[台本]会議は踊る、されど彼女は出来ず
世界設定、場面情景
特に変わった事はない何の変哲も無い世界、つまり普通の世界、普通の日常。
謎の流行り病、人々の奇行、異常気象が世界を混沌へと誘う。
だけど、関係ないよねェ!?
恋人が居ない以上の病も、奇行も、異常も、混沌も、無いよねッ!!?
登場人物
○笛張 夏純(ふえばり かすみ)
18歳、男性
綺麗めの良い顔青年。
顔は良いけど性格は普通に男の子。下ネタだって普通に言う。
彼女が欲しい。
○蜘旗 浩満(くもはた ひろみつ)
18歳、男性
好青年感出してるけども発言の節々が妙に傲慢。そして時に冷酷。
だけど悪い奴ではないし悪気もない。
〇亘理 進一(わたり しんいち)
17歳、男性
兄貴肌で頼りになるけどこの中で一番年下男性。
多分一番まとも。
笛張 夏純♂:
蜘旗 浩満♂:
亘理 進一♂:
これより下からが本編です。
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~某所のファミレス~
夏純:「俺ーレアチーズケーキでー。」
浩満:「チーズインハンバーグのBセットをお願いします。」
進一:「あー……フライドポテトで。」
夏純:「あ、あとドリンクバー三つお願いしますー。
はーい。お願いしまーす……。
……。
……はーい!第九回!“夏浩進会議(かひろしんかいぎ)”ースタートォ!!」
進一:「いや……この三人で集まるの初めてじゃん……。」
浩満:「そうですよ。後輩の夏純(かすみ)くんはギリギリ関わってあげてますけど、
亘理(わたり)くんとは今後も関わる気も無かったんですけどね。」
夏純:「後輩と呼ぶな!元は同学年でしょうが!」
進一:「お~?せんぱァい。冷たいじゃないっすかァ~……」
浩満:「いえいえ、通常運転ですよ。ワタリくん。」
夏純:「ちょおっとぉー!!急にバチバチしないでよ二人ともー
せっかくのカヒロシン会議が台無しじゃーん。」
浩満:「どうでもいいですよ、そんなこと。
それで、なんですか。
なんで僕らを招集したんです?カスミくん。」
進一:「そうだな。さっさと本題に入ってくれ。
そして早く解放してくれ。」
夏純:「……まぁ、いいや。
じゃあ!本題に入ろう!
第九回!カヒロシン会議のお題は……!
(急に冷静になる。)
……どうしたら、彼女出来ると思う……?」
進一:「……。」
浩満:「下らな。」
進一:「帰るかー」
浩満:「おや、珍しく意見が合いましたね。
帰りましょうか。」
夏純:「待ちな!
二人が頼んだ料理はどうするのー?」
進一:「うぐっ……。」
浩満:「……なるほど、集合をファミレスにし、
“奢るから早く注文して”と催促したのは僕らを留める為、ですか。」
夏純:「いぐざくとりぃ~!」
進一:(うざァ……)
浩満:「ウザいですね。」
進一:「言うんか……。」
浩満:「仕方がありません。聞いてあげましょう。
その下らないお題を持ち出した理由を。」
夏純:「理由?
そんなの単純明快だよ!
なんで俺イケメンなのに彼女出来ないんだろうなァー!って
思ったからだよ?」
進一:「……そういうとこじゃね?」
夏純:「そういうとこって何???」
進一:「その、うるせぇとこ。」
夏純:「はーい!それはありませーん!!
俺女の子の前ではこんな荒ぶり方しませーん!!」
進一:「ほんっとにうるせぇ……」
浩満:「確かに、僕らと同学年の時はずっとキラキラしてましたね。
留年してからもそうだったんですか?ワタリくん。」
夏純:「留年だけど、留年じゃない!」
進一:「……まぁー…………そう……だった、っすかね…………?
俺ぶっちゃけカスミとそんなに仲良いワケじゃないですし。」
夏純:「えぇ……?シンイチくん?シンイチくん?シンイチくん?シンイチくん??
おおおおお俺たち仲良いよね?それ冗談だよね???
