[台本]改造戦屍ファルシファイ~第四話―2/2:Existence of Gain Oracle (エグジスタンスオブゲインオラクル)~
世界設定、場面情景
日常の中に潜む狂気、或いは凶器。
これは、不条理にも巻き込まれてしまった青年が、『狂鬼』と化す物語。
真に狂気へ落ちた狂鬼。そして動き出す物語。
登場人物
〇亘理 進一(わたり しんいち)/“改造戦屍(かいぞうせんし)”ファルシファイ
22歳、男性
兄貴肌で頼りになる青年。
勝手な都合で殺され、勝手な都合で改造され、“改造戦屍ファルシファイ”となる。
ファルシファイに変身してる時は雄たけびと唸り声しかあげれなくなる……が……
主人公。
〇Dr.ラプラス
年齢不詳、女性
研究施設クレアシオンの所長にして唯一の研究員。
天才であり愚者。傲慢、ウザいそして何より色々とワガママな女性、を装っている。
殺された進一を勝手に改造し、改造戦屍ファルシファイに仕立て上げる。
自称する名である“Dr.ラプラス”は「当然ですが仮名です。」とのこと。
〇トラース
年齢不詳、男性
人類保安機関“マクスウェル”によって改造された一般男性。
○マクスウェル
年齢不詳、男性
人類保安機関“マクスウェル”の局長。
冷静で慎重な性格でDr.ラプラスと同じ研究者。
数々の人造人間を造ってきた。
〇ナレーション
年齢不問、性別不問
作中のナレーション。そして改造戦屍ファルシファイの言葉と技名を代弁する。
亘理 進一/ファルシファイ ♂:
Dr.ラプラス ♀:
トラース♂:
マクスウェル ♂:
ナレーション 不問:
これより下からが台本本編です。
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ラプラス:「……ごめんなさい!シンイチ!」
☆進一:「あ……?」
ラプラス:「ARTS発動!ファルシファイッ!」
☆進一:「ラプラス……?何を……」
ラプラス:「“─暴走解錠(インテンションデリート)─”ッ!!」
☆進一:「ぐ……ぉ、お、ぉ、おおおおぉぉぉおお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ッ!゛!゛!゛!゛!゛!゛
あ゛A゛a゛ア゛あ゛ッ!゛!゛ラ゛プら゛ス゛ッ!゛!゛!゛!゛」
ラプラス:「ごめんなさい……!」
N:“暴走解錠(インテンションデリート)”。
シンイチの意志を度外視したファルシファイへの変身。
それだけではない。暴走解錠は自我を封印されてしまう。
マクスウェル:「私に勝てないと察しての亘理 進一(わたり しんいち)の精神、肉体の崩壊の可能性を無視した暴走状態。
傀儡人形ここに極まれり、か。
これもまた、私の予定通り。
……では、貴様の出番だ。」
トラース:「やっとか……待っていたぜこの時をよぉ。」
N:姿を現したのはかつてファルシファイに倒されたトラースであった。
ラプラス:「トラース……?
まさか彼でファルシファイを止めようと言うのですか?
無謀無策、人類保安機関“マクスウェル”の局長が聞いて呆れますね。」
トラース:「言うじゃねぇかラプラス博士様ァ。俺じゃあソイツを倒せねぇってかァ??」
ラプラス:「その通りです。
どうやら前より幾分かアップデートを重ねている様ですが、
限定解錠のファルシファイであればいざ知らず、暴走解錠したファルシファイには到底及びませんね。」
マクスウェル:「それはどうだろうな。貴様のその傀儡は弱い。
トラースに遠く及ばない。」
ラプラス:「ほざきますね。
さあ!ファルシファイッ!彼らを殺しなさいッ!!」
☆ファルシファイ:「「キッシャァアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」」
N:一段階目断片解錠の様に黒衣の装いでも無く、二段階目断片解錠の様に黄金の装いでも無く、
暴走解錠状態のファルシファイは禍々しい緋色の“魔鎧(まがい)”を纏っていた。
マクスウェル:「トラース、迎え撃て。」
トラース:「あいよッ!!!」
N:トラースとファルシファイの拳がぶつかり合う。
一見拮抗している様に見えるが、ファルシファイの方が数段上。
故に──
トラース:「ぐッ!ぐおおッ!!」
N:トラースが押される。
☆ファルシファイ:「「ギギギギギギギギギギギギ……!」」
トラース:「っとお!!あぶねぇ!!!」
N:押され、腕を破壊される前に退避するトラース。互いに距離をとる。
トラース:「はんッ!やるじゃアねぇか……ッ!
