[台本]改造戦屍ファルシファイ~第三話:”暴走解錠(インテンションデリート)”~
世界設定、場面情景
日常の中に潜む狂気、或いは凶器。
これは、不条理にも巻き込まれてしまった青年が、『狂鬼』と化す物語。
登場人物
〇亘理 進一(わたり しんいち)/“改造戦屍(かいぞうせんし)”ファルシファイ
22歳、男性
兄貴肌で頼りになる青年。
勝手な都合で殺され、勝手な都合で改造され、“改造戦屍(かいぞうせんし)ファルシファイ”となる。
ファルシファイに変身してる時は雄たけびと唸り声しかあげれなくなる。
主人公。
〇Dr.ラプラス
年齢不詳、女性
研究施設クレアシオンの所長にして唯一の研究員。
天才であり愚者。傲慢、ウザいそして何より色々とワガママな女性、を装っている。
殺された進一を勝手に改造し、改造戦屍ファルシファイに仕立て上げる。
自称する名である“Dr.ラプラス”は「当然ですが仮名です。」とのこと。
〇ヴィース
年齢不詳、男性
人類保安機関“マクスウェル”から送られた刺客の改造人間。
“神速逸脱(アクセラレーション)”の使い手。
人類保安機関マクスウェル所有施設“E”にて進一たちを迎え撃つ。。
○マクスウェル
年齢不詳、男性
人類保安機関“マクスウェル”の局長。
冷静で慎重な性格でDr.ラプラスと同じ研究者。
数々の人造人間を造ってきた。
〇ナレーション
年齢不問、性別不問
作中のナレーション。そして改造戦屍ファルシファイの言葉と技名を代弁する。
亘理進一/ファルシファイ ♂:
Dr.ラプラス ♀:
ヴィース ♂:
マクスウェル ♂:
ナレーション 不問:
↓これより下が台本本編です。
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ヴィース:「……。」
ヴィース:「あーあ、暇だなぁ。」
マクスウェル:『暇かね。』
ヴィース:「どわッ!?ま、マクスウェル!!
あれ?僕、回線開きっパだった???」
マクスウェル:『いいや、私が開いた。
で、暇なのかね、君は。』
ヴィース:「ああ、如何にも。暇だ。暇で暇で仕方が無い。」
マクスウェル:『であれば、ミッションだ。
これから施設“E”に向かってもらう。』
ヴィース:「了解。」
マクスウェル:『……む、失礼。今君が居るところからだと四日はかかるな。
これでは──』
ヴィース:「心配ご無用、もう着いたよ。」
マクスウェル:『……ああ、そうかそういえば、貴様の能力は……
流石はだアミィ──』
ヴィース:「おおっと、マクスウェル。
今の僕はそんな名じゃない。
僕は──」
ヴィース:「人類保安機関“マクスウェル”の改造人間。
“神速到達者(アクセラレイター)”、ヴィースだ。」
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N:進一(シンイチ)は、Dr.ラプラスと共に移動式研究棟“ラプラスモービル”に乗り、とある場所を目指す。
ラプラス:「人類保安機関マクスウェル所有施設“E”……
そこはかつて孤児院として機能していた施設です。
今は廃墟となっているハズです。
そこに行くべき、というのは多分、まぁ、そういうことでしょうね。」
☆進一:「そういうこと?」
ラプラス:「廃墟、というのは何かを隠匿するのに向いているんですよ。」
☆進一:「あー……」
N:シンイチはいまいち理解出来ていない。
ラプラス:「さて、着きました……が。」
☆進一:「なんもねぇじゃねぇか……」
N:そう、施設“E”とされた座標はは更地であった。
☆進一:「どういうことだ……?
とりあえず辺りを散策するか?
……ラプラス?」
ラプラス:「……。」
N:Dr.ラプラスは手を伸ばし進む。数歩進むとピタッと彼女は止まった。
ラプラス:「ふむ、やはりですね。
シンイチ、ここを破壊してください。」
N:そう言って、何も無い空間を指差す。
☆進一:「は???」
ラプラス:「ここに障壁が存在しています。
考察するに、先日シンイチが相手取ったキタガワという少女の能力、
“Negative Existence(ネガティヴエグジスタンス)”……
つまり概念的消失存在により私の演算からは“何も無い”と判断されている空間があります。」
☆進一:「でもそのねがてぃぶうんたらって触ったりとか出来ないんじゃないのか?」
ラプラス:「フッフッフ!ご安心ください!
