第二話―それは絶対に、絶対の絶対
登場人物
・乾 ガブリエル(いぬい がぶりえる):
・天咲 樹(あまさき たつき):
・榊原 悠(さかきばら ゆう):
・新坂 正行(しんさか まさゆき):
・名護 雅人(なご まさと):
・初瀬 光実(はせ みつざね):
・咲倉 伊織(さくら いおり):
・青葉 龍(あおば りゅう):
・モブ1(カブリエル、樹以外が兼ね役):
・モブ2(カブリエル、樹以外が兼ね役):
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ガブリエルの独白。静かに、艶やかに、
ガ「あの時、俺は、もう駄目かと思いました…。
誰も助けてくれない、助けを呼べない・・・大袈裟だ、と言われるかもしれないけども、
それくらい、本当に、本当に本当に怖かったんです。
そんな中、貴方は俺を助けてくれた・・・。
俺、とても安心しました・・・。とても、とてもとても・・・。
そして、その時、俺、気付きました・・・。
あの時から、俺は・・・貴方の事が・・・」
白くフェードアウトしそう。
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タイトルコール入る感。
バイトが終わった樹。店長や他のバイトや店員に挨拶をする。
樹「お疲れ様でした」
バイトの帰り。悠が、自分がバイトに行く前に言っていた事を思い出す樹。
樹「ふぅ・・・」
悠『最近天咲頑張ってるみたいだから、今日の夕飯麻婆豆腐にするね』
少し嬉しそうな樹。だけど情けないと思っている。
樹「んん・・・麻婆豆腐か・・・嬉しくて、というか楽しみで、
今日のバイトはいつもの4割増しくらい捗ってしまった・・・。
いや、別に悪いことではない・・・。ああ、決して悪いことではない。
ただ・・・成人しているというのに、それが動力として大きいというのは・・・
俺もまだまだ子供だな・・・」
はぁ・・・と溜息を吐くも、やっぱり嬉しくてニヤついてしまう。
そして、気分を切り替える樹。
樹「・・・麻婆豆腐・・・フフフ・・・麻婆かぁ・・・。
麻婆茄子も食べたいな・・・。よし、スーパーによってから帰るか」
るんるん気分で帰っていると、最近馴染みになってきた声を耳にする。結構情けない。
ガブリエルである。
ガ「ふ、ふぇえええ~・・・」
樹「ん?今の声は・・・乾・・・か?」
と、辺りを見回し、声がしたと思う方向に向かってみると、柄の悪そうな人達に囲まれているガブリエル。それを見て眉間のしわを更に深くする。
不良(以下屑)「なぁ?兄ちゃん・・・俺の財布を拾ってくれたのは助かったけどよぉ・・・
俺の財布の中身がすっからかんになってたんだわー
兄ちゃん・・・俺の財布からスったろ?」
恐怖で声を引きつらせつつも反論するガブリエル。
ガ「いっ!いえ!そんなことしてないっすよ!
さいっしょから貴方の財布は軽かったですし!」
屑「あぁ~?俺が嘘吐いてるって言いてぇのか?あぁ~?」
不良共(なんか笑ったり煽ったりざわざわとふざけてる)
樹「乾の友人達・・・という線はかなり薄いだろうな・・・」
屑「っち!あんま調子に乗ってっと殺すぞぉ!」
出来もしないことを言い出す屑。しかしそれを間に受け悲鳴をあげる素直で良い子なガブリエル。
ガ「ひ、ひぃいいいいいい!」
樹「―っ!」
これはアカンと思った樹。鋭い声で、
樹「おい、お前達。何をしている」
ガ「せっ!先輩!!」
不良(以下塵)「はぁ?なんだぁ?」
樹「何をしているのか、と聞いているんだ。
そして、ソイツから手を離せ。今すぐに」
塵「えっ?なになに?コイツもしかして正義の味方ぶってるのぉ???
チョーウケるー!」
不良共(ギャハハハとかゲヘヘヘヘと下品に笑う)
樹「そんなつもりはさらさら無いが、乾に危害を加えようものなら許さない」
屑「いやぁ~この兄ちゃん…イヌイ君がよぉ~
俺の財布から金スったからこうなってんすよぉ~
コイツが俺の金を大人しく返してくれればこんなことしなくても済むのによぉ~」
なんか書いててイライラしてきた。コイツら“乾”って字読めないと思う。
ガ「ほっ!本当にやってません!これは・・・!絶対に、絶対の絶対っすよぉ!!」
ガブリエルまじ癒し。“早く~”に本気の怒りを込める感じに、
樹「だろうな。乾はそんなことをする奴じゃない。
金が無いならバイトでもして稼げ。
さぁ・・・早く乾から手を離せ・・・」
塵「おーおー俺たちに向かってデカイ口叩くじゃーん。
なにコイツ?
妙に落ち着いててムカつくなぁー。ぺっ!」
顔に唾をかけられる樹。
不良共(きたねぇ笑い三昧)
ついに堪忍袋の緒が切れましたと言わんばかりに怒りと呆れを含んだ冷たい棘のある声で、
樹「嗚呼・・・嫌いだ・・・。大嫌いだ・・・。
これだから騒がしいのは・・・嫌いなんだ・・・。
特に…貴様らの様にただただ騒がしいだけで、
人に迷惑をかけるしか出来ることのない塵屑な輩は本っ当に大っ嫌いだ・・・。
反吐が・・・いや、もはや血反吐すら出そうだ・・・」
不良共「「「あぁ??」」」
エターナルフォースブリザードを放ちそうな眼力をしている樹に、戸惑い怯えるガブリエル。ちょっと間の抜けた声を出してしまう。可愛い。
ガ「ひゅぇえ?・・・た、樹・・・先・・・輩・・・?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
泣き目なガブリエル。
ガ「うわああああああああああああん!!樹せんぱぁああああああああい!!
助けてくれてありがとうございますぅううう!!」
ガブリエルが大事無いようで安心して声が柔らかく、
樹「なに、気にするな。怪我とかしてないか?」
ガ「いえ、どこも怪我してませんよ!大丈夫っす!」
先程の樹を見て心の中で思う
ガ(た、樹先輩怖い・・・ぜ、絶対に…絶対に絶対に怒らせない様にしよう・・・)
微笑む樹。からの説教。
樹「そうか・・・。それは良かった。
だが、ああいう輩に絡まれたときは話しかけられても、止められても無視するんだぞ。
それでもしも相手から何かしらの危害を加えられたら・・・
まぁ、新坂先輩が言っていた様に、過剰防衛にならない程度に、
アクセル全開でアタック、でも良いが・・・基本的に逃げろ。
危険から逃げるのは決して恥ずかしい事ではない。
脱兎のごとく逃げろ。過剰防衛はあれど、過剰逃走なんてものは無い。
アクセル全開でエスケープだ。良いな?」
でも、と思ったので口にするガブリエル。
ガ「でも、逃走の罪って存在するっすよ?」
もはや教授による講義の様にガブリエルに言葉をかける樹。
自分と上級生達を頼れ、とカッコイイ事を言うものの、過激な発言をしていた正行はアカンかもしれん、と思い訂正する。
樹「あれは法を、罪を犯したという前提があって成り立つモノだ。
お前の様に何も悪を成していない善人には課せられないさ。
とにかく、ああいう輩に絡まれたら逃げろ。
ずっと追いかけてくるなら警察に行けばいいし、
俺や悠さん、新坂先輩を頼ってくれても良い。
・・・スマン。新坂先輩はダメだ。優しいし、良い人だし、基本温厚質実な人だが・・・
アクセル全開でアタックなんて言う人だし、いざという時はやる人かもしれない・・・。
うぅ・・・こちらが加害者側になりかねない・・・」
とりあえず、逃げろということは分かったので了承する。
ガ「あ、あはは・・・でも、“ああいう人達に絡まれたら逃げる!”っすね!
