良い青年で父であるヴルーツを蹴落とそうと常々画策している。
日本文化を非常に愛するヲタク。ユリアが初恋の相手。匂いで判別出来る。
作中にて13歳のクーニスも出てる。現在より綺麗で冷血そう。(ズース役が兼任)
○ユリア・シュンヌハイト
24歳、女性
ツァイフェル家のメイド長。
如何なる給仕を完璧にこなし、語学にも精通する完璧メイドで容姿端麗な淑女。
クーニスに立派な男性になってもらう為に日々眉間に皺を寄せている。
※20歳のユリアが出てくるが特に変える必要は無いです。
○ズース
16歳、女性。
ツァイフェル家のメイド
クーニスのお気に入りのメイドで色々入れ知恵をされた結果、書体が変わった。
可愛らしく天然な少女でぶりっ子ではないがクーニスの所為で素でそうなった。
※13歳のクーニスも兼任して頂きます。
○長谷川(はせがわ)
60……歳? 、男性
ツァイフェル家の執事長。
常に落ち着いており、ユリア同様如何なる給仕も完璧にこなす老齢紳士。
ヴルーツからは「セバスチャン」と呼ばれているが彼の名は長谷川。
○ヴルーツ・ロスト・ツァイフェル
48歳、男性
ツァイフェル家当主。
ツァイフェル家の長年の研究により完成したヒト科魅了体質を受け継いでいるがその力は代を増す毎に衰えている。
ヒト科魅了体質を利用し、悪逆非道を成す小悪党であり、カニバリスト。
ユリアが熟すのを今か今かと待ち続けている。ついでに性豪。
※名前だけ
○カィゼリン、ツヴァイ、ドライ、フィーア、ツィリン
クーニスの兄、姉。左から長女、長男、次男、次女、双子の姉(三女)
○クォン・ファムーグン女史
故人、女性(?)
様々な作品を世に出した劇作家。
一年前に謎の失踪をした。
○フランム女王陛下
??歳、女性
かつて西ヨーロッパと呼ばれた国々を統合した国“神生(しんせい)ロマニア永国(えいこく)”を統治する女王。
柔らかい微笑を常に浮かべる老淑女で真にヨーロッパの、国の、民の幸福を願う使者として、誠実で清らかな治世を信条としている。
だが、本人自体はかなり悪趣味で人の悪事を子守歌に眠り、
悪人を愛し、愛すべき人々を家具や楽器として飾る性癖を持つ。
クーニス・ロスト・ツァイフェル♂:
ユリア・シュンヌハイト♀:
♥ズース/13歳のクーニス♀:
長谷川♂:
ヴルーツ・ロスト・ツァイフェル♂:
ズース、13歳のクーニス役の方は♥を追うとやりやすいかもです。
これより下からが台本本編です。
───────────────────────────────────────
ユリア:「本日のディナーのメインディッシュは
“クォン・ファムーグン女史”のワイン煮でございます。」
長谷川:「数々の名作を世に誕生させた稀代の劇作家である彼女は、
華奢な身体に綺麗なキャラメル色の長髪、真紅の瞳を持っていらっしゃいました。」
ユリア:「身体をワインで丸一日形が崩れ無いようにじっくりとっくり染みこませ煮込み、
髪の毛の方は旦那様の大好物のアーリオオーリオにさせて頂きました。」
♥ズース:「綺麗なおめめはデザートのゼリーの飾りとして使わせて頂きました!」
ユリア:、長谷川:、♥ズース:
「「「さあ、お召し上りくださいませ、旦那様。」」」
ヴルーツ:「……クッフッフッフ……
私の魅了体質に惑わされた哀れな女……
細く柔らかい四肢、白雪の様に美しい肌、子犬のような愛くるしさで皆に愛された顔……
それが今や精気無く料理された……
……。(舌なめずり)
クッヒヒヒヒヒ……では、馳走に預かろう。」
ユリア:悪辣で悪食で醜悪な我らが主。
私は貴方の失墜を望む。
~ツァイフェル家、クーニスの部屋~
ユリア:「……よって我が国“神生ロマニア永国”はフランム女王陛下によって西ヨーロッパ全土を統合し、
絶対王政の元、成り立っております。
そして我らがツァイフェル家とほか六貴族で成り立つ七貴族院による——」
クーニス:「ぇあぁ~~~……」
ユリア:「……坊ちゃま。シャキッとしてください。
お勉強の時間ですよ。
そのような事では困ります。
当家の跡取りとしてもっとしっかりしてくださらないと……」
クーニス:「…………なぁ~んでお前なんだよユリア。」
ユリア:「……と、言いますと?」
クーニス:「爺やが良い。」
ユリア:「は?」
クーニス:「爺やが良い!!」
ユリア:「はぁ???」
クーニス:「爺やに勉強見てもらいたい!!!
だってお前うるせぇもん!
爺やだったら——」
長谷川:『ほっほっほっ、坊っちゃん、そんなに座学が嫌であれば外で運動をなさいましょう。
爺やがテニスの相手をして差し上げましょう。』
クーニス:「——とか言ってくれるもん!!
爺やに会いてぇ~~~~~~!!早く帰ってきてくれぇ~~~~~!!」
ユリア:「そんな事を言われましても私、困ってしまいます!
大体、長谷川(はせがわ)様は私なんかよりもっと厳しいでしょう!!」
クーニス:「うるせぇうるせぇー!
爺やはボクには優しいもん!!
ってかさぁ~なんでボクのお付きのメイドがユリアなんだよ。
お前メイド長だろ?」
ユリア:「それは……私が志願したからです。」
クーニス:「えっ……な、なんで……?」
ユリア:「坊ちゃまに優秀で立派な殿方になってもらい、当家を継いでもらう為です。」
クーニス:「…………っへ!何を言いだすかと思えばこんなクソみたいな家の為かよ。」
ユリア:「くっ……くそだなんてはしたない!!」
クーニス:「あぁ~あ~!なんで志願とかしたんだよ~
ボクのお付きのメイドになったんだったらさぁ~
もっとこう~色気っつーの?あざとさって言うの?
そういうの欲しいよねぇ!」
ユリア:「は?メイドにそんなもの必要無いでしょう。」
クーニス:「はぁ~~~~~~~分かってねぇなぁ!
もっとこう……
メイドでぇ~す♡メイドはぁ~~ご主人様の事が……ダ・イ・ス・キ……です♡
的なの欲しいよねぇ~!」
ユリア:「きもっ……」
クーニス:「はぁ!そうやってまたボクを傷付けるゥ!!!