こんなこともあろうかと!貴方に新たな機能を与えました!
それは、“概念改竄(がいねんかいざん)”です!!」
☆進一:「?????」
ラプラス:「まあ、言葉を聞いたところで理解出来ないのも無理もありません。
故に、バーン!と一発!この障壁を破壊しちゃってください!!」
☆進一:「そういうことなら、相分かったッ!!」
N:進一は振り被り、何も無い空間に向かって鋭い拳を放つ。
すると、何かが壊れる音がし、目の前の空間がひび割れ、崩れていく
☆進一:「うお!なんか壊した!!」
ラプラス:「流石天才ジーニアスな私!」
☆進一:「よー分からんが、アンタが天才なのは……──ッ!!」
N:シンイチは察知した。崩れていく空間の向こう側から何か、とてつもなく早い何かが迫ってくることを。
☆進一:「危ないラプラス!!!」
ラプラス:「きゃっ!」
N:Dr.ラプラスはまだ認識出来ていない。
ネガティヴエグジスタンスがまだ発動中だったからか、その何かが早かったからかは分からない。
が、その何かは確実にDr.ラプラスを狙っていたのだ。
☆進一:「ぐッ!ぐぉおおおッ!!腕がァ!!!」
N:咄嗟にDr.ラプラスを庇った右腕がその何かにぶつかり、腕が上腕二頭筋辺りから弾け飛ぶ。
ラプラス:「ッ!!進一!!」
☆進一:「だッ、大丈夫だ……!
それよりッ、今のは何なんだ……!」
ラプラス:「分かりません……!
未だに概念消失状態の様で認識出来ません……!
シンイチ、警戒を……!!」
☆進一:「とう……ぜんッ!!」(右腕が再生する。)
ヴィース:「お?キミ再生はっやいねぇー!」
☆進一:「誰だッ!!」
N:ネガティヴエグジスタンスにより姿が曖昧だった影が徐々に鮮明に人の形を成していく。
露わになったその姿は齢にして30過ぎくらいの軽快そうな男であった。
その男は楽しそうに笑う。
ヴィース:「誰だ!と言われたら応える他やる事は無い!僕の名は、ヴィース!
本当の名は違うけど、マクスウェルによって改造人間となった今の僕の名は!
ヴィース!!!」
ラプラス:「ヴィース!?
シンイチ!彼は危険です!彼の力は“神速逸脱(アクセラレーション)”!
高速移動による攻撃を得意とします!」
ヴィース:「説明ありがとう!Dr.ラプラス!
素晴らしい!素晴らしく簡潔且つ迅速!
そう!僕は“神速到達者(アクセラレイター)”だ!!」
☆進一:「どうするラプラス!
逃げるにしてもそのあくなんとかを相手してたら無理じぇねぇか!?」
ラプラス:「そうですね……!
なんとかしてここで彼を撃破する他ありませんね……!」
☆進一:「ああ!そうだなッ!!リリ──」
ヴィース:「遅い!」
☆進一:「ぐお──」
ラプラス:「シンイチ!!」
N:断片解錠する暇も無くヴィースの蹴りで、頭上部が吹っ飛んでいく。
☆進一:「……が……ぐ……ぁ……あ……」
ヴィース:「頭にクリティカルヒット。キミの頭は潰れたトマトの様に弾け飛んだ。
うむ、とても早い。
だが、悔やむ必要は無い。
キミが弱いからこうなったのではない。そして僕が強いからこうなった訳でもない。
ただ、キミが普通で、僕が早すぎたからこうなったんだ。
どうしようもない。どうしようもないのさ。」
N:ヴィースは、未だ痙攣し、動けずに再生も出来ないシンイチに優しく語りかける。
ヴィース:「大丈夫だ。キミは何も悪くない。
いままでどんな行いをし、どんな思いをしてここまで来たかは僕には分からない。
けど、“主(しゅ)”はきっとキミをしっかりと見ていたさ。
そしてこんなどうしようもなく理不尽な死を遂げるキミを地獄に落とす事はきっと無い。」
ラプラス:「……。」
ヴィース:「だから、安らかに眠ってくれ。」
ラプラス:「シンイチはこの程度では倒れませんよ。
だって彼は──」
ヴィース:「“彼は正義の心で動いているから”、かい?」
ラプラス:「……はい。その通りです。」
ヴィース:「……正義の心、つまり感情、非物質をフリーエネルギーに変換する技術。
一見、とても素晴らしい技術に聞こえる。