分かったっす!次はもう捕まらないように全力ダッシュで逃げます!」
気を改め、話題を変える樹。
樹「そうか。
・・・俺は今からスーパーに寄ってからシェアハウスに戻るところだが、
お前は?」
それを聞いて同行を志望するガブリエル。
ガ「そうなんですか!俺、サークルの帰りで特に用事ないんで、同行しても良いっすか?」
イケメン爽やかスマイルで、
樹「構わないよ」
ガ「やったー♪」
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樹、ガブリエル帰宅。リビングに悠、光実が居る。
元気良く、
ガ「ただいまっす!」
爽やかに、
樹「ただいま戻りました」
悠「あ、二人共おかえりなさい」
パズルに集中していて適当に返事を返すように、
光「おっかえりー」
立体パズルを組み立てるのに勤しんでいる光実が気になるガブリエル。
ガ「ミッチー先輩。それって何をやってるんですか?」
光「んー?今、3Dパズルをやってるのー。
新坂さんに面白い玩具は無いか聞いたら、これ渡されたからやってるんだー」
ピースの一つを摘む。
ガ「へー・・・これ・・・地球・・・ですかね?」
光「うん、そうそう」
ガ「何ピースくらいあるんすか?」
光「240くらいだった気がするー」
立体で240は滅茶苦茶だるい。その数に驚くガブリエル。
ガ「240!?」
光「僕も最初はうげーってなってたけど、初めてみると案外楽しいもんだねー。
雅人くんだったらこんなのパッパと終わらせちゃうんだろうけど。」
ガ「ひぇ~・・・頑張ってくださいっすー」
光「ありがとー☆」
樹が悠に少し恥ずかしそうに、
樹「悠さん。あ、あの・・・夕飯の支度って・・・もうしちゃいましたか?」
悠「ん?まだだよ。名護や青葉、咲倉がまだ帰ってきてないからね。
でも、少なくとも名護はそろそろ帰ってくるだろうし、そろそろ始めようかな」
樹「そうですか・・・。では、俺も手伝います。」
悠「ああ、ありがとう。・・・あ、そっか。
今日は麻婆豆腐にするって言ってたもんね」
恥ずかしさと申し訳なさがある感じに、
樹「え、ええ。そうです・・・。その、それで、今日の夕飯のメニューに追加で、
麻婆茄子も・・・食べたいな、と思ってしまい、か、買ってきちゃいました・・・。
事後承諾になってしまう形ですが、大丈夫でしょうか?」
悠「ん?大丈夫だよ。さ、料理しようか」
ちょっと嬉しそうに、
樹「はい!」
少し困った感じに、
悠「・・・それにしても、青葉と咲倉はいつぐらいに帰ってくるんだろう・・・」
ガ「二人はどこに行ってるんすか?」
光「えーっとねー。伊織くんと龍くんは一緒に散歩してるんだと思うよー」
樹「そうなんですか」
少し間を空けて突然ガブリエルが冗談で、
ガ「あ!そういえばさっき、いおりんみたいな人に絡まれちゃったんですよー!」
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散歩中の伊織と龍。
伊「ぃっくしゅん!・・・あ~・・・誰かが俺のことを“カッコイイ”って噂してるみたいだな!」
そうではない。
微笑む龍。
龍「はい・・・念の為の風邪薬・・・さっきお店寄った時にちょうど買っておいたんだ・・・。
早速役に立って・・・良かった・・・」
伊「んぉ、サンキュー。
結構歩いたし、帰るか!」
少し残念だけど、微笑んで、
龍「うん・・・」
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場面が戻る。
樹「乾、咲倉に会ったのか?」
ガ「いえ、そうではなくて、
さっき俺が絡まれてて樹先輩が助けてくれた時に居た人たちの事ですよー」
冗談の通じない樹。
樹「ん?あの集団の中に咲倉が居たのか?そうすると、必然的に青葉も居たことに・・・」
ちょっと苦笑して、
ガ「いえいえ、だからそうではなくて・・・」
助け船を出す光実。
光「伊織くんみたいにパンクでロックな格好した人が居たってことでしょ?
がぶくんのジョークだよ。ジョーク。
それに、そんな場面に伊織くんが居たら、
“待てーテメェらウチのもんに手ぇ出してんじゃねぇーきりっ✩”
って言うと思うよー?」
やっと納得した樹。
樹「ジョーク・・・つまり、冗談か・・・。
すまない。間に受けてしまった・・・」
ガチへこみする樹に苦笑いである。
ガ「いえ、お気になさらず・・・」
少し笑いながら、
悠「天咲は多分潜在的ボケ殺しだからね
こればかりはどうしようもないよ」
未熟な自分が不甲斐ないと言う感じで、
樹「くっ・・・!」
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数日後。バイトを終え、本屋から出る樹。疲労困憊で。
樹「……お゙……お疲れ……様……で……した……」
よろよろ歩く樹を見て慌てて駆け寄るガブリエル。
ガ「た、樹先輩!何があったんですか!」
樹「い・・・乾・・・か・・・。な・・・何故(なにゆえ)ここに居るので御座候……」
その問いに対して少してれてれしながら
ガ「え?えっと・・・その・・・サークルの帰りでたまたま・・・いえ…というのは嘘で・・・
その、本当は・・・先輩と・・・って!そうじゃなくて!言葉おかしくなってますよ!
何があったんですか!?しっかりしてください!樹せんぱぁあああい!!」
樹「うぅ・・・その・・・バイトで・・・いや、やめておこう・・・
バイトの愚痴は吐いた分だけモチベーションの低下に繋がるからな・・・。
乾も・・・帰るところだろ・・・?」
ガ「あ!はいっす!
あ、そんなフラフラで・・・!手貸しますよ・・・!」
ガブリエルの手を微笑みながら優しく拒否し、
樹「いや、大丈夫だ・・・。
一人で歩ける・・・ありがとな・・・」
全然大丈夫に見えないんじゃが…と思いつつも、
ガ「・・・」
見守るガブリエル。そしてふらりと車道へよろめく樹。
樹「うぅ・・・」
ぶるるーんとアクセル全開・・・とまでは行かないものの、それなりの速度でトラックが走っているのに気付くガブリエル。そして8月15日の悲劇を起こしそうになっている樹。
ガ「―っ!!
先輩!危ないっ!!」
駆け寄り、樹の腕を力強く自分の方に引っ張るガブリエル。
樹「―っ!?」
推定70kg前後ある人間を、しかも疲労して身体が重くなっている人間を、受身を取らずに支えようとして成功する筈もなく、バランスを崩してしまい、慌てるガブリエル。
ガ「あ!あぁれれっ!?」
そのまま二人共倒れ……
樹&ガ「!!!!!?」
接♥吻
固まる二人。そして同時に我に帰る。
樹「―ッ!すまない!」 ガ「ふぁ!す、すいませんっす!」
沈黙が続く。
樹「……。」
ガ「……。」
驚きとなにかしらで疲れが吹っ飛んだ樹。
樹「と、とりあえず帰ろうか・・・。
こ、今度こそ大丈夫だ。さ・・・さぁ、行こう・・・」
ガ「あ・・・えっと、はい・・・!」
少し間を空けて帰る二人。沈黙が続く。
ガ「……」
樹「……」
ガブリエルが話題を振る。
最初はまだ二人共動揺している感じで会話が続く。
ガ「そ、そういえば!
…た、樹先輩が入った頃のシェアハウスってどんな感じだったんすか?」
樹「ん、んん?あ、ああ…どんな感じだった…か…。ん~…そうだな…。
俺が入った頃は既に乾や咲倉以外の人たちは居たな」
ガ「それって、つまりチンロン先輩は樹先輩よりも前から住んでたってことっすか?」
樹「チ、チンロン・・・あ、ああ。青葉の事か。うん、その通りだ。
本人が言うには、高校の時からあそこに住んでいるらしい」
ガ「え?高校の時から・・・すか?あそこって大学生じゃなくても住めるんすねー」
ここで樹の講義っぽい説明で二人共平静に戻りはじめる。
樹「あそこは別に大学生専用のシェアハウスとかじゃないからな。
女子禁制だが、それ以外に特にこれと言った縛りは無い。
未成年であっても、保護者の許可があれば入居できる。もちろん大人の方でも。
今はたまたま大学生、大学院生しか居ないってだけだよ」
ガ「へぇ~そうだったんすか。知らなかったっす。
あ、その時も一番上の人はやっぱりククノチさんとユッキー先輩だったんすか?」
応えようとして一瞬固まる。そして疑問を解決するべくすぐに問う。
樹「い・・・待て。ユッキー先輩が新坂先輩なのはわかる。
ククノチさんって・・・流れ的に悠さんだろうが、どう変容してそうなったんだ?