力は俺よりも格段上……けどなぁ!!」
☆ファルシファイ:「「グガガガ……ッ、ガガガガ……!!」」
N:ファルシファイが膝をつく!!
ラプラス:「何ッ!?」
トラース:「驚いている様で、いやァ~搦め手を使って正解だったな。」
N:搦め手。トラースの身体からは神経毒が分泌されており、
トラースに触れた拳から、ファルシファイの身体を浸食していったのであった。
ラプラス:「こんなにも早く回る神経毒……ですって……!
そんな、馬鹿な……!」
トラース:「ハッハッハッハァーーーー!!
いいねェ!!
おォい局長ォ!!このネガティブうんたらってヤツ良いなァ!!
あのラプラス博士様の驚き顔を拝めるなんてよォ!!」
マクスウェル:「気に入って頂けた様で何よりだ。
それと、ネガティヴエグジスタンス、だ。」
トラース:「あぁ?名前なんてどうだって良いだろうがよ……
さて続きやろうぜファルシファイ!」
☆ファルシファイ:「「キィシャァアアアッ!!」」
N:神経毒によって身体の動きが鈍くなった事にも構わず、
トラースを殺さんと駆けだすファルシファイ。
トラース:「良いねェ!!来いやァ!!」
N:トラースの両腕の刃が剥き出しになる。
ファルシファイの両手両足を切り刻む為に!
トラース:「喰いなァ!!“─人で無しの殺戮鬼(ブルツゥメンリッパー)─”ッ!!!」
N:「両腕の刃の連撃がファルシファイの身体をズタズタに切り裂く。
四肢は小間切れに、胴と首は完全に切り離され、血飛沫で辺りが塗りたくられる……
……その筈が──」
トラース:「……なあ……ッ!?」
☆ファルシファイ:「「キィーーーーーーーーーーーー……」」
N:トラースの刃が全く効かない。
以前も効かなかったが、アップデートを重ね、強化された筈のトラースの刃をファルシファイの装甲は全て弾いたのだった!
トラース:「くッ!おォい!!局長ォ!アンタの想定より大分かてぇぞコイツゥ!!」
マクスウェル:「む?お前がまだその身体を扱い切れていないだけではないか?
お前が弱いのだ。」
トラース:「んだとォ!?こんのゲッソリ野郎がァ!!」
N:トラースには言われるのが大嫌いな事がいくつかある。
そのうちの一つが“弱い”だ。
彼は自分が強いと思っていると思っているが故、弱いもの扱い受けるのが嫌なのである。
マクスウェル:「お前は髑髏剥き出しだろうが。
次撃、来るぞ。構えろッ」
N:ファルシファイが駆けるッ!
動きが鈍くなり、攻撃が見える、と高を括っていたトラースだったが──
トラース:「ぐぉおおおッ!!ぐぁはッ!!」
☆ファルシファイ:「「ギガァッ!キシャァ!!!」」
トラース:「どわぁあああッ!!!」(吹き飛ばされる)
(トラース、受身を取り着地する。)
トラース:「……い、いってェ!!
アイツッ、どういう事だ!!?動きが戻ってるじゃねェかッ!!」
ラプラス:「もう既に、ファルシファイはあの毒を中和し、その上で耐性を獲得しました!!」
トラース:「なッ!!?ずるくねぇかッ!!!?」
ラプラス:「これが!完了生命体(かんりょうせいめいたい)ファルシファイですッ!!
