[台本]改造戦屍ファルシファイ~第四話―1/2:未完了生命体(ファルシファイ)~
世界設定、場面情景
日常の中に潜む狂気、或いは凶器。
これは、不条理にも巻き込まれてしまった青年が、『狂鬼』と化す物語。
精神世界においての彼らの決意。
登場人物
〇亘理 進一(わたり しんいち)/“改造戦屍(かいぞうせんし)”ファルシファイ
22歳、男性
兄貴肌で頼りになる青年。
勝手な都合で殺され、勝手な都合で改造され、“改造戦屍ファルシファイ”となる。
ファルシファイに変身してる時は雄たけびと唸り声しかあげれなくなる。
主人公。
〇ファルシファイ
年齢不問、女性
亘理 進一の内的宇宙、つまり精神世界に生まれた未完了生命体。
平静にして冷静、冷徹ぶってる人格の持ち主。
亘理 進一が自身の内的宇宙に意識を向けた事で対話可能となった。
〇キタガワ
15歳、女性
人類保安機関“マクスウェル”から送られた刺客の改造人間。
怪力、“ネガティヴエグジスタンス(概念的消失存在)”、規則固定の三つの異能を持っていた。
とても真面目な性格で、殺し合いも真摯に行う。一人称は“キタガワ”。
亘理 進一が自身の内的宇宙に意識を向けた事で対話可能となった。
〇ヴィース
年齢不詳、男性
人類保安機関“マクスウェル”から送られた刺客の改造人間。
“神速逸脱(アクセラレーション)”という異能を持っていた。
亘理 進一が自身の内的宇宙に意識を向けた事で対話可能となった。
〇ナレーション
年齢不問、性別不問
作中のナレーション。そして改造戦屍ファルシファイの言葉と技名を代弁する。
・亘理進一 ♂:
・ファルシファイ♀:
・キタガワ ♀:
・ヴィース ♂:
・ナレーション 不問:
↓これより下が台本本編です。
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N:“─暴走解錠(インテンションデリート)─”
進一:「ぐ……ぉ、お、ぉ、おおおおぉぉぉおお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ッ!゛!゛!゛!゛!゛!゛
あ゛A゛a゛ア゛あ゛ッ!゛!゛ラ゛プら゛ス゛ッ!゛!゛!゛!゛」
ラプラス:「ごめんなさい……!」
N:“暴走解錠(インテンションデリート)”。
進一(シンイチ)の意志を度外視したファルシファイへの変身。
それだけではない。暴走解錠は自我を封印されてしまう。
進一:視界が、暗転する。
間。
進一:「…………。
……?」
N:明転。
シンイチの視界に広がった光景は宇宙。
否、本物の宇宙空間に放り出されたワケではない。
現実から、意識から遮断された事で、意識はシンイチの内側へ、精神世界へと向けられたのだ。
進一:「ここは……」
キタガワ:「ここは亘理 進一(わたり しんいち)の“内的宇宙”です。」
進一:「っ!」
(進一、声の方へ向く。)
進一:「キタガワ……!」
ヴィース:「“内的宇宙”とは、自身が内包する世界を宇宙と見立てたモノ、つまり精神世界さ。」
進一:「ヴィース!!」
N:内的宇宙に現れたのは、改造戦屍ファルシファイが、シンイチが撃破した筈の改造人間のキタガワ、ヴィースだった。
進一:「……ということは。」
キタガワ:「はい、成功です。」
ヴィース:「いやはや、ここまで上手く行くとは、本当ににマクスウェルには勝てないねぇ。」
進一:「……。」
キタガワ:「さて、ここまでは成功しました。
ここからが正念場ですよ、ヴィースさん。」
ヴィース:「そーだね。
亘理 進一(わたり しんいち)の内的宇宙へ侵入してからの行動は、
マクスウェルと言えどサポートする事は出来ない。
僕たちだけでなんとかするしかない。」
進一:「…………。」
キタガワ:「……?どうしましたシンイチ?」
ヴィース:「まさか、この状況でもまだラプラスを善だとするのかい。」
進一:「いや、そういう話じゃなくて……
まぁ、別に良いから聞かないでおこうと思ったから聞かなかったけど……
なあ?ここって俺の精神世界ってヤツなんだよな?」
キタガワ:「はい、その通りです。
シンイチは今、自身の精神世界、内的宇宙に居ます。」
ヴィース:「あれ?キタガワちゃん説明してなかったのかい?」
キタガワ:「いえ……しっかりと説明したかと。」
進一:「いや、しっかりとそこら辺の説明は受けた。けどな。」
キタガワ:「?」
ヴィース:「?」
進一:「お前たちがなんで俺の精神世界にいるんだ?
