[台本]改造戦屍ファルシファイ~第五話:神降誕、顕現~
世界設定、場面情景
日常の中に潜む狂気、或いは凶器。
これは、不条理にも巻き込まれてしまった青年が、『狂鬼』と化す物語。
精神世界においての彼らの決意。
登場人物
〇亘理 進一(わたり しんいち)/“改造戦屍(かいぞうせんし)”ファルシファイ
22歳、男性
兄貴肌で頼りになる青年。
勝手な都合で殺され、勝手な都合で改造され、“改造戦屍ファルシファイ”となる。
主人公。
〇キタガワ
15歳、女性
人類保安機関“マクスウェル”から送られた刺客の改造人間。
怪力、“ネガティヴエグジスタンス(概念的消失存在)”、規則固定の三つの異能を持っていた。
とても真面目な性格で、殺し合いも真摯に行う。一人称は“キタガワ”。
亘理 進一が自身の内的宇宙に意識を向けた事で対話可能となった。
〇ヴィース
年齢不詳、男性
人類保安機関“マクスウェル”から送られた刺客の改造人間。
“神速逸脱(アクセラレーション)”という異能を持っていた。
亘理 進一が自身の内的宇宙に意識を向けた事で対話可能となった。
○アダム・マクスウェル
年齢不詳、男性
人類保安機関“マクスウェル”の局長。
冷静で慎重な性格でDr.ラプラスと同じ研究者であり、Dr.ラプラスの父。
数々の人造人間を造ってきた。
………………そして……
〇ナレーション
年齢不問、性別不問
作中のナレーション。そして改造戦屍ファルシファイの言葉と技名を代弁する。
亘理 進一♂:
キタガワ♀:
ヴィース♂:
アダム・マクスウェル♂:
ナレーション 不問:
↓これより下からが台本本編です。
───────────────────────────────────────
N:集合無意識干渉装置“ExistenceofGainOracle(エグジスタンスオブゲインオラクル)”、
縮めて“EGO(エゴ)”と、
亘理 進一(わたり しんいち)を生き長らえさせた概念炉心“ジャイレートが接続、呼応する。
マクスウェル:「ふむ……。思いの外、顕現には時間がかかる様だな。
ふん、つくづく無能な神だ。」
N:そう悪態を吐くこの男。
人類保安機関マクスウェルの局長、アダム・マクスウェル。
彼はシンイチやDr.ラプラス、人類保安機関の改造人間たちを利用し、神の顕現の一歩手前まで駒を進めた男である。
マクスウェル:「……さて、どうしたものか。」
N:マクスウェルは天井を見る。
否、天井のその先、その先のその先のその先、空を思い浮かべ、一言零す。
マクスウェル:「…………テレジア……。」
N:一方、概念炉心を抜き取られ、完全に機能停止となった進一。
だが彼はまだ死んでいなかったのだ。
進一:「…………。」
キタガワ:『起きてください!シンイチ!!』
進一:「……。」
ヴィース:『起きるんだシンイチ!!』
進一:「……ぐっ…………」
N:シンイチに呼びかける二つの声。
それは決して、物理的に呼びかけられているわけではない。
シンイチの内的宇宙、つまり精神世界からの呼びかけなのだ。
進一:「……くっそぉ……!」
マクスウェル:「む……?」
N:シンイチは意識を完全に取り戻した。
そしてDr.ラプラスを探す。
進一:「…………!」
N:Dr.ラプラスは胸を抉られ絶命していた。
進一:「……ッ、ちっくしょう…………!」
マクスウェル:「ふむ。概念炉心を抜き取った以上、貴様は完全に機能停止すると思っていたが、
そういうわけでもないのか。
…………そうか。キタガワとヴィースの仕業か。」
進一:「……?」
キタガワ:『流石局長ですね……。』
ヴィース:『そうだね……。』
進一:「どういう事だ……二人とも……。」
キタガワ:『キタガワの力である“NegativeExistence(ネガティヴエグジスタンス)”の延長機能、
“NegativeExistenceShield(ネガティヴエグジスタンスシールド)”と──』
ヴィース:『僕の“神速の更に、更に更にその向こう側へ(プルス・ウルトラ)”を組み合わせた世界浸食機能の応用で、
ファルシファイの概念炉心を疑似的に再現しているんだ。』
進一:「…………??」
マクスウェル:「分からないか。まぁ、貴様には分からないか。
それも是非も無し。貴様は何の関係も無いのだからな。
さ、貴様は蚊帳の外の者らしく黙って神の降誕を眺めていろ。」
進一:「ッ!」
N:「シンイチは怒りを覚える。」
進一:「澄ました顔してるんじゃあ無いぞマクスウェルッ!!