だが、それを人間に運用して出来たのは……」
N:Dr.ラプラスの方を向いていたヴィースは再び、シンイチを見る。
そしてDr.ラプラスに向き直る。その表情には憤怒の感情が籠っていた。
ヴィース:「……出来たのはDr.ラプラス、キミにとって都合の良い不死身の壊れ人形じゃないか。」
ラプラス:「否定しません。ですが、これは是非も無い事。
貴方たちが私たちを狙うのであれば。」
ヴィース:「…………。
そうか、マクスウェルにはキミを生け捕りにしてこいと言われているが、まず、話を聞こう。
Dr.ラプラス。キミの目的はなんだ?一応、マクスウェルから一通りは聞いている。
が、しっかりとキミからも聞いておきたい。」
ラプラス:「私の目的ですか。
良いでしょう。私が、貴方たちに仇なし、敵対する理由を。」
ヴィース:「……。」
ラプラス:「では、まず、ヴィース。貴方は先ほど“主(しゅ)”、つまり“神様”と言いましたね。」
ヴィース:「ああ、言ったね。」
ラプラス:「その“神様”は本当にいますか?」
ヴィース:「……何が言いたいんだい?」
ラプラス:「目的を話す上で大切なんです。さ、教えてください。」
ヴィース:「……僕はいると思うよ。
元々僕は修道士でね。仕事柄というか“生前柄(せいぜんがら)”いると信じている。
それがどうしたんだ?」
ラプラス:「そうですか。では話しましょう。
私の目的は、その神様とやらの“証明と製造”です。」
N:ヴィースは更に顔を顰める。
ヴィース:「ほう。主(しゅ)の“証明と製造”。
実に不遜且つ傲慢、罰当たりも良い所だね。
天才故の思い上がりかい?」
ラプラス:「そうかもしれませんが、そうじゃないかもしれません。
が、天才なのは変えようのない真実ですね。」
ヴィース:「本当に口が減らないね。
とにかく、Dr.ラプラス。お前は殺さなければならない存在だ。
神様の製造、それは一見不可能な行為でしかないが、お前は本当に造りかねない。
そして造り出されたモノが如何に邪悪か、それは彼が証明してくれているからね。
けど、マクスウェルの言う通り生け捕りで抑えておくよ。」
ラプラス:「そうですか。まぁ、そうなりますよね。
ですが生憎そう簡単に殺されるわけにも捕まるわけにもいかないのでね……!」
N:Dr.ラプラスがラプラスモービル目掛けて駆けだす。
ヴィースは彼女には戦闘能力は備わってないハズとほんの一瞬困惑したが、直ぐに駆けだす
ヴィース:「遅い!」
マクスウェル:「本当に遅いな。」
ラプラス:「ッ!?」
ヴィース:「ッ!!」
N:Dr.ラプラスは捕らえられた。
が、彼女を捕らえたのはヴィースでは無く、突如として音もなく現れた男だった。
ヴィース:「お……っとォ……まさかアンタ直々に出てくるとは、ね……。」
ラプラス:「マクスウェル……局長……!?」
マクスウェル:「やはり私の存在に気付けなかったか。
ふむ、ネガティヴエグジスタンスの認識阻害能力は想定以上にお前に効いている様だな。」
ヴィース:「アンタが直接来るのなら連絡くらいくれたって良いじゃないか。
どういう風の吹き回しだい?
それとも僕って信用されてないのかな??」
マクスウェル:「別に、ただのきまぐれだ。貴様が後れを取ると思ったわけではない。」
ラプラス:「ッ」
マクスウェル:「……久しぶりだな。……ここではラプラスと言っておこう。
どうやらお前はここで詰みの様だな。」
ラプラス:「いいえ?そうでもないと思いますよ?」
マクスウェル:「ほう、お前には見えるのか。この中での勝ち筋を。
流石、“全てを観測した者(ラプラス・デモン)”だな。
お前には私が何を考えているか、この後どの様な言葉を紡ぐかも、“本来は”分かっている筈だ。」
ラプラス:「……。」
マクスウェル:「だが、今のお前には私の次に発する言葉は分からない。
そうだろう?
何故なら──」
ラプラス:「(被せる感じに)──“何故ならネガティヴエグジスタンスによって想定を阻まれてるからな。”
でしょう?
