第三話―君以外は
登場人物
・榊原 悠(さかきばら ゆう):
・新坂 正行(しんさか まさゆき):
・乾 ガブリエル(いぬい がぶりえる):
・天咲 樹(あまさき たつき):
・名護 雅人(なご まさと):
・初瀬 光実(はせ みつざね):
・咲倉 伊織(さくら いおり):
・青葉 龍(あおば りゅう):
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第三話―君以外は:前半
BGM:静かな朝的なの
SE:もぞもぞとか?
朝。窓から入る柔らかい日差しで目が覚める正行。
億劫で無気力な感じ
正「ん……ああ……朝、か…… クソったれな朝だ……
チッ……大学……面倒臭いな……
昨日も一昨日も頑張ったし、サボろうかな……」
SE:ドアを叩く
単位落とすぞ、正行。
そんなダメな医大生の部屋のドアがコンコンと優しく叩かれる。
ドアは開かれない。ドア越しに声がする。
悠「朝だよー!起きてー!」
SE:ガバッ起き上がるみたいなの
寝直そうとしていた正行。悠の声を聞いて考えを改める。
正「良い朝だ。素晴らしい。
それに、おれ……僕は学生なんだ。学校に行かねば。
んん~~……(伸び)
さ、悠の手伝いでもしようか」
~~~~~~~~~~
タイトルコール入る感
BGM:引き続き朝っぽいの
SE:階段を降りる
カチャカチャと陶器がぶつかり合う音
料理している音
ダイニング。悠はキッチンで朝食を作っていて、正行より先に起きていた樹、ガブリエルが皿を並べたりしている。
樹「あ、おはようございます。新坂先輩」
ガ「おはようっす!ユッキー先輩!」
正「ああ、おはよう
二人共」
二人をチラとだけ見て悠の方に向く。
SE:階段を降りる
続々と降りてくる他の住人
龍「おはよう……ござい……ます……」
伊「はよぉー……」
雅「はぁ~……おはようございます
……チッ!離せっ!」
光「歩くのしんど~い……
支えてよ~ぅ」
光実と雅人のイチャイチャでそちらに気付く。
正「あ……おはよう、皆」
そして本命の悠に、
正「おはよう悠」
内心悠の返しをワクワク待っている正行。
料理中というのもあって空返事な悠。
SE:ジュワーとか
悠「んーおはよ」
勝手に期待して勝手に傷つく正行。
正「……」
無論勝手に傷ついてるので悠は気付かない。
ごく普通に正行に向かう。
悠「……?
新坂、朝ご飯できたよ。
早く席に着いて」
我に返る正行。
正「……あ、あぁ、うん」
SE:足音とか
座る音的なの
カチャカチャと食器と箸があたる音とか(朝食を食べてる)
みんな席に座り、悠が問う。
悠「今日の皆の予定ってどんな感じかな?
差し支えなかったら教えて欲しいな」
管理人としての悠。
それに応える皆。
樹「俺とガブリエルは今日一日休みなので一緒に出かける予定です」
ガ「二人でお散歩っすー!」
雅「俺はフツーに大学なんで、大学に行ってきます」
光「僕は講義ないですけど、サークル活動してきますー♪」
龍「ボ……ボクも……大学……です……」
伊「俺も大学っす。その後バイトで、今日も夕飯時より遅く帰るかもっす」
悠「分かった。咲倉の分はラップに包んでおくよ」
伊「あざっす」
正「……僕は大学だね。
悠。せっかくだし、一緒に行かないか?」
悠「ん?ああ、ごめんね。
今日は午前中休む予定なんだ」
まさかの返答につい理由を問う正行。
正「……え?どうして?」
少しイタズラっ子っぽく笑いながら、
悠「新坂風に言うなら“昨日はちょっと頑張りすぎたから、
今日は自主的に休講することにした”んだよ。
ちょっと今のうちに片付けたいお仕事もあるからね」
その言葉を聞くのは二度目のガブリエルは思った。
ガ(全休にしないあたり悠さんは真面目なんだなー)
ボソッと言う正行。
正「別に僕は不真面目って訳じゃないけどね」
ドッキリするガブリエル。
ガ(んんん!?心読まれた!??)
