[台本] LAYEREDSKYーレイヤードスカイー
登場人物
○紅井 英雄(あかい ひでお)
18歳、男性
地底日本最下層域で生きてきた青年。
敵には容赦なく、味方には優しい一面を見せる。
最下層域最強の一人で、ともみとはライバルで、エーユーと呼ばれている。
○蒼鬼 ともみ(あおき ともみ)
18歳、女性
地底日本最下層域で生きてきた女性。
粗野で乱暴、猪突猛進な性格な為に英雄に煽られ、佳月にブレーキをかけられる。
最下層域最強の一人で、英雄とはライバルで、アオオニと呼ばれている。
○宇梶 佳月(うかじ かづき)
18歳、元女性
地底日本最下層域で生まれ、身長が高くガタイの良い女性だったが、
シエルの死を経て修羅に落ち、更に身体を鍛え上げた。
英雄、ともみ以上の強さを持っているが、本来は静かで優しい性格。
○明智 理保(あけち りほ)
17歳、女性
かつて地底日本最下層で生きていたが、現在は地底日本一階層域に住んでいる。
現在は理知的で冷静そうだが昔はともみを打ちのめす程荒くれ者だった。
ともみとは姉妹だったが、正照に引き取られてから絶縁状態。
○シエル・ヴィゼル
故16歳、女性
三ヶ月前英雄達の前に現れた少女。
生まれた頃から地底に住んでいる英雄達に“空”の素晴らしさを語る。
地上に上がろうとして殺害される。
きらきら星が好きでよくハミングしていた。その正体は……
※きらきら星を歌います。
○明智 正照(あけち ただてる)
56歳、男性
地底日本と地上日本の境いを守護する地底境界防衛隊の局長。
元々地底日本最下層域出身で性格は残忍。
三ヶ月前にシエルを殺害した。ともみと理保の実父。
○試作機:CL(しさくき:シーエル)
年齢―、性別―
惑星自浄機構の終了を惑星の生命に知らせる為の
星の報告端末“Aコード:Crime Liberty(クライムリバティ)”の試作機。
地底境界防衛隊は試作機:CLを戦闘特化にする事で更なる監視社会の実現を目論む。
基本的に機械的に喋るが、相手を可逆する為だけに人の様な振る舞いをする。
○防衛隊(男)
各階層の境いを守護する一般兵隊。
明智 正照が兼任。
○防衛隊(女)
各階層の境いを守護する一般兵隊。
明智 理保が兼任。
紅井 英雄 ♂:
蒼鬼 ともみ ♀:
宇梶 佳月 不問:
明智 理保/防衛隊(女) ♀:
シエル・ヴィゼル/試作機:CL ♀:
明智 正照/防衛隊(男)♂:
(敬称略)
↓これより下が台本本編
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明転、すると眼前にはシエルの姿が見える。
~誰かの墓地前~
☆シエル:「♪ふ~ふ~ふ~ふ~ふ~ふ~ふ……(きらきら星をハミングしてる。)
……あ、ボンジュール!こんにちは!
わたしはシエル。シエル・ヴィゼル。
唐突なのだけど、あなた、“地底日本”って分かるかしら?
…………。
分からない?そう、じゃあ教えなくちゃね!」
(シエル、踊る様に手を広げる。)
☆シエル:「ここが!地底世界だよ!
多分、あなたの時代よりずっと遠い遠い未来。
色々あって、地球の自浄作用?っていうのが働いて、人類は地底に逃げ込んだの。
大変よね。大変だわ。
さて、地底に逃げ込んだ人類は地上と同じ様な生活を始めて、数百年が経ったわ。
けれど、文明レベルというか、文化レベルは今と同じかな。」
☆シエル:「同じっていうのは本当に同じなの。
同じ様に仕事して、
同じ様に学校に通って、
同じ様に生活してるの!」
(シエル、色々なジェスチャーをする。)
☆シエル:「そしてここは日本。地底世界の日本。
日本の地底世界は九階層からなる国で、
今わたしが居る所は最下層域。一番空から遠い所。
……さて、お話はここまでで良いかな。そろそろ誰かが来るみたい。」
(英雄、ともみが現れる。)
英雄:「…………。」
ともみ:「…………。」
☆シエル:「あ、ヒデオとトモミちゃんだ。
また傷だらけになって。
これが“やんきーのさが”ってのなのかな。」
ともみ:「よォ、エーユー。」
英雄:「おう、アオオニ。
なんだ、お前も来たのか。」
ともみ:「ああ、ちゃんとシエルに挨拶しねぇとだからな。」
英雄:「そうか。
…………シエル、来るのが遅くなった。
やっと、お前との約束を果たす時が来た。」
ともみ:「シエルが教えてくれた本当の空。
これから見に行くぜ。
だからよ。アタシ達の事を見守っててくれよ。」
☆シエル:「……うん。わたしは皆を見てるよ。」
英雄:「……。
さ、行くぞ、アオオニ。」
ともみ:「おう、エーユー。」
英雄:、ともみ:「「これは弔い合戦だッ!!!」」
☆シエル:「……これは、空を見に行く物語。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
☆シエル:「今から三ヶ月前。」
~地底日本第一階層一等地、地底監視室。~
◆正照:「ん?何を見ているのだ?理保(りほ)。」
♠理保:「…………いえ、少し。」
◆正照:「ほう、最下層で喧嘩か。」
♠理保:「……はい。
止めに行きますか。」
◆正照:「いや、無駄だろう。
彼処は屑畜生共の溜まり場だ。
一々そんな事をしている暇は無い。」
♠理保:「分かりました。では、映像を切り替えます。」
◆正照:「いや、せっかくだ。観戦させてもらおう。
私は畜生の醜い争いは嫌いではないからな。」
♠理保:「相変わらず、悪趣味ですね。お父様。」
◆正照:「クックック……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~地底日本第九階層の何処か開けた広場~
(多くのギャラリーが観戦してる中心で英雄とともみが喧嘩している。)
ともみ:「ってァッ!!この程度かよォ!!エーユーッ!!!
オラァッ!!」
(ともみ、鉄バットで英雄の頭をカチ割ろうと殴る。)
英雄:「ぐォオッ!!イィ……ッテェッハッハッハッハッ!!!
良いスイングじゃねぇかよォ!!アオオニィ!!!!
この程度ぉ?冗談ッ!!こっからが本番だ!バァカ!!!」
ともみ:「な……ッ!?」
(英雄、ともみの鉄バットを左手で掴み、右手でともみの首掴む。)
ともみ:「ぐげぇッ!!がッ……!あ゛ぁ゛……!!」
英雄:「へッ!死ねやアオオニィ!!!!」
(英雄、ともみを掴み上げて地面に叩きつける。
ともみ、背中から激突する。)
ともみ:「ェか゛は……ッ!!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♠理保:「姉さん……」
◆正照:「ハッハッハ!!
あんなに勢いよく地面に叩きつけられてはもう無理だろう。
ハッハッハッハッハッ!!あれは死んだな!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
英雄:「……ハッ、やっと死んだかよ。」
ともみ:「………………フンッ!!」
(ともみ、英雄に頭突きをかます。)
英雄:「ぐあッ!頭突き出来る力が残ってたかッ!!」
ともみ:「オラァ!!!」
(ともみ、英雄が仰け反った隙に顔面に蹴りを入れる。)
英雄:「ぐェえァッ!!」
(二人の距離が離れる。)
ともみ:「っぺ!(口の中の血を吐き捨てる。)
どうだよ、アタシの足はよォ。
結構評判良いんだぜ?“良い足だ”ってな。」
英雄:「……ハッ!
確かに、良い蹴りだ……。
だがまだだッ!!」
ともみ:「そうこなくちゃなァ!!!」
佳月:「ああ……もう……二人共意地っ張りなんだから……
……ッ!!?」
(シエルが上から落ちてくる。)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆正照:「ん?なんだ?」
♠理保:「誰かが落ちてきます。ゆっくりと。」
◆正照:「……拡大しろ。」
♠理保:「はい。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
佳月:「ッ!!女の子ッ!?
しかも二人の所に落ちて……!