一緒に寝たじゃん!一週間くらい一緒の部屋で寝たじゃん!!」
進一:「うるせぇ!修学旅行で偶々同じ班だっただけだろうが!!」
夏純:「いやー!そんな冷たい事言わないで!」
浩満:「なるほど、じゃあ、うるささは関係ないかもしれないですね。」
進一:「いやいや、女子ってのは俺たちが見てないと思ってる顔も結構知ってるもんですよ?」
浩満:「……へぇー……ですが、まぁ、これを判断の材料にするのは難しいでしょうね。」
進一:「そんな事言ったら“彼女出来ない理由”なんて憶測ばっかじゃないっすか。」
浩満:「確かに、ではこれも考慮しましょう。
顔が良くてもうるさいと彼女は出来ない。」
夏純:「え↑ぇえ!?」
進一:「じゃあ、これでこの話は終わりだな。
食ったらさっさと出よう。」
浩満:「そうですね。
あ、来ましたね。
……というか、ワタリくん。フライドポテトだけで良いんですか?」
進一:「んーまぁ、カスミとは言え、奢りでガッツリ食べるなんてしないっすよ……。
俺的には、先輩無慈悲だなぁーと思いながら注文するの聞いてましたよ。」
浩満:「ワタリくん損な性格してますね。
まぁ、それも美徳ではありますが。」
夏純:「なーに、全部終わったーみたいな空気作ってんのー
今回の議題はなんで彼女出来ないのか、じゃなくて“どうすれば彼女が出来るか”だよ!」
浩満:「……では、まぁ、そうですね。
カスミくん、期末テストの結果どうでした?」
夏純:「……関係無いだろ。」
浩満:「関係あるんですよ……あれ?なんでワタリくんまでそっぽ向いてるんです?」
進一:「なんでもないです……。」
浩満:「ー?まぁ、どうでもいいや。
で?どうなんですか。カスミくん。
全教科聞くのは面倒臭いので、平均点教えてください。」
夏純:「……32点」
浩満:「声が小さい。」
夏純:「…………32点。」
浩満:「まだ、小さい。何点ですか。」
夏純:「32点だぁあああああああああああああああああ」
浩満:「声がでかぁあああああああああああああああああい!!」
夏純:「ひぅん……」
浩満:「と、まぁ、カスミくんは頭が悪い。」
夏純:「しゅん……」
進一:「……ちなみに、先輩はどうなんすか……?
期末テスト……は、3年生は三学期無いし……
あ、センター試験、どうでした?」
浩満:「満点でしたよ。」
進一:「へ?どの教科がです……?」
浩満:「全部。」
進一:「??????????????????????????????????????」
夏純:「シンイチくん、駄目だよ……
ヒロミツくん……めちゃんこ頭良いから……」
進一:「…………っすね……。」
浩満:「話を戻します。
女性は頭が良い男性を好みます。
まぁ、男性も勿論頭が良い女性を好みますが、それはさておき。
そういう事ですよ。
頭が良くなれば、今よりは持てますよ。
カスミくんも、僕みたいに賢く、クレバーになれば―」
夏純:「でも浩満(ひろみつ)くん失恋したじゃん。」
浩満:「ぐ―ッ!!」
進一:「えぇ!?先輩そうなんすか!?
おい!どういう事だよカスミ!」
夏純:「あーあのねー
ヒロミツくんってね?六年間片思いしてて、その間勿論誰ともお付き合いしてなくてさー
ちなみにちなみにぃ~ヒロミツくんの好きな人は~みuアッツゥイ!!!!」
浩満:「…………。」
夏純:「アッツイんだけど!?ねぇ!!?
チーズインハンバーグ顔に押し付けないで!!熱い!熱い!」
浩満:「次、その話をしようとしたら焼き石でやりますからね。」
夏純:「わ、わわわ分かりました!もう喋りません……!!」
進一:「…………先輩……」
浩満:「勿論、教えませんよ。」
進一:「はい……。」
浩満:「あ、すいません。
チーズインハンバーグをもう一つお願いします。
あと、これ下げてもらえるとありがたいです。
……申し訳ありません。ありがとうございます。」
夏純:「……と、とにかく……あれだから……
頭良くても……彼女は出来nそんな顔しないでよヒロミツくぅん……!
事実じゃん!」
浩満:「……まぁ、認めましょう。
カスミくんの言う通り、事実僕に彼女はいませんからね……。」
夏純:「だしょ~~~?
だから、頭良くても駄目なんだよー」
浩満:「……で、あれば……
運動が出来る事、とかどうです?」
夏純:「ほう、定番だね。」
浩満:「小学生の時とかって足が速いだけでモテる、なんて事あったじゃないですか。
そして、高校生の今も大して変わりありません。
体育の授業や球技大会、体育祭で活躍すると黄色い歓声があがるものです。
と、いう事でワタリくん。どうなんですか?」
進一:「え、俺っすか?」
浩満:「はい。
サッカー部のエースストライカーで、高校総体でもMVPになり、
”梁山泊(りょうざんぱく)”と言わんばかりの
化け物揃いの僕らの学校の体育祭でも好成績を残した。
運動面において、君程の逸材は中々居ないと思いますけど。
モテモテなんじゃないですか?」
進一:「んー……あんまりっすかね。
現にこうやって野郎二人と飯囲んでますし。」
夏純:「シンイチくんhむぐっ……」
進一:「美味しいかぁ~?フライドポテトぉ~」
浩満:「なんですか?