如何なる攻撃も、如何なる毒も学習し、無効化する!」
マクスウェル:「そうか……それが“器”か……。」
ラプラス:「トラース!アナタごときではファルシファイを倒す事は不可能です!!」
トラース:「ちぃッ!!!
じゃあその完了なんとかとやら!!ぶっ殺してやるよォ!!!
ウォラアッ!!!」
N:トラースが猛る。
トラースには言われるのが大嫌いな事がいくつかある。
そのうちの一つが“不可能”。
再び、トラースとファルシファイが組み合う。
☆ファルシファイ:「「ギギギギギギギギ……」」
トラース:「不可能ォ???
っざけんなァ!!おめェなんかな小間切れにしてやるよ!!!」
☆ファルシファイ:「「フッシャァアアアアアアアアアアア……!!!」」
トラース:「おお!おめェもやる気かァ!!良いねェ!!!」
ラプラス:「…………。」
マクスウェル:「ん……。」
N:Dr.ラプラスがその場を後にするのを目で追うマクスウェル。
マクスウェルも、ファルシファイとトラースを一瞥し、Dr.ラプラスを追う。
トラース:「この俺が“弱い”ッ!?この俺には“不可能”ッ!!?
ああ!なら見せてやるよッ!!
俺が強いって所を!!不可能を可能にする所をォ!!!
“形状変化(フォルメ)”!!“剣(ミィエーチェ)”→“銃(ピストイェット)”ッ!!!」
N:”形状変化(フォルメ)”、それはトラースがアップデートで得た神経毒とはまた別の機能。
トラースの常設武器であった両腕に付いた刃の形状を変化させ、別の武器形態にする。
それにより、トラースの両腕は銃へと変貌したのだ。
トラース:「喰らって地に伏しなァ!!
“─銃:人で無しの殺戮鬼(ピストイェット:ブルツゥメンリッパー)─”ッ!!!
ウォラオラオラオラオラオラオラオラァーーーーーーッ!!!」
ァルシファイ:「:「ギギギギギギギガガガガガガガガァ!!!」」
N:トラースの両腕から放たれる砲撃の一撃は、
この世界に於いて最も硬いと言われる合金を30cmの鉄板状にしたモノをいともたやすく貫く貫通力を持っている。
故にッ!」
トラース:「てめェのその装甲をッ、貫くッ!!!!!」
☆ファルシファイ:「「ギギャァアアアアアアアアアアッ!!!」」
N:貫いたッ!!
強化されたの刃を物ともしなかったファルシファイだが、トラースの弾丸は、ファルシファイを打ち砕いたッ!!
☆ファルシファイ:「「ギギギギギャギャギャギャギャァアアアアア!!????!!!???」」
N:ファルシファイは困惑した。
察するに、トラースの刃と弾丸は同じ物質、同じ硬度の筈だ、と。
だというのに、何故壊されたのか、と。
トラース:「どうしたァ?ファルシファイ?
分からねぇか??俺のが何故てめェの身体を貫いたか分からねぇかァ???
教えてやるよ!!
俺が強くて、不可能を可能にするからだぜェ!!」
☆ファルシファイ:「「クォオオオ……!!」」
トラース:「見ィたかァ!!マクスウェルッ!ラプラスッ!!