ズースちゃんだったらやってくれるのに!!」
ユリア:「なんでそこでズースの名前が出るのですか……」
クーニス:「ズースちゃんだったらやってくれるからだよ!
いやぁ~~あの子は良いねぇ~!
ボクが言った事なんでも鵜吞みにしてくれる!
おかげで今じゃボクの考えた最高のメイドさんだ!」
♥ズース:『ご主人様ぁ~♡』
ユリア:「だからあんな風に変わってしまったのですか……」
クーニス:「あんな風にとか言うな!
ボクの浪漫を詰め込んだ理想のメイドさんだぞ!」
ユリア:「失礼しました。
しかし、坊ちゃま。
ズースは坊ちゃまの仕込みの所為で先日、旦那様の夜の餌食になりましたよ。」
クーニス:「……えっ?マジ……?」
ユリア:「マジです。
坊ちゃま仕込みのズースが旦那様の給仕をしていた時に——」
ヴルーツ:『この娘ェ……私を誘っているのかァ~!!』
♥ズース:『ご主人様ぁ~困ります~困りますぅ~!』
ヴルーツ:『ぐへへ!良いではないか良いではないかぁ~!』
♥ズース:『あ~れぇ~!ご主人様のしゅごいのぉ~~~♡』
ユリア:「——といった具合に。」
クーニス:「~~~~!
あのクソ親父ィ!!!
ああ~~~!!さっさと地獄に落としたいッ!!!!」
ユリア:「はしたない言葉使い辞めてください。
それに、旦那様や先代、先々代、ご先祖様が今まで頑張って積み上げてこの地位を手に入れたのです。
だというのに、地獄へ落としたいだなんて……」
クーニス:「頑張って?何をだ?不正や悪事をか?」
ユリア:「……ッ。」
クーニス:「ハッ、そんなグラついたモノで積み上げた地位なんぞすぐに墜ちるさ。
けどボクは違う。
ボクはクソ親父を失墜させつつ、全てを乗っ取る。」
ユリア:「…………その為にも、しっかり勉強を……」
クーニス:「もう終わったよ。
ほら、今日の課題全部終わった。」
ユリア:「えっ」
クーニス:「お腹が空いた。おやつの準備をしてくれユリア。
ボクは先に中庭行っておくから。」
ユリア:「……フフ、承知しました。坊ちゃま。」
◇
~中庭~
ユリア:「本日のおやつは、バナナケーキです。
ご一緒にコナーコーヒーはいかがでしょうか。」
クーニス:「うん、頂く。
ミルク多めで頼む。」
ユリア:「かしこまりました。」
クーニス:「……ん?ユリア。
そういえばいつもの手袋をしてないな。どうしたんだ?
季節関係無く着けてた給仕用に支給されるやつじゃないやつ。」
ユリア:「え?ああ、実は先日、庭師がお休みの時に私が庭の手入れをしたのですが、
その時に枝に引っ掛けてしまい破れてしまいまして。」
クーニス:「なんだ、それくらいお前なら修繕出来ただろ。」
ユリア:「ええ、それが……生地が古くなっていて修繕は出来そうになかったのです。
……申し訳ございません。坊ちゃまが私と初めて会った時に下さった手袋でしたのに。」
クーニス:「え?いや……別に謝らなくても……」
ユリア:「いえ、私が謝りたいので謝らせてください。」
クーニス:「え?……そう。
フン……変な奴……。
……なあ、おい——」
ヴルーツ:「おや、ユリアじゃないか。
……とクーニス……何を睨んでいる愚息が。」
クーニス:「……チッ。」
ユリア:「旦那様。おかえりなさいませ。
お早いご帰宅ですね。」
ヴルーツ:「ああ、少しな。」
長谷川:「ただいま戻りました。坊っちゃん。」
クーニス:「爺や~~~~~!!」
長谷川:「ほっほっほっ!お久しゅうございます、坊っちゃん。」
クーニス:「いやホントだよぉ~!何処行ってたんだよ爺やぁ~」
長谷川:「少々、日本の方へ里帰りをしておりました。」
クーニス:「ニッポン!!マジか!!」
長谷川:「マジでございます。」
ヴルーツ:「セバスチャンには少し調べ物をしてもらっていてな。」
長谷川:「旦那様、ワタクシはセバスチャンではなく長谷川でございます。」
クーニス:「ニッポンで調べ物……ああ、ツァイフェル家の人間と同じヒト科魅了体質の男のことか。」
ユリア:「え?」
長谷川:「……。」
ヴルーツ:「なっ……なぜ貴様がそんな事を知っている……!」
クーニス:「あ?逆になんで知らないと思ってたの???
ボクだよ?お父様なんかと違ってとっても頭が良くて情報収集に長けてるんだ。
知ってたって何も不思議じゃないでしょう。」
ヴルーツ:「……ハッ!我らが研究の完成系であるヒト科魅了体質を遺伝出来なかった癖に、
口だけは生意気によく回る。」
クーニス:「我らが……?お父様何もやってないだろ??
頑張ったのはご先祖様であって、お父様じゃない。」
ヴルーツ:「……貴様ッ!」
長谷川:「ほっほっほっ!流石は坊っちゃん。
よく勉強していらっしゃる。
いやはや、ツァイフェル家の未来は安泰ですな、旦那様。」
ヴルーツ:「…………フン!
私は疲れた。ユリア、風呂の準備を頼む。」
ユリア:「かしこまりました。」
ヴルーツ:「ズース!ズースはどこだ!」
♥ズース:「はい!ご主人様!わたしはここです!」
クーニス:「……エッッッッ!!
ズースちゃん!?何その恰好!?」
♥ズース:「ほぇ?わたしの給仕服ですが……どうなさいました?クーニス坊ちゃま?」
ヴルーツ:「ああ、私が与えた服だ。良いだろぅ??」
長谷川:「みにすかめいど……パンツが見え隠れ……侘び寂び、というやつですな。」
ユリア:「長谷川様、不潔です。」
長谷川:「ほっほっほ!」
クーニス:「ハハハ!クソ親父だけど趣味はボクに似てるってか。
ウザいなぁ!!」
ヴルーツ:「フン!なんとでも言うが良いクソ息子が!