正「そっか……
だったら……仕方ないね……
じゃあ、僕はもう行くよ
ごちそうさま」
SE:ガタッと席を立つ音
悠「ん、お粗末さまでした。
いってらっしゃい」
BGM:なし
SE:足音
自分の中で生じた黒い何かについて考える正行。
正「……なんだ?凄くもやもやする……
なんでだ?この感じは……一体……」
~~~~~~~~~~~~~
BGM:日常感あるの
後日。おやつ時。
リビングで樹に勉強を教えている正行。ガブリエルや伊織の世話的なのをしている悠。
正行、樹視点なのでガブリエル、伊織、悠の声は少し遠い感じ。
ガ「ククノチさーん。これってどうすれば良いんすかー?」
悠「あーそれはそこに置いてれば良いよ。
俺が後でやっとくから」
伊「兄貴ー冷蔵庫の中にあるプリンって食べちゃって良いんすかねー?」
悠「クリームとか乗ってたりするー?」
伊「あー乗ってるすよー?」
悠「じゃあーいいよー!
ところでさー!乾と咲倉はその呼び方改めようとか思わないかなー?」
間。
返事はない。
悠「も、もしかして無視―?」
愉快なシェアハウスの面々であった。
BGM:なし
その様子を見ていたというか、聞いていた正行。
嫉妬ですよ。コイツは。
正「……納得いかない」
キョトンとする樹。
樹「……え?」
BGM:日常感あるの
その声で我に帰る正行。
正「……あ、ごめんね。なんでもないよ。
えっと、ここはこうして……あ、そういえば」
樹「はい。なんですか?」
正「この間乾君とお出かけしたんでしょ?
どうだった?楽しかった??」
あからさまに話題を持ち出してさっきの自分を忘れてもらおうとする正行。
楽しそうに話し出すも、後半少し声のトーンが下がる。
樹「え、ああ、楽しかったですよ。
久々に映画とか観れましたし。あと……ガブリエルと一緒に居ると、
自分の運動不足具合がよくわかります……」
まさかの返しに苦笑い。
正「あ、そう……乾君よく動きそうだもんね……
というか、よく動くもんね……」
樹「ええ……少し今も身体が軋んでます……」
正「そ、そう……」
樹からも正行に質問を投げる。
樹「そういえば、あの日はどうしたんですか?」
正「ん?あの日って……いつ?」
樹「あ、失礼しました。言葉足らずでしたね。
新坂先輩が悠さんを連れて何処かへ行った日ですよ。
“夕飯の心配はいらないよ”って言伝を残していった日です」
少し間ができ、思い出す正行。
正「あっ……ああ!乾君が料理したいって言った日か。
あの日は、どうもしてないよ」
正行の言葉の意味が分からない樹。
樹「どうも……してない……ですか?」
説明を付け加える正行。
正「うん。悠はほら、世話焼きだからね。
乾君が料理してるのを見てたら、悠が色々とテコ入れしちゃって、
“乾君の手料理”じゃなくなっちゃうだろうからね。
だから、外に連れ出しておいたんだ」
納得する樹。
樹「な、なるほど」
少しため息を吐き、少し暗いトーンで言葉を零す正行。
正「はぁー……折角の機会だから、久々に悠と飲もうかなーって思ってたんだけどね。
なんかその次の日に大事な用事があるとかで断られちゃってねー……
その後は、僕はついいじけちゃって悠とは別行動……てな感じで、
何もなかったよ」
少し苦笑いな樹。
樹「い……いじけるって……
新坂先輩にも、そういうところあるんですね……意外です」
正「そうかな?