俺……その、お前たちを……こ、殺したよな?なのに……
えーっと、あれか?俺の中のイマジナリーフレンド的な?
俺の罪悪感が生み出した疑似人格的な???」
ヴィース:「いーや?そんな事は無いよ。
僕たちは君の形成した疑似人格じゃない。
僕たち自身の意志で人格が形成されている。」
キタガワ:「何故シンイチの内的宇宙にキタガワたちが存在するか、でしたね。
シンイチ。キタガワの能力、覚えてますか?」
進一:「えっと、ねがてぃぶなんとかと規則固定だろ?」
キタガワ:「はい。ちなみにネガティブイグジスタンスです。
キタガワの規則固定と貴方の、いいえ。ファルシファイの力である“ARTS(アーツ)”によるものです。」
進一:「……?」
キタガワ:「えーっと、ラプラスから“ARTS(アーツ)”の機能については聞いてますよね?」
進一:「ああ、たしか──」
ファルシファイ:「この世界は様々なモノで構成されている。
様々なモノとは気体、或いは液体、或いは固体。
それら物質に語り掛け、借り受け分解し、己の物として瞬時に構築する超技術。
“原子転生発動機構(げんしてんせいはつどうきこう)”。
或いは“AtomReincarnateTriggerSystem(アトムリインカーネイトトリガーシステム)”、縮めて“ARTS(アーツ)”。
それが、“未完了生命体(みかんりょうせいめいたい)”たる余の能力。」
進一:「──ッ!?」
キタガワ:「ッ!」
ヴィース:「……。」
進一:「お前は……」
N:シンイチたちの前に現れたのは、幼い容姿の少女だった。
ヴィース:「”未完了生命体(みかんりょうせいめいたい)”ファルシファイ……。」
進一:「え……?」
ファルシファイ:「そこな”人造生命体(じんぞうせいめいたい)”の言う通りだ。
余の名はファルシファイ。
”被寄生生命体(ひきせいせいめいたい)”、亘理 進一(わたり しんいち)。
貴様の燃ゆる“概念炉心(がいねんろしん)”と呼応する事で、
死して凍てついた死体を兵器、改造戦屍ファルシファイへと変貌させる核。
それが余だ。」
進一:「……。」
ファルシファイ:「おい。”少女型人造生命体(しょうじょがたじんぞうせいめいたい)”。
説明が止まっているぞ。
……否、余が止めたのであったな。失礼。説明を続けてくれ。」
キタガワ:「いえ、大丈夫です。
さてシンイチ。話を戻します。
キタガワたちは、キタガワたちも“この世界の様々なもの”の例に漏れないのです。
故に、“ARTS(アーツ)”によって構築される様々なものとして吸収されました。いいえ、吸収させました。」
進一:「吸収、させた?」
キタガワ:「はい。それを出来るようにしたのがキタガワの能力の規則固定。
ネガティヴエグジスタンスシールドの中での勝利に対して規則を固定、設定する。
それにより“『シンイチ』に敗北したら”ARTS(アーツ)“により内的宇宙に存続する”という
規則を固定させて頂きました。」
進一:「うわぁ……なんというか……」
ヴィース:「なんでもあり?」
進一:「……ああ。」
ヴィース:「マクスウェルが言うには、キタガワちゃんはこの作戦の“要(かなめ)”で切り札、らしいからね。
それくらいの万能性は許してほしいね。」
進一:「許すも何も無いけど。」
ヴィース:「フフフ、良いね!そう呑み込みが早いというか、物分かりが良いというのはとても良い!
事がスムーズに進むからね!」
ファルシファイ:「さて、話は終わったな。」
進一:「……ああ。」
ファルシファイ:「では、本題に入ろう。いや、入るも何も、余は何も知らない。
”改造生命体共(かいぞうせいめいたい)”、本題は何だ。」
ヴィース:「ああ、未完了生命体ファルシファイ。僕たちは君に用がある。」
キタガワ:「そうです。キタガワたちは世界の為に──」
ヴィース:「僕たちは君を壊す!」(同時に)
キタガワ:「アナタに協力を求めます!」(同時に)
ファルシファイ:「…………。」
N:あまりにも自信満々に別々の意思を向けられたファルシファイは、素直に困惑していた。
間。
ヴィース:&キタガワ:「「えぇ?」」
進一:「ん?」
ファルシファイ:「どっちだ……。」
ヴィース:「ど、どういうことだいキタガワちゃん!