英雄(ひでお)!ともみ!やめてッ!!」
英雄:「おおおおおおおおおおおおおおッ!!!」
ともみ:「あああああああああああああああッ!!!」
佳月:「聞こえてないッ!!……クッ!!」
(佳月、二人の元に走る。)
英雄:「死ねやアオオニィ!!!」
ともみ:「お前が死ねェエェユゥウウッ!!!!」
英雄:、ともみ:「「最強はッ!!オレ(わたし)だァアアアアアアアアアア!!!!!」」
佳月:「もうやめてってばァ!!!!ヌンッ!!!!!!!!!」
(佳月、二人にラリアットをし、鎮圧する。
辺りに歓声が鳴り響く。)
英雄:「ぐぁきッ!!」
ともみ:「へべばァ!!」
佳月:「ふう…………じゃなくて!女の子ッ!!……ってゆっくり、落ちて……というか、降りてきている……?」
(英雄、ともみ、一瞬気絶するが直ぐに起きる。)
英雄:「いっつつつ……か、佳月(かづき)ィ!!オレとアオオニの真剣勝負にィ!って……あ……?」
ともみ:「……女ァ……?」
(佳月、シエルを受け止める。)
佳月:「うわっとっとっと……か、軽い……。」
ともみ:「なんだこいつ?」
英雄:「さあ。お前知ってっか?」
佳月:「えっ、私は、何も……」
英雄:「ふーん。」
ともみ:「てかコイツ生きてんのかァ?」
☆シエル:「…………。」
ともみ:「…………。」
☆シエル:「…………わっ!」
ともみ:「どわわわわあァッ!!!」
英雄:、佳月:「「ッ!?」」
☆シエル:「わぁ、びっくりしたぁ。」
ともみ:「びっくりしたのはこっちだバカッ!!」
英雄:「とりあえず、生きてたな。」
佳月:「う、うん。」
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◆正照:「あれは……まさか……。」
♠理保:「…………。
どうかなさいましたか、お父様。」
◆正照:「……いや、何でもない。
おいリホ、行ってこい。」
♠理保:「どちらへ?」
◆正照:「あの屑溜り場にだ。」
♠理保:「……はい。」
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英雄:「で、アンタの名前はシエルっていうのか。」
☆シエル:「そ、わたしはシエル。シエル・ヴィゼルだよ。
アンシャンテ!ヒデオ!トモミ!カヅキ!」
ともみ:「あ……?あんしゃんてぇ?誰だぁ?」
佳月:「ち、違うよ!よろしく、とか、会えてうれしい、とかって意味だよ。」
ともみ:「あぁ~ガイコクゴってやつかぁ~
さっすがカヅキィ。アタシたちの中で一番頭イイー。」
英雄:「お前が特別馬鹿なんだよバァカ。」
ともみ:「なんだとてめェ!!」
英雄:「馬鹿を馬鹿つって何がわりぃんだよバカ!!」
ともみ:「バカって言った方がバカなんだぞ!
お前四回バカって言ったからバカバカバカバカだな!バァーカッ!!」
英雄:「お前倍言ってんじゃねェか!バカバカバカバカバカバカバカバカだな!!!」
ともみ:「あ゛あ゛ン゛ッ゛!゛!゛?゛」
英雄:「お゛ォ゛ン゛ッ゛!゛!゛?゛」
英雄:、ともみ:「「バカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカバカ(ずっと言う)」」
佳月:「ハァー……馬鹿二人は置いといて――」
英雄:、ともみ:「「バカって言うなッ!!!!」」
佳月:「貴女は、シエルは何処から来たの?」
☆シエル:「………。」
佳月:「…………?どうしたの?」
☆シエル:「カヅキって女の子?男の子?」
佳月:「え、あ、えーっと……あ、あははは……女の子には、見えないよね……
声も、こんなんだし、身体だって……」
☆シエル:「違うの。女の子だと思ってたのに、男の子みたいな格好をしてるから……
……あ、その、嫌な事を聞いてしまったのならごめんなさい……。
貴女を傷つけるつもりはなかったのよ……?」
佳月:「あ……ううん、大丈夫だよ。
よく言われるから。」
☆シエル:「そう?でもカヅキ辛そうな顔してたから、謝らせて。ごめんなさい。
えっと、何処から来たか、だったっけ?」
佳月:「うん。」
☆シエル:「それが、分からないの。
気が付いたらカヅキの腕の中だったの。」
ともみ:「きおくそーしつってやつか?」
英雄:「けど、名前は覚えてるみたいだぜ?」
佳月:「部分的に記憶が欠けたり、逆に一つの事だけしか覚えてなかったりっていう事もありうるから、一概には言えないかな。」
ともみ:「なるほどなぁ。
…………なあ、シエル。」
☆シエル:「?
何かしら?トモミ。」
ともみ:「これから、どうしたい?」
☆シエル:「んぇ?」
ともみ:「これから、どうしたいか、って聞いてんだよ。
腹が減った~!とか、眠てぇ~!とか、エーユーの事殴りてぇ~!とか!」
英雄:「顔面へこませて前見えなくしてやろうか?」
☆シエル:「……そうね……。」
(シエル、上を見る。)
☆シエル:「あら?」
佳月:「どうしたの?」
☆シエル:「お空が……無いわ……。
ここ、お外なのよね?」
英雄:「ああ、ここは外だけど、ってか、オソラってなんだ?」
☆シエル:「え?お空を知らないの?」
英雄:「知らね。ともみは?」
ともみ:「お前が知らなかったらアタシも知らねぇよ。カヅキは?」
佳月:「私も知らない。」
☆シエル:「えぇー!
なんてこと!
……じゃあ、あの上のきらきらしてるのはなんて呼んでるの?」
佳月:「……普通に天井って呼んでるよ。」
☆シエル:「てんじょう。」
英雄:「ここは最下層域、第九階層だからな。
あの光ってんのは第八階層の灯だ。」
☆シエル:「だいきゅーかいそー、だいはちかいそー」
ともみ:「んなことはどーでも良いよ。
で?そのオソラってのは何なんだ?
なんか知んねぇーけどアタシ、なんかワクワクする!
教えてくれよ!シエル!そのオソラってやつを!」
佳月:「そうだね。私も気になる。」
英雄:「オレも気になるな。
上にあるもんなら、とりあえず上の階層を目指そうぜ。
その間、教えてくれないか。オソラの事。」
☆シエル:「……じゃあ、教えてあげるわ。お空、空の事を。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~現在~
(英雄、鉄パイプを振りかぶる。)
英雄:「ウラァッ!!!」
◆防衛隊(男):「ぐああ!!」
♠防衛隊(女):「第八階層に暴徒が!至急えんぐnがァあッ!!」
(ともみ、増援を要請していた防衛隊の頭を鉄バットで叩き潰す。)
ともみ:「悲鳴以外で鳴くな。」
英雄:「ここはこんなモンか。
さァ、次行くぞ、アオオニ。」
ともみ:「おう。」
◆防衛隊(男):「ぐ……い、行かせるか……暴徒め……!」
英雄:「ッ!!ともみ!拳銃だッ!避けろッ!!」
ともみ:「ッ!?」
◆防衛隊(男):「死ねェ!!」
佳月:「ウダラァ!!!」
◆防衛隊(男):「ぐェアッ!!」
(佳月、ともみを撃とうとした男を蹴り飛ばす。)
佳月:「油断大敵だ。ヒデオ、ともみ。」
英雄:「カヅキ……なんでお前……」
佳月:「決まってんだろ。俺が此処にいるのは、シエルとの約束を守る為だ。」
ともみ:「そりゃそうだよな。
じゃ、改めて、行くか。」
英雄:「ああ、九階と八階のハッチが閉まろうとしてんな。
急ぐぞ。」
佳月:「ハッチを抜けたら多分、大勢の敵が俺たちを待ち伏せしているだろうな。
気を引き締めて行くぞ。」
英雄:、ともみ:「「おう!!」」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~三ヶ月前、地底日本~
☆シエル:「ここが第八階層……第九階層とは全然違うのね。」
ともみ:「ああ、アタシ達の住んでる第九は正にスラムって感じだが、
第八はまぁ、まだマシだな。
第七より上には行った事ねェけど、上に行けば上に行く程良い暮らししてると思うぜ。」
☆シエル:「へぇ、そうなのね。」
ともみ:「まぁ、そんな事より、空!空だよ!」
英雄:「そうだな。おもしれぇな、空って。
青い、かぁー。」
☆シエル:「青いだけじゃないの!赤くなったり、黒くなって空がキラキラしたりするの!」
ともみ:「どういうしくみなんだ?おもしれぇなァ!」
佳月:「黒くなるのに、キラキラするの?」
☆シエル:「そう!キラキラするの!そのキラキラしているのが“星”って言うの!
空に浮かぶ沢山の光なの!」
英雄:「その星ってのは暗いときにしか出ないのか?」
☆シエル:「いいえ!青い時も、赤い時も見えないだけで、本当はそこにあるの!」
佳月:「へぇ……なんだか、凄く良いね。
なんとなくだけど、綺麗な気がする。」
☆シエル:「ええ!とっても綺麗よ!