俺には全くわからんぞ」
明るく、
ガ「悠さんの苗字って“榊原”じゃないですか」
樹「あ、ああ…」
キラキラと、
ガ「”榊”って”木”と”神”で分けれるじゃないですか!」
樹「・・・確かに」
楽しげに、
ガ「だから、日本神話に登場する木の神様”句句廼馳(くくのち)”様から拝借しました!」
ポカーンな樹。
樹「・・・」
更に楽しげに語るガブリエル。
ガ「ククノチ先輩の苗字の”榊”という植物は神聖な扱いをされることも多いですし、
”句句廼馳”の”廼”も”さかき”と読めますし、ちょうど良いかなーって」
由来の出自が意外だったのでつい動揺する樹。
樹「く・・・句句廼馳・・・。日本神話に出てくる神様・・・。
意外な所から引っ張ってきたな。
たしか、青葉の“チンロン先輩”というのも、
中国神話の四神のひと柱である“青龍”からだったな。
乾は神話とかそういうのに興味があるのか?」
なんとなく適当に返すガブリエル。話が逸れたので軌道を戻す。
ガ「いえ、別にそういうわけじゃないですよ。
それで、どうだったんすか?」
思い出す樹。
樹「あ、ああ。悠さん達より年上の人は居なかったのか、だったな。
居たよ。ただ、どんな人だったかと言われると正直わからないな。
あまり…いや、ほとんど関わりがなかったんだ」
ガ「へぇーその時もククノチさんが管理人だったんすか?」
樹「ああ、そうだったな。
あのシェアハウスは元々、悠さんのご両親が経営をしていたらしい。
だが、何かしら訳あって悠さんのご両親は、
あそこを離れないといけない用事ができたらしく、悠さん自身の要望もあって、
彼が大学進学を機に、管理人代理としてシェアハウスを任されたそうだ」
ガ「俺と同じ歳でシェアハウスの管理をしていたってことっすか・・・
やっぱり凄い人っすねー!」
ガブリエルの笑顔に思わず笑みを零す樹。
樹「ふふ、そうだな」
伊織と龍が合流する。
伊「お、乾に天咲さんじゃないっすか」
ガ「あ!いおりん!チンロン先輩!」
龍「あ・・・樹君・・・バイトの帰り・・・?」
樹「ああ、その通りだ」
龍のエンジェルスマイル炸裂。
龍「そっか・・・バイト・・・お疲れ・・・様・・・」
樹「ふふっ…ありがとう。
ところで、青葉達は何をしていたんだ?
あ、いつもの散歩か。」
龍「うん・・・でも・・・今日・・・は・・・それ…だけじゃない・・・。
伊織の・・・バイトの面接に・・・」
ガ「いおりんもバイト始めるの???」
キリッとする伊織。
伊「ああ、そうだぜぇ!
ばっちし好印象だったぜ」
ちょっと渋い顔になる龍。
龍「好・・・いん・・・。・・・うん。
・・・受かると・・・良い・・・ね・・・」
苦笑いするガブリエル。
ガ(好印象ではなかったんだ・・・)
樹「咲倉がバイトか・・・少し、意外だな。
何か理由があるのか?」
その質問に対し、少し濁す様に答える伊織。
伊「…―っとぉ・・・あれっすよ。
欲しいもんがあって、お金を貯めようと思ったんすよ」
樹の爽やかスマイル炸裂。
樹「そうか。それは立派だ。
目標額に達成するまで頑張れよ」
伊「ぃっす!
あ、そういう天咲さんはなんでバイトしてるんすか?」
樹「ん?俺か?
俺は、ドイツへの留学する為の資金を貯めるているんだ」
留学という単語を聞き、びっくりするガブリエル。
ガ「―っ!?」
ガブリエルのそんな様子を気に掛ける龍。
龍「どうか・・・したの・・・?」
なんでもないフリをするガブリエル。
ガ「え・・・っ。あっ…いえ、なんでもないっすよ・・・。ははは・・・」
龍「・・・?」
盛り上がっている樹と伊織。
伊「へぇー!留学っすか!かっけぇっすね!」
樹「そうか?別に留学自体は普通だと思うんだが」
伊「いえいえそんなことないっすよ。
それに、留学先はドイツなんすよね?
ドイツ語って難しいけどカッコイイすよね!
ちょっと勉強したんすけど“鉛筆”は
ドイツ語だと“Bleistift(ぶらいしゅてぃふと)”なんすよね!
鉛筆の癖にRPGに出てきそうな技みたいな感じがするじゃないっすか!」
少し引き気味な樹。
樹「そ、そうか・・・?まぁ、格好良いかどうかはよく分からないが、
確かに発音とか難しいな。
だが、だからこそ、実際にドイツへ行ってちゃんと伝わるか、確かめてみたいな」
伊「おーやっぱ天咲さんカッコイイっす。
ドイツにはどんくらい滞在する予定なんすかー?」
ガ「・・・。」
樹「どれくらい滞在出来るかはまだ分からないが、理想は一年だな。
なるべく色々な物を体験したいからな。可能であれば二年間というところだ」
ガ「・・・!」
明らかに動揺しているガブリエルに、今度は樹が、
樹「どうかしたのか?乾」
ごまかすガブリエル。
ガ「・・・いえ、なんでも・・・ないっすよ?
あっ・・・そういえば大学の課題結構難しいのが出てたんでした!
俺!ちょっと先に帰りますね!お先に!っす!」
駆けるガブリエル。不思議に思う三人。
伊「なんだぁー?アイツ?」
龍「どう・・・したんだろう・・・?」
樹「・・・乾・・・」
~~~~~~~~~~~~~~~~
真夜中。静まり返ったシェアハウスのリビング。しょんぼりガブリエル。
ガ「眠れない・・・」
明かりを点けずに、ソファーに座る。テーブルに置いてある物に気付く。
ガ「あ、これは・・・ミッチー先輩がやってたパズル・・・」
作りかけの立体パズル。一度完成したものの、また崩され、再構築中のパズル。
その時の光景を少し笑いながら思い返す。
ガ「・・・半分までミッチー先輩がうんうん悩んで進めたのを、
帰ってきたまーくん先輩がヒョイヒョイって完成させて、
それが悔しくてまた一から作ることにしたんだっけ・・・」
ピースを一つ摘まみとる。呟くように、
ガ「・・・ドイツ。
正式名称、ドイツ連邦共和国(orヴァンデスレックブリックドァーチランド)・・・。
公用語はドイツ語・・・」
そしてもう一つ、ピースを摘みとる。寂しいそうに、
ガ「日本との距離は・・・約9200km・・・。
遠い・・・遠すぎるよ・・・。
このパズルみたいに・・・バラバラに崩して、
今みたいにすぐ隣に置けたら・・・良いのに・・・」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
それは絶対に、絶対の絶対:後編
困惑樹の独白
樹「あの日、あの時、俺の中の何かが変質した気がした。
それが何なのか、何がどう変質したのか、俺はまだ理解できていない。
・・・理解できていないが、なんだろう。悪い気はしなかった。
嗚呼、悪くなかった・・・む、むしろ・・・。
・・・アイツは・・・どうだったのだろうか・・・」
~~~~~~~~~~~~~~
次の日の朝。朝食を囲むシェアハウス面々。かなりぼーっとしてるガブリエル。ギャグ調に、
ガ「ぶぉ~~……」
その様子を不審に思う面々。
雅「だ・・・大丈夫か・・・ガブリエル・・・?」
光「が、がぶくん・・・君のお口はもっと下だよ・・・
そこ瞼・・・眼球だよ?・・・いたいいたいいたい・・・」
光実たちの声に反応するもまだ上の空感。
ガ「え・・・?あ・・・ありがとうっす・・・」
もぐもぐ・・・。
不安になる悠。
悠「も、もしかして今日のご飯美味しくなかったかな・・・?」
伊「いやぁーそんなことないっすよ。バリ美味いっす」
悠「そ、そう・・・?本当に・・・?」
樹の様子を気にかける龍。
龍「・・・。
樹君・・・大丈・・・夫?
ガブリエル君・・・ほどじゃ・・・ない・・・けど・・・。
樹君も結構・・・上の空な・・・気が・・・する・・・」
ぼーっとガブリエルの顔、もっと言えば唇を見ている樹。
その様子に気が付く上の空ガブリエル。
ガ「んぁ・・・先輩・・・どうか、したんすか?
俺の口になにか・・・?」
ビクッと我に帰る樹。
樹「えっ!あっ!えっと、口…というか、その、目尻に米粒が付いてるぞ・・・!」
ガ「え・・・あ、本当だ・・・ぱくっ・・・」
もぐもぐしてるガブリエルの口を見ている樹。
「・・・・・・」
二人の様子に困惑する皆であった。
ガ、樹、正意外(((ど・・・どうしたんだ・・・)))
~~~~~~~~~~~~~~
お昼過ぎ。休みでずっとスヤスヤ寝ていた正行が起きてリビングへ降りてくる。
正「はぁ~…ん……。寝すぎたな……。
今日は……悠は・・・夕方まで帰ってこない日か……。
昼食……というか、もうおやつ時か・・・。
ん~何か作るのも億劫だし・・・ん?おや、乾君じゃないか」
リビングのソファーで横になっていたガブリエル。
ガ「あ、ユッキー先輩・・・」
正「おはよ・・・あーもうお昼過ぎたのか。
こんにちは乾君。
どうしたの?こんな時間にここに居るなんて。
確か、今日は乾君学校があったはずだよね」
少しばつが悪そうにするガブリエル。
ガ「あーえっとーそのぉー体調がー…ってことはなくて…その…」
にこやかに合点しながら、
正「ああ、気が乗らなくてサボっちゃったんだね」
的を射られたガブリエル。
ガ「ゔぅ゙…そのとおり・・・デス・・・」
正「ハハハ。たまにはそういうのも良いと思うよ。
でも、サボりすぎるのはダメだからね」
ガ「あはは…ハイっす。
そういうユッキー先輩は…今日は休みなんすか?」
正「んー?ああ、僕は昨日ちょっと頑張りすぎたからね。
今日は自主的に休講することにしたんだ」
要はサボりです。それで大丈夫なのか医大生。
ガ「そ、それって・・・」
正「ん?」
アルカイックスマイルな正行。しかし、本能的に恐怖してしまうガブリエル。
ガ「なんでもないっす」
正「にしても、乾君がサボるなんて、珍しいこともあるんだね。
・・・何か、あったの?」
ガ「あ・・・えっと、その・・・」
黙ってしまうガブリエル。ガブリエルが話し出すまで静かに待っている正行。
ガ「ユッキー先輩・・・」
正「ん?なに?」
ガ「もし・・・先輩の大切な人が・・・
ここじゃない何処かへ、遠い遠い何処かへ、
言ってしまう事になったら、先輩はどう・・・しますか・・・?」
即答する正行。
正「遠くへ行ってしまわない様に何処かに軟禁する」
流石に引くガブリエル。
ガ「・・・え?