俺はアンタをぶん殴って止めるッ!!
──おおおおおおおおおおお―ッ!!“断片解錠(リリース)”ッ!!
…………?」
マクスウェル:「どうした?何をしている?亘理 進一(わたり しんいち)。」
進一:「……あれ?」
マクスウェル:「話を聞いてなかったのか?いや、覚えてないのか?
私は貴様からファルシファイへ至る概念炉心を抜き取ったのだ。
当然、今の貴様は“改造戦屍(かいぞうせんし)ファルシファイ”へ変身する事は出来ない。」
進一:「なっ…………」
マクスウェル:「亘理 進一(わたり しんいち)。今の貴様は、“改造戦屍(かいぞうせんし)”なのではない。
貴様はただの動く屍でしかない。」
進一:「く……ッ!うおおおおおお!」
N:シンイチはマクスウェルに向かって駆けだす。
進一:「おらァッ!!」
マクスウェル:「腰の入った良い拳だ。」
進一:「ちっ!」
N:渾身の一撃。だがマクスウェルには当然通じない。
マクスウェル:「だが所詮は一般人としての話だ。
フンッ!…………ふむ?」
N:マクスウェルの反撃の一撃がシンイチを貫く事は無く、空を切る。
進一:「???????
???
???????????」
N:避けたのはシンイチだったが、自身も理解出来ていなかった。
マクスウェル:「…………さて……どういうカラクリか……。
ふむ、そういう事か。
どういうつもりだ?ヴィース。」
N:どういうカラクリか。
シンイチはヴィースの機能“神速逸脱(アクセラレーション)”を使用したのだ。
シンイチの意志ではなく、ヴィースの意志で。
進一:「そういう事かッ!助かったヴィース!」
マクスウェル:「どういうつもりだ。答えろヴィース。」
進一:「それは──」
ヴィース:「こっちの台詞だよマクスウェル。」
N:シンイチの身体を介し、ヴィースとマクスウェルが会話する。
ヴィースは怒りを露わにし、怒気を飛ばす。
ヴィース:「マクスウェル。アンタ何を考えてるんだ……!」
マクスウェル:「何を考えてるか……とは?
何が言いたいヴィース。」
ヴィース:「神様の証明と製造を阻止するんじゃなかったのかよ!