僕が聞いた事とまったくもって真反対じゃないかッ!」
キタガワ:「それはこっちの台詞ですよヴィースさん!
も、もしかして局長……」
ヴィース:「僕たちへの指令間違えてる……?」
ファルシファイ:「…………おい“被寄生生命体(ひきせいせいめいたい)”。
あいつらの上位存在は馬鹿なのか。」
進一:「……いや、知らねぇけど…………。」
ファルシファイ:「まぁ、余は殺されるのも、貴様らに協力するのも、どちらでも構わん。
だが、最終決定権は貴様らには無い。」
ヴィース:&キタガワ:「……!」
ファルシファイ:「余は最終的にはこいつに委ねる。」
N:そう言ってファルシファイはシンイチの手をそっと握る。
進一:「……。」
ファルシファイ:「余は所詮、お前に寄生しているだけの生命体。
故に余はお前の言う事に従うさ。」
進一:「……じゃあメイドカフェのメイド風に今の言ってみて。」
ファルシファイ:「アタシはご主人様にお仕えしているだけのメイドです☆
なのでぇ~アタシはご主人様にぃ~し・た・が・い……ます♥」
進一:「本当にやるんだ……」
ファルシファイ:「ああ。お前の言う事だからな。」
ヴィース:「とにかく。じゃあ君はシンイチには絶対服従。
そういうことで良いのかい。」
ファルシファイ:「ああ。
まぁ、厳密にはコイツと余の製造主であるDr.ラプラスの二人に、だな。」
ヴィース:「……そうか。まぁ、そうだよな。
でなければシンイチの意志を無視した暴走解錠なんてできないか。」
ファルシファイ:「そういうことだ。」
キタガワ:「……ちなみに、なのですが。
Dr.ラプラスへの服従義務を破棄する事は出来ないのですか……?」
ファルシファイ:「出来ない──」
キタガワ:「く……ッ」
ファルシファイ:「──事も無い。」
キタガワ:「ッ!!本当ですか!」
ファルシファイ:「ああ。あくまでも余が寄生しているのはこの男だけだからな。
そう……お前が、もっと……余と、同調、相互理解を出来れば、その分お前の支配力が強くなり、Dr.ラプラスの支配力が弱くなる。」
進一:「そうごりかい……?」
キタガワ:「相互理解とは、言葉そのままの意味です。
自分と相手、互いに互いを理解し合う、という事です。」
進一:「あ、ああ。なるほど。」
ヴィース:「ふむ、であればさっさと仲良くなってラプラスとの縁を切らせよう。」
進一:「…………。」
ファルシファイ:「さ、どうするシンイチ。お前はどうしたい。
お前の“衝動”は、何処を向いている。」
進一:「……俺は…………──ぐッ!ぐあああッ!!!」
N:シンイチは苦しそうに頭を抱える。
ファルシファイ:「ッ!!どうしたシンイチ……ッ!」
キタガワ:「シンイチ!シンイチしっかり!!」
ヴィース:「一体……何が……ッ
……ッ!
シンイチの身体が傷だらけに……!」
ファルシファイ:「くッ!……余の方にも……ダメージが……ッ!」
キタガワ:「まさか、局長が……!」
ヴィース:「マジかよ……でも、マクスウェルだったらありえそうだ……
いや、暴走解錠ってなんか強そうだけど、人間に負けるようなもんなのかい???」
ファルシファイ:「そんな事は無い。
しかし、貴様らの上位存在、マクスウェル局長とやらは貴様らも分かっていると思うが、アレはただの人間では無い。
“全てを観測した者(ラプラス・デモン)”、余の製造主、Dr.ラプラス。
そして、マクスウェル。
アレは如何なるエネルギーを消費せずにエネルギーを発生させる。
故にアレは永久機関を身体に内在する者“マクスウェル・デモン”。
それがアレの正体だ。」
進一:「永久機関を、身体に、内在、する……?」
N:激痛に発狂しそうになる中、ファルシファイの言葉を反芻した。
“永久機関を身体に内在する”。
“非物質さえもエネルギーと変換する技術、新たなフリーエネルギー技術”を宿す自分に似ていると感じたからだ。
ファルシファイ:「そのマクスウェル・デモンの力により無消費で、ノーモーションで、隙無く攻撃を繰り出したり、隙無く攻撃を避ける。
ま、今回余たちが相対しているのはマクスウェルではなく、トラースとかいう人造生命体の様だがな。」
進一:「と、トラース……!?あいつ、まだ、生きていたのか……!」
キタガワ:「なるほど。アップデートされた、つまり強化されたトラースさんとの戦いでかなり負傷してしまっている様ですね。」
ヴィース:「あいつゥ……まさか、僕たち諸共殺す気か……?