それは・・・何かのジョーク・・・すか?」
正行の闇が垣間見える。冷たく淡々と語る。
正「いや?ジョークじゃないよ。本気さ。
多分、僕はそれくらいのことは平然とやってのけると思うよ。
もしも、僕の行いを邪魔する奴が出てきたら、多分平然と痛めつける。
もしかしたら殺害すら厭わないかもしれない。あ、でも流石に殺人は避けるかな?
まだ一度もそういう場面に遭遇した事が無いから、確かな事は何一つ言えないな。
僕は自分の思い通りにならないのはどうにも気に食わなくてね。
我慢ならないんだよ」
怯えるガブリエル。
ガ「ひえ・・・」
ぶつぶつとその場面を想像し、自分が取るかも知れない行動を独り言の様に呟く正行。
正「ふむ、もしも何処かへ行くのを阻止しようとしてアイツが俺を拒み、
危害を加えようとしたら?その場合、邪魔者はアイツになる。
俺はアイツを殺すか?それは無いな…。
力負けはしないものの、抵抗されれば流石に俺もアイツも無傷では済まないな…。
・・・腕や足くらいなら・・・あ、アイツが俺に危害を加える?俺を殺そうとする?
・・・・・・それは少し…少し嬉しいかも…しれないな・・・」
正行の豹変ぶりに恐怖しながらも、正行に呼びかけるガブリエル。
ガ「ゆ・・・新坂・・・先輩・・・?」
我に帰る正行。
正「あっ・・・あ、ごめんね。
つい、自分の世界に入り込んじゃってた。
あーそんな怯えたような顔しないで・・・
あんまり何言ったか覚えてないけど、さっき僕が言ったことは忘れてね。
どれもこれも非現実的で、非効率的な事ばかりだったと思うし。
そ、そうだなーい、胃袋を掴んじゃうのはどうだい?
僕なんか悠の作るご飯が美味しくて、中々離れれないんだ」
正行さんちょっと何言ってるかわかんない。
しかし、真摯に正行の意見を考えるガブリエル。
そして決意し、先程までの弱気な感じから一転して、
ガ「胃袋を・・・掴む・・・
―っ!ユッキー先輩!―」
~~~~~~~~~~~~~~~~
バイト終わりの樹。
樹「お疲れ様でした」
外に出る。辺りを見回す。そして溜息を吐く。
樹「・・・・・・。
乾・・・今日は・・・居ないか・・・。
はぁー・・・・・・帰るか」
~~~~~~~~~~~~~~~~
樹帰宅。
樹「ただいま戻りました。
・・・ん?この香り・・・もしや・・・」
少し早足でキッチンに向かう。そして扉を開けながら少し嬉しそうに、
樹「悠さん。今日の夕飯はもしかして…って、乾と青葉?」
笑顔で樹を迎える本妻臭漂うガブリエル。
ガ「あ!おかえりなさいっす!樹先輩!」
龍「樹くん・・・お疲れ・・・様・・・」
樹「あ、ああ、ただいま。
青葉もありがとう。青葉はたまに悠さんの手伝いしているからわかるが・・・
驚いたな。乾が台所に立っているなんて。
・・・悠さんはどうしたんだ?」
リビングのテーブルの周りに居る光実が樹の問に答える。光実は立体パズルをやっている。
光「悠さんなら新坂さんに連れられてどっか行ったよー」
光実と雅人の存在に気が付く樹。
樹「あ、初瀬先輩、名護先輩。
ただいま戻りました。
連れられて、というのは一体・・・?」
雅「おーおかえりー
連れられて、ってのは言葉通り、
悠さんが帰ってきて靴を脱ぐ前に、
正行さんが悠さんの手を引いて何処かへ連れて行ったんだ」
光「“夕飯の心配はいらないよ”って残していってね」
樹「心配いらない・・・それは乾と青葉が夕飯を作るから、ってことか」
龍「ううん・・・新坂さん・・・は・・・ボクが料理・・・するの・・・は
・・・知らない・・・と、思う」
樹「そうなのか?」
龍「う・・・うん・・・料理・・・してるガブリエル君を見て・・・
ボク・・・も・・・作り・・・たく・・・なっちゃった・・・から・・・
一緒に・・・作ってるの・・・」
状況を把握し、本来の悠に訪ねようとしていたことをガブリエルと龍に聞く。
少し、そわそわした感じで、
樹「・・・なるほど。
ところで、乾、青葉。二人が作ってるのは・・・もしや・・・」
ガブリエルが少し得意な顔をして答える。
ガ「その、もしや、っす!
今日の夕飯は麻婆豆腐!っすよ!!」
ぐっと皆にバレないように拳を握る。だが、声はかなり嬉しそう。
樹「そ、そうか・・・!」
ガ「樹先輩、麻婆好きなんすよね?
だから、俺、先輩に喜んでもらいたくて!
作ることにしたんです!」
少し驚く樹。
樹「あ、ああ、確かに麻婆・・・というか、辛いモノは俺の好物・・・いや、大好物だが、
誰から聞いたんだ?
俺が辛いモノが好物なのを把握しているのは悠さんくらいだと思っていたが・・・」
一応進言しておく光実(パズル中)、雅人、龍。
光「樹くんが辛いモノが好きなのは見てるだけでよ~くわかってたけどー
僕たちじゃないよー帰ってきた時にはもう料理始めてたしねー。
あ、よーし噛み合った」
雅「ああ、勿論俺でもない」
龍「ボクでも・・・ない・・・よ・・・」
ガブリエルが誰に教えてもらったか言いそうになるが、教えてくれた人の言葉を思い出す。
ガ「それはゆ・・・」
ガ(あ、そういえばユッキー先輩・・・)
~~~~~~~~~~~~~~
回想。教えてくれた人。それは正行である。
あ、良い事思いついた、といつもよりちょっとニコニコしながら人差し指を口に添えるイメージで、
正「あ、天咲の好きなものを僕が教えた、というのは秘密ね」
キョトンとするガブリエル。
ガ「え?なんでっすか?」
悪戯っ子の様にニヒルに笑う正行。
正「なんででも、だよ。
もしも、天咲に“誰から聞いたんだ?
俺が辛いモノが好物なのを把握しているのは悠さんくらいだと思っていたが・・・。”
と、聞かれたら、少し微笑んでこう言うんだよ。
―――」
~~~~~~~~~~~~~~~~
元の場面に、
少し思い出して正行の言われた事を自分風に換え、言葉を出力する。
ガ「・・・。
わかりますよ。俺、先輩の事ならなんでも。
それに、先輩辛いモノが夕飯に出た時、
いつもよりいっぱいおかわりしてるじゃないっすか。
それだけでも、分かっちゃいますよ・・・」
正行の作戦。それは恥ずかしさとトキメキをごっちゃにしてしまうというモノだったのだ・・・(正味な話、現実で成功する気はしない、と白目向きながら書いてる)
だが、正行の思惑通り恥ずかしさとトキメキでドキッとしてしまう樹。
樹「そ・・・そう・・・なのか・・・!
うーむ・・・おかわりしてたのは・・・無意識だった・・・。
気づかれてしまうくらい、表に出ていたのか・・・///」
ガ「待っててくださいね!もうすぐ出来るんで!