ズース!寝室の準備をしておけ!」
♥ズース:「かしこまりましたぁ~♡」
(ヴルーツ、ズース捌ける。)
クーニス:「…………チクショォオオオオ!!羨ましいッ!!!!!!!!!!」
長谷川:「ほっほっほ!」
ユリア:「全く……これだから殿方というのは……
…………あの、長谷川様。」
長谷川:「む、なんでしょうユリア殿。」
ユリア:「先ほど坊ちゃまが言ってらしたツァイフェル家と同じヒト科魅了体質の男というのは……」
長谷川:「ええ、日本にて旦那様と同じような体質を持つと言われる人間の話が浮上しまして、
調査の為にワタクシが向かったのです。」
ユリア:「それで、見つかったのですか?」
長谷川:「いいえ。……いえ、見つかりはしましたが生きてはいませんでした。」
ユリア:「え?」
クーニス:「ヒト科魅了体質を利用して悪事三昧でもして恨みでも買って殺されたんだろうさ。
別段珍しい話でも無い。
実際、ボク以外の兄弟だってそんなんだったし。」
ユリア:「……そうですね。」
長谷川:「ワタクシも、そうだと思います。
男の名はスメラギ ミチツグ。男の屋敷には沢山の人間が飼われておりました。」
クーニス:「はは、皆変わんないな。」
ユリア:「……。」
クーニス:「クソ親父みたいに飼ってた人間を食べてたのか?」
長谷川:「いえ、その様な話はありませぬな。」
ユリア:「ただ愛玩していた……という事ですか。」
クーニス:「そうか。ま、アレよりは幾分か人間だったってワケか。」
長谷川:「旦那様は大変焦っている様子でございますな。」
ユリア:「焦っている……。
体質の弱体化、クーニス坊ちゃま以外の5人の子息子女らの脱落……ですか。」
長谷川:「そうでございますね。
このままではツァイフェル家は失墜しかねませぬ。
それを防ぐための手札だったのですが……。」
ユリア:「その手札も子息子女らと同様、何者かによって切り捨てられていた、と。」
クーニス:「まぁまぁーそんなことはどうでもいいさ!
爺や!ニッポンに行ってたんでしょ!
何かお土産とかあったりしないの????」
長谷川:「ほっほっほ!クーニス坊っちゃんは幾つになっても童心を忘れませぬな!
無論ですとも、幾つか用意している故、選んでくだされ。」
クーニス:「ひゃっほい!!爺や大好き!!」
ユリア:「長谷川様……あまり坊ちゃまを甘やかすのは……」
長谷川:「良いではありませんか。
坊っちゃんはああ見えて人見知りです。
そんな坊っちゃんがワタクシたちに懐いて下さっているのです……。
光栄な事ではありませんか。」
ユリア:「私たちって……私には別に……」
長谷川:「ほほほっ!ユリア殿もまだまだですなぁ!」
ユリア:「えっ?」
長谷川:「さ、坊っちゃん、こちらにお土産を並べておりますので。」
クーニス:「イエェーーーイ!!」
ユリア:「ちょっ、あの、今のはどういう……って行ってしまわれた……
……はぁ……。」
◇
~ツァイフェル家廊下~
ユリア:「はぁ……」
♥ズース:「あら?どうなさったのですか?メイド長?」
ユリア:「え、いえ。何でもないわ。」
♥ズース:「何か悩み事ですかぁ?
わたしで良ければ相談乗りますよっ!」
ユリア:「…………はぁ……貴女基本的に良い子ですもんね……」
♥ズース:「ほぇ?」
ユリア:「いえ、ズースは本当に良い子だなって思っただけよ。」
♥ズース:「え、ええ……///そんなわたしは……えへへ~♡」
ユリア:「……フフ。
ズースこそ、悩みは無い?
旦那様に酷い事とかされてない?」
♥ズース:「ひどいことだなんて、ぜんぜん……むしろ……きゃっ///」
ユリア:「そ、そう……。
はぁ……。」
♥ズース:「……あ、もしかしてクーニス坊ちゃまの事ですかぁ?」
ユリア:「えっ!!な、なんでそこで坊ちゃまの名前が……!?」
♥ズース:「え?そーなのかなーと思いまして。」
ユリア:「べっ、別に、違うけど……
そ、その……私はどうして坊ちゃまに嫌われているのでしょう……。」
♥ズース:「んぇ?……ん~~~……わたしが思うに、嫌われてないと思いますけどぉ」
ユリア:「長谷川様もそう言ってくださっていたけれど……」
クーニス:「お~~~い!爺や~~~!
お~~~ぃ……っげ!ユリア!ご苦労!じゃあな!
ズースちゃんもまたね~♡」
♥ズース:「……。」
ユリア:「ほら……。」
♥ズース:「あ、あはは……
あ!そういえばメイド長もうすぐ誕生日ですよね!
わたしいつもお世話になってますし、何かプレゼントしたいです!!」
ユリア:「え……?誕生日……?
…………もう、そんなに経ったの……?」
♥ズース:「?
はい、もうすぐ2月ですね。」
ユリア:「……………………そう……もう……そう……なのね……」
♥ズース:「……?」
ヴルーツ:「ユリア!ユリアは居るか!」
ユリア:「…………え、あ……はい、私はこちらに。」
ヴルーツ:「おお、ユリア。
もうすぐお前の誕生日だな。」
ユリア:「……あ……はい……」
♥ズース:「あ、ちょうどその話をしてました!プレゼントは何が良いと思います?」
ヴルーツ:「はっはっは、そうかそうかぁ!
ズースは優しいなぁ。だが、ユリアに贈り物は不要だ。
なあ?ユリア。」
♥ズース:「ほぇ?」
ユリア:「……はい…………」
♥ズース:「???」
ヴルーツ:「はっはっは、ズースはそういえば知らなかったな。
だが、ま、お前も9年後を楽しみにしておくと良い。」
♥ズース:「……えーっと……はい!楽しみにしておきま、す?」
ユリア:「…………。」
ヴルーツ:「良い返事だぁズースぅ。
夕餉はまだか?ユリア。」
ユリア:「はい、もうすぐ準備が整うかと。
コックに訪ねてきます。」
ヴルーツ:「うむ。」
♥ズース:「……。」
◇
クーニス:「え?ユリアが暗い?」
♥ズース:「はい……もうすぐ誕生日って話をしてから心ここにあらずという感じで……」
クーニス:「……誕生日……そうか……アイツ、自分の誕生日の事忘れてたんだな。」
♥ズース:「メイド長……誕生日迎えられるのイヤだったりするのでしょうか……
だったらわたし、すごく失礼な事を……」
クーニス:「……そうか、ズースちゃん来たのは去年の夏からだもんな。
知らなくても仕方が無いか。」
♥ズース:「え……?」
クーニス:「ユリアは……」
長谷川:「坊っちゃん、準備が整いました。」
クーニス:「お、そうか。
……ズースちゃんこの話はまた今度。
ボクは少しちょっと女王陛下の所へ出かけてくる。」
♥ズース:「え、あ、はい!