最近、悠とまともに話せてないから、少し荒んじゃってるのかもね」
と、冗談交じりに笑いを零す正行。
樹「ああ、そういえば最近悠さん忙しそうですよね。
日が経ったと言ってもガブリエルや咲倉が入ってきたばかりだから、
というのもあると思いますが、それだけではなさそうですよね」
正「そうだね。
僕達大学院生は、本来はもっと忙しいモノだし、
それが当たり前で、それは仕方ない、のかもしれないね……」
~~~~~~~~~~~~
BGM:少し暗めな感じかなし
正行の部屋。
ベッドで横になり、自分に言い聞かせる様に呟く。
正「……そう、“仕方がない”んだ……
俺が如何に納得できようが、できまいが……悠は忙しい……
仕方が無い……そう、仕方が無い……」
間。
頭を振り、気を持ち直す様に、
正「はぁー……暗くなっても仕方が無いな……
少し……楽しかった思い出に耽ってみようかな」
~~~~~~~~~~~~~~
BGM:静かな感じ?
回想その1。高校一年の春。
悠「あ!新坂君!」
正「ん?」
悠「やあ!同じ学校だったんだね!
よろしく!
あ、俺の事分かる?同じ中学校だったー」
正「榊原悠……君……だよね。
分かるよ。よろしくね。
というか、俺たち同じクラスだよ?
気付かなかった?」
少し申し訳なさ気に笑うDK悠。
悠「あ、ああ……そ、そうだったの……?
ごめんね?」
さっきとは全然違う態度でつい吹いてしまう正行。
正「っぷ……あはははは!」
なんで笑われてるのか分からない悠。
悠「……え?」
正「……アハハ。気にしてないよ。
俺は榊原君の後ろの後ろの席だったからね。
気づかないって事はありえなくないさ。仕方ないよ。
……改めて、よろしくね」
その返しに、ホッとして笑顔になる悠。
悠「ああ!これからの高校3年間、よろしくね!」
~~~~~~~~~~~~~~
BGM:なし
回想その1終了。
笑みを浮かべる正行。
正「あれが……悠との最初の会話……だったな。
悠はあの時から人気者だったなー
明るくて元気で俺とも仲良くしてくれるくらい優しくて……
少し、抜けてる所もあったけど……」
~~~~~~~~~~~~~~~
BGM:少しハイカラなのとか?
回想その2。高校3年の冬。
悠が正行にある話を持ちかける。
正「え?シェアハウス?」
悠「そうそう。俺の家、シェアハウスでさ、新坂が進学する予定の大学ってさ、
新坂の家からだとかなり遠いじゃないか。
それでもし良かったらだけど、ウチに来ないかなって……」
正「ああ、良いよ」
即答である。
悠は拒否されると思っていたので、苦笑いしながら言う予定だった言葉がまず漏れる。
悠「あ~そ~だよね~やっぱりだ……め……え?
良いの?」
正「うん、良いよ」
悠「ホントに良いの?」
じとーっとした視線を送り、言葉を付け加える。
正「……鬱陶しいな。
良いって言ってるじゃないか。
ちょうど一人暮らしする為のアパートやマンションを探していてね、
お前の持ちかけてきたその話は非常にありがたいよ」
最初は納得するものの、正行の異常性に気が付く。
悠「あーそうなんだ……って、え?
もう家探ししてるの!?」
キョトン正行。
正「え?ああ、うん。そうだけど?」
悠「まだ入試やってないよね……?
ていうか、もしも既にやってたら、
同じ大学を志望してる俺受けてないことになるんだけど?
俺受けずして落ちちゃってる事になってない?」
正「何言ってるの?悠は馬鹿なの?」
顔が青くなる悠。
悠「……え?やっぱり……もう……入試……」
正「まだ冬休みにも入ってないし、一般入試で受ける俺達は2月だよ……」
ホッとする悠。
悠「……ホッ。そっか。そうだよね!良かった……!