レシピとかはユッキー先輩に教えて貰ってるんで多分問題ないっす!」
ほとんど正行が教えたと宣言した様な発言だが気付かない樹。やっぱ抜けてる。
雅人が思ったことを口にする。
雅「へぇ~正行さん料理もできるんだー
あの人なんでもできるな・・・」
パズルの手を休めずに、うーんと眉を顰める光実。
光「ん~ど~だろうねぇ~・・・
新坂さん、カカオ100%のチョコレートを、
そのままで美味しそうにパクパク食べる人だしな~・・・
これは・・・これとかな?あ、ちがう・・・」
それを聞き少し不安になる雅人。
雅「・・・いや、でも、あれ食べる人結構いるし・・・
それに健康や美容に良いわけだし、
正行さんの味覚が狂ってるとかじゃない・・・筈・・・。」
立体パズルを頑張ってる光実に意地悪を言う雅人。
雅「・・・はぁ~おっせぇなぁ~
さっきからそのパズルちっとも進んでねぇじゃん」
ムッとして手を休めず応える光実。
光「う、うるさいなぁ~気―がー散―るぅー
まったく・・・雅人くんがちょっかい出さなければ・・・
あの時もうすぐ完成してたのにー」
雅「あ~あ~よく言うぜぇ~
半分も進んでなかったのに、もうすぐで完成する?
あと一週間はかかったなー!」
光「ぶー!また意地悪言うー!
ふんだ!あの時ぜーったいもうすぐで終わったもん!
今だって!もうすぐで終わるもん!」
雅「はっはぁー!
じゃあさ、龍達の夕飯が完成するまでにそれ出来たら、
言うこと一つ聞いてやるよー」
光「ん、言ったなぁー?
あとからさっきの無しって言ってもぜぇーったいに、聞かないからね!」
雅「へっ!良いぜぇー男に二言はねぇからなぁー
まぁ、クソ雑魚ナメクジなお前にはぜぇってぇできねぇからー」
と、言った刹那。光実の手は動いた。立体パズルである地球が見る見るウチに正しい形を成していく。光実の動きに迷いはない。当てはめられていくピースに間違いもない。
そして・・・
雅「(鶏が絞め殺された時に発する短い断末魔の様な声)」
・・・地球の模型は完成した。ふー、と短い息を吐き、満面の笑顔を浮かべ、
光「できたよ☆彡」
と、高らかに宣言するのであった・・・。
ガ「夕飯出来たっすよー!」
光実の宣言に一拍二拍遅れで夕飯の完成が知らされる。キラキラ光実。真っ白雅人。
雅「あ゙・・・あ゙あ゙・・・」
光「はーい♪
・・・男に二言はない、んだよね?
あぁ~お腹ぺっこぺこだなぁ~☆」
雅人は光実にまんまとハメられたのだ・・・。
そこで帰ってくる伊織。
伊「ただいまーっす。
お、もう夕飯支度終わってる感じっすか。
すぐに荷物部屋に置いて戻ってくるっす」
樹「おかえり。咲倉。
ちゃんと手も洗うんだぞ」
伊「ぃーっす」
~~~~~~~~~~~~
悠、正行がいない状態で夕飯を食べるシェアハウスの住人達。
伊織が少し眉を顰める。
伊「んぁー・・・麻婆、かー・・・
んー・・・俺辛いの苦手なんだよなー・・・」
ガブリエルがしまった!言った感じに不安げに顔に影が落ちる。
ガ「あっ・・・ご、ごめん!いおりん!
いおりんの事考えてなかった・・・!」
考えてなかった、という言葉少し刺さるが、きっと悪気はねぇ、と堪え、大丈夫だと伝える。
伊「か、考えてなかった、ってのは正直言葉選べって思ったけど・・・
別に気にしねぇで良いよ。苦手なだけで食えない訳じゃねぇしよ。
悠さんは俺が辛いの苦手だって知ってるから、
辛くないのを用意してくれてるけどよ…
それを知らねぇやつに、何も言ってねぇやつに、
アドリブで要求したり、文句を言ったりするのは、筋が通ってねぇし、かっこわりぃ。
って事でちゃんと食うよ。さっきのは…ちょっと
・・・ついポロっと出ちまっただけだから、気にすんな」
だが、やはり申し訳ないと思うガブリエル。
ガ「う・・・うん・・・」
龍が穏やかな声で、いつもよりははっきりと、
龍「辛くないよ」
伊「ん?」
ガ「え?」
伊織とガブリエルが自分の方を向いて少しビクッとしていつもどおりの話し方に。
龍「か・・・辛く・・・ない・・・よ・・・
伊織の・・・麻婆・・・は・・・辛くない・・・よ・・・
ガブリエルくん・・・が・・・唐辛子とか豆板醤を・・・
辛い・・・モノを・・・入れる前に・・・ボクが・・・少し、
頂戴・・・した・・・でしょ?」
思い出すガブリエル。
ガ「あーーー・・・そういえば」
心の中でツッコミをする光実。
光(んん~?忘れてたのぉ~?)
龍「もし・・・ガブリエルくんが・・・伊織が・・・辛いの苦手なの・・知らなかったら・・・
まずい・・・かもって・・・思ったから・・・辛くする・・・前・・・に・・・
分けて・・・おいた・・・の・・・」
そして気付くガブリエル。
ガ「はっ!だから麻婆豆腐が入った鍋が二つあったんすね!」
心の中でツッコミをする雅人。
雅(今の今までわかってなかったのかよ!)
少し嬉しい伊織。
伊「おー!マジかー!サンキューな!龍!」
微笑む龍。
龍「・・・うん・・・!」
悠の代わりに合掌の号令をかける雅人。
雅「よっし、じゃあちゃんと手ェ合わせろよ~!
そしてちゃんと残さず食えよ~!
せーの!」
悠、正以外「「「いただきます!」」」
少しホッとした様子の伊織。
伊「mgmg・・・うん・・・辛くねぇ・・・」
龍「・・・良かっ・・た・・・」
ここからがガブリエルにとって本番、大切なところ
いつになく真剣な眼差しで樹を見つめる。
ガ「さあ・・・!樹先輩!
・・・ご賞味あれっ!!」
なんかバトル系のBGMが流れそうな雰囲気。
ガブリエルの熱さに乗せられ、樹も真剣な眼差しで頷く。
樹「うむ、では・・・はむ・・・
・・・・・・っ!!」
カッ!と目を見開く樹。
熱く、熱く、熱く語る樹!
樹「目の前に出された時点で既に、美味しいというのは分かっていた・・・!
何故なら、麻婆と豆腐の・・・大まかな色で例えるならば、赤と白の比率が6:4!
6:4・・・これが!俺が思う最高の麻婆豆腐の!麻婆と豆腐の割り合い・・・!
更に、嗚呼・・・嗅覚をほんのりと刺激する豆板醤・・・香辛料の香り・・・!
・・・ゴクリ・・・二口目だっ!!
・・・嗚呼・・・嗚呼、素晴らしい!
口に入れた瞬間ピリリと来る唐辛子と山椒の辛さと白味噌の甘味が合わさり、
程よい感じに甘辛い!いや、この場合は辛甘いが正しいか・・・!
そして、麻婆の餡が喉をするするっと通り、とても心地が良い!
豆腐・・・なんだ・・・いつもと何かが違う・・・!
はっ!豆腐の形状・・・!ただの立方体ではないっ!!
切れ込みだっ!切れ込みが入っているっ!?
井桁!(#←コレ)
井桁状に切れ込みが入っているんだ!!
豆腐の一個一個に!丁寧に!井桁状の切れ込みが入っているっ!!
なるほど!そういうことかっ!!
豆腐に切れ込みを入れることで、
豆腐と他の具材がより!絡み合いやすくなっているんだっ!!
美味い!美味いっ!とても美味いっ!!
これは・・・!この麻婆豆腐は・・・!
ご飯が進むっ!!!
・・・ッ!乾!おかわりだっ!!」
ワン、と手を添える、なんてことはせず、普通に対応するガブリエル。
ガ「ハイっす!!」
割と普通の事言っていると思うじゃろ。わしもそう思う。
そして普通に感想を零す雅人、光実、龍、伊織。
光「わーおいしい☆彡」
雅「おー!悠さんの麻婆豆腐には劣るが、確かにこれはうめぇな!」
伊「ウメェ!」
龍「美味しい・・・よ・・・ガブリエルくん・・・」
各々の反応を見て、特に、樹のワードの初期設定フォントサイズで半ページにも渡る感想を聞いて笑みを零すガブリエル。最初は静かに、そして途中からハキハキと、
ガ「はぁ・・・良かった・・・
皆さん!俺の料理!食べてくれてありがとうっす!」
そんな感じでわいのわいのと食事をし、
悠、正以外「「「ごちそうさまでした!」」」
この日はこれで、幕を閉じる。
~~~~~~~~~~~~~~~~
後日。樹がバイトあがる時間。
樹「お疲れ様でした。
・・・ん、乾」
待っていたガブリエル。笑顔で。
ガ「バイトお疲れ様っす!樹先輩!」
樹「どうした?乾。
何故、ここに?」
もー樹くんったらーわかってるくせにぃー
今回は最初から素直に、微笑んで、
ガ「樹先輩を待ってたんすよ。
先輩と一緒に帰りたくて・・・待ってたんす」
少し惚ける樹。すぐに我に帰って、
樹「・・・・・・。
あ・・・そうか。なら、帰ろうか」
静かに微笑むガブリエル
ガ「はいっす」
ワンワン!犬の鳴き声が聞こえる。
いつものガブリエル・・・いや、いつもよりテンション高めなガブリエル。
ガ「はっ!今のは!今のは!ワンコ!