あの、女王陛下にはどのような用向きで?」
クーニス:「ん?まぁ、ちょっと、秘密。」
長谷川:「ズース殿。」
♥ズース:「はい。」
長谷川:「坊っちゃんはユリア殿へのプレゼントを……という事で……(小声)」
♥ズース:「っ!ホントですか!
メイド長へのプレゼントを女王陛下に……相談、かしら……?
ふふふ♪ではご帰還を楽しみにしてます!」
クーニス:「?
お、おう……なんでズースちゃん急にテンション上がってんだ?」
長谷川:「ほっほっほっ!」
◇
ユリア:「…………はぁ……」
ユリア:私にはあまり時間が残されていない……
ユリア:「坊ちゃま……」
ユリア:記憶を反芻する。
5年前この家に買われた時の話。
ヴルーツ:「ほう……これが没落貴族シュンヌハイト家の生き残りかぁ……
噂通り美しい。」
ユリア:「……ッ」
ヴルーツ:「それで尚且つ…………」
ユリア:「……?」
ヴルーツ:「やはり効いていないか。
素晴らしい!素晴らしい食材だ!」
ユリア:「……。」
ヴルーツ:「お前、年齢は幾つだ?」
ユリア:「20……です……」
ヴルーツ:「……20……かぁ……ん~~~~~惜しい……
今喰らうには惜しい……」
ユリア:「喰らう……?」
ヴルーツ:「ああ、食すのだ。そのままの意味だ。
食料として、お前を私が買ったのさ。」
ユリア:「…………。」
ヴルーツ:「……おんやぁ……?
反応無し、か。」
ユリア:「どうせ死ぬんだったら、どんな死に方をしても一緒ですから。」
ヴルーツ:「そうか。
それはつまらんな。
……そうだ、良い事を思いついた。」
ユリア:「……。」
ヴルーツ:「これはお前にとっても……いや?お前にとって良い話だ。
私には5人の子供が居てな。
当然、行く行くはそのうちの誰かに跡を継がせるつもりでいる。」
ユリア:「それが……なんだというのですか……」
ヴルーツ:「その末席の子、クーニスと言うんだがなぁ。
アイツが我が家を継ぐ事になったら私はお前を食うのを辞めよう。」
ユリア:「…………何故そのような戯(たわむ)れを。」
ヴルーツ:「気まぐれだ。
何、怪しむ必要は無い。私は思い付きで行動しがちでなぁ。
まぁ、ついでに言えばこの勝負は当然私の勝率が高い。
なにより私はあのガキが大っ嫌いだ。」
ユリア:「……。」
ヴルーツ:「故にだ。故にそんなアイツが私とアレの兄姉を出し抜き頂点を獲ったとしよう。
……ハハハ……筆舌に尽くしがたい屈辱であろう……
そして、その横にはお前が居るのだ……
私が買い、私が食そうとしていた極上の逸品であるお前が……
……フフフフフフフフフ……
嗚呼……これほどの屈辱、絶望……あるだろうか……クックック……」
ユリア:「……は……?」
ヴルーツ:「だが勿論、邪魔するぞ?
なんてったって私はアレが嫌いだからな。
……さあ、どうする……いや、辞めよう。お前に拒否権は無い。
お前は我が屋敷に勤め、よく働き、アレが成り上がれるよう励め。
期限は5年後、お前の誕生日だ。
それまでにアレが成り上がっていなければお前を食う。」
ユリア:「……かしこまりました……旦那様……」
ヴルーツ:「セバスチャン。」
長谷川:「旦那様、ワタクシはセバスチャンではなく長谷川でございます。」
ヴルーツ:「この女を屋敷で雇う。
服と部屋を与える故、屋敷を案内しろ。」
長谷川:「かしこまりました。」
◇
長谷川:「こちらがユリア殿の部屋でございます。」
ユリア:「ありがとうございます。
……えっと……聞いても良いでしょうか……長谷川様……」
長谷川:「なんでしょうか。」
ユリア:「……旦那様何故あのような提案を……?」
長谷川:「…………。
旦那様は坊っちゃんを大変嫌っているのです。」
ユリア:「それは分かりました。
ですが何故あんな提案をしたのか──」
長谷川:「殺されたのです。」
ユリア:「……え?」
長谷川:「クーニス坊っちゃんに奥様とカィゼリンお嬢様……
真に跡を継ぐ筈だった一番上の御子女が……
ただ坊っちゃん自体は知らぬ存ぜぬを通しております。
あくまでも、旦那様の推測……しかし、多分坊っちゃんの仕業です。」
ユリア:「何故……ですか?」
長谷川:「……。(首を横に振る。)
本当の理由は分かりませぬ。
ただ坊っちゃんは“玩具を壊された”と仰っておりました。」
ユリア:「それだけで……!?」
長谷川:「重ねて申しますが、真実のほどはワタクシには分かりませぬ。
無論、旦那様は大変お怒りでした。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ヴルーツ:「クーニス!!貴様何故、妻とカィゼリンをッ!!!」
♥13歳のクーニス:「はて……何の話でしょうかおとうさま。
おかあさまとカィゼリン姉さまが、どうかしたのですぅ?」
ヴルーツ:「……ッ!!
貴様ァ……!!殺してやる!!!今ここでェ!!!!」
♥13歳のクーニス:「フフフ、良いんですか。ここでボクを殺して。」
ヴルーツ:「ああんッ!?」
♥13歳のクーニス:「“初めて屈辱を感じた。
本当は私が殺す……いや食す筈だったのに。”」
ヴルーツ:「ッ!!?」
♥13歳のクーニス:「くすくすくす。
そう思ってたのでしょう?」
ヴルーツ:「……ッ!!!」
♥13歳のクーニス:「“先を越された”、“なんだこの敗北感”。
面白いですねぇおとうさま。
自分の妻と実の愛娘が死んだというのに、そういった劣情ばかり……」
ヴルーツ:「貴様……ッ!!」
♥13歳のクーニス:「このままボクを殺したら……一生、いいえ、永遠に負けっぱなしですねぇ。
いえ、違いますね。
ヒト科魅了体質のおかげで常勝だったおとうさまは、
これから二度とこの快楽を味わえませんよぉ?」
ヴルーツ:「ッ!!?