なのにアンタは今何をしている!!?」
マクスウェル:「神の降誕を待っている。」
ヴィース:「言っている事があべこべじゃないかッ!」
マクスウェル:「……気が変わった。それだけだ。」
ヴィース:「……ッ!!」
キタガワ:『……話し合いは無駄そうですね…………。』
ヴィース:「……そうだね……であれば──」
進一:「──アンタを倒して神の降誕を止めるッ!!」
マクスウェル:「やれるものなら。」
N:互いに睨み合う。
キタガワ:『ネガティヴエグジスタンスシールド!!』
マクスウェル:「フン、己の得意分野に持ち込む気か、キタガワ。
だがそれを許す私では無いッ!」
進一:「ぐ……ッ!」
N:鋭い正拳突きがシンイチの身体を突き刺さる。
進一:「それもッ、狙い通りだ……ッ!」
マクスウェル:「ッ。」
N:マクスウェルの腕を掴む。
そして──
進一:「喰らえ……ッ!!」
ヴィース:『“─神速の更に、更に更にその向こう側へ(プルス・ウルトラ)─”ァアアアッ!!』
N:ヴィースの“神速逸脱(アクセラレーション)”は世界と若干ズレる事で、世界の法則から抜け出すのが本領である。
重力だの慣性だのから若干解放され常人よりも何倍も早く動いている。
そして、“神速の更に、更に更にその向こう側へ(プルス・ウルトラ)”。
アクセラレーションとは逆に、自身世界から抜け出すのではなく、
“世界をヴィース自身の内在宇宙、つまり内包世界が浸食する現象”である。
浸食された世界はどうなるのか、それは──
ヴィース:『燃え消え失せろッ!!』
マクスウェル:「それは流石にまずいな。ヌンッ!!」(手刀)
進一:「ぐあッ!!」
マクスウェル:「フンッ!!!」(回し蹴り)
進一:「ぐおぉお……ッ!」
N:マクスウェルは左肩から右腰まで鋭い手刀を切り込み、身体の自由を取り戻し、
すぐさま回し蹴りで進一を遠くへ飛ばした!
進一:「があ……くっそぉ……!」
キタガワ:『そんな出鱈目な!!』
ヴィース:『シンイチ!大丈夫か!!』
進一:「あ……ああ……これ、くらい……!」
N:シンイチの切り裂かれた身体がみるみるうちに再生していく。
マクスウェル:「ほう。概念炉心が無しでも再生機能があるのか。
良いな、人造人間は。私はただの人間故、今のお前の様な大怪我を負ったらそのまま死んでしまう。」
ヴィース:『改造人間を圧倒する戦闘力を持っていながらよく言うよ……!』
キタガワ:『どうしますかヴィースさん……!
このままでは到底局長に勝てるとは思えません……!』
ヴィース:『……ッ!』
進一:「──んぉ……お……おお、おおおお…………」
マクスウェル:「……?」
ヴィース:『……?』
キタガワ:『し、シンイチ……?どうしたのですか……?』
進一:「…………お、俺はぁ……俺はぁ……!!」
マクスウェル:「……。」
進一:「俺は!改造戦屍(かいぞうせんし)、ファルシファイだ……!!」
マクスウェル:「…………可哀そうに。蹴り飛ばした時に頭を強く打った様だな。
気が触れてしまったか。」
N:マクスウェルはシンイチに向き直り、再び口を開く。
マクスウェル:「亘理 進一(わたり しんいち)。さっきも言ったが、お前はもう改造戦屍(かいぞうせんし)ではない。
未完了生命体(みかんりょうせいめいたい)ファルシファイを身に宿していないお前はもう変身出来ないとも言った。」
進一:「違う!俺の中にはまだファルシファイがいる……!!」
キタガワ:『何を言ってるのですか……シンイチ……!
彼女は今、ここには──』
ヴィース『いるさ。』
キタガワ:『……え?』
進一:「お、おおお……おおおおおおおおおーーッ!!
ファルシファイ!!俺に力を貸してくれッ!!
“改竄解錠(ポゼッション)”ッ!!!」
N:世界が、否、シンイチの内側で何かが変化し、外側に変化が成されるッ!!
肉体を漆黒ではなく“翡翠(ひすい)”の鎧が纏う。
マクスウェル:「ッ!
変身した……だとッ!」
N:完全変身終了。
亘理 進一(わたり しんいち)は改造戦屍(かいぞうせんし)ファルシファイに──
進一:「否、俺は──」
ヴィース:「いいや……僕は、“改造戦屍(かいぞうせんし)ファルシファイ:V”ッ!!」
N:先程までシンイチだった声色は、完全に別のものへと変貌、改竄された。
シンイチはヴィースへと変身していたのであった。
マクスウェル:「……ふむ。ポゼッション……か。
なるほど、なるほど。考えたなヴィース。
……いや、改造戦屍(かいぞうせんし)ファルシファイ:V、と呼んでおこうか。」
キタガワ:『一体、何が起きたのですか……?』
進一:『分からない。』
キタガワ:『シンイチ!何故また自分の内的宇宙に……?』
進一:『……分からない!』
キタガワ:『えぇええええええええ!!?』
進一:『どうやってこうなったかも分からない!!