ちょっと……心臓に悪かった……
……でも、やっぱり変じゃないか?」
正「何が?」
悠「だって、まだ合格どころか、入試を受けてすら居ないのに、家探しだなんて、
気が早すぎるんじゃないかな?」
少し間ができる。
正行が悠の疑問に答える。
正「まー気は早いかもね。
でも、落ちる気がしないから、既に家探しをしていたんだ。
それに、そんな事を言ったら、
シェアハウスの話を持ちかけてきた悠も中々におかしくないか?」
悠「ん?いや、俺は“候補としてウチもありますよ”って、
頭の済にでも置いてもらっておこーかなーっと……
そもそも、断られるか、考えとくって言われると思ってて、
即答されるなんて思ってなかったし」
正「そっか。
まぁ、そういうことで……俺の部屋、用意しててね。
もう住む場所を決める事が出来たし、
元々受かる気満々だったけど、絶対に受からないとね」
今の正行には無い朗らかさのある決意の笑みを見て、悠も笑う。
悠「……うん、用意して待ってるよ。
絶対に受かろうね!!」
~~~~~~~~~~~~~~
BGM:なし
笑みどころか気持ち悪い笑い声が漏れる
正「フフ……フフフ……
あの時は本当に嬉しかったな……
元々、ここに住む予定だったけども、
まさか、悠の方から話を持ち込んでくるとは思わなかったな……
悠と同じ大学……悠と同じ住居……
フフフ……」
しばらく笑いが漏れてたけど、再び場が静まる。
正「…………。
何時からだろう……
何時から、悠とまともに話してない……?
何時から、悠の笑った顔を見てない……?
何時から、悠と目を合わせてない……?
何時から…………
……もしかして……悠は……俺の事……き―……」
溢れる黒い気持ちを抑えるように口を閉ざす。
再び頭を振り、深呼吸をする。
正「……ふぅー……落ち着け……落ち着こう……
きっと、お腹が空いてるんだな……
(SE:ガサゴソとか)
だからこんな気持ちに……あれ?
貯蔵してたチョコが……ない……しまったな……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
BGM:明るめなの
スーパー。夕飯の買い物をしている悠。
夕飯の献立を考えながらお店の中を徘徊する。
悠「ん~……今日の夕飯、どうしようかなー……
昨日は生姜焼き、一昨日はコロッケ……その前はシチュー……」
随分と濃いですね奥さん。
悠「困ったなー……朝何が食べたいか聞いておけば良かったなー
……ん?あれ、新坂?」
お菓子売り場くらいまで徘徊してたら正行を見つける悠。
正行「……」
悠「新坂ー」
正「……ん?
……なんだ、悠か」
やさぐれてる故に普段よりキレッキレです。だけど不意の悠との遭遇で心の中花園が広がってる。
シェアハウスの時とは全然違い、口も愛想も悪い正行に少したじろぐ悠。
だが、悠的にはこちらの方が自然。
悠「な、なんだ、って……
まぁ……いいや……
新坂はこんな所で何をしてるの?」
病んでる奴がきれると言い回しがくどくなるらしい。
正「……ここはモノを買う場所だろ?
買い物しに来たに決まってるじゃないか。
何を当たり前の事を聞いてるんだ?馬鹿か?」
馬鹿にされるのが嫌いな悠。少し、ほんの少しだけムキになる。
悠「ゔ……そこまで言う事ないじゃないか!
それに、何かを買いに来たかくらい分かってるよ!」
正「じゃあ、聞くことないじゃないか」
と言ってまたお菓子選びに戻る。実は顔面蒼白。めっちゃ後悔してるやつです。ハァイ
イラっとしたが、ここは大人でオカンな悠。とりあえず自分に非があるとクールに認め、会話を再開しようとする。
悠「……はぁ、俺の聞き方が悪かったね。
新坂は何を買いに来たの?」
再び悠に向き直り、口を開く。
正「……チョコレートを買いに来た」
正行の返しに疑問を持つ悠。
悠「チョコを……?
新坂っていつもチョコは通販で買ってるよね?