なッ……何をッ!!」
♥13歳のクーニス:「ボクだったら、与えられますよ。
貴方にこの絶頂を。」
ヴルーツ:「……ッ!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
長谷川:「怒りから気が動転していたのでしょう。
それ故に、旦那様の脳は破壊され、あのような癖(へき)の持ち主になったのです。」
ユリア:「……。」
長谷川:「ユリア殿には申し訳ございませんが、哀れな旦那様のお戯(たわむ)れに付き合って頂きます。」
ユリア:「……はい。」
長谷川:「……ほっほっほ!気負いなされるな。
ワタクシは坊っちゃんであればやってくださると思っております。
……では、こちらがクーニス坊っちゃんのお部屋でございます。」
ユリア:「ッ!!
ここが……」
(長谷川、扉をノックする。)
長谷川:「クーニス坊っちゃん。
本日よりこちらで働くメイドを連れてきました。」
♥13歳のクーニス:「分かった。入って良いぞ。」
長谷川:「失礼します。」
ユリア:「しっ、失礼します……。」
(長谷川、扉を開く。)
ユリア:「ほ、本日からこちらで働かせて頂きます。ユリアと申します。」
♥13歳のクーニス:「ユリア……良い名だ。
ボクはクーニス。クーニス・ロスト・ツァイフェル。
よろしくね。」
ユリア:「あ……はい……よろしく、お願いします。」
♥13歳のクーニス:「なんだい、緊張してるのかい?」
ユリア:「え、いえ。そ、そんな事は……!
……えっと……その、少しだけ……」
♥13歳のクーニス:「……っぷ、ふふふ。
お前面白いな、気に入ったよ。
ユリア、ボクは君が気に入った。
だから……ボクのお気に入りの証として、この手袋をあげる。
あ…………その、えっと、季節的にも寒そうだし。」
ユリア:「あっ、えっと、光栄でございます……!」
(ユリア、笑顔を作る。)
13歳:「……えへへ。」
長谷川:「…………。(クーニス、ユリアを交互に見て何かを察する。)
ほっほっほっほっ!」
ユリア:坊ちゃまを初めて見た時、私は優しそうな人だと、そう思った。
柔らかく微笑むその顔は綺麗で、強かさを感じさせる目をしていた。
♥13歳のクーニス:「……?
どうした?ユリア。
ユリア……?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
クーニス:「——ユリア~~~~~~~~~????」
ユリア:「っ!
し、失礼しました、坊ちゃま。」
クーニス:「全く、ボクが話している時に立って目を開けながら寝るとは、
お付きのメイド替わった方が良いんじゃないかなぁ~~~~~~!!
ズースちゃんと替われ!替わっちまえ!!」
ユリア:「なっ!寝てなんかいません!!」
クーニス:「どうだかぬァ~~~~~!!」
ユリア:「……全く……!
ちょっ!鼻をほじらないでくださいませ!!」
クーニス:「血が出るまでほじってやるぅ~~~~~^^」
ユリア:「あぁ!!もう!!なんで昔はもっと!こう!綺麗だったのに!!」
クーニス:「昔は昔!今は今ぁ!!!
フン……
で、話を戻すけど。」
ユリア:「え、あ、はい。
えっと……申し訳ございません。……話ってなんでしたっけ?」
クーニス:「はァ~~~~~~~~~~~~~~!?!?!?
やっぱお前寝てたんじゃねのぉ!!
ま、良いや。話が進まないし、改めて簡潔に言うと、」
ユリア:「……。」
クーニス:「来週の日曜日、つまりお前の誕生日なんだけどさ。
少し付き合え。」
ユリア:「え……。」
クーニス:「まぁ、なんだ。
お前うるさいけど、いつも世話になってるから、ボク直々に労ってやろうと思って……
それだけだかんなぁ!!!」
ユリア:「……ウフフ……とても嬉しいです……!」
クーニス:「……!そ、そうかそうかぁ。そりゃそうだろうなぁ~!
ハッハッハァー!ハッハッハァー!!」
ユリア:「坊ちゃまと……二人きり……」
ヴルーツ:『期限は5年後、お前の誕生日だ。
それまでにアレが成り上がっていなければお前を食う。』
ユリア:「…………。
申し訳ございません。」
クーニス:「ハッハッ……え?」
ユリア:「その日は、私、所用がありまして……。」
クーニス:「なんだ所用って。
ボクの用の方を優先してくれ。」
ユリア:「無理でございます。
他でもない、旦那様からの所用ですので……。」
クーニス:「っはァ~~~~~~~~~~????
なんでよりにもよってあのクソ親父の方の用事を優先するワケ???
駄目だ。ボクの方を優先しろ。」
ユリア:「出来ません!
……申し訳ございません!」
(ユリア、去る。)
クーニス:「おい待て!……ちっ……なんだアイツ。」
♥ズース:「あ、あのぉ……クーニス坊ちゃま、いまメイド長が走ってどこかへ行かれたのですか……」
クーニス:「ああ?知らん知らん!
知るかあんなうるせぇヤツ!!」
♥ズース:「ぷぅ!なんですかその態度!
またクーニス坊ちゃまがメイド長を怒らせる事言ったんでしょ!!」
クーニス:「え……?ズースちゃん???」
♥ズース:「ほら!早く追いかけて!メイド長を追いかけてください!!坊ちゃま!!」
クーニス:「あっ!ちょっ!引っ張らないで!!
ああおててしっとりやわらかぁい……!にぎにぎ♪」
♥ズース:「もぉ~~~~~~~!そんな事言ってないで!早く、追って、ください!!」
クーニス:「あ~分かったよぉ~
ズースちゃんがそんなに言うから!追いかけるだけ!それだけ!!
それだけだかんな!!」
♥ズース:「分かりましたから!メイド長はあっちの方へ行きました!」
クーニス:「はいはい、了解了解。
あ、ズースちゃん準備しといてね~一応爺やにも準備しとけって言っておいて~」
♥ズース:「かしこまりましたぁ!」
◇
クーニス:「ユリア~~!!
ユリアどこだ~~~!!
……たく……この屋敷広すぎだろ……
兄弟全員いなくなったんだし、屋敷小さくしても良いかもなぁ……
……ん?これは……スンスン……ユリアのカチューシャ……?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♥13歳のクーニス:「ユリア。お前はボクの物だ。
誰であろうと、
ボク以外で君を侵そうとするヤツは生かしておかない。」
ユリア:「それは、どういう……」
♥13歳のクーニス:「そのままの意味さ。
だから約束……いや、命令だ。」
ユリア:「……。」
♥13歳のクーニス:「ボクが正式にこの家を乗っ取った暁には——」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~???、地下~
ユリア:「坊ちゃま……」
ヴルーツ:「おい、起きろユリア。」
ユリア:「うぅ……私は……確か……誰かに襲われて……
っ!拘束、されている……?