ワンコおおおおおお!!」
犬の方へ駆けていくガブリエル。
その様子をポカーンと見つめ、先ほどの静かなガブリエルとのギャップが少しおかしく思えて笑いを零す樹。
樹「ぁ・・・・・・あはは」
~~~~~~~~~~~~~~
ホクホク満足なガブリエル。
ガ「ふぃ~・・・柴犬・・・最高っすねぇ・・・!」
そんなガブリエルを見て微笑む樹。
樹「そうか、良かったな。
乾は犬が好きなんだな」
ガ「はい!そうっすよ!
俺、ワンコ大好きっす!!」
樹「どの種類の犬が一番好きなんだ?」
ガ「んー…一番とか、そういうのはないっすね。
俺、ワンコ皆大好きっす。
大型犬も小型犬も中型犬も、みんなみんな大好きっす!
シベリアンハスキーさんはクールでカッコイイですし、
ピーグルさんは耳が垂れてて小柄でキュートですし、
ピットブルさんは少し強面で怖いっすけど好きっすよ!
それにそれに!パピヨンさんなんかは、名前通り蝶々みたいで可愛いですし!
ダルメシアンさんは101匹+2匹で最強って感じですし!
あ!あと!あと・・・あっ・・・」
思い出すガブリエル。
樹『嗚呼・・・嫌いだ・・・。大嫌いだ・・・。
これだから騒がしいのは・・・嫌いなんだ・・・』
騒がしいのは嫌い・・・今の自分がまさに、その、“騒がしい”に該当するのではないか?
と、思い口を閉ざしてしまうガブリエル。樹先輩には・・・樹先輩にだけは嫌われたくない。
ガ「・・・。」
急に黙るガブリエルを不思議に思う樹。
樹「・・・ん?どうしたんだ?乾?」
少しビクッとするガブリエル。伏せ目がちな感じで言葉を紡ぐ。
ガ「あっ・・・えっと、すいません・・・樹先輩・・・
うるさいの・・・騒がしいの・・・嫌い…でしたよね・・・。
俺・・・こんなうるさく、騒がしく、ズンガズンガベラベラ喋って・・・
先輩の気分を害してしまった気がして・・・
さっきの俺・・・うるさくて鬱陶しかった・・・ですよね・・・
す、すいません・・・」
ビクビク震えているガブリエル。そんなガブリエルを見て静かに、
樹「乾・・・
こっちを向いてくれ・・・ガブリエル」
樹に“ガブリエル”と呼ばれ、少し驚いて樹の方を向くガブリエル。
ガ「え・・・?」
静かに、言葉一つ一つ、一語一語丁寧に、自分の気持ちをガブリエルに届ける。
樹「俺は・・・確かに騒がしいのが嫌いだ。
だが、別に賑やかな事や、楽しい事が、嫌いなわけじゃない。
勿論、気分を害してもいない・・・。
むしろ俺は、ガブリエルが楽しそうに話しているのを、
見ているのは、聞いているのは、凄く楽しいよ。
うるさくなんかない。鬱陶しくなんかない。
・・・バイトが終わって、ガブリエルと一緒に帰るようになってから、
俺は毎日が楽しいよ。
お前と一緒に帰れる。それが、今、バイトをする上での動力になっている。
それに、この間は美味しい麻婆豆腐を作ってくれてありがとう。
俺は、お前と一緒に居ると、いつも元気をもらえる。
ありがとう・・・ガブリエル・・・」
次はガブリエルが惚ける。少し嬉し泣きしそうな雰囲気を出しつつ、喜びで破顔し、ぱぁっと笑顔を咲かせるガブリエル。
ガ「・・・今、俺・・・うれし過ぎて、抑えたくてもニヤニヤが抑えられないっすよ///」
微笑む爽やか
樹「ふふふ、そうか。それは大変だな。
でも、抑える必要はないんじゃないかな。
嬉しいという気持ちは・・・楽しいという気持ちは・・・
幾つになっても、どんな時でも、良い物だからな」
と、序盤にご褒美麻婆で喜んでいた自分を思い出し、噛み締めながら言う。
そう言われ、嬉しさを爆発させるガブリエル。
ガ「・・・ん~~ひゃっほう!!樹先輩に嬉しいって言ってもらえた!
樹先輩に元気もらえるって言ってもらえた!
樹先輩にありがとうって言ってもらえた!
樹先輩が俺を名前で呼んでくれたっ!!
ひゃっほう!やったぁー!!ふうううううううう!!」
少し驚いて、笑みを浮かべる樹。
樹「・・・ははは。そんなに駆け回って・・・
まるで、ガブリエル、お前が犬みたいだな」
少し落ち着いて、決心するガブリエル。
突然静かになり、こちらを真剣な眼差しで見てくるガブリエルに首をかしげる樹。
樹「・・・・・・?ガブリエル、どうしたんだ?」
ガ「先輩・・・樹先輩・・・たとえ、離れ離れになっても、
先輩のさっきの言葉で、俺頑張れます・・・
でも、何も言えずに、離れ離れなっちゃうのは嫌です・・・。
だから、今・・・伝えます」
ガブリエルの言っている事がわからない樹。
樹「ん?それはどういう・・・」
少しためて思いの丈をぶつける
ガ「先輩!俺!貴方のことが!樹先輩のことが!
好きです!大好きです!!」
沈黙。
静かに口を開く樹。
樹「・・・ありがとう。ガブリエル。
ガブリエルのおかげで、俺の中のもやもやが・・・変わった何かが・・・
なんなのかハッキリした。
俺も、多分、お前と同じ気持ちだ・・・」
~~~~~~~~~~~~~
深夜。樹の部屋。
樹がガブリエルにのしかかる様な体勢で口づけをし合う。
ちゅぱちゅぱと水音が部屋に響く。
一旦離れる。少し火照っている二人。少し意地悪に笑うガブリエル。
ガ「んぁ……んはぁ……はぁ……先輩なんか激しくないっすか?」
その言葉に更に少し顔を赤くする
樹「そ、そうだったか?すまない……
その……初めて……お前と……その……
キス……した感覚が忘れられなくて……つい……」
ガ「初めて……あ、あの時の……事故でのキス……すか?」
恥ずかしい樹。
樹「……あ、ああ。そう、その通りだ」
それを聞きまた嬉しくなり、樹の身体を自分の方へ寄せる。
耳元で囁く様に
ガ「そーすっか……だったら、もっとしましょ♪」
再び二人の唇が重なり合う。
部屋に響く水音と相手の体温を感じ、更に気分が高揚し、唇を激しく求め合う。
そして、更に深く混じり合おうと提案するガブリエル。
ガ「ぅうん……さあ……先輩、もっと……もっとっもっと深く愛し合いましょう……!」
少し惚けながらも、反応する樹。しかし、動かない樹。そしてガブリエルに問う。
樹「……ああ…………。
なぁ、ガブリエル……もっと愛し合う、というのは……」
ガブリエルの頭にハテナマークが浮かぶ。
ガ「え……えーっと、続きをやりましょう……ってことっすよ?」
樹「そ、その……続き、というのは……一体何をすれば良いんだ……?」
樹のR方面に疎い設定に戸惑うガブリエル。少し半笑いな苦笑いになる
ガ「えぇっとぉ……それは……ひょっとして、ギャグで……言ってるんすか?」
樹は冗談が通じない。無論冗談も言わない。故に、ギャグではない。
恥ずかしい樹。
樹「……ほ、本当に冗談ではないんだ。
こういうことをするのはお前とするのが本当に初めてで、
本当に、何をすれば良いか……わからないんだ……
……すまない……」
ガ「そ、そうなんすか……」
やっぱりこの人フェアリーだわ。
微笑んで仕切り直すガブリエル。
ガ「ハハハ……だったら、俺がリードするしかない っすね……
……と言っても、俺も初めてなんでちゃんとできるか……分かんないですけど……」
その言葉に微笑み返す樹。
樹「そうか……初めて同士、探り探りでやっていこう」
ガ「はいっす!
……じゃあ、まずは俺が上になりますね」
樹「ああ、わかった」
上下反対になり、ごくりと喉をならす。
ガ「じ、じゃあ……樹先輩……い、いきますよ……!
痛かったりしたら言ってくださいね?