…………あ?」
N:トラースはマクスウェルとDr.ラプラスが居る、と思っていた方を向く。
が、どこにも二人は居なかった。
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N:人類保安機関マクスウェル所有施設“E”地下。
Dr.ラプラスは一人とある場所を訪れた。
ラプラス:「……なるほど。
確かに、これは褒賞と言っても過言はありませんね。」
マクスウェル:「見つけたか。ラプラス。」
ラプラス:「ッ!!マクスウェル局長!!」
N:ラプラスよりも早く、マクスウェルは地下へ辿り着いていた様子であり、
部屋の奥からマクスウェルが現れた。
ラプラス:「私の行動を先読みするだなんて……ッ!」
マクスウェル:「当然だ。
何せ、私はお前の父だからなラプラス……いいや、ニキータ。
親という者は、子の考える事はお見通しらしい。」
ラプラス:「全部マルっと丸分かりってのは親子といえど限度があると思いますよ……!」
N:ニキータ。Dr.ラプラスの真の名は“ニキータ・マクスウェル”。
何を隠そう人類保安機関マクスウェル局長。“アダム・マクスウェル”の娘なのだ。
ラプラス:「……ふん、では貴方に倣って私もこう呼びましょうか?お父さん?」
マクスウェル:「……嬉しいものだな。
お前が私をそう呼んだのは初めてだ。
だが、良い。私はお前に“父”と呼ばれる資格は一切無い。
……さて、ここにはお前が求めていたモノがある。」
ラプラス:「やはり、そうなのですね。
かつて私が開発した全人類の集合無意識にアクセスする装置。
“ExistenceofGainOracle(エグジスタンスオブゲインオラクル)”。
縮めてEGO(エゴ)。」
マクスウェル:「集合無意識の中に神が内在する、というお前の仮説を証明する為に造られた装置。」
N:神の存在証明、そして神の製造。それがDr.ラプラスの目的。
それをこの“EGO(えご)”を使って行おうと、かつてしていたのだ。
ラプラス:「しかし、貴方によってこの実験は中断され、凍結された。
何故か、それは神の証明も、製造も可能と分かったから、ですよね。」
マクスウェル:「如何にも。神の証明、製造なぞ不遜にして傲慢。
人の域でやって良いものでは無いからな。」
ラプラス:「人造人間の製造は良いのですか?」
マクスウェル:「構わない。人が人を造るなぞ昔からやっている事だ。」
ラプラス:「そうですか。
であれば、“人が神を造る”が許されないのであれば、“神が神を造る”のであれば問題ないでしょう。」
マクスウェル:「………………なるほど。
では、試してみるか。」
ラプラス:「ッ!!」
N:マクスウェルが“EGO(エゴ)”を起動する。
ラプラス:「なんですって!貴方が起動するですって!!?
マクスウェル局長!貴方は何を考えてるのですかッ!!!」
マクスウェル:「分からないか。私の考えが。
では、刮目するが良い。神の顕現を。」
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N:一方その頃、トラースはファルシファイを圧倒していた。
トラース:「オラオラオラァ!どうしたァ!!動きが鈍ってんぜェ!!?」
☆ファルシファイ:「「キィアアアアアアッ!!!」」
トラース:「……チッ。あーあ。冷めちまった。」
N:「トラースが攻撃をやめる。」
☆ファルシファイ:「「……ッ?」」
トラース:「おぉいファルシファイ……お前……こんなもんかよ……。
俺ァお前を殺す為に、強いお前を殺す為に来たのによォ……
……ガッッッッッカリだぜッ!!
もう良い。起きろや亘理 進一(わたり しんいち)。」
☆ファルシファイ:「「……キィヤァアアアアアアアアアアアッ!!!」」
N:ファルシファイが駆け出す。
トラースの言葉なぞ聞く耳を持たずに、殺さんと爪を立てる。
だが、トラースは避けない。動くことすらなかった。
トラース:「もうお前の動きは見切ってんだよ。」
N:ファルシファイの攻撃を全ていなし、防いでいた。
トラース:「なァにが“完了生命体(かんりょうせいめいたい)”だ……。
弱い……弱い弱い弱い弱いッ!!」
N:トラースの刃がファルシファイの両腕を胴から斬り離す。
☆ファルシファイ:「「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」」
トラース:「起きろ!亘理 進一(わたり しんいち)ッ!俺と戦え!!
お前が変身して俺と戦えッ!!!