あ、そういえば歌!歌があった気がするわ!」
佳月:「歌……。」
☆シエル:「…………?
もしかして、三人は歌も知らないの?」
英雄:「オレはあんま聞いた事無いけど、なあ、アオオニ。」
☆シエル:「?」
ともみ:「……ああ、アタシはよく聞いてたな。」
☆シエル:「そうなの!それは良い事だわ!」
ともみ:「ああ、凄く良いものだったよ。歌……音楽ってヤツ。
……アタシ、妹が居たんだよ。」
☆シエル:「妹?」
ともみ:「ああ、昔は一緒に居たんだけどな、今は居ない。
ソイツがよく歌ったりバイオリンってヤツを弾いたりしてたんだ。
まぁ、それはいいや。で、シエル。どんな歌なんだ?」
(シエル、囁くように歌う。)
☆シエル:「……えっとね。
♪きらきらひかる……
♪お空の星よ……」
英雄:「……。」
☆シエル:「♪まばたきしては、皆を見てる……」
ともみ:「……。」
☆シエル:「♪きらきらひかる……」
佳月:「……。」
☆シエル:「♪お空の星よ……
……。
……って感じ!」
佳月:「……なんだか、とても優しい……。」
英雄:「子守唄、ってやつか。」
ともみ:「…………良いな。」
☆シエル:「ふふ♪ありがとう!
なんだか、こうやってわたしのお歌を聞いてもらうの、とても好きだった気がする。」
ともみ:「そっか。
また聞かせてくれよ。」
☆シエル:「え、でも、わたし、この歌しか知らない……覚えてないわ?」
ともみ:「良いんだよ、それで。
な、聞かせてくれな、シエル。」
☆シエル:「……ええ!また聞かせるわ!だから聞いてちょうだいね!」
ともみ:「おう。」
佳月:「フフ、二人はもう仲良しだね。」
☆シエル:「ええ!わたしとトモミは仲良しだわ!それに、カヅキもヒデオも!」
佳月:「……そう、嬉しい。」
英雄:「じゃ、オレらはダチだ。
ダチの願いは是が非でも叶えなきゃだな!
さ、さっさと第七階層行くぞ!」
ともみ:、シエル:、佳月:「「「おー!」」」
◇
◆防衛隊(男):「許可証が無い者は通せない。」
ともみ:「えぇ~~!なんでだよォ~~~!!」
◆防衛隊(男):「なんででもだ。」
佳月:「一昨日までは、その、許可証って制度は無かった筈では?」
◆防衛隊(男):「本日からそういう風になったのだ。」
英雄:「あ?そんな話、聞いてねェぞ?」
◆防衛隊(男):「急遽決まったのだ。」
ともみ:「ああ??ンだよそれ!!」
☆シエル:「ど、どうしたの……?」
佳月:「それが、許可証が無いと上の階に上がれないみたいなの。」
英雄:「じゃーそのキョカショーってのは何処に行ったら貰えんだよ。」
◆防衛隊(男):「私の知った事では無い。」
英雄:「あ゛あ゛??なァんでお前らが知らねぇんだよ!
っちゃっと仕事しろよ高給取りがよォ!!」
佳月:「ちょっと!ヒデオ!!」
ともみ:「あ??コイツ、コーキュートリなのか??気に入らねェなァ!」
佳月:「ともみまで!落ち着いて!」
ともみ:「…………なァ、エーユー。
お前、アタシのおんなじ事考えてんだろ。」
英雄:「あーオレもそー言おうとしてたぜ、アオオニ。」
(英雄、ともみ、腕を鳴らす。)
◆防衛隊(男):「なッ、ぶ、武力を行使するのであればこちらも防衛として反撃するぞ!」
佳月:「っちょ!二人共落ち着いて!」
☆シエル:「お祭りかしら?面白そうね!」
佳月:「シエルまで!」
英雄:「へっへっへっへ……」
◆防衛隊(男):「ひ、ひィ!!」
ともみ:「けっけっけっけ……」
♠理保:「そこまでにしておきなさい。ともみ。」
ともみ:「あ……?」
(理保が英雄たちの前に現れる。)
ともみ:「……リホ……?」
♠理保:「久しぶり、ともみ。」
☆シエル:「りほ?」
佳月:「ともみの妹だよ。」
英雄:「ああ、数年前にともみの親父と一緒に第一階層に行ったな。
あれから全く会わなかったけど、割と分かるもんだな。」
☆シエル:「まあ!さっき言っていた子ね!」
ともみ:「……。」
☆シエル:「……?どうしたの?」
ともみ:「なんでお前が此処にいんだよ。
なんだ?第一階層から追い出されたか?」
♠理保:「いいえ、ただこの階層に用があって来てただけよ。
これから帰るところ。」
ともみ:「そうかよ。」
☆シエル:「ねぇねぇ。」
♠理保:「?」
☆シエル:「わたしの名前はシエル。シエル・ヴィゼルよ。
貴女はリホなの?」
♠理保:「ええ、私はリホ。そこにいるともみの元・妹よ。」
☆シエル:「もと……?」
♠理保:「私とともみは、今は家族じゃないの。
それで?シエルさん?私に何か用かしら?」
☆シエル:「あ、その、これから上の階層に行くのでしょう?
わたしたちも連れってってはもらえないかしら?
なんでもキョカショーというのが必要みたいなのだけど、わたしたち持ってないの。」
♠理保:「…………。
そう。
けど、残念ながら私の許可証は一人用だから、申し訳ないけど無理な相談ね。」
☆シエル:「そう……それは仕方ないわ……」
ともみ:「シエル、こんなヤツの力借りる必要なんかないぜ。
キョカショーはアタシたちがなんとかするからよ!
な!エーユー!カヅキ!」
英雄:「なんとかっつてもなぁー……」
佳月:「許可証を手に入れる術が分からないのだからなんとかするもなにもないよ。」
ともみ:「そんなのそこら辺の人から貰えば良いんだよー!
例えば、そこの根暗メガネからとかなァー!」
♠理保:「あら、それは私の事?
貰うってもしかして実力行使って事かしら。」
ともみ:「あー?ちょーっとお願いするだけだぜ。
ま、お前からはギッタンギッタンのボッコンボッコンにして奪ってもいいけどな。」
♠理保:「ふ~~ん、出来るのぉ?
貴女、私に喧嘩で勝てた事無いじゃない。」
ともみ:「ハッ……何年前の話をしてんだダボが。」
佳月:「もー……ともみはいっつもこうなんだから……」
英雄:「実力行使か……悪くないかもな……」
佳月:「悪いに決まってるでしょ……」
☆シエル:「ねぇねぇ、二人共、喧嘩はしないで……?
リホ、無理を言ってしまってごめんなさい。
トモミ、わたしの為にそこまでしなくて良いわ……?でも、ありがとう。」
ともみ:「お……おう……。」
♠理保:「……フフ、興が乗ったわ。
シエル、貴女の許可証を発行してあげる。」
☆シエル:「え!本当!」
♠理保:「ええ、その方がそこの馬鹿が考えた蛮行によって民間人への被害を事前に食い止められるし、
何よりも……。」
(理保、ともみを見る。)
ともみ:「ん?あァ?」
♠理保:「……ッフ、ともみよりも私の方が優秀って分かるでしょ?」
☆シエル:「へ?」
英雄:「あ。」
佳月:「げ……」
ともみ:「あ゛ァ゛ア゛ッ゛!゛?゛!゛?゛!゛!゛?゛」
♠理保:「ッフ。」
ともみ:「そんなにボコされてェならボコしてやるよォ!!!」
♠理保:「全く、これじゃ話が堂々巡りじゃない。
けど、アンタを熨(の)してやるくらいならすぐに終わるわ。」
ともみ:「上ッ等だこらァ!!」
☆シエル:「もー!二人とも!落ち着いて!
トモミ!あんまりムカムカしたらダメよ!
せっかく可愛いんだから!」
ともみ:「え…………?あ……え……あー………………お、おう……」
♠理保:「ちょろっ」
ともみ:「チィ!!」
☆シエル:「リホも!リホも笑ってた方が良いわ!