僕凄く気になるんですけど。
あ、すいません、苺パフェをお願いします。
……それで、なんなんですか?」
進一:「教えないっすよ。」
浩満:「……そうですか。
では、一つ交渉と行きましょう。」
進一:「……。」
浩満:「このチーズインハンバーグとこれから来る苺パフェ、
それを譲るので、話してはいただけませんか?」
夏純:「俺の金だが?」
進一:「いいや、駄目っすね。」
浩満:「…………はあ……話し合いは意味も無く交渉の余地無く、交渉決裂、と。
……なら仕方が無いですね。」
進一:「……?」
浩満:「……へぇー……そうなんですねー……」
進一:「……な、なんすか?急に一人合点して。」
浩満:「“んー……あんまりっすかね”とか言っておきながら隅に置けないですね。
“あんまり”という割に女性に言い寄られてるみたいじゃないですか。」
進一:「ッ!!」
浩満:「いやはや、無粋な質問をしてしまいました。
好きな人いますもんね。いえ、いましたもんね。
申し訳ございません。ワタリくん。」
進一:「先輩。それは、どういう意味っすか。」
浩満:「あ、ありがとうございます。
あむっ……ん~~~やっぱり甘味は良いですねー。」
進一:「先輩ッ!」
浩満:「ん?ワタリくんもやっぱり苺パフェ欲しいのですか?
仕方が無いですね。特別に少しだけあげますよ。」
進一:「話を逸らさないでくださいッ!!」
浩満:「大きな声を出さないでくださいよ。
ここは公共の場ですよ。
さ、落ち着いて、座ってください。」
進一:「……。……ぐっ……。
…………何故、知ってるんですか。
もしかして……カスミ……。」
夏純:「えッ!?俺ェ!?違う違う違う!」
進一:「……じゃあ、どうして…………。」
浩満:「深く考える必要は無いですよ。
僕は何も知らないですからね。」
進一:「……は?」
浩満:「僕が今言ったのは全部適当ですから。」
進一:「なんだと……?」
浩満:「要はカマかけですよ。
ワタリくん、単純そうなので引っ掛かる気がしたので、
やってみたのですが、見事に引っ掛かったみたいですね。」
進一:「…………くッ!!
やられた……!」
夏純:「うぅぅぅわっ……」
浩満:「申し訳ありません。
お詫びに……すいません。フライドポテト大盛りお願いします。
これで許してください。」
夏純:「俺の金なんだけどね???」
浩満:「にしても、一つ分かりましたね。
何故、僕らなのか。」
進一:「……というと?」
浩満:「何故、この話題を僕とカスミくん、シュウヤくんでも、
同級生組のカスミくん、ワタリくん、コノエくんの組み合わせでもなく、
僕、カスミくん、ワタリくんの三人なのか。
理由は単純。
だって僕たちは、」
進一:「……彼女が、居ない、から。」
夏純:「いぐざくとりぃ~」
進一:「ぶちのめすぞ。」
夏純:「きゃぅうん……」
進一:「てか、ツナシバル先輩って彼女いるんすか?」
浩満:「…………………………ええ、シュウヤくんには彼女居ます。」
進一:「なんでそんな苦虫を嚙み潰した様に……」
夏純:「まぁ、そういう事だよ。」
進一:「???」
浩満:「色々あるんですよ。」
進一:「……?
とりあえず、彼女が居ない俺らを招集したのは分かった。
が、逆じゃね?彼女居る奴に聞けば良いじゃねぇか。
どうすれば彼女出来るかを。」
夏純:「かぁ~~~~~~ッ!分かってないなァ~~~~
分かってないよシンイチくん。」
進一:「?」
夏純:「もう聞いたよ……(吐き捨てる様に)」
進一:「そ、そうなのか……。」
夏純:「聞いたんだよぉ……ツナシバル先輩にも、ソウマくんにも……
でも……でも……
あ、シンイチくん、ツナシバル先輩っぽく言って。馬鹿っぽく言って。」
浩満:「おい、人の親友を馬鹿扱いしないでくれます?」
夏純:「こしょこしょこしょ……」
進一:「お、おう……
『気が付いたら居たァ!!』」
夏純:「はい、死ねーーーーーーーーーー!!
どうすれば良いか聞いたのに、“気が付いたら居た”とか論ッッッ外!
そして、ソウマくんはッ!!
ヒロミツくんやって!空気読めない優男っぽく!」
進一:「おい……いや、アイツマジで空気読めねぇな……。」
浩満:「『えーっと……その話つまんない。』」
夏純:「うわぁぁぁあああああ!!