けどとりあえずヴィースと意識が入れ替わった事はなんとなく分かった!!』
キタガワ:『そんな曖昧な!!』
進一:『とりあえずよく分かんないけど、多分ファルシファイが手を貸してくれたんだと思う。
だから、信じる。ヴィース!頼んだぞ!!』
ヴィース:「言われなくとも!
さあマクスウェル!!第二ラウンドだッ!!
マクスウェル:「私からしたら四ラウンド目くらいだがな。」
ヴィース:「無駄話は結構!
──叩き込む!蹴りを!!」
マクスウェル:「ッ!!?ぐおッ!!!」
キタガワ:『攻撃が通った!!』
N:高速移動によりマクスウェルの背後を取り、ファルシファイ:Vの蹴りが後頭部に直撃し、吹き飛ばされる!!
ヴィース:「頭にクリティカルヒット。
アンタの頭は潰れたトマトの様に弾け……飛んでない……?」
N:一撃で殺すつもりで放った蹴りであったが、
ヴィースの想定を外し、マクスウェルはまだ立っていた。
マクスウェル:「今のは危なかった。
私が製造した状態よりも幾分か性能が向上している様だな。」
ヴィース:「この男……本当に……!」
マクスウェル:「なんとかギリギリ、片目失明で済んだか。」
N:そう言ったマクスウェルの左目は赤く充血し、瞳孔は明後日の方向を向いていた。
マクスウェル:「……膜下出血と言った所か……。」
キタガワ:『性能が向上したというヴィースの蹴りを受けてその程度で済むなんて……!』
N:それでも、彼は戦う体勢を崩さなかった。
進一:「…………。」
マクスウェル:「……貴様の出力を改めよう。さて、本気を出してやろう。
来い……改造戦屍(かいぞうせんし)ファルシファイ:Vッ!!」
ヴィース:「…………。」
進一:『ヴィース、戦おう。戦いはまだ終わってない。
俺たちは世界を救う為に……俺たちが……!』
ヴィース:「……ッ。ああッ!!キタガワちゃん力を貸してくれ……!!」
キタガワ:『ッ!はいッ!!』
ヴィース:「行くぞッ!マクスウェルッ!」
マクスウェル:「来いッ!ヴィースッ!!」
ヴィース:「ッ!!」
マクスウェル:「──ッ!!」
N:ファルシファイ:Vは再びマクスウェルに詰め寄る。
ファルシファイ:Vから一撃が放たれるよりも早く受け流す。
一撃は明後日の方向へ放たれる。
放たれた一撃により壁が大きく抉られる。
マクスウェル:「ほう。ヴィースと速さとキタガワの怪力の合わせ技か。
恐ろしいな。
一人一人では大した力では無いが、合わさる事で新たな可能性が生まれる。」
ヴィース:「それを受け流すってどうなんだい……!」
マクスウェル:「弱い私が身につけた技術だ。」
ヴィース:「ッ!!」
マクスウェル:「私は弱い。改造人間になれず、人間のまま……
……人間のままでも貴様たちを御する為に得た技術だ。
……亘理 進一(わたり しんいち)。」
進一:『……ッ!』
マクスウェル:「貴様の力は素晴らしいな。」
進一:『……?』
マクスウェル:「Dr.ラプラスから与えられた改造戦屍の力の話では無い。
貴様は……お前は、いつだって一人じゃない……。
“多々良恵(たたらめぐみ)”……Dr.ラプラス、キタガワ、ヴィース、トラース……
……そして、未完了生命体(みかんりょうせいめいたい)ファルシファイ……。
亘理 進一(わたり しんいち)の周りには必ず誰か居る。」
進一:『……何の話をしているんだ……?』
キタガワ:『……。』
ヴィース:「……。」
マクスウェル:「その力、大事にするんだぞ、亘理 進一(わたり しんいち)。」
ヴィース:「……おい。マクスウェル。なんだよそれ。」
キタガワ:「……。」
ヴィース:「アンタは……ッ!自分は独りだって言いたいのか……ッ!!」
N:ヴィースはいままでで一番の怒気を飛ばした。
ヴィース:「アンタの周りも居ただろうが!!僕やキタガワ、トラース!