それくらいであれば、わざわざ観測するまでもありませんよ。
それに、マクスウェル局長が現れてからここまで、全て、想定通りです。
今この瞬間に私の活路が開きました。」
マクスウェル:「……ほう。」
ヴィース:「ぐおッ!!」
マクスウェル:「──ッ」
N:何もかによって吹き飛ばされるヴィース。
その何者か、とは──
マクスウェル:「亘理 進一(わたり しんいち)……
いいや、改造戦屍(かいぞうせんし)ファルシファイ……。」
☆ファルシファイ:「「ギ……ギ……ギガガガガガ……ガァ……ッ!!」」
N:断片解錠前に深手を負ったからか、あまり動きが良いとは言い切れない。
がしかしッ!ファルシファイは立ち上がった!
マクスウェル:「……これが、お前の言っていた活路か。」
ラプラス:「そうです。勿論、これだけではありません。
ファルシファイッ!二段階目断片解錠を承認しますッ!
さあ!ARTS(アーツ)!変化しなさいッ!!」
☆ファルシファイ:「「……オ、オォォダァァァ……ッ!カ……カクニンッ!!
ウォオオオオオオーーーームッ!!!
“─二段階目断片解錠(アペンドリリース)─”ッ!!」」
マクスウェル:「二段階目の解錠か。
はてさて、どうなるか、見せてもらおうか。」
N:ファルシファイの装甲が砕け初め、ひび割れの隙間から光が漏れだす。
そして──
☆ファルシファイ:「「キッシャァアアアアアアアアアアッ!!」」
マクスウェル:「……黄金の装い、か。」
ラプラス:「変わったのは勿論見た目だけではありません!」
☆ファルシファイ:「「グォオオオオオッ!!」」
マクスウェル:「ほう。」
N:瞬きする間も無くマクスウェルに接近する。
マクスウェル:「速い。が、しかし、ヴィースッ!!」
ヴィース:「あぁいよッ!!」
☆ファルシファイ:「「グガァッ!!」」
ヴィース:「何ッ!!?僕の蹴りを掴んだ!?だとぉッ!!?」
N:確実にファルシファイの認識外からの超高速移動による飛び蹴りの筈であった。
だが、その一撃をいとも簡単に受け、逆に捕らえた!!
ラプラス:「今ファルシファイはヴィース!貴方の速さを覚えました!
そしてッ!適応したのですッ!!」
ヴィース:「Dr.ラプラスゥ!!小癪なァ……!!!」
ラプラス:「ファルシファイ!ヴィースを倒しなさい!!」
☆ファルシファイ:「「アイアァアアアアアアアアアアアアッ!!!」」
ヴィース:「うおッ!!?」
N:ファルシファイの手刀を寸での所で躱すヴィース。
持ち前の速さを適応され、成す術が無い、そう脳裏に過る。
マクスウェル:「狼狽えるな!ヴィース!
貴様の力はそんなものでは無いだろう。貴様も開放しろ。」
ヴィース:「──ッ!!マクスウェル!しかしッ!」
マクスウェル:「私の事は気にするな。そも、気にしている場合では無いだろう。
“─指令(オーダー)─”ッ!
Dr.ラプラスの傀儡ファルシファイを、全力を以って迎撃せよッ!!」
ヴィース:「……くッ!相分かったッ!!くれぐれも死んでくれるなよ!マクスウェルッ!!
制御状態を反故するッ!我が内在宇宙を燃やし、お前を燃やすッ!!
“─神速の更に、更に更にその向こう側へ(プルス・ウルトラ)─”ァアアアッ!!」
N:ヴィースの“神速逸脱(アクセラレーション)”は世界と若干ズレる事で、世界の法則から抜け出すのが本領である。
重力だの慣性だのから若干解放され常人よりも何倍も早く動いている。
そして、“神速の更に、更に更にその向こう側へ(プルス・ウルトラ)”。
アクセラレーションとは逆に、自身世界から抜け出すのではなく、
“世界をヴィース自身の内在宇宙、つまり内包世界が浸食する現象”である。
浸食された世界はどうなるのか、それは──
ヴィース:「燃え消え失せろッ!!」
N:──焼却され、消滅してしまうのだッ!!
☆ファルシファイ:「「ッ!!」」
ヴィース:「ファルシファイッ!討ち取らせてもらうッ!!」
N:ヴィースは勝利を確信した。
これを放ち、倒す事が出来なかった相手は居なかったからだ。
だが、ファルシファイはいままで焼き消された諸共とは違ったッ!!