だって、こんなに顔が整っているのだもの、絶対笑ってた方が良い!」
♠理保:「え…………。…………。
と、とりあえず、そういう事だから……。
…………。
今、申請しといたわ。明日には発行されると思うから。」
☆シエル:「はぁ~!ありがとう!リホ!」
♠理保:「……う、うん……。
だから、今日のところは帰りなさい。」
英雄:「そっか、じゃあ今日は帰るか。」
佳月:「リホさんありがとう。」
♠理保:「いえいえ、カヅキさんは相変わらず丁寧で好感が持てるわ。」
ともみ:「……ッケ、シエルに免じてそーしてやるよ。」
♠理保:「ともみと違ってねぇ~。」
ともみ:「あsfjpgさいj;おgふぁs;おじゃg@おあsfごぱsfg!!!!!」(言葉にならない声)
佳月:「はいはい帰るよーともみー」(ともみを無視してともみを担ぎ上げる。)
英雄:「あ~あ、腹が減った~
八階層で飯食ってから帰っかな~」
♠理保:「…………。」
(理保、皆が帰っていく後ろ姿を眺める。)
☆シエル:「リホ……?どうしたの?」
(シエル、理保の手を掴む。)
♠理保:「え?」
☆シエル:「?」
♠理保:「なんで私の手を引いていこうとしてるの?」
☆シエル:「え?だってともみの妹なんでしょう?
一緒に帰りましょう!」
♠理保:「え、いや……私は姉さんとは……」
☆シエル:「(じっと見つめる。)」
♠理保:「ぐぐ……!…………し、仕方ないわね……。」
☆シエル:「エヘヘ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆正照:「…………リホのヤツ帰ってこないな。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~第九階層、ともみの家~
☆シエル:「と、いう事で!
わたしはトモミたちの家でお泊りする事になったわ!」
ともみ:「おーおーゆっくりしてけぇー
……で……なんでお前がいんだよ……?」
♠理保:「仕方ないでしょう。
シエルが離してくれなかったんだもの。」
ともみ:「あァア~~~~???」
♠理保:「何、やるっての?」
☆シエル:「もう!喧嘩はメ!だよ!」
ともみ:「…………。」
♠理保:「…………。」
ともみ:「フン!」
♠理保:「フン。」
☆シエル:「あわわわわ……あわわわわわわ……」
♠理保:「………………ねぇ、母さんは、まだ仕事なの。」
ともみ:「死んだよ。」
♠理保:「え……。」
ともみ:「クソ親父とアンタがアタシたちを見捨ててすぐに死んだ。」
♠理保:「…………そう。」
ともみ:「…………ワリィ、気にすんな。母さんは勝手に死んだだけだ。」
♠理保:「…………。」
ともみ:「…………もう、さっさと寝るぞ。」
♠理保:「……ええ。」
☆シエル:「……♪ふ~ふ~ふ~ふ~ふ~ふ~ふ~‥…(きらきら星をハミングする。)」
ともみ:「え。」
♠理保:「……。」
☆シエル:「……えへへ、二人共悲しそうだったから……少しでも、心が安らかになればと思って……」
♠理保:「……。」
ともみ:「……ありがとな、シエル。
お前は本当に優しいな。誰かとち・が・っ・て・な・!・!」
♠理保:「アンタ喧嘩売らないと会話できないわけ?」
☆シエル:「もう!ともみったら!」
ともみ:「……っぷ」
☆シエル:「フフ……」
ともみ:「へへへへへへへへ!!」
☆シエル:「アハハハハハハハ!!」
♠理保:「…………ふふっ」
☆シエル:「あ!リホ笑った!」
♠理保:「んえっ」
☆シエル:「うんうん!やっぱりリホは笑っていた方が良いよ!」
♠理保:「え……あ……うん……。」
ともみ:「…………へへっ、なんかあれだな。シエルって天使様みてぇだな。」
♠理保:「ッ!」
☆シエル:「てんしさま……?」
ともみ:「ああ、昔母さんがよく寝る前に聞かせてくれたんだ。
“天使様は皆を癒して笑顔にしてくれる人”ってな。
な、リホ。」
♠理保:「え、ええ、そうね。」
☆シエル:「天使……様……」
♠理保:「……。
さ、さっさと寝ましょ。
明日は早めに許可証を受け取りに行きましょ。」
ともみ:「それもそうだな。
じゃ、おやすみ。」
♠理保:「おやすみなさい。」
☆シエル:「ボンヌニュイ!おやすみなさい!
……皆の明日が、今日よりも素敵であることを、わたしは祈っているわ……。」
ともみ:「ふ……。」
♠理保:「…………。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~現在、第七階層域~
◆防衛隊(男):「門を閉めろ!!早く!早くッ!!がァッ!!」
(佳月、防衛隊をアイアンクローして持ち上げる。)
佳月:「今の、訂正しろ。
門の封鎖はしなくていい。」
◆防衛隊(男):「がッッッあッ……あああああッ!!」
佳月:「早くッ!!!!!」
(佳月、力を込める。)
◆防衛隊(男):「あッあああああああッ!!
てッ!訂正ッ!!門は閉めなくていい!!門は閉めなくていいいいいいいいいい!!!」
佳月:「ありがとう。フン!!」
◆防衛隊(男):「がア……ッ」
(佳月、更に力を込め、気絶させる。)
佳月:「…………。
二人共、急ごう。」
(英雄、ともみ、満身創痍。)
英雄:「ハァハァ……ああ……。
第八階層、第七階層と警備は固かったが、なんとかなったな。」
佳月:「そうだね。
もっと時間が掛かるし、順調には行かないと思っていたけど、どういうことなんだ。」
ともみ:「…………アイツの仕業だろうな。」
佳月:「……アイツ……?
もしかしてリホが、俺たちを手助けしてくれているってこと……?」
ともみ:「……手助け……ね……
そいつァ……どうだろうな……」
英雄:「…………。
だとしても、行くしかねェ。
オレたちは止まるわけには行かねぇ。
だから、手助けだろうが罠だろうが突き進むぞ。
駆け抜けるぞ!第六階層域を!!」
ともみ:、佳月:「「おう!」」
ともみ:「(小声で)待ってろよ……リホ……ッ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~第一階層域、地底境界防衛隊監視室~
♠理保:「(小声で)…………姉さん。」
◆正照:「どういうつもりだ?リホ。
何故、屑畜生共が這い上がってくる手伝いをしている?」
♠理保:「…………。
……良い機会だからです。」
◆正照:「ほう?」
♠理保:「三ヶ月前に入手したAコード:CLの情報を元に戦闘、監視に特化させた
擬似星体端末(ぎじせいたいたんまつ)、試作機:CLの機動試験にぴったりな人材だと、私は考えます。」
☆CL:「……。」
◆正照:「……何故、あの三人なのだ?」
♠理保:「お父様の趣向に合わせて、です。
彼らは希望を胸に上を目指しております。
その希望とは、約束です。
その約束が、その希望が、この試作機:CLを前にして崩れる様……
……お父様は、そういうのがお好きでしょう?」
◆正照:「…………クックック……よくできた娘だ……」
♠理保:「それに、壊滅的になった各階層域の防衛隊の無能さを露出させる事で、
スムーズに試作機:CLに置き換える事が可能になり、
お父様が……いえ、地底境界防衛隊が望む更なる監視社会の実現が確かなモノになるでしょう。」
◆正照:「ほう!そこまで考えていたとは!いやはや末恐ろしい。
私は常々外道だの鬼畜だのと呼ばれてきたが、さてその言葉が似合うのは本当に私なのだろうか?
ん?どう思う?リホ?」
♠理保:「……さあ、私にはなんとも。」
◆正照:「……フッ、そうか。
まぁ、良い。
クックックック……さあ、早く上がってこい。屑畜生共……。」
♠理保:「(小声で)…………ごめんなさい……。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~三ヶ月前、第六階層域~
◆防衛隊(男):「はい、確かに。
ようこそ、第六階層域へ。」
☆シエル:「ありがとう♪
わあ、七階層を凄かったけど、ここはもっと凄いわね!」
佳月:「そうだね。
ここまで来ると工業区は無くなって商業区と住居区が主だね。
だから、空気も綺麗……。」
英雄:「てかこれ便利だな!
なあリホ、この許可証があればいつでもどの階層に行っても良いのか?」
♠理保:「期限は設けられてるけど、そうね。
第三階層までであればどこでも行けるわ。
第二階層から上は私が居ないと行けないから、気をつけてね。」
ともみ:「へぇ~……」
♠理保:「……なに?ともみ。私がアンタより役になってて拗ねてるの?」
ともみ:「ああ~~??ちげぇし。」
♠理保:「どうだか。」
ともみ:「きィ!!おぶぉ。」
(英雄、ともみの頬あたりを掴んで制止する。)
英雄:「こらこらもうその辺にしとけ。
たく、久しぶりに会ったってのによ。
ハァ……こんなんで昨日大丈夫だったか?シエル。」
☆シエル:「大丈夫だったわ。少しだいじょうばなかったけど、概ね大丈夫だったわ。
ウーキャンポブレム!」
英雄:「なら良いんだけどよ。」
♠理保:「ところでシエルはどうして上に行きたいのかしら?」
☆シエル:「え?わたし、お空がみたいの!」
♠理保:「オソラ……?」
☆シエル:「そう!お空!