“完了生命体(かんりょうせいめいたい)”じゃなく、
“改造戦屍(かいぞうせんし)”に変身して俺と戦えッ!!!」
N:そう言ってファルシファイを投げ飛ばす。
☆ファルシファイ:「「ギッギャァッ!!!」」
トラース:「さあ、俺と戦え。
ボウソウカンジョウだかボウソウカイジョウだかなんだか知らねぇが、
そんなよく分かんねぇのに負けてねぇでてめぇの力で制御しやがれッ!」
☆ファルシファイ:「「…………オ……オオオ……」」
トラース:「…………。」
N:ファルシファイの緋色の魔鎧(まがい)がひび割れていく。
☆ファルシファイ:「「オオオ……オオオオオオ……!!」」
N:徐々に意識が覚醒していく。
☆ファルシファイ:「「オオオ……──おおおおおおおおおおお―ッ!!“─断片解錠(リリース)─”ッ!!」」
N:暴走解錠状態だった魔鎧(まがい)の亀裂から光が溢れだし、そして、中から黒衣の戦屍(せんし)が現れる。
魔鎧の獣なんぞ改造戦屍にあらず、彼こそが──」
☆ファルシファイ:「「オ……オレガ……」」
N:改造戦屍(かいぞうせんし)ッ!
☆ファルシファイ:「「ファルシファイ……ダァッ!!」」
トラース:「フッ、さあ……来い……亘理 進一(わたり しんいち)!
……いいや、改造戦屍(かいぞうせんし)ファルシファイ!!」
☆ファルシファイ:「「ショウブ、ダ、トラー、ス……オレガ……オレタチガ……!
オマエヲタオス……ッ!!」」
N:以前の改造戦屍(かいぞうせんし)ファルシファイとは違い。
亘理 進一(わたり しんいち)の意識を保ち、より人間らしい肉体構造を得た事で声帯を獲得した!
トラース:「“形状変化(フォルメ)”!!“剣(ミィエーチェ)”→“銃(ピストイェット)”ッ!!!
喰らえ!
“─銃:人で無しの殺戮鬼(ピストイェット:ブルツゥメンリッパー)─”ッ!!!
ウォラオラオラオラオラオラオラオラァーーーーーーッ!!!」
☆ファルシファイ:「「クッ!!」」
N:「ファルシファイは通常状態では避けれないと予感した。
故に──」
☆ファルシファイ:「「“改竄・神速逸脱(ファルシファイ・アクセラレーション)”ッ!!!」」
トラース:「何ィ!!!??」
N:アクセラレーション。それは、ヴィースの能力、高速移動。
それをファルシファイ用に改造された能力。
それがファルシファイ・アクセラレーション。
それにより、一時的に自身の内包世界が世界を浸食する事で世界の法則から抜け出し、
重力だの慣性だのから解放され常人よりも何倍も早く動く事が可能である。
トラース:「俺の砲撃を避けただとォ!!?」
☆ファルシファイ:「「コレ、ガ……!」」
トラース:「ッ!?」
N:ファルシファイはトラースの背後へ回り、赤く燃え猛る剣を顕現させ構えるッ!
トラース:「まッ!まずいッ!!」
☆ファルシファイ:「「コレガ、オレノ、オレタチノ……!チカラダッ!!」」
トラース:「“完全形状変化(オツィリチノフォルメ)”!!
“銃(ピストイェット)”→鎧(ブランニャ)ッ!!!」
N:ファルシファイはトラースを両断するべく振りかぶる!!
☆ファルシファイ:「「ダッシャァアアアアアアアアアアアッ!!!!」」
N:“─改造されし炎の巨人の剣(ファルシファイ・レヴァンテイン)─”ッ!!!
トラース:「マ゛ニ゛ア゛ワ゛ネ゛ェ゛カ゛ァ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!」
N:一刀両断。
トラースの斬られた部分から炎が噴出し、全身が焼ける。
トラース:「ちくしょおおお……!
ちくしょおおおおおおお……!!
チクショォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
N:ファルシファイは武装を解除し、シンイチに戻る。
その瞬間。トラースを焼かんとしていた黒炎が鎮火する。
トラース:「ぐっ……が、がはッ……な……なんだァ……!」
☆進一:「……ありがとう。キタガワ。ヴィース。
…………ファルシファイ……。
そして、俺をずっと呼び続けてくれてありがとうトラース……。」
トラース:「……てんめェ……俺の事を、馬鹿に……してんのか……ッ!」
N:身体を真っ二つにされたというのに、トラースはまだ生きていた。
通常の人間であれば死んでいた。
だが、彼は、彼も、人造人間。故に生きていられる。
トラースは酷く憤慨した。
☆進一:「違う。俺はお前に感謝している。本当に、俺を助けてくれてありがとう。
……じゃあ、俺は行く。」
トラース:「マ゛……!待ってェ!!
亘理 進一(わたり しんいち)……!ファルシファイ!!
俺はてめェに感謝されたいわけじゃアねぇ!!!
戦え!!俺はまだ生きてるッ!!戦え!!!お前は俺と戦って殺されろッ!!!」
N:トラースには──
トラース:「俺はそういうのがいッッッッッちばん大ッッッッッ嫌いなんだよォ!!
何故どいつもこいつも俺をわざわざ生かすッ!!?
何故どいつもこいつも俺を置いていくッ!!?
俺はッ!戦って死ねりゃアそれで良い!!
俺を殺さないってんなら俺に殺されろよォ!!!!!!!!」
N:トラースは咆哮する。
だが、既に進一はもう居ない。故にその言葉は誰にも届かない。
トラース:「……ちっくしょぉおおおおおおおおおおおお……!!!」
N:トラースは意識を失った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
N:シンイチはDr.ラプラスを探し、人類保安機関マクスウェル所有施設“E”地下を目指した。
☆進一:「……ッ!こっちか……ッ!
──な……ッ!」
マクスウェル:「む。ラプラスの傀儡人形か。
そうか。トラースは撃破されたか。
それは少し、驚愕だ。」
ラプラス:「し……ん、いち……」
☆進一:「なッ……な……ッ!」
N:シンイチが目の当たりにしたのは、Dr.ラプラスがマクスウェルに心臓を手刀で貫かれた姿だった。
☆進一:「てめェ……!!ラプラスから離れろ……!!!」
マクスウェル:「それは出来ない相談だ。
これを発動させるために、この女は必要だからな。
ああ。これは、全人類の集合無意識にアクセスする装置。
ラプラスはこれを起動し、神を顕現させようとしているらしい。」
☆進一:「何言ってんのか分かんねぇんだよ!さっさと離せ!!」
ラプラス:「しん……いち……貴方、を……うら、ぎる、様な事を、して……
ご、ごめん、なさい……」
☆進一:「ッ!!ラプラスを離せッ!!」
N:進一がマクスウェルに殴り掛かる。
が──
マクスウェル:「フン、本当に貴様は……動きが単純だな……ヌン!!」
☆進一:「ぐぇええッ!!」
N:ラプラスを捨てる様に離し、シンイチの内臓を抉る。
☆進一:「ぐッ……!」
マクスウェル:「……ふむ。これか。
これがファルシファイの概念炉心(がいねんろしん)、“ジャイレート”か。
破壊したとしてもこの傀儡人形の中で再形成されるらしいな。
ふむ。なるほど。”この世界に必ず一つ存在する”という世界機構が働いているのか。
この機構を利用して無くなれば世界が困惑し、改めて形成する……私には到底理解出来ない仕組みだ……
つくづくあの女は天才だな。」
N:概念炉心ジャイレートが抜かれてしまった進一の身体はだらりと力を失う。
☆進一:「ぐぁ……」
ラプラス:「しん……いち……しん、いち……!」
マクスウェル:「亘理 進一(わたり しんいち)。お前はもう用済みだ。」
☆進一:「…………」
マクスウェル:「さて、喜べニキータ。
お前の目論見は成就する。が、同時に潰える。」
N:そういって集合無意識干渉装置“EGO(えご)”と概念炉心を接続する。
ラプラス:「……ッ!」
マクスウェル:「さあ、神よ!
貴様が求めていた“永劫なる器”だぞ!!
内なる概念から目覚め、外なる現実で“貌(かたち)”を成せ!!」
☆進一:「…………。」
N:マクスウェルの声に呼応する様に施設が唸りを上げる。
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ToBeContinued…
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