旦那様、これは一体なんなのですか。」
ヴルーツ:「ああ、ユリアには申し訳ないが、予定が変わった。」
ユリア:「……と、申しますと……?」
ヴルーツ:「少し早いが、お前を食す事にした。」
ユリア:「ッ!!
は、話が違います!!私の誕生日まで待つと!」
ヴルーツ:「だから予定が変わったと言ったであろう。
いやはや、クーニスのやつ、あと一週間も無いのに一切慌てた様子が無い。
なんなら呑気に構えやがって……」
ユリア:「そんな理由で……!」
ヴルーツ:「ああ、そんな理由、だ。
だが、クックック……良いものが見れた。
五年前のお前であれば一切慌てなかっただろうに、今はどうだ?
心の底から死にたくないといった苦悶の表情。
最高では無いかァ。
ハッハッハッ!!五年!五年待った甲斐があったというものだ!!!」
ユリア:「そ……そんな……
……ああ……あぁ……」
ヴルーツ:「さて、何にして食すか……」
ユリア:「だ、旦那様!お願い致します!
せめて最後に皆さんにッ!何かッ!何か別れの挨拶等を……ッ!!」
ヴルーツ:「ああ~良い……良い嘆きだ……
……この声を、この音を、この音楽を聴いている時が一番生を実感する……
そうだ!ユリア!お前をクーニスにも食べてもらおう!」
ユリア:「ぇ、えぇ……?」
ヴルーツ:「アイツは私や他の子供たちと違って人肉を頑なに拒んでいたのだ。
こんなにも美味しく面白い食材この世に無いというのに、
アイツの初めての食材をお前にしてやろう。」
ユリア:「……ッ!」
ヴルーツ:「何も知らないアイツがお前を口にした時、言ってやるのだ。
“お前が今食ったのはユリアの肉だ”と。
……くっくっくっ……アハハハハハハハハハハハッ!!!!!!
愉快だ!!愉快だ!!!
アイツ!絶対に困惑するぞ!もしかしたらその場で嘔吐するかもしれない!!
アハハハハハハハハハハハッ!!!!!!
よし!よし!それが良い!そうしよう!」
ユリア:「……!」
ヴルーツ:「ではお前である証拠として首を刎ね、その他の部分はミンチにして……
ハンバーグにしよう!クーニスは子供舌だからハンバーグ大好きだろうなぁ。
ハハハハ!なんと子想いな親なのだろうか!!」
ユリア:「……嫌だ……嫌だ……!」
ヴルーツ:「アッハッハッハッハッハッハッハ!!!」
クーニス:「いや、子供舌じゃないし。」
ヴルーツ:「ッ!!?」
ユリア:「っ!坊ちゃま!!」
クーニス:「ハンバーグは誰だって好きだろ。」
ヴルーツ:「き、貴様……何故ここにッ!!!」
クーニス:「何故って、ボクのお付きメイドがどっか行ったから追いかけろって……」
ヴルーツ:「そうではない!何故この場所を知っているのだ!!」
クーニス:「大きな声出すなようるせぇな!
自分の家の所有地くらい把握してるに決まってるだろ!
てか、人肉加工場って……お父様は本当に悪趣味ですねぇ。」
ヴルーツ:「……ッ。」
クーニス:「まぁ、そんな事はどうでもいい。
……お父様……いや、ヴルーツ。何故お前がボクのメイドを拘束している?」
ヴルーツ:「……っはァ???
お前の???違うなァ。ユリアは私の所有物だ。
戯(ざ)れるなよ餓鬼が。」
クーニス:「いや?ユリアはボクのだ。
ユリアが生まれた時からそう決まっている。
他でもないボクの言葉だ。間違いはない。」
ヴルーツ:「ほざいてろ。
お前たち!コイツを捕らえろ!」
(複数の人間がクーニスを囲む。)
ユリア:「坊ちゃま!!」
クーニス:「ほう。これが噂の我が家の直属の傭兵“グライヴィガ”か。
1、2、3……ざっと20人前後か。」
ヴルーツ:「その通り。
私を害する如何なる障害をも亡き者とする戦闘精鋭部隊だ。」
クーニス:「ボク以外の、でしょ?」
ヴルーツ:「ッ!!
もう貴様とのお喋りもうんざりだ!!
貴様は薬漬けにして二度と人語が喋れなくしてやる!!
やれ!お前たち!!」
ユリア:「坊ちゃま!逃げてください!!」
クーニス:「その必要は無い。やれ、爺や。」
長谷川:「ほっほっ、かしこまりました。」
ユリア:「っ!!」
ヴルーツ:「なっ!!我が精鋭がッ!!」
長谷川:「ふむ、些か隙だらけでございますな。」
クーニス:「爺やぁコイツらもうすぐボクの手駒になるわけだから殺さないでねぇ。」
長谷川:「承知しております。峰打ちでございます。」
クーニス:「ひゅー!カッコイイ!!さっすがSAMURAI!NINJA!!」
長谷川:「ほっほっほっ!ワタクシはSHITSUJIでございますよ坊っちゃん。」
ヴルーツ:「セバスチャン!貴様!!私を裏切るのかァ!!!」
長谷川:「ヴルーツ様、ワタクシはセバスチャンではなく長谷川でございます。」
ヴルーツ:「そんな事はどうでも……ッ、貴様……今……私をなんと呼んだ……?」
長谷川:「はい、ヴルーツ様、とお呼びました。」
ヴルーツ:「…………ッ!?どういう事だ!説明しろッ!!」
長谷川:「本日付でツァイフェル家の当主はクーニス坊っちゃんとなりました。」
ヴルーツ:「ッ!!?」
クーニス:「ほら、女王陛下からの手紙だ。直々の勅命、だよ。ヴルーツ。」
ヴルーツ:「な……ッ」
クーニス:「この間ちょっとね。
女王陛下とお茶会をしたんだ。
それで話の話題として、可愛い可愛いズースちゃんの話をしたら、
“つまらん。もっと怖気が立つような醜悪な話は無いのか”、と言われたから
仕方なくアンタの悪事の数々を話題にした。勿論、証拠も列挙してね。」
ヴルーツ:「私の悪事だと!?」
クーニス:「ツヴァイ兄さんの列車飛び込み自殺、
フィーア姉さんが巻き込まれた学生寮での強姦事件、
ドライ兄さんとツィリンの起こした学園放火事件。
それら全ての黒幕はアンタだ。
そうでしょ?」
ユリア:「え……?」
ヴルーツ:「はぁ……?な、なんだそれ……。」
クーニス:「ツヴァイ兄さんの手記からの情報、死ぬ直前の兄さんの友人からの証言
独房にいる強姦犯、ドライ兄さんとツィリンから言質はとってある。
もう言い逃れは出来ないよ。お父様?」
ヴルーツ:「しっ、知らない!!私はッ、本当に知らないぞ!!」
長谷川:「ヴルーツ様、どんなに喚いても無駄でございます。
女王陛下からの勅命は二つ。
一つはツァイフェル家の当主をクーニス坊っちゃんとする事。
そしてもう一つは、色欲の暴君、ヴルーツ・ロスト・ツァイフェルの捕縛でございます。
事実がどうであれ、女王陛下が“そう”と言えばそれが、“真実”となります。」
ヴルーツ:「ッ!!?」
クーニス:「さあ、お縄についてもらおうか。」
ヴルーツ:「くッ!!」
ユリア:「きゃっ!」
(ヴルーツ、ユリアの首に刃物を突き付ける。)
ヴルーツ:「動くなッ!!!」
ユリア:「うっ!」
長谷川:「ほう、ナイフを隠し持っていらっしゃいましたか。
しっかりとユリア様の頸動脈をスパっとできる位置。
ほっほっほっ、ワタクシの教えた事をしっかりと覚えておりましたか。
元・主とはいえ、爺や嬉しく思いますぞ。」
ヴルーツ:「うるさい!うるさいうるさいうるさい!!