お空、空っていうのは上にあってね!凄く綺麗なの!」
♠理保:「……。」
英雄:「青くて。」
ともみ:「けど赤くもなるし、」
佳月:「黒くもなる。黒くなったら星ってのが沢山空で輝く。
でしょ。」
☆シエル:「そうなの!
あ!あとあと!わたしは朝の、ほんのり明るくなる感じも好きなの!」
♠理保:「え、貴方たちは見たことあるの?」
英雄:「いや、ねェよ。
だから気になった。だからシエルと一緒に見に行こうと思ったんだ。」
♠理保:「……。」
☆シエル:「ありがとう!ヒデオ!」
英雄:「おう。」
♠理保:「……良いわね。」
☆シエル:「ねぇ、リホ。リホも一緒に空を見ましょ?」
♠理保:「んぇ、わ、私も一緒に?」
☆シエル:「そう!リホも一緒に!
わたし、リホの笑ってる顔、もっと見たいわ!
だから一緒に見ましょ!」
♠理保:「…………まぁ、考えておくわ。」
ともみ:「アタシはアンタが来なくても良いと思ってるけどな。」
♠理保:「さ、さあ、もうちゃっちゃと上の階層目指しましょ。」
ともみ:「っておい!無視かよ!」
♠理保:「ここから上は殆ど住宅区で特別見るものもないでしょうし。」
ともみ:「おォオいッ!!」
佳月:「大人になりなよ、貴女の方が年上なんだから。」
ともみ:「ンだよォ!?」
英雄:「そーゆっこったァ。
さっさといこーぜアオオニー」
ともみ:「ぐぬぬぬぬぬ……ちぇ!どいつもこいつもアタシをコケにしやがって……」
◇
~第二階層域~
♠防衛隊(女):「お待ちしておりました。明智 理保(あけち りほ)様。」
英雄:「……?」
♠理保:「ええ、首尾は?」
◆防衛隊(男):「問題なくでございます。」
♠理保:「そうですか。それは良かったです。」
英雄:「なあ、アイツと何話してたんだ?」
♠理保:「いえ、特に何も。
ただ警備状況を確認しただけよ。」
英雄:「……そうか、お前も地底境界防衛隊員だったな。」
♠理保:「そう、そういう事。」
☆シエル:「わあ……ここは第三階層までとは全然雰囲気が違うわね……。」
佳月:「ここからは地底境界防衛隊の本拠区域だからね。
居住区とは全然違って、機能的なんだ。」
☆シエル:「へぇー……」
ともみ:「……アタシはこの感じ苦手だなー。」
英雄:「……?どうしたシエル?なんかボーッとしてねぇか?」
☆シエル:「……え?そうかしら……?
んー……なんだか……何かしら……誰かに呼ばれているような……」
英雄:「……?」
佳月:「……ッ、ねぇ。」
ともみ:「ああ、分かってる。
おい、エーユー。」
英雄:「あ?どした。」
佳月:「私たち、囲まれてる。」
英雄:「は…‥?どういうことだ……?」
ともみ:「さあな。
なあ、どういうことだ?リホ。」
♠理保:「……。」
☆シエル:「…………。」
◆正照:「どういうことも何も無い。見ての通りだ。」
英雄:、ともみ:、佳月:「「「ッ!!」」」
(正照、現れる。)
◆正照:「御機嫌よう。諸君。」
佳月:「地底境界防衛局長……」
英雄:「実質的な地底日本の支配者……明智 正照(あけち ただてる)……」
ともみ:「クソ親父……。
何の用だよ。」
♠理保:「……。」
◆正照:「今日は貴様に用はない屑畜生の餓鬼。
用があるのは……君だ。」
☆シエル:「……?」
(英雄、シエルを庇う様に前へ出る。)
英雄:「局長様よォ。シエルに用ってのはどういう事だ?
オレたちやシエルにはアンタに用はねェからよ。どいてくれや。」
◆正照:「出来ない相談だ。リホ、起動しろ。」
♠理保:「分かりました。」
英雄:、ともみ:、佳月:「「「ッ!!」」」
♠理保:「シエル・ヴィゼル……いいえ。
星体報告端末“エンジェルコード:Crime Liberty(クライムリバティ)”、
起動を要求します。」
佳月:「星体報告端末……ッ?」
ともみ:「エンジェルコード……!」
佳月:「クライムリバティ……!?」
☆シエル:「くらいむ……りばてぃ……
…………。
(機械的に)応答。要求を承認します。
当機は製造番号ζ(ゼータ):0312改変機、
“Aコード:Crime Liberty(クライムリバティ)”です。」
英雄:「シエル……?」
ともみ:「ど、どうしたんだシエル……?
急に何を言ってんだよ……何言ってるか全然意味分かんねェよ……」
佳月:「リホ!シエルに何をしたの!!」
♠理保:「彼女の記憶を……いえ、使命を思い出させてあげたのよ。」
◆正照:「ご苦労!諸君!
シエル・ヴィゼルもとい、クライムリバティを連れてきてくれてありがとう。
感謝するよ。」
英雄:「あァ??意味わかんねェよ!!ちゃんと説明しやがれ!!」
◆正照:「ふむ、良いだろう。
クライムリバティ。貴様の使命はなんだ。答えろ。」
☆シエル:「(機械的に)
はい。当機は、この星、地球から製造された機体であり、
惑星自浄機構が終了した為、その報告と、その後の牽引です。
地上へ戻る事が出来るのです。」
英雄:「地上……?」
◆正照:「そう、地上だ。
私たちも地上の様子は監視していたからな、いつか貴様が現れると思っていたよ。」
☆シエル:「(機械的に)
おや、当機の存在を認知しておりましたか。」
◆正照:「ああ、非常に古い資料だったが、貴様の存在が記されていた。
最初は私も疑ったよ。
神の消失だの、星の自我の目覚めだの、それに伴い貴様らの所有者が神から星になっただの……
妙ちきりんで出来の悪い三文小説かと思ったが……
お前たちの母親の屑畜生が示してくれたよ。これらが真実であるとな。」
ともみ:「何ッ!?母さんが!?」
♠理保:「……。」
◆正照:「ああ、ある日、お前らが生まれるよりずっと前にあの女を地上に放したのだ。気まぐれにな。
すると汚染された地上の瘴気と星の自浄機構で身体が乾燥した粘土の様にボロボロになっていく。
クックック……いやァー……今思い出してもゾクゾクする良い悲鳴だった……!!」
ともみ:「て……てめェ……!」
◆正照:「そしたらどうだ。
女をアレと同じ、“天使様”とやらが助ける為に現れたのだ。
お前らの母親の崩れ去った身体が元に戻り、そのまま地底に戻された。
……いやはや、神秘的だったよ。
地底に帰ってきた女も“天使様に会った”、……。
クッ……w
なwwwどwwwとwww恍www惚wwwとwwwしwwwたwww顔wwwをwwwしwwwてwwwいwwwたwwwよwww」
ともみ:「お前……それでも人間かよッ!!
おい!リホ!あのクソ野郎はアタシらの母さんを――」
♠理保:「知っていたに決まってるじゃない。」
ともみ:「……あ……?」
♠理保:「それで?それがどうしたっていうの?」
ともみ:「……てッッッッッッめェ!!がッ!!!」
(ともみ、理保に殴りかかるが、理保に顎を決められ止まる。)
♠理保:「顎ががら空き。」
ともみ:「あ…………ク……ソ……が…………ッ」
(ともみ、その場に倒れる。)
佳月:「ともみ!!……リホ!貴女!!」
♠理保:「安心して、軽い脳震盪を起こして動けなくなってるだけよ。」
ともみ:「ち……ちく……しょう……ッ!」
☆シエル:「(機械的に)
……?