それだけじゃない!人類保安機関の皆だってッ!!」
マクスウェル:「……。」
ヴィース:「アンタ言ったよな?
神の降誕を進めた理由は“きまぐれ”だと。
あれ嘘だろ?」
マクスウェル:「……。」
ヴィース:「本当は何を考えてるんだ……?
なあ?教えてくれよマクスウェル……
僕は……少なくとも僕はアンタの味方だと思ってるんだ……
僕とキミは、人類保安機関“マクスウェル”を設立する前からの仲だったじゃないか……」
マクスウェル:「…………ありがとうアミィクス……」
ヴィース:「……ッ」
マクスウェル:「だが、私は止まるわけには行かないッ!」
ヴィース:「…………ッ!
マクスウェルッ!!!!!!!」
マクスウェル:「──ごふッ!!」
N:刹那の出来事であった。
一瞬見せた隙をファルシファイ:Vは、ヴィースは見逃さなかった。
故に、一突き。鋭い拳を放ち、マクスウェルの胸を貫いた。
ヴィース:「…………。」
マクスウェル:「…………いやはや、良い、一撃、だ……」
ヴィース:「………………わざとだろ。」
間。
マクスウェル:「…………さあ、な……」
ヴィース:「……。」
N:マクスウェルをゆっくりと横に寝かす様に倒す。
ヴィース:「ファルシファイ:V……状態解除……。」
ヴィース:『すまないねシンイチ、キミの身体を大分雑に使ってしまったよ。』
進一:「……気にしなくて良い。
…………ごめん嘘、滅茶苦茶痛すぎてもう立っていられない。
──ぐえッ!」
N:そう言ってシンイチは倒れてしまう。
キタガワ:『そんな事を言ってる場合じゃありませんよ!
“EGO(えご)”と概念炉心の接続を解除してください!!』
進一:「やべぇ!そうだったッ!!」
N:満身創痍の身体を鞭打つ。
進一:「え……っと……これってどうすれば良いんだ……?」
ヴィース:『とりあえず接続部を切り離せば良い。
そうすれば全て終わる。』
進一:「……?分かった!おらッ!」
N:切り離し方がよく分からなかったシンイチはとりあえず集合無意識干渉装置を破壊した。
ヴィース:『おいこの脳筋馬鹿ァ!!なんで破壊したァ!!!』
進一:「えぇ!!?だって切り離し方が分からなかったんだもん!!」
キタガワ:『どどどどどうしましょうトラースさん!このままではこの施設爆発しますよ!?』
進一:「ええええええええええええええ!!!????!!!???」
ヴィース:『この施設は“EGO(えご)”の為の施設だからなのか知らないけれど、この機械と連動しているんだ!
それ故になのか、破壊されるとこの施設ごと爆発する仕組みになってるんだ!!』
進一:「誰だよこの施設の責任者!!」
ヴィース:『僕らが倒したマクスウェルだよ!!
マクスウェルは──』
◆
マクスウェル:『爆発する施設……面白いな。』
◆
ヴィース:『そんな事を言ってた気がする!!』
キタガワ:『キタガワたちの上司やっぱりヤバイ人じゃないですか!!』
N:施設が危険を知らせる警報が鳴り響く。
ヴィース:『そんなの百も承知だろう!
そんな事より!逃げよう!シンイチ!』
進一:「おう!!」
N:シンイチ!駆ける!
もはや動けない筈の身体を無理矢理動かす!!死なない為に!!