ぺろり……」
樹「んん……っ!」
樹の身体を優しく撫でる様に触り、胸元の突起物を恐る恐る舐める。
舐められて身体がビクリと震え、腰が反る。
ガ「だ、大丈夫っすか?」
樹「大丈夫だ……
む、むしろ良かった」
その反応にクスクスと笑うガブリエル。
ガ「そうですか……?じゃあ、続けますよ。
……乳首を舐めただけで……こんなに……
ん……ちゅっ……んっ……
んふふ……っはぁ……先輩、可愛っすよ……」
ガブリエルが挑発する。悔しい樹。
ネコがタチに“可愛い”というのはNGらしい。
樹「んんっ!……くっ……!」
ガ「うぉっ!」
ガバッと強引に体勢を入れ替える樹。
少し目を白黒するガブリエル。
ガ「せ、先輩どうしたんすか?」
少し息が先程より上がってる樹。少し鋭い声で不敵な笑みを浮かべながら、
樹「はぁ……はぁ……んっ……
可愛い、というのは失礼なんじゃないかな……
んん……ちゅぱっ……ちゅる、ちゅ……
ちゅ……ん……ぺろぺろ……」
やり返す樹。
今まで性知識に触れたことのない奇跡の人間だった、というのもあり、とても拙い。
だが、ガブリエルを鳴かせてやろうと一生懸命に舌を這わせる。
ガ「ん……!んぁ……!あっ……あっ……!」
樹が攻める度に声をあげるガブリエル。そんな様子に樹がニヤリと口角を上げる。
樹「んはぁ……ガブリエル。お前の方が可愛いよ。
んんっ……ん、むぅ……」
ガブリエルの胸元の突起物を甘噛みして刺激する。
ビリビリと
ガ「くぁ……!?
あっ……!せんぱっ…んっ……!!」
樹「んむ……んっ……ちゅっ……れろ……んは……っ」
ガブリエルが軽く果てるのを感じ、動きを止める樹。
口先を尖らせて少し拗ねるように、
ガ「んんっ……はぁ……はぁ……
い、今のは……卑怯っすよぉ……!
それに、俺がリードする筈だったじゃないですかー!」
ぷりぷり拗ねるガブリエルについ押される樹。
樹「あ、ああ、すまない
どうも俺は人に上に立たれるのが嫌みたいでな……」
ガ「む~……先輩、結構我が儘ですねー
つ、続きやりますからね……!」
身体を起こし、樹の身体の下部に手を添える。
ズボンの上から手のひらを前後し、樹の股間を刺激する。
ガ「うわぁ……ズボンの上からでも分かるくらい大きい……」
ガブリエルの言葉と視線が少し恥ずかしくて、下半身がもぞりと動く樹。
樹「ん゙ん゙……」
一連の刺激が積み重なり、樹の股間は勃起し、窮屈さを覚える。
ガ「……随分と苦しそうっすけど、大丈夫っすか……?」
大丈夫とは言えない樹。
樹「し、正直……辛い……」
それを聞いてズボンのジッパーに手をかけるガブリエル。
ガ「じゃ、開放してあげないとっすね」
音を立て、ゆっくりとジッパーを下げる。
びっくりするガブリエル。
ガ「……っ」
勢いよく反り上がった樹のモノに、ガブリエルが息を飲む。
ガブリエルが想定していたよりも大きかったようだ。
ガ「おぉ……本当に、大きい……
えーっと、こうすれば良いんだったっけ……」
ガブリエルの手が樹の肉茎に触れる。
握るように軽く指を添えられると、自然と口からうめき声が漏れる。
樹「うっ……」
ガ「おぉ……」
肉茎を上下に擦るガブリエル。
指の節の段差の感触で、樹のモノは気持ちよさを覚え、ゆっくりと手を上下させる度に、快感で悶えていた。
樹「くっ……うぐっ……あぁっ……!」
片方の手で擦りながら、亀頭の先端をつん、と指先で触れる。
樹「くぁ……!」
ガ「カ、カウパーが出始めてますね……ごくり……ちゅる」
ざらりとした湿り気のある感触が樹の局部を襲う。
樹「く、ううっ……」
樹のモノを咥えるガブリエル。
ガ「ん……ちゅ……んっ……んん……ふぅ……ちゅっ」
背筋を走る快感に耐えられず声が漏れる。
樹「うわぁ……ああっ」
ガ「んんっ……ん、むぅ……
ちゅっ……んは……ちゅっ……」
樹「うっ!ああっ!」
ガ「んふっ……んっ……ちゅ……れろ……れろ……
んむちゅ……ちゅっ……はぁ、硬い……
ちゅ……んぅ、ふぅ……」
口全体でしごかれ、吸い上げられ、快感の波が押し寄せてくる樹。
樹の限界が近い。
樹「くっ!あっ、あっ、あ……!」
ぷはぁ、と一旦肉棒から口を離し、一息ついてラストスパートをかける。
ガ「あっ……凄い……熱い……っす……
んむ……ちゅる…ちゅぽっ……ちゅっ、ちゅっちゅっ、ちゅるるっちゅ……!
ちゅっ……っ、ん、ちゅちゅるるっ!」
樹「はあ、あぁぁ……!うぁ、もう……!
ああっ!」
肉茎に溜まっていた熱い滾りがびゅるるっ!と噴出する。
口内に溢れ、つい驚いて離してしまい、ガブリエルの顔に白濁液がかかる。
樹「っく……うぅ……!!」
ガ「ぷふっ!ふあぁ……!ああっ、ん、ああっ……熱い……
ちゅるっ……ごく、ごくっ……ぷはぁ……先輩の……凄く熱いっす……」
射精した事による虚脱感に襲われる樹。
樹「はぁ、はぁ……はぁ……」
火照っているガブリエル。艶やかに樹を呼ぶ。
ガ「先輩……樹、先輩……」
ガブリエルの興奮は最高潮だった。
ガ「俺……先輩に、気持ちよくして欲しい……
さっきよりもっと!気持ち良くして欲しいっす……!
先輩のが、欲しいっす……!」
快楽魔ガブリエル。樹に菊門を向け、樹のモノをねだる。
若干さっきの快楽で意識が飛んでいる樹。
樹「あ、ああ。」
快楽魔から一転、しおらしくなるガブリエル。
ガ「で、でも、初めてなので、その……優しく……お願い、します……ね?」
樹「分かった」
ガ「あっ……」
ガブリエルの入り口に亀頭の先が触れる。
その感触に、熱さに、思わず声が出る。
ヒクついているガブリエルの臀部の感覚に背徳感を覚える樹。
樹「……挿れるぞ」
膝を前に進めて、樹はガブリエルの菊門にモノを沈める。
ガ「く……ふぅ……んんぅ……だっ……んぁ……」
じわじわと挿入していく。
ガ「は……あ……んっ……んううっ……」
肉壁をじわりじわりと押し拡げる様に体重をかける。
肉壁の押し戻そうとする圧迫感による快楽の刺激に再び意識が飛び、達してしまいそうになる。
樹「……っ
ガブリエル、苦しそうだが、大丈夫か?」
ガ「うぅっ……は、うんっ……はぁ……はぁ……大丈夫っすよ……
さぁ……来て、くださいっす……
せん……ぱい……」
了承を得、樹のモノが半分くらいまで進んだ所で、ガブリエルの腕、二の腕部分を掴む樹。
ガブリエルの腕を自分の方へと引く。
ガ「んあっ……あっ、あっ……ふっ……」
少しだけ奥へと進む。
そして、
樹「くっ!あああっ……!」
勢いよく腰を突き挿れる。同時に、両腕を引っ張る。
ガ「あ゙あ゙っ!あああぁぁっ!」
勢いよく挿れたことで凄まじい快感が樹の身体を電気の様に駆け巡り、射精しそうになる。
ガブリエルも勢いよく突かれた事で一瞬息が止まり、強烈な刺激で思考ができなくなる。
二人共動きを少し止める。
快感で止まっていたガブリエルの脳が活性し、喘ぐ。
ガ「はっ、ああっ……あああっ……ああぁっ!
はぁっ……せんぱい、の、き、来た、あ……」
ぶるりと身体を揺らすガブリエル。ガブリエルの中はうねうねと波打って樹のモノを押し出そうとする。
いつも眉間に寄ってるシワをさらに寄せて快感を耐えながら、ガブリエルに報告を入れる樹。
樹「―っ……!全部、挿入ったぞ……」
ガ「はい……先輩のが、俺の身体を抉って、腰が、少し、痛いかもっす……
でも、大丈夫……すよ……
……すごく……すごくすごく……気持ちいいっす……」
快感に耐えながらもガブリエルと会話をする。
樹「……そうか。
このまま、動けば、良いんだな……?」
エロチックなガブリエル。
ガ「はいっす……出来れば、激しく、お願い、します……
いっぱい動いて気持ちよくしてもらえると嬉しいっす」
樹「わかった……行くぞ……」
腰を強く打ち付ける。
ガ「ふ……うっ……はっ……はんっ!んっ!あっ!
はっ……あっ……んっ……あっあっあっあっ……んんっ!