なんで今回はわざわざ自分で買いに?」
ため息を吐き、事情を話す正行。
正「はぁ……チョコレートが切れてる事に、今日……
というか、ついさっき気づいたんだ……。
いつもなら残りが少なくなったと思った時に注文してるんだけどね……
今日注文しても届くのは早くて明後日。
でも、なんだか、今日どうしても食べたくってね。
……だからここまで足を運んだんだ」
納得悠。そして通販で思い出して少し顔を歪める。
悠「あ~なるほど。……そうだ……通販と言えば、新坂」
正「ん?なに?」
BGM:少しふざけた感じの不穏感
少し口元をヒクヒクさせてる感じに、
悠「……やめろ、とは言わないから、その……なあ……
大人の玩具を、な……」
イマイチ何が言いたいか分からない正行。
正「大人の玩具?
なんだよ。借りたいのかよ。
良いよ。俺とお前の仲だしな。貸すよ。貸してやるよ」
悠「ち、違うよ!そうじゃないよ!!
あんな痛い思いもうしたくないよ!
そうじゃなくて!
その、もう少し、こう……隠密にっていうか……
頻度を減らしてくれないかな?
この間危うく初瀬が宅配屋さんから受け取ってしまう所だったよ……」
正「仮に受け取られても大丈夫だよ。
確か、プライバシー保護の為に、
外装に商品名とか載ってないようにしてくれてただろ?」
悠「ああ、そうだねープライバシーを保護する為に名前も伏せられてるんだよねー!」
正「あーそういえば」
悠「もしも!仮に!万が一に!俺や新坂以外がそのブツを受け取って、
且つ誰かが自分への配達だと勘違いしてしまったら!
大変な事になっちゃうよ!気まずい空気が流れちゃうよ!」
ぶっちゃけ悠以外との関係がどうなろうとほぼほぼ無関心なので反応がうっすい。
正「あーまぁーそうだねー」
ツッコミを入れる悠。
悠「えぇー……なんでそんなに反応薄いの……もっと危機感持って!」
正「そんなこと言われてもな……
そういう状況になったらどうしようもないだろう。
そんな心配するくらいだったら、
俺から玩具を取り上げるなり、買うのを禁止するなりすれば良いだろう。
というか、普通それくらいはすると思うよ。
悠は、というかあのシェアハウスは自由度が高すぎると思うし」
まぁ、普通そうっすよね。
だが、それは少し嫌な様子の悠。
悠「……そういうのはあまりしたくないんだ。
こう、規制だのなんだのってしたくないんだよね。
自分の部屋では伸び伸びと自由に過ごして貰いたいんだよ。
そういうのもあって、結構良い防音部屋にしてるんだし」
そういうことです。
正「……そうだな。
前にチョコレート切れでイライラしてつい壁を蹴ってしまった時も何事もなかったし」
引き悠。
悠「え……壁蹴る……?」
正「いやー防音もしっかりしてるうえに壁が丈夫だったおかげで、
隣の人と仲違いしなくて済んだよ。
隣は確か名護だったっけ」
BGM:静かな感じの
胃がキリキリしてそうな悠。
悠「は、はぁ……まぁ、何事もなかったんなら別に良いけど……
仲違いと言えば、新坂って何時からそんなんだったけ?」
キョトンとする正行。
正「ん?そんなん、ってどういうこと?」
悠「新坂って前までは人を選んでコロコロ表情変える様な人じゃなかったじゃないか」
あんまり実感のない正行。
正「そうかな?」
悠「そうだよ。
一人称だって今は“俺”だけど、俺以外の人と一緒に居る時は“僕”じゃないか。
思いの外、俺以外の人と接する時は今より柔らかい感じするし」
自覚なし正行。
正「一人称……?まぁ、それは置いといて、
俺が誰彼構わずお前に接するみたいにしてたら、
喧嘩の絶えない毎日になりそうだな」
不服そうに、
悠「んーじゃあ、