さあ、地底の人類よ、地底に生きる必要はなくなりました。
長い間、頑張りましたね。貴方たちの故郷、地上へ戻る時です。」
英雄:「……。」
◆正照:「いいや。その必要は無い。」
☆シエル:「…………へ?」
(正照、シエルを撃つ。)
英雄:、佳月:「「シエルッ!!!!」」
☆シエル:「…………え……?当機……わ、わたし……うたれ……た……?」
◆正照:「ああ。君は撃たれた。
君たち天使様を殺す為のとっておき、特注の弾丸だ。
なんでも、君たちはこの弾丸で殺すか、頭を潰さないと死ねないらしいじゃないか。」
☆シエル:「な……なん……で……?ど……し……て……?」
◆正照:「簡単だ。私たちに地上はいらない。
地上なんてだだっ広い世界を私が管理出来るわけ無いじゃないか。
だから、地上なんて必要無い。」
(シエル、倒れる。)
英雄:「シエルッ!!おい!シエル!!しっかりしろッ!!死ぬなッ!!」
☆シエル:「……そ、そん……な……お、そ、ら……は……すご……く……きれい……だよ……?」
◆正照:「知らん。
綺麗なモノがあれば人は腹が膨れるのか?答えは否だ。
必要無い。
だが、貴様は欲しい。
貴様ら星体端末の機能は凄まじいからな。それを戦闘に転用すれば、この地底(せかい)をより管理しやすそうだ。」
英雄:「近づくなッ!!
テメェにシエルは触らせねェ!!!」
◆正照:「ほう。では……リホ、こちらへ来なさい。」
♠理保:「……はい。」
ともみ:「り……ほ……ッ!」
♠理保:「……。」
◆正照:「皆の者ッ!射撃準備ッ!!」
♠防衛隊(女):「射撃準備完了!」
◆防衛隊(男):「いつでもいけますッ!」
英雄:「くそッ!!」
佳月:「どうすればッ!!」
ともみ:「く……そォッ!!」
♠理保:「……さようなら、姉さん。」
◆正照:「耳触りの良い歌を歌ってくれ?屑畜生共!撃てェ!!!!!!」
☆シエル:「しなせ……ない……!」
♠防衛隊(女):「きゃあッ!」
◆防衛隊(男):「ぶッ、武器がッ!!」
♠理保:「ッ!!」
◆正照:「ほう……?
武器を触れずに破壊……念力……というやつか。」
☆シエル:「う……ぐ……あぁ……!」
英雄:「シエル……!無茶をするなッ!」
◆正照:「だが、もうソレに戦う力は無いか。
時期に死ぬだろう。
クックック……どうだァ?
お空を見に行こう等と考えた末路はァ??」
♠理保:「第二陣準備出来ました。」
◆正照:「そうか。
では、今度こそさようならだ。」
☆シエル:「ハァ……ハァ……ハァ……
て、転送式……演算、完了……」
佳月:「シエル!無理しないで!!」
☆シエル:「……あ……はは……みんな、には……いきていて……ほしい……から……
てん、そう……かいし……」
(英雄たちの周りが光で包まれる。)
♠理保:「何ッ!?」
◆正照:「構うな。撃て。」
♠理保:「は、はい。全員射撃準備!……ッ!
……いなく……なってる……!?」
◆正照:「……フン、逃げられたか。」
♠理保:「どうしますか。捜索しますか。」
◆正照:「いや、良い。
情報は十分に収集出来た。
よってあれらにもう用は無い。」
♠理保:「………………はい。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~第九階層域の何処か~
英雄:「うっ……ん?ここは……」
佳月:「第九階層域……?」
ともみ:「シ……エ……ル……ッ!」
英雄:「ッ!シエル!!」
佳月:「酷い……!身体が……ボロボロに……」
☆シエル:「よ……良かった……みんな……あっ……リホ……が……」
ともみ:「あんなヤツ、どう、でも……いいッ!!
そんな事、より、シエル……がッ……!」
☆シエル:「あんなヤツ、だ、なん、て……言っちゃ……メ……だよ……とも、み……
……けど、みんな、無事で……よかった……よ……」
佳月:「……シエル……。」
☆シエル:「……ごめんなさい……ね……カヅキ……怖いめに……あわせ、ちゃって……」
佳月:「そんな事気にしなくて良いよ……!!
もっと……もっと私が強ければ……!!」
☆シエル:「……カヅキ……は、やさしい……ね……
ないて、くれ……て……ありが……とう……」
佳月:「……くっ!!」
☆シエル:「…………ヒデオ……」
英雄:「なんだ……。」
☆シエル:「やくそく……して……くれないかしら……」
英雄:「ああ、必ず守ってやる。なんだ。」
☆シエル:「フフ……うれし、い、わ……
……おね、がい……みんな、で……おそら、をみに……いって、ほしい……の……」
英雄:「分かった。ダチとの約束だ。絶対に、守る。」
☆シエル:「え、へへ……ありが、とう……
…………あ……やく、そく……まもらない、と……」
佳月:「約束……?」
☆シエル:「また……うた……きかせる……って……」
ともみ:「……ッ!」
☆シエル:「きい……て……くれ……る……?」
英雄:「ああ。
…………だから、聞かせてくれ……」
☆シエル:「えへへ……みんな……やさ……しい……」
☆シエル:「♪きらきらひかる
♪おそらのほしよ
♪まばたきしては、みんなをみてる
♪きらきらひかる
♪おそらのほしよ
……。
♪きらきらひかる
♪おそらのほしよ
♪みんなのうたが、とどくといいな
♪きらきらひかる
お、そ、ら、の、ほ、し……よ……
…………。
……。
…。
。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~現在、第二階層域~
◆防衛隊(男):「暴徒たちが第二階層域の防衛網を突破ッ!!
このままでは第一階層域まで行ってしまう!!!」
♠防衛隊(女):「射撃しても止まりませんッ!!
胴に当たっても!足に当たっても!止まりません!!」
◆防衛隊(男):「クソッ!!どうなってんだァ!!局長はどうしているんだ!!」
♠防衛隊(女):「それがッ!!うわああああああああああああッ!!!!」
◆防衛隊(男):「どうした!!?応答せよ!!番号0723!!0723!!おい!ナツミ!!!」
佳月:「死んだぞ。その人。」
◆防衛隊(男):「あ……あああああああッ!!!」
(男、後ずさる。)
英雄:「ここは、あとコイツだけか。」
◆防衛隊(男):「き……貴様ァ……!!よくもナツミを……!!」
英雄:「オレたちの事、覚えてねェのか。」
◆防衛隊(男):「あ……ああ……?」
英雄:「覚えてねェわなァ……お前らがオレたち屑畜生の事を一々覚えてるわけが……
だがオレたちは覚えてるぜ……三ヶ月前シエルを……オレたちを包囲してた中にお前は居た!!間違いなくなァ!!」
◆防衛隊(男):「ひッ……!」
佳月:「同じ事をお前に言ってやるよ。
貴様……!!あの時はよくもォ!!!」
◆防衛隊(男):「あがッ……あ……あ……ぐえェえええ!!」
(佳月、防衛隊を持ち上げ、地面に叩きつ潰す。)
佳月:「……。」
ともみ:「おいそっちは終わったかァ。」
佳月:「……おう。」
ともみ:「さっさと行くぞ。」
佳月:「分かってる。」
◇
(英雄、ともみ、佳月、走っている。)
ともみ:「ッ!!伏せろッ!!!」
英雄:、佳月:「「ッ!!」」
(三人、伏せる。銃声がする。)
♠理保:「あら、鋭いわね。」
ともみ:「……リホッ!!!」
佳月:「今の銃声……」
英雄:「ああ、他の下っ端が使ってたヤツとは違ェ。」
♠理保:「ご名答。これは天使様を殺す為の武器、そうシエルを殺した弾よ。」
ともみ:「リホ……ッ!!二人共!先へ行け!!」
英雄:「おう!!」
佳月:「了解!!」
♠理保:「行かせないわッ!!ぐっ!!!」
(理保、ともみの攻撃をとっさに防御する。)
♠理保:「くッ!!ともみッ!!」
ともみ:「久しぶりにッ!!本気の姉妹喧嘩しようじゃねェかァ!!えェ!!リホッ!!!」
♠理保:「仕方が無いわねッ!!付き合ってやるわよッ!!!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~第一階層域~
英雄:「明智 正照(あけち ただてる)ッ!!!」
◆正照:「ほう。ここまで来たか。
フン、リホも役に立たないな。」
佳月:「お礼参りに来たぜ明智 正照(あけち ただてる)。」
◆正照:「そうか、それは怖いな。
だが私は痛いのは嫌いなので遠慮しておくよ。」
佳月:「ほざけ!!」
(佳月、正照のところへ駆ける。)
佳月:「うおおおおおおおおおおおおお!!!」
◆正照:「フン、試作機:CL、私を守れ。」
☆CL:「かしこまりました。」
佳月:「ッ!?」
英雄:「他の雑魚共とは動きがちげェ!!」
◆正照:「紹介するよ。
あの天使様を元に試作機を作ったのだ。
アレの力を算出し、その膨大な能力を全て殺害、監視に特化させた殺人人形だ。
どうだ?凄いだろう?」
佳月:「きィさまァ!!!!」
☆CL:「マスター、対象物の処遇、どうなさいますか。」
佳月:「ッ!?その声……ッ!!」
◆正照:「どうだァ?貴様らが大好きだった天使様とそっくりだろう?