んっ……んっ……んっ……」
室内に腰を打つ音が響く。
その度に、ガブリエルの柔らかくはないものの、ハリのある双丘が揺れる。
それが樹の興奮を更に高める。
樹「ガブリエルっ……あっ……はぁ……凄く、気持ち、良いぞ……」
ガ「んっ、あっ……おっ……俺もっす……!
俺も、樹、先輩、と、同じ……あっ……気持ち、っす……!」
二人の興奮が更に高まる。
樹はさらに、腰を振る速度を上げていく。
ガ「あうっ、ん、あっ、あっ、はっ、んっ、くはぁっ、
あっ、はっ、ああっ!
ダメッ……!うっ、く……いっぱい突か、れて……くぅ、ふぅ、
ん、ん、ん、ん、んんんっ、はあああっ……!」
くちゅっ、ぷちゅっ、という淫靡な音が室内に響く。
樹「くっ…!うぅっ!はぁっ……はぁっ……!」
ガ「はぅ、あん、んう、んあ、はっ、く、はんっ、あふ、
ああっ、はぁっ!あああっ!」
腕に力を入れ、ガブリエルの身体を固定し、ひたすら掘り続ける。
肉壁の圧迫に逆らいひたすらに。
ガ「ああっ!せんぱいっ、たつき、せんぱいっああーっ!あーっ!」
樹「ガブリ、エルっ!」
ガブリエルに更に密着する為に体重をかける樹。
ガ「せんぱいっ、せんぱいっ。せん……くっ!ああっ!くあっ!
ああっ!ダメェ……ッ!
あっ、んあ、あふ、あうあああっ!俺っ!もう……っ!」
樹「あ、ああっ……俺も……だぁ……っ!」
ガ「いっ、一緒に……っ!せんぱいっ、と、樹、先輩と一緒にっ……!
イキたい……!先輩と一緒に、イキたいっす!」
樹「ああ、分かった……っ!
―っ!ガブリエルっ!イクぞっ!」
スパートをかける樹。部屋に響く音のリズムはどんどん短くなっていく。
淫液が飛び散るほどに激しく。
樹は言葉を忘れ、腰を振り続ける。
樹「うおおお!」
ガ「ふあっ、はぁ、んあぁっ、はっ、あっ、熱い……あっ、あっ、あっ
あぅっ、くっ、んーーーーっ!
ああーっ!ああっ!ああーーーーーーーーっ!!」
ガブリエルが快楽で絶叫する。
それと同時に樹の白濁液がガブリエルの臀部だけではなく、背中や髪にまで飛んでいく。
ガブリエルの白濁液が樹のベッドのシーツに飛び散る。
ガ「は……ああっ!い、いっぱい……出てる……!
熱い……熱いのが、いっぱい……!」
二回目の射精による虚脱感に襲われ、朦朧とする樹。
樹「ああっ……はぁ、はぁ……くっ……」
倒れ込みそうなほどの疲労をなんとかガブリエルの元へ。
樹「ガブリエル……」
ガ「はぁ、はぁ……、……?……なん、です……んくっ(口づけ)」
最初にやったキスよりもより濃厚に、長く。
樹「んはぁ……大好きだよ、ガブリエル」
ガ「樹先輩……俺もっすよ!俺も大好きっすよ!」
キスをして、想いを確認しあう様に再び伝え、ぶっ倒れるつもりだった樹。
笑顔のガブリエル。
ガ「樹先輩♪」
樹「ん……?」
色欲魔ガブリエル。体育会系の体力はまだまだ尽きない。
ガ「まだ、夜はこれからっすよ。
もっと、もっともっとしましょうよ!愛し合いましょう!」
狼狽する樹。
樹「え、えぇ……?」
サキュバス感あるぜ。
ガ「さぁ!さぁさぁ!」
樹「あーーーーーーーーーーーっ!!!」
~~~~~~~~~~~~
朝、と言っても4時5時くらい。少し薄明るい感じ。
起きるガブリエル。
ガ「んぁ……?朝……?
俺……何してたんだっけ……」
ナニです。
疲れているからかまだ寝ている樹。
樹「スー……スー……」
思い出して少し赤くなる。
ガ「樹先輩……?
……あ、そっか……俺、先輩と……
……体力無くなって寝ちゃったんだ……///」
目を覚ます樹。
樹「んん……」
ガ「あ、樹先輩」
樹「……ガブリエルか……
おはよう……ちゅっ」
ガ「んん……」
寝起きでキッスをするキス魔樹。
ガ「んは……おはようっす、樹先輩!」
ガブリエルに微笑みかけ、今日の自分の予定を思い出す。
樹「ふふふ……今は……まだ朝なのか。
えーっと、今日の予定は……あ、そうか。
今日は何もないのか……
ふむ、図書館に……あ、ガブリエル」
ガ「はい?」
樹「今日の予定は?」
ガ「俺っすか?
今日は大学もサークルもないですし、予定は未定っすよ。
それが何か?」
樹「そうか、それは良かった。
俺も予定は未定でな。
どうだ?今日一日何かしたり、何処かへ行ったりしないか?
……あ、昨晩みたいなのは無しで頼む……体力が……」
少し沈黙する。
考える様な素振りをし、パァっと笑顔になる。
ガ「じゃあじゃあ!俺と散歩いきましょうよ!!
・・・なんなら首輪とリード、つけてもいいっすよ(笑)」
少し考えるガブリエル。
樹「よし、じゃあ、そうしようか。だが、首輪もリードも無しだ。
俺たちは主従の関係じゃない。
俺たちの関係は、恋人同士、だからな」
そのカッコイイ言葉に息を呑むガブリエル。
ガ「……はいっす!」
~~~~~~~~~~~~
人の少ない、少しだけ冷たい様で暖かい朝の街。
樹「……この時間帯は寝ているから、なんだか新鮮だな」
ガ「そうっすね!人も少ないですし!なんかちょっとテンションがあがっちゃいます!」
ガブリエルに同意し、とある事を思い出す。
樹「……そうだな。
…………そういえばガブリエル」
ガ「なんすか?」
樹「お前が、その、俺に思いを伝えてくれた時に言っていた
“離れ離れに”というのはどういうことなんだ?
……もしや、ガブリエル、お前何処かへ行ってしまうのか?」
沈黙するガブリエル。
樹「……ガブリエル?」
そして口を開く。寂しそうに顔を歪めている。
ガ「俺は、何処にも行かないっすよ……
居なくなっちゃうのは、樹先輩……貴方ですよ……」
意味がわからない樹。
樹「え?俺が?」
ガ「先輩……ドイツに留学しちゃうんっすよね……
最低でも一年。可能であれば二年、更にもっとかもしれない……
そんな長い時間離れ離れになっちゃったら、樹先輩は俺の事を……
忘れちゃうかもしれない……そんなの、嫌だったんっす……」
樹「……」
ガ「でも、もう……俺大丈夫っすよ……!
先輩と離れ離れになって、先輩が俺の事を忘れたとしても……!
だから、先輩……―」
かなり冷静な樹声で言葉を遮られる。
樹「ガブリエル」
シリアスガブリエル
ガ「……はい」
少し呆れたように言う。
樹「一体何年後の話をしているんだ?」
キョトンガブリエル
ガ「……え?」
樹「確かに、留学はするつもりだが、道のりはまだまだ遠いぞ?」
ガ「……えぇ?」
樹「まだまだお金だって貯まってないし、言葉は勿論、
その他もろもろもまだまだ勉強不足だし、
今のペースだと、早くて二年後だろうな。」
ガ「……えぇ??」
赤くなってもじもじしながら言う。二行目の“絶対に~”は微笑みながら、
樹「……それに、だ。前までの俺ならまだしも、今の俺は……お前の事は絶対に忘れない。
……それは“絶対に、絶対の絶対だ”」
樹が頑張ってそれとなくジョーク、というか樹の真似(序盤の不良に絡まれた時のやつ)をするが、それとなくすぎて全然ガブリエルに伝わらない。
樹のジョークは真スルーで樹の言葉で嬉しくなるガブリエル。だが、やはり……
ガ「せっ……先輩……!
で、でも……やっぱり、留学しちゃうんすね……
その間……俺、寂しくて死んじゃうかもです……」
樹「……電話なりメールなりしてくれれば良いだろう……
少し粋に、文通とかでも良いし」
あ、その手があったか、と間の抜けた声が漏れる。
ガ「あ……」
その反応に呆れる樹。そして、もう一つ案を提示する。
樹「全く……
それに、そんなに離れたくないなら、お前もお金貯めて、勉強して、俺と一緒に来い。
悪いが、俺は留学を諦める気はないからな?」
その言葉に、ガブリエルの向日葵の様な笑顔が咲く。
ガ「……はいっす!樹先輩大好きです!!
俺!先輩と一緒に留学します!ずっと一緒ですよ!
それは絶対に、絶対の絶対っす!
よぉ~し!頑張るぞぉー!」
笑い合いながら散歩を再開する。
END