これ以上私を愚弄してみろ!!この女を殺してやる!!」
クーニス:「……。」
長谷川:「どうなさいますか坊っちゃん。」
クーニス:「待機だ。」
長谷川:「かしこまりました。」
ヴルーツ:「ハッハッハッ!
先程までは饒舌に気持ちよさそうにツラツラとワケの分からん事を言っていた癖に、
黙りこくりやがって!!良い気味だ!!」
ユリア:「くっ!坊ちゃま!私の事は気になさらないでください!!
この男を!私に気にせず捕えてください!!」
ヴルーツ:「黙れ!余計な事を口にするな!!
……さあ……どうするクーニス!!
このままでは私はコイツを殺すぞ!!!」
クーニス:「……6……5。」
ヴルーツ:「……は?」
クーニス:「4。」
ヴルーツ:「何を数えている……」
クーニス:「3。」
ヴルーツ:「やめろッ!大体なんだ!悪事だとォ!?全く私に関わりが無いではないかッ!!」
クーニス:「2。」
ヴルーツ:「ッ!!良いかクーニス!今は私の方が優勢なのだぞ!
ユリアの生死は私が握っているのだ!!」
クーニス:「1。」
ヴルーツ:「やめろッ!!!くぅ!!もう良い!!殺してやるッ!!!」
クーニス:「0。
ばぁ~ん。」
(ヴルーツが激昂してクーニスに向けたナイフを持つ腕が撃ち穿たれ、吹き飛ぶ。)
ヴルーツ:「ぐッ!!ぐあああああッ!!!
うッ、腕がァ!!」
長谷川:「ユリア様、今のうちにこちらへ。」
ユリア:「は……はい……!」
ヴルーツ:「……がぁ!……ライフル弾が、私の腕を穿ち、吹き飛ばした……だとォ……!
どッ、どこからァ!!」
クーニス:「わーお、さっすがズースちゃ~ん
タイミングもピッタリ、吹き飛ばして欲しい所も完璧。」
ヴルーツ:「ズ、ズース……だとォ……!?」
クーニス:「どこからってのはそりゃああの小窓からでしょ。
この部屋から外界に繋がるのは一階へ繋がる扉と、
換気の為に設置された小窓しかない。
見えるかなぁ。いや見えるよね。
アンタのその体勢から小窓をよぉーく見てみると大きな木が見えるでしょ?」
ヴルーツ:「ッ!?」
~遠方~
♥ズース:「す、すごく緊張しましたぁ……あ!クーニス坊ちゃま喜んでくださってる!♡」
~人肉加工場、地下~
ヴルーツ:「……あ……あの小窓から……遙か遠方から……!!
しかも木の上からッ、私を……撃ち抜いた……だと……!
あ、アイツ、そんな技術を……!!」
長谷川:「坊っちゃんたっての希望でワタクシが仕込みました。
私は剣術、武術は一通りできますが、らいふるなるモノは初めてでしたので、
教えるのも一苦労しました。
げぇむを用いてのお勉強はとても楽しかったでございますなぁ。
ズース殿なんか——」
ズース:『最上位ランク帯常連勢です!』
長谷川:「今ではズース殿とはえふぴぃえす仲間でございます。」
クーニス:「いや~~~美少女メイドに重火器!浪漫!!
いやもうホントに理想!理想のメイドさんだよズースっちゃん!!」
ヴルーツ:「しッ、しかしッ!ズースは、確かに、私も、物になった、はずッ!!」
クーニス:「はぁ~~~~~~~???
ほざくなほざくなほざくなぁ!
ズースちゃんはボクの可愛い可愛い理想のメイドさんだ!!
お前のじゃねぇよ!!」
ヴルーツ:「だッ、だがッ!確かにヤツは私のヒト科魅了体質でッ!!」
クーニス:「そんなもんボクが自前のtechnic(テェクニェ~~ック)で上書きしてやったわ!」
ヴルーツ:「そ、そんな事……可能なのかッ!?」
~遠方~
♥ズース:「クーニス坊ちゃまの方が……すごく……きゃっ!///」
~人肉加工場、地下~
ヴルーツ:「くッ!くそォ!!」
クーニス:「チェックメイトだヴルーツ。」
ヴルーツ:「……ッ。」
クーニス:「お前の敗因はユリアに……ボクの女に手を出した事だ。」
ヴルーツ:「……。」
クーニス:「ユリアはボクの物だ。
誰であろうと、ボク以外でアレを侵そうとするヤツは生かしておかない。」
ヴルーツ:「ッ!」
ユリア:「坊ちゃま……。」
クーニス:「…………だが、女王陛下がどうしてもお前を生かして連れてこいと言っていたからな。
生かしておいてあげるよ。」
ヴルーツ:「……ハッ、あれのモノになるくらいなら死んだ方がマシだ。」
クーニス:「いや?駄目だ。
この国では女王陛下の言葉は絶対だからな。
……知っての通り我らが女王陛下は非情で非常に悪趣味。
さて、アンタはどうなるかな。」
ヴルーツ:「ハハハ、そうだな……
そういえば、先週……お会いした時、パイプオルガンを欲しがっていたな……
次にお前、とッ、会う頃には……私がそれになっているかもな……。」
クーニス:「ハハハ、面白い。
でも気持ち悪そうだから二度と会わない事を祈るよ。
爺や、これを拘束しろ。ついでに止血もしてやれ。」
長谷川:「かしこまりました。」
ヴルーツ:「……。」
クーニス:「あー、そうだ。
ヴルーツ、いや、お父様。」
ヴルーツ:「なんだ。」
クーニス:「今回の茶番は——」
♥13歳のクーニス:「——アンタが満足行く様な敗北感だったかい?