CL、そいつらをいたぶって倒せ。」
☆CL:「承認しました。」
◆正照:「では私は上で見ている。面白いショーを期待しているよ。」
(正照、去る。)
英雄:「待てッ!!」
佳月:「ぐおおおッ!!」
(佳月、CLに投げ飛ばされる。)
英雄:「カヅキッ!!ぐあッ!!」
(英雄、CLに蹴り飛ばされる。)
英雄:「がァ……!クッソ……ォ!!つえェ……!!
ッ!!」
☆CL:「マスターの、注文通り、ギッタンギッタンにボコボコに、
マスターが喜ぶように、いたぶってあげる。」(怪しく微笑む。)
英雄:「シ……エ、ル……!」
佳月:「うおおおッ!!」
☆CL:「がはっ」
英雄:「カヅキッ!!」
佳月:「ガ……ハァ……ハァ……ヒデオ……ッ、明智 正照(あけち ただてる)を追え……ッ!!」
英雄:「けどッ!お前が!!」
佳月:「行けッ!!!!!!!!!!」
英雄:「か、カヅキ……」
佳月:「シエルを模した殺人人形だとォ……?
許せない……許せるものかッ!!
コイツは、俺が……私が壊すッ!!!!!!!
だから、ヒデオはヤツをッ!!」
英雄:「……。
ああ、分かった。
絶対に上に来いよ!カヅキ!約束だ!!」
佳月:「ああ!約束する!!」
(英雄、去る。)
☆CL:「対象物が……。
……しかし、マスターの趣向を考えた場合、こちらの対象物を早々にいたぶるべきと判断。」
佳月:「はッ!!やってみろよ!!!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ともみ:「うォらァア!!」
(ともみ、理保に鉄バットを叩きつける。が、避けられる。)
♠理保:「当たらないわよ!そんな大振りな攻撃!死になさいッ!」
(理保、銃口を向ける。)
ともみ:「撃たれるッ!!くッ!!」
♠理保:「フェイントよ!考えが甘いッ!!はァ!!!」
(理保、ともみに蹴りを入れる。)
ともみ:「がァアアッ!!」
♠理保:「馬鹿ね。ともみは昔から私に蹴られるの好きよね。
とりあえず、まずは腕に一発。」
(理保、ともみの左肩を撃ち抜く。)
ともみ:「がああッ!!」
♠理保:「……あら、身体がボロボロにならない。
人にはああいう効果は出ないのね。
けど、貴女の利き手の左腕はもう使え――」
ともみ:「ふんぬァ!!!」
♠理保:「ッ!!バットが飛んでッがはァッ!!!」
(ともみ、鉄バットを横殴りに投げる。)
ともみ:「へッ!!バットは投擲しても強いんだぜ……
てか……あァア!?なんか言ったかァ!!?
ああ!“私の利き手の右腕が折れてもう使えません”って言ったのかァ!!!
そりゃァ、可哀想に!!ザマァねェなァ!!!」
♠理保:「ぐ……あ……あ゛ぁ゛……!
この……クソ女がァ!!!!」
ともみ:「はッ!!やっと被ってた猫を脱いだかァ!!
こっからが本番だボケェ!!!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
☆CL:「アハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
佳月:「その声で笑うなァ!!」
☆CL:「どうして???不愉快だから???攻撃の手が鈍るから????
どっちもォ?????」
佳月:「うるせェ!!!うだらァ!!」
☆CL:「ぐあっ!……なんてね。ぜ~~~んぜん痛くない!!」
佳月:「ッ!!」
☆CL:「次はわたし!次はわたし!!死なない程度に死ね!!!」
佳月:「ッ!?クッ!!離せッ!!」
(CL、佳月を掴み、殴り続ける。)
佳月:「ぐあッ!がァア!!ぐぉッ!!」
☆CL:「アハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
佳月:「調子にッ……乗ってんじゃッ、ねェッ!!!」
(佳月、CLの頭を掴む。)
☆CL:「あガッ、……ああッ!!
なッ!?わたしの装甲、が!!破壊、されかけて……!!
あガッ、アガガガガガガガガガガガガガガ!!!」
佳月:「このまま潰れて死ねェ!!!!」
☆CL:「あぎゃがぎゃぎゃがががが――
(シエルっぽく)
い、いたい……いたい、よ……カヅキ……」
佳月:「ッ!?」
☆CL:「いたい……いたい……」
(佳月、力を緩めてしまう。)
☆CL:「(元の喋り方に戻る。)阿呆ですね。」
佳月:「あがッ!!!」
☆CL:「わたしの装甲を物ともせず破壊しかけるとは……しかし、顎に強烈な一撃。
フフフ、痛いですかぁ~???」
佳月:「……クッソがァ!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~第一階層域、地上前の門~
英雄:「見つけたぜ!!明智 正照(あけち ただてる)!!」
◆正照:「おや?……CLのヤツ……まあ、良い。悪くない趣向だ。」
英雄:「何をブツブツ喋ってやがる!!お前はもう終わりだ!!」
◆正照:「フッ、終わり?
貴様は私に何をする気だ?」
英雄:「地上への門を開けてもらう。」
◆正照:「…………っは!そんな事、私がすると思うかァ?」
英雄:「ああ、だから力づくだァ!!
オラァ!!!」
◆正照:「これだから屑畜生は……
死ねッ!!」
英雄:「ッ!!!」
(英雄、銃撃を避ける。)
◆正照:「ほう、発砲してから避けるとは、人間離れしているな。」
英雄:「ゥオラアァア!!」
(英雄、鉄パイプを振りかぶる。)
英雄:「ッ!?なあッ!!?障壁……だとォ……!?」
◆正照:「ああ、あの天使から算出された力と同じモノだ。」
英雄:「何故お前がッ!?」
◆正照:「リホに提案されたのだ。いやー本当に出来た娘だよ。
確かに、アレの言うとおり、便利なモノは自分でも使ってみたいくなるなァ。
そして、こんな事も。」
(正照、手を英雄に向ける。)
英雄:「ッ!!なッ!!オレの鉄パイプがッ!!」
◆正照:「これで、貴様の武器は使い物にならないだろう。
どうだァ?アレと同じ念力だ。」
英雄:「クソが!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(ともみ、理保、ノーガードでの殴り合い。)
♠理保:「こんの馬鹿女がァ!!!」
ともみ:「グェエッ!!知るかボケがァ!!オラァ!!」
♠理保:「ぐはァ!!なんでここに来たァ!!!!」
ともみ:「ぶへッ!!約束を守るためだッ!!!!」
♠理保:「あ゛ぁ゛……ッ!!クソがァ!!うらァアッ!!」
(理保、ともみの顎にアッパーを入れる。)
ともみ:「か……はァ……!!」
♠理保:「ハァハァハァ……なんで……なんで来たんだよ……ッ!!
くそ!クソ!!チクショウ!!!」
ともみ:「……あぁ……?」
(理保、泣き出す。)
♠理保:「私は……私は姉さんを……姉さんと母さんを守りたいだけだったのに……!