ふざけるな!ふざけるな!!馬鹿野郎ォ!!!
うおぉぉぉわぁああああああああああ!!!!」
浩満:「うるさっ……」
夏純:「ソウマくんは本当に冷たい……!
自分の興味外の事には全ッ然意に介さない……!
あの子サイコパス過ぎるよ……。」
進一:「それは分かる。」
浩満:「まぁ、なんというか、アレですよね。
僕らの周りでまともに会話できるのって僕らくらいですよね。」
夏純:「そうだね?
でも君らも結構アレな方だからね??
あくまでも“比較的に”会話出来る方なだけだからね?」
進一:「あれだよな。
恋人いるヤツからのアドバイスって割かし宛にならないよな。」
浩満:「今の二人のはアドバイスじゃないですけどね。
ですが、往々にしてそういうモノですよね。
だからまぁ、僕らを宛にする気持ちも分かります。」
夏純:「そそ!三人寄ればジョウモンのエイチってやつだよ!」
浩満:「文殊の知恵です。」
夏純:「三人寄れば文殊の知恵ってやつだよ!」
進一:「どうだろうなぁー
結局交際経験ない奴ら三人集まったところで、
烏合の衆な気がするけどな。」
浩満:「哀しい事にそうなんですよね。」
夏純:「はぁ~……
顔が良いだけでは駄目。
頭が良くても駄目。運動が良くても駄目。
じゃあ、どうすればいいんだよー。」
浩満:「さて、どうすれば良いんでしょうね。
あ、ありがとうございます。
フライドポテト来ましたよ。
ついでにこの抹茶あんみつをお願いします。」
夏純:「ヒロミツくん頼み過ぎじゃない?」
浩満:「女性からの意見を聞く、というのはどうです?」
夏純:「無視かい?」
進一:「女性陣に話を聞くって言ってもっすねー……
俺らの周りの女性陣は……
……ん~……そういや、サイハネって彼氏いないよな。」
浩満:「…………あれ?
ミウさん彼氏いないんですか?」
進一:「え?いない、と思ってますけどー……」
浩満:「……不確定の情報に突っ込むのはやめておきましょう。
とにかく、カスミくんどうですか?女性に聞くという案は。」
夏純:「なしだね。」
進一:「あ?なんでだよ。」
夏純:「prideの問題かな。
女子に『どうしたらぁ~彼女出来るかなぁ~?』とか聞けない。
prideが許さない。prideが。」
進一:「無駄に発音良さげに言うな。」
浩満:「無駄なプライドですね。
気持ちは分からなくもないですが。
いやー美味しいですねー抹茶あんみつ。」
進一:「じゃあ、駄目だな。
カスミ、てめぇーに彼女は出来ねぇわ。」
夏純:「そんなぁー……」
進一:「だって俺らじゃまともにお前に彼女出来る方法思いつかねぇわ。」
夏純:「そんにゃぁ~……」
浩満:「んー……あえて言うのであれば、
環境でしょうかね。
例えば、ワタリくんのお友達で空気読めなくて冷たいコノエくんなんかは、
昔からの幼馴染と今付き合ってるワケですし、
なのでこれから彼女出来るような環境作り、頑張ってください。」
夏純:「ずるいぞ!幼馴染いるやつらずるい!!
てか君ら二人も幼馴染の女の子いるのに彼女いないじゃん!!
やっぱ駄目じゃん!!!」
浩満:「じゃあ、やっぱりカスミくんに彼女出来ません。
この会議、終了です。」
夏純:「そんなァー!!」
浩満:「ごちそうさまでした。
さ、出ましょうか。」
進一:「そうだな。あまり長居しても迷惑だろうしな。」
夏純:「くッ……うぅっ……また駄目か……」
浩満:「………………。
カスミくん、伝票レジに置いときますね。」
夏純:「え?うん。」
浩満:「ワタリくん。
君って足早いですよね。」
進一:「え?あーまぁ、はい。足には自信ありますけど。」
浩満:「ちょっと競争しませんか。
僕も走りには自信がありまして。
とりあえず、学校まで競争しましょう。」
進一:「お、いいっすね。
じゃあー……用意ー……ドーン!」
夏純:「お会計お願いしまーす。
…………ちょっと待ってくださいねー
ねぇ、ごめーん
少し、というか結構お金足りなかったから……っていねぇ!!?
ヒロミツくん!?シンイチくん!?
……電話にも出ない……!
というか、食べ過ぎなんだよヒロミツくん……ッ!
ふざけるな!ふざけるな!!馬鹿野郎ォ!!!
わぁああああああああああん!!!!」
───────────────────────────────────────
END