☆ファルシファイ:「「ネ、ネ、ネガティヴ、エグジスタンス、シールドォッ!!」」
ヴィース:「何ッ!?」
ラプラス:「ッ!!」
マクスウェル:「……。」
N:“Negative Existence Shield(ネガティヴエグジスタンスシールド)”。
それはキタガワが使った能力。それを、ファルシファイが使ったのだ!
ネガティヴエグジスタンスシールドがプルス・ウルトラ諸共ヴィースを呑み込む。
ヴィース:「なッ、なんだとォ!!!」
ラプラス:「……私が認識していないファルシファイの能力!?」
マクスウェル:「……。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
N:ネガティヴエグジスタンスシールド内。
ヴィース:「な、なんだここは……。
……!ファルシファイ!」
☆ファルシファイ:「……。」
N:宇宙の様な空間が広がる中でファルシファイとヴィースの二人だけが存在していた。
ヴィース:「聞け!ファルシファイ!
いいや、亘理 進一(わたり しんいち)!!
キミはDr.ラプラスに利用されているんだ!
アレの言葉に耳を傾けてはいけない!!」
N:ヴィースはシンイチに訴えかける。が、しかし──
ヴィース:「……駄目か……!
……ッ!!なんだ?ワタリ シンイチとの距離が……離れて……!」
N:離れていく。
これは彼らが和解出来ないという暗喩なのか。
進一とヴィースの物理的な距離はどんどんどんどん遠くなる。
ヴィース:「……ッ!
まずい!!そんな予感がするッ!
アイツから遠のけば遠のくほどネガティヴエグジスタンスシールドからの脱出は不可能になっていくと!
そう僕の頭が叫んでいるッ!」
N:ヴィースは駆ける。ファルシファイに向かって。
だが、普通に走っていては遠のく速さに追いつけず、
距離をどんどん離されてしまう。
ヴィース:「この僕がッ!遅いだなんてッ!
くッ!!“─高速(アクセラレーション)─”ッ!!
まだッ!足りないッ!!
“─音速(アクセラレーション)─”ッ!!!
うおおおおおおおおおおッ!!!」
N:ヴィースの速さは音速に達した。
が、しかし未だに距離を離されていく。
ヴィース:「くっそぉおおおおおおおお!!!
“─神速(アクセラレーション)─”ッ!!!!
まだッ!足らないッ!かぁッ!!
うぅうううおおおおおおおおおおおおおおッ!!
プルスッ!!!!!!ウルトラァアアアアアアアアアッ!!!!!!!」
N:ヴィースは神速を超え、更なる速さに到達した。
そして視界にファルシファイを捉える。
ヴィース:「ファァアアルシファァアアアアアアアイッ!!!!!!
─────────ッ!!!」
N:更なる高みに登ったヴィースはファルシファイを倒さんと駆ける。
それに対し、ファルシファイは構えていた。
ファルシファイは分かっていたのだ。ヴィースが自分に辿り着くと。
故に、構えていた。赤く燃え猛る剣をッ!!
☆ファルシファイ:「「ギギ、ギギギ……!!」」
N:ファルシファイは振りかぶる。ヴィースが己に到達するその瞬間に。
☆ファルシファイ:「「ダッシャァアアアアアアアアアアアッ!!!!」」
N:“─改造されし炎の巨人の剣(ファルシファイ・レヴァンテイン)”─ッ!!!」
ヴィース:「ぐがががががががががぁああああああああああッ!!」
N:ヴィースは縦に一刀両断された。
斬られた部分から炎が噴出し、全身が焼け、そして爆発した。
☆ファルシファイ:「「……ギギギギギギギギ……ギギ……」」
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N:ヴィースが両断される瞬間の、二人の共有精神世界での出来事。
共有精神世界、それは他の存在を許さない二人だけの世界。
ここでは現実世界の“須臾(しゅゆ)”は、無限であり。永遠は一瞬。
時間という概念は歪められる。
そんな中でファルシファイ、ではなくシンイチとヴィースは相対していた。
再びヴィースは言葉を投げる。」
ヴィース:「亘理 進一(わたり しんいち)、お前は利用されてるんだ。」
☆進一:「そうかもしれないな。」
ヴィース:「だったらッ!!」
☆進一:「それでも、俺はラプラスの味方をする。」
ヴィース「……くっ!無駄か……ッ!」
☆進一:「けど。」
ヴィース:「……?」