進一:「どっちどっちどっちどっちどっちィ!!!」
キタガワ:『そこ右!』
ヴィース:『次左!!違う!左だって左左左!!!』
キタガワ:『違いますよヴィースさん!!右ですよ!!!!』
進一:「おい!!!!」
N:施設内を右往左往しながらも、脱出に成功した!
進一:「脱出成功!!」
キタガワ:&ヴィース:『『ヨシッ!!』』
N:その瞬間、施設が大爆発したッ!
キタガワ:『……。』
ヴィース:『……。』
進一:「…………。」
間。
進一:「…………──っぶねー……」
間。
キタガワ:『……と、とにかく……一件落着……ですね……!』
ヴィース:『……そう、だね。
神の降誕も阻止出来た。
……Dr.ラプラスもマクスウェルも死んだ。』
進一:「…………ッ。」
キタガワ:『…………シンイチ──』
ヴィース:『キミが気にする必要が無いよシンイチ。
……キミは巻き込まれただけだ。
マクスウェルの言った事じゃないけど、キミは元々何の関係も無い一般人。
大丈夫、元の生活を送れるように僕たち人類保安機関が力を貸す。
この一件は、これきりで忘れる様にしなよ。』
進一:「……いや、俺は忘れない。
俺はこの出来事を忘れない。」
キタガワ:『……。』
ヴィース:『そ。まぁ、どのみち僕たちと君はこれから一心同体だし忘れようもないか。』
キタガワ:『……確かにそうですね……色々と申し訳ないです。シンイチ。』
進一:「いや、気にする必要は無いさ……
今は二人のおかげで生きてるわけだし。」
N:こんな平和な会話をしていた。
全て終わったと高を括っていた、矢先だった。
進一:「ッ!!?」
キタガワ:『ッ!!!』
ヴィース:『ッ!!!』
進一:「なッ、なんだッ、この威圧感……ッ!!」
キタガワ:『ぐぅううう……ッ!!』
ヴィース:『あッ……頭が……ッ!』
進一:「何事が起きてんだ……!?」
キタガワ:『ま、さか……神が……顕現した、のですか……!?』
ヴィース:『そんな、はずは……ッ!!
概念炉心は、もう、僕らの手の内だろ……!!』
進一:「あ、ああ……俺が、持ってるッ」
キタガワ:『じゃあどういう事なのですかッ!!?』
マクスウェル:「こういう事だ。」
進一:「ッ!!?」
キタガワ:『な……ッ』
ヴィース:『マクスウェル……ッ!』
N:黒煙の中からマクスウェルの姿が現れる。
マクスウェル:「マクスウェルゥ……?誰だそれは?ああ~……この器の名か。
だが、否だ。否である。
“神(シン)”は……“神(かみ)”である。」
進一:「……ッ!」
キタガワ:『ッ!まさかッ、概念炉心の代わりに局長の身体を器に……ッ!!』
進一:「な……ッ」
N:シンイチは思い出す。
“非物質さえもエネルギーと変換する、新たなフリーエネルギー技術”の概念炉心と
“永久機関を身体に内在する”マクスウェルが似ている、という事を。
マクスウェル:「ククク……くっはっはっはっはっはっはッ!!!
これが外の世界!!ふむぅ……無駄だらけだな。
無駄、無駄無駄無駄無駄……
面倒だが、シン手ずから整頓してやろう。」
進一:「……ッ!!」
マクスウェル:「ん……なんだ?
このチグハグな生命体は……気持ちが悪い……不快である。」
進一:「う゛ぅ゛……ッ!!おぇええええッ!!!」
N:マクスウェルの皮を被った神を名乗る何者かがシンイチを睨む。
ただ、その一瞥だけで吐き気を催した。
マクスウェル:「脆弱だな。
所詮は、シン以外が製造した欠陥品。
さあ……消えるが良い。」
進一:「……ッ!!」
N:シンイチは満身創痍。神は降誕、顕現した。
正に絶体絶命。
戦いは……否、世界は混沌へと落ちる。
───────────────────────────────────────
ToBeContinued…