……あいつがマクスウェルの言う事聞くとは思えないし、ありえるな……」
ファルシファイ:「し、シンイチ……だい、じょうぶ、か……。」
進一:「あ、ああ……大丈夫だ……お前、こそ大丈夫なの、かよ……」
ファルシファイ:「余は大丈夫だ……お前が、生きいれば、余は存在、し続けれる……」
キタガワ:「トラースさんが与えるダメージは精神に深く影響する類のモノ……
このままではシンイチが……!」
ファルシファイ:「シンイチ……!」
N:ファルシファイは、シンイチに手を伸ばす。
進一:「ファルシファイ……!」
N:シンイチもそれに応える様に手を伸ばす。
(ファルシファイと進一、手を繋ぐ。)
進一:「ッ!!」
進一:(なッ、なんだ……!?)
N:シンイチからファルシファイに触れた瞬間、意識がどこかへと飛ばされる。
視界を光が覆い、目を閉じる。
進一:「…………くっ……!……?ここは……」
ファルシファイ:「ここはアタシの精神世界だよ。」
進一:「え……?」
N:シンイチの精神世界での態度とは一変して、
まるで普通の少女の様な口調の未完了生命体(みかんりょうせいめいたい)ファルシファイであった。
進一:「え……?えっと……えっと、君、本当にファルシファイ?」
ファルシファイ:「うん。そうだよ。こっちが本当のアタシだよ。」
進一:「…………じゃあ、さっきはなんで──」
(ファルシファイ、唇に指を当てる。)
ファルシファイ:「秘密。」
進一:「……なあ……お前もしかしてメ──」
キタガワ:「ここはどこですか!!?」
ヴィース:「なんだこのほわほわ空間ッ!!?」
N:先ほどまで進一にぴったりくっついていたが、瞬時に2m程離れた。
体ファルシファイは何故シンイチの精神世界では冷徹そうな雰囲気を出していたのか。
理由は簡単である。
シンイチと二人っきりじゃなかったからである。
ファルシファイ:「コホン、一時的な避難だ。
さっき言ったトラースとかいう人造生命体が強くなった、というのもあるが、
Dr.ラプラスの支配力が落ちて暴走解錠状態の出力が落ちているのも、圧されている原因だろう。」
キタガワ:「そうですか……。」
ファルシファイ:「さて、余はシンイチと更なる同調をするのは良いとして……
貴様ら。貴様らはどうしたい。
余を殺したいのか?余と手を取り合いたいのか?」
キタガワ:「……ヴィースさん。
ファルシファイが協力してくれて、Dr.ラプラスの支配権が無くなれば、
彼女をわざわざ殺す必要はないのではないでしょうか……。」
ヴィース:「……いいや、駄目だよ。
キタガワちゃんだって分かってるだろ。
この子は、“神の幼体”、“神”の顕現に使う為の器だ。」
キタガワ:「…………。」
進一:「……。」
N:“神”の顕現に使う為の器。
その言葉を聞き、シンイチは思い出す。
ヴィースを撃破した際に彼から教えてもらったDr.ラプラスの思惑を。
◆
進一:『もしもの時は俺が止める。』
ヴィース:『…………そうか……
じゃあ、僕も君に託そう。
いやはや、言われた通りだった……マクスウェルには勝てないな……。』
進一:『……勝手にしろ。』
間。
進一:『一つ、教えてくれ。』
ヴィース:『何をだい?』
進一『ラプラスは……一体何を考えてるんだ?
俺はまだ再生途中でしっかりと聞きとれていなかったけれど、神がどうとか……』
ヴィース:『……彼女の目的は、“神様の証明と製造”。
君の中に眠る“未完了生命体”を“完了生命体”へと成長させ、“永劫なる器”へと変貌させる。
その器に神様を下ろし、顕現させる事で神様の証明と製造を成功させようとしている。』
進一:『……そんな事が、可能なのか……?』
ヴィース:『さあね。けれど、Dr.ラプラスは全知の天才だ。
彼女ならやりかねない。』
進一:『……。』
◆
キタガワ:「……ですが!