気持ち悪いおとうさま。」
ユリア:「っ!!」
ヴルーツ:「……ッ!!
っひ、非情で、完膚なきまでに、打ちのめされましたァ……
あッ、あんまりな完全敗北故……
清々しく、絶頂……してしまいました……!」
ユリア:「……。」
長谷川:「……。」
♥13歳のクーニス:「……フフ──」
クーニス:「気持ち悪っ。
あ~あ、気分が悪くなった。ユリア、さっさと帰ろう。
帰ったら直ぐに紅茶の準備だ。」
ユリア:「……。」
クーニス:「ユリア?」
ユリア:「えっ、あっ、はい。かしこまりました。」
クーニス:「じゃあまた後でね、爺や。」
長谷川:「はい、連行しましたらすぐに屋敷に戻ります。」
クーニス:「さ、行くぞユリア。」
ユリア:「は、はい。」
◇
クーニス:「……。」
ユリア:「…………あ、あの坊ちゃま……」
クーニス:「悪かった。」
ユリア:「……え?」
クーニス:「ボクはお前を誰にも侵させないと約束したのに危険な目に合わせてしまって……」
ユリア:「え……あ!大丈夫です。大丈夫ですよ坊ちゃま。
私はこの通り、どこも怪我しておりませんので。
坊ちゃまが謝る事はありません。」
クーニス:「うるさい。
ボクが謝りたいから謝ってるだけだ。」
ユリア:「あ、はい。」
クーニス:「…………。
なあ、クソ親父の用はもう無くなったって事で良いんだよな。」
ユリア:「え、そ、そうでございますね。
坊ちゃまが正式に当主になられましたので、それに彼は投獄されるでしょうし……。」
クーニス:「じゃあ、来週の日曜日、ボクと付き合え。」
ユリア:「あ……は、はい、かしこまりました。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♥ズース:時が経ち、来週の日曜日、メイド長の誕生日♪
ユリア:「……。」
クーニス:「……。」
ユリア:「…………え、えっと……とても良い所……ですね……坊ちゃま。」
クーニス:「……当然だ。ボクが当主になった祝いも兼ねているかな。」
ユリア:「あ……なるほど……こ、この鹿肉のワイン煮も……!
こちらのジャガイモの冷製スープもとても美味しいです……!
え、えっと、後でシェフの方にレシピを聞いてみようかしら……!」
クーニス:「……なんだ、緊張でもしてるのか。」
ユリア:「そっ、そんな事はっ!」
クーニス:「ん。」
(クーニス、ユリアに紙袋を差し出す。)
ユリア:「え?あの、坊ちゃま、これは……?」
クーニス:「はぁ?誕生日のプレゼントだよ。
タイミング的にそれしかないだろ。」
ユリア:「あ……そ、そうですよね!
開けても……?」
クーニス:「ああ、良いよ。」
(ユリア、紙袋の封を開ける。)
ユリア:「……。……!
手袋、ですか……?」
クーニス:「ああ、いつも使ってたやつ駄目になったって言ってたからやる。
……あれよりは丈夫だから、もう駄目にしたり失くしたりすんなよ。」
ユリア:「……ありがとうございます……!坊ちゃま!」
クーニス:「……。」
ユリア:「……え?坊ちゃま?」
クーニス:「坊ちゃまじゃない。」
ユリア:「ん……?」
クーニス:「さっきからボクを坊ちゃま坊ちゃま言ってるけど、坊ちゃまじゃない。」
ユリア:「え……?」
クーニス:「ボクはもう坊ちゃまじゃない。
ツァイフェル家の当主だ。」
ユリア:「え、あ!そ、そうでしたね!失礼しました!」
クーニス:「……ッ。」
(クーニス、ユリアの手を掴む。)
ユリア:「えっ!?」
クーニス:「昔、約束……いや、命令したよな。
ボクが正式にこの家を乗っ取った暁には——」
ユリア:「あ……。」
♥13歳のクーニス:「ボクが正式にこの家を乗っ取った暁には——」
クーニス:「——ボクの事をご主人様、と呼べ、と。」
ユリア:「ぇ……あ、えっと……その、坊ちゃま、か、顔がちかっ」
クーニス:「違う!ご主人様!」
(クーニス、離れようとするユリアを引き寄せる。)
ユリア:「きゃっ!ぇ……ぇ……え……あ、て、手を離して下さませ……///」
クーニス:「言うまで離さないからな。」
ユリア:「ぁ……!ああ……!うぅ……!///」
クーニス:「いや言えよッ!!!」
♥ズース:ライフルのスコープ越しにて♪
♥ズース:「きゃー!執事長!執事長!ご主人様、メイド長に手袋プレゼントしましたよ!
手袋は潜在意識では“絆”を意味するのだとか!恋人になりたいという思いが強いのだとか!
きゃー!しかも!あんなに強引に引き寄せて!」
長谷川:「ワタクシが昔、手袋を好きな人に渡すと想いが通じると教えたのを律儀に覚えてらっしゃるのですな。
坊っちゃんはあれで初心で純情な所があるのが愛らしゅうございます。
いやぁ~坊っちゃんたちに秘密で護衛に来て正解でした!良いモノが見れました!」
♥ズース:「けどメイド長には通じてなさそうですねぇ~
あ、言い合いになっちゃった。」
長谷川:「ふむぅ……文化圏の違い……ですかなぁ……。」
♥ズース:「むぅ~メイド長とご主人様がくっつくのはまだ先そうですねぇ~」
長谷川:「そうでございますなぁ。
しかし、慌てずとも、ですぞ。」
♥ズース:「わかってますよぉ。
フフフ♪メイド長、凄く嬉しそうです♪」
長谷川:「ほっほっほっ!若いとは良いですなぁ!」
♥ズース:「良いですなぁ♪」
長谷川:「いやはや、これからのツァイフェル家には喧騒と笑顔が絶えなさそうで、
爺やは愉悦でございます!」
♥ズース:「はい!わたしもです♪
可愛いご主人様とメイド長の為に、わたしたちも頑張りましょう!
喧騒と笑顔が絶えない……フフフ♪わたしも愉悦!でございます♪」
───────────────────────────────────────
END