母さんは死んで……姉さん……どうして来ちゃったのよォ!!」
ともみ:「…………。」
♠理保:「姉さんがこなければぁ……!姉さんも!ヒデオもカヅキさんも傷つけずに済んだのに……!!」
ともみ:「……。」
♠理保:「姉さんたちがぁ……!シエルを連れてこなければ……!!」
ともみ:「知らねぇよ。」
♠理保:「……え。」
ともみ:「知らねぇよ、って言ったんだよ。
リホ、アンタが何を考えていようと、アタシは知らない。
アタシは約束を守るために、上を目指す。」
♠理保:「…………クッ!!この……分からず屋のクソバカがァ!!!」
(理保、ともみに殴りかかる。)
ともみ:「バカバカうるせぇよッ!!!」
(ともみ、理保に殴りかかる。)
ともみ:「うおおおおおッ!!!」
♠理保:「ああああああああッ!!!」
ともみ:、♠理保:「「ああああああああああああああああああああッ!!」」
♠理保:「もらったァ!!!うらァ!!!」
ともみ:「…………ッ!」(避ける。)
♠理保:「なァッ!?避けッ――」
ともみ:「うだらァアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
(ともみ、理保の顔面に膝蹴りを決める。)
♠理保:「うがア……ッ!!!」
(理保、まともに受けて倒れる。)
ともみ:「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ……
……リホ……お前がアタシらを守りたいとか……知らねぇし……千年はえーよ……
………………は……初めて……リホに、勝てたな……
…………へっ……」
(ともみ、理保を担ぐ。)
ともみ:「ぃよっと……いちちちち……ハァー……約束だから……オメェも連れてってやるよ……
…………くそー……おみぃー……いやー……リホ……大きくなったなぁー……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
☆CL:「なんで!なんで!なんでェ!!!」
佳月:「ハァ……ハァ……ハァ……」
☆CL:「当機、左腕、右足破損!右目機能不全!
なんでわたしが圧倒されてるのォ!!」
佳月:「ハァ……ハァ……ハァ……」
☆CL:「おかしい……おかしいよマスタァ!!
あの人間!普通じゃない!!!」
佳月:「うるせぇよ。」
☆CL:「ひっ!」
佳月:「お前……よえェわ。
殺害に特化……?ハッ、笑わせてくれる……
ヒデオやともみの方が云万倍も殺害に特化してるわ……」
☆CL:「わ、わたしはッ、人間の上位生命体!天使の擬似体なのに!!
どうしてェ!!」
佳月:「うるせぇって言ってんだよッ!!」
(佳月、CLに向かって拳を振りかぶる。)
☆CL:「(シエルっぽく)や、やめてカヅキ……!!」
佳月:「……ッ!!……ぐ……ぼぉアア……!!」
(佳月、制止してしまい、その隙にCLに腹部を貫かれる。)
☆CL:「……ヒッヒッヒ……お腹に穴が空いちゃったねェ~。
(シエルっぽく)カヅキ?間抜けでありがとう♥」
佳月:「ッ!!」
☆CL:「がアッ!!ま゛……また頭が……潰され……!!」
佳月:「許さねェ……許さねェ!!!」
☆CL:「カ……!カ……!
(シエルっぽく)カヅキィ……いたい、よォ……カヅキィ……」
佳月:「ッ!!フンッ!!!」
(佳月、更に力を込める。)
☆CL:「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!
カ゛ツ゛キ゛ィ゛!゛!゛カ゛ツ゛キ゛ィ゛!゛!゛!゛
カ゛ツ゛キ゛ィ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!゛!゛!゛!゛!゛!゛!゛!゛」
(CL、頭を破壊され機能を停止する。)
佳月:「……グッ!……ハァ……ハァ……ハァ……
……シエル……ごめんなさい……
……ハァ……ハァ……グッ、ハァ……ハァ……約束……守らなきゃ……」
(佳月、立ち上がる。)
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◆正照:「ぐぉあああ……!!ハァハァハァ……
冗談……だろ……天使の力を取り込んだというのに……
……私の方が劣勢だとォ……!?」
英雄:「ハ……ッ!!
お前なんかよりともみの方が圧倒的につえぇわッ!!
おい、お前ホントにともみの父親かよ!!」
◆正照:「クソォッ!!」
(正照、英雄の腕を千切り飛ばそうと念力を飛ばす。)
英雄:「ッ!
フンッ!!」
◆正照:「なア……ッ!!何故私の念力に抗えるのだッ!!」
英雄:「ああ?知らねぇよ。お前が弱いからじゃねぇのか?」
◆正照:「なんだとォ!!」
英雄:「そんじゃ、おねんねしてもらうぜ!オラァ!!」
◆正照:「掛かったな!!」
(正照、英雄が近付いて来た瞬間、脳天を狙い発砲する。)
英雄:「なッ!!銃ッ!!しまった!!」
◆正照:「この距離では避けられまい!!死ねェ!!」
英雄:「クッ!!がはァ!!!」
(英雄、銃弾を右目に受ける。)
英雄:「がッ!あああああああああああああッ!!!」
◆正照:「ちィ!!脳天はぶち抜けなかったかッ!!
だが、右眼を潰してやった!!
クックックック……ハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」
英雄:「がああ!ああああ!!あああああああッ!!!」
◆正照:「ハッハッハッハッハッ!!
やはり屑畜生が頭を潰された虫の様に苦しみのたうち回る姿は痛快だ!!
気分が良い!!!」
英雄:「ぐぅうう……ああああ……あああああ……!!」
◆正照:「ンン~~ん♪
本当に良い歌を聴かせてくれる……!
だが、もう貴様が這う姿は飽きた!死ねッ!!」
英雄:「ク……ッ!!」
(銃声)
◆正照:「………………あ……?」
英雄:「……?」
◆正照:「…………な、なんだ……私はまだ撃ってないぞ……?
……なのに……何故……?
ぐふぉッ……!が……あ……ッ……!
なんだ……!?……何故……私の、胸に、風穴が、空いている……?
あ……ああ!!身体が……崩れて……!!」
♠理保:「それは……私が……撃ったから、です……」
◆正照:「な……に……?」
英雄:「……ッ!ともみ!カヅキ!リホ!」
(佳月は腹を抑えながら、ともみ、理保は互いに支え合いながら現れる。)
ともみ:「待たせたな。エーユー。」
佳月:「ハァ……ハァ……そっちも平気そうで何より、だ……。」
◆正照:「り……リホ……貴様……何故……ッ!!」
♠理保:「計算尽くです。
貴方を確実に殺す為の。」
◆正照:「はァ……?」
♠理保:「私は貴方を殺す算段をずっとしていた。
けどやらなかった……全てはともみ……姉さんと母さんを守る為に……
でも、母さんは死んだ。そして姉さんが攻めてきた。
だから実行しようと思ったの。
そして、三ヶ月、シエルを見て思ったわ。
これで殺そう、と。」
◆正照:「ぐあ……それで……この身体に、なる事を、提案……したのかァ……!」
♠理保:「ええ。貴方の趣向にぴったりだと思って。」
◆正照:「お……おのれェエエエエエエエエ!!!」
(正照、理保に襲いかかる。)
♠理保:「ッ!!」
佳月:「うだらァア!!」
ともみ:「おらァ!!」
英雄:「オラアッ!!」
◆正照:「がア……ッ!!」
佳月:「させるかよっ!!!」
ともみ:「どうよ……アタシの足は……効くだろゥ?」
英雄:「殺す方法はあの弾丸か頭を潰す、だったなァ……?」
◆正照:「ッ!!」
英雄:「潰してやるよォ!!!」
英雄:、ともみ:、佳月:「「「おおおおおおおおおおおおッ!!!」」」
◆正照:「キィ……!!アアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」
(正照、頭部が潰れ絶命する。)
佳月:「ハァハァハァ……お……終わった……」
ともみ:「あー?まだだろうが。」
英雄:「そうだな……空を見ねェと……。」
♠理保:「…………。
これ、で……地上へのハッチが開いたわ。
……さ、行きなさい。」
ともみ:「あ……?おめェも行くんだよバカ。」
♠理保:「は……?」
佳月:「シエルとの約束にはリホも入ってんだよ。」
♠理保:「け……けど、私は……」
英雄:「うるせぇよ。行くぞ。」
♠理保:「え…………。」
ともみ:「そーゆーこった。
行くぞ。肩貸してやっからよ。」
♠理保:「……仕方が無いわね……。」
ともみ:「いちちちちちッ!!そっちはお前が撃ち抜いた方だろうがッ!!」
♠理保:「いっててててて……そういえば、私もこっち側は折られたんだったわ……」
佳月:「……グッ……!」
英雄:「ほらよ、お前もだいぶボロボロだろ手を貸すぜカヅキ。」
佳月:「フフ、ありがとう……。
皆……ボロボロだね……。」
英雄:「ああ……。」
◇
♠理保:「……ほら、ハッチが開くわ。」
英雄:「お……青空ってやつかな。」
ともみ:「夕焼けってやつかもな。」
佳月:「夜空かも。」
♠理保:「朝焼け……かもしれないわ。」
(ハッチが開ききる。)
英雄:「……!」
ともみ:「おー……!」
佳月:「ハァー……!」
♠理保:「あっ……!」
☆シエル:「♪ふ~ふ~ふ~ふ~ふ~ふ~ふ~……(きらきら星をハミングする。)」
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END