ラプラスが支配権を持っていなければ大丈夫なのではないですか!?
だって、そうなればDr.ラプラスからシンイチを遠のけば良いだけではありませんか……?」
N:キタガワは必死にヴィースに訴えかける。
だが、ヴィースは静かに首を振り、シンイチを見る。
ヴィース:「シンイチ。君はそんな事しないだろ?
君は何があってもラプラスから離れない、そうだろう?」
進一:「……ああ。俺はラプラスを助けると決めた。
そして、ラプラスが何かをやろうものなら俺が止めると決めている。
だから、離れない。」
ファルシファイ:「なんだそれ……めちゃんこ妬けるんだけど」(超小声)
キタガワ:「……何故……貴方は…………く……ッ」
ヴィース:「僕たちが何言ったってシンイチは譲らないさ……。
……おい未完了生命体(みかんりょうせいめいたい)、何拗ねてる感じの顔してるんだよ。」
ファルシファイ:「なんでも無いが?」
進一:「……ヴィース。すまないが、ファルシファイを殺すのは後にしてくれないか。」
ヴィース:「なんでだい?」
進一:「……俺は、俺だけでは無力だ。
だから俺はファルシファイが必要なんだ。」
ファルシファイ:「……。」
ヴィース:「それはラプラスを助ける為か。」
進一:「確かに、ラプラスを助ける為に、だ。だがそれと同時に、ラプラスを止める為だ。
その為にも……頼むッ!」
N:シンイチはヴィースに対して頭を下げる。
進一:「俺だけでは駄目なんだ!頼む!
力を貸してくれ!ヴィース!キタガワ!ファルシファイ!!」
N:深々と、深々と頭を下げる。
ヴィース:「……仕方が無い。協力しよう。」
キタガワ:「ッ!ヴィースさん!!
勿論ですシンイチ!キタガワも力を貸します!」
ファルシファイ:「……。」
ヴィース:「じゃ、とりあえず。トラースを止めよう。
アイツも暴走解錠状態の君たちと戦うのは飽きたみたいだからね。」
進一:「ああ!ファルシファイ……!」
ファルシファイ:「どうした被寄生生命体(ひきせいせいめいたい)。」
進一:「暴走解錠状態を解除し、身体を取り戻す!!力を貸してくれッ!」
ファルシファイ:「相分かった。
(機械的になる)……九つの精神施錠の解錠を要請。
──……一つ、解錠。二つ、解錠。三つ、解錠。」
ヴィース:「シンイチ!」
進一:「なんだ……!」
ヴィース:「君に僕の力を貸そう!
ファルシファイ!“ARTS(アーツ)”による再構築の際に、僕を組み込め!」
ファルシファイ:「承認。
“神速逸脱(アクセラレーション)”を解析、再構築。
それにより、“改竄・神速逸脱(ファルシファイ・アクセラレーション)”として獲得。
──四つ、解錠。五つ、解錠。六つ、解錠。」
キタガワ:「いいですかシンイチ。
トラースさんとの戦闘はネガティヴエグジスタンスシールド外の戦闘です。
今回の目的はトラースさんの無力化。
故に、彼を殺してしまうとそれで終わりになってしまうので注意です!」
進一:「相分かった!」
ファルシファイ:「──七つ、解錠。八つ、解錠。九つ、解錠。
現状出力可能数値:30%。
それにより、二段階目断片解錠は行えません。
一段階目断片解錠にて、身体の支配権を奪取します。」
進一:「了解!ファルシファイ、俺に力を貸してくれ……!」
ファルシファイ:「…………うん!」
進一:&ファルシファイ:「──おおおおおおおおおおお―ッ!!“─断片解錠(リリース)─”ッ!!」
N:視界が明転する。
次に目に映った景色は、トラースと相対している光景であった。
進一:(戻った……!)
N:暴走解錠状態だった魔鎧(まがい)の亀裂から光が溢れだし、そして、中から黒衣の戦屍(せんし)が現れる。
魔鎧の獣なんぞ改造戦屍にあらず、彼こそが──」
進一:「「オ……オレガ……」」
N:「改造戦死(かいぞうせんし)ッ!」
進一:「「ファルシファイ……ダァッ!!」」
N:シンイチ、キタガワ、ヴィース、そしてファルシファイの四人は力を合わせ、同調した。
改造戦屍(かいぞうせんし)ファルシファイは更なる力を得た。
戦いは更に激化していく!!」
───────────────────────────────────────
ToBeContinued…