☆進一:「もしもの時は俺が止める。」
ヴィース:「…………そうか……
じゃあ、僕も君に託そう。
いやはや、言われた通りだった……マクスウェルには勝てないな……。」
☆進一:「……勝手にしろ。」
間。
☆進一:「一つ、教えてくれ。」
ヴィース:「何をだい?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
N:ネガティヴエグジスタンスシールドの外側。
マクスウェル:「これが、二段階目断片解錠か。」
ラプラス:「……そうかもしれませんね。
そして──」
N:ネガティヴエグジスタンスシールドがひび割れ、中からシンイチのみが出てくる。
ラプラス:「──私たちの勝利の様ですね。」
☆進一:「……。」
マクスウェル:「その様だな。
だがな、こうなるのは私の想定通り、いいや、予定通りだ。」
ラプラス:「強がりですか?」
マクスウェル:「いいや、事実だ。
そもお前の傀儡くらいであれば私一人でも倒せる。」
ラプラス:「ほざくじゃありませんか。
──ッ!?」
☆進一:「何ッ!?」
N:マクスウェルは瞬時にシンイチの懐まで近付いてきた。
マクスウェル:「──事実だからな。フンッ!!」
☆進一:「ぐぉおおッ!!」
N:シンイチの腹部に一撃、拳を叩き込む。」
☆進一:「ぐぁあああ……!!」
ラプラス:「シンイチッ!!」
N:人類保安機関“マクスウェル”局長。彼の圧倒的な戦力にDr.ラプラスは恐れを抱く。
☆進一:「くっそぉッ!やられっぱなしでいられるかよッ!!
うぉらッ!」
N:断片解錠もしないままマクスウェルに殴り掛かる。
マクスウェル:「どうした。動きが鈍いぞ。ヴィースとの戦いで大分力を使い切っている様だな。
もはや、断片解錠も、出来ないか。」
☆進一:「うっるせぇええええええええ!!!」
マクスウェル:「隙あり。」
☆進一:「ぐふぉおっ……!」
N:シンイチの頭部を手刀で貫く。
☆進一:「が、があ、ああ、あ、が、が、が……」
マクスウェル:「ふん……。」
ラプラス:「シンイチ……!」
マクスウェル:「さて、これはどれくらいで再生する?あと何回立ち上がる?
私は何度でもこれを壊してやろう。
ラプラス、お前のやる事なす事全て、全てを壊そう。」
ラプラス:「……ッ。
…………良いでしょう。私の前に立ちはだかるのであれば──」
☆進一:「ぬんッ!!」
マクスウェル:「ッ!!
もう立ち上がった、か。」
ラプラス:「え……?」
N:シンイチはDr.ラプラスの想定よりも早く立ち上がり、マクスウェルに蹴りを入れるが、防がれる。
☆進一:「ああッ!お前を倒す為になぁ!!
ラプラス!大丈夫か!」
ラプラス:「……!はい!大丈夫です……!」
☆進一:「よしッ!
マクスウェル!てめぇにラプラスは触れさせないッ!」
マクスウェル:「ほう。」
N:シンイチは満身創痍。しかしマクスウェルは無傷。
いくらシンイチが吼えようとも、戦力差は絶望的だった。
ラプラス:「……このままでは…………
……。
……シンイチ。」
☆進一:「どうした。」
ラプラス:「……ごめんなさい!シンイチ!」
☆進一:「あ……?」
ラプラス:「ARTS発動!ファルシファイッ!」
☆進一:「ラプラス……?何を……」
ラプラス:「“─暴走解錠(インテンションデリート)─”ッ!!」
☆進一:「ぐ……ぉ、お、ぉ、おおおおぉぉぉおお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛ッ!゛!゛!゛!゛!゛!゛
あ゛A゛a゛ア゛あ゛ッ!゛!゛ラ゛プら゛ス゛ッ!゛!゛!゛!゛」
ラプラス:「ごめんなさい……!」
N:“暴走解錠(インテンションデリート)”。
シンイチの意志を度外視したファルシファイへの変身。
それだけではない。暴走解錠は自我を封印されてしまう。
マクスウェル:「私に勝てないと察しての亘理 進一(わたり しんいち)の精神、肉体の崩壊の可能性を無視した暴走状態。
傀儡人形ここに極まれり、か。
これもまた、私の予定通り。
……では、貴様の出番だ。」
N:そこに現れたのはかつてファルシファイに敗れた男だった。
戦いは更なる混沌に陥っていく。
───────────────────────────────────────
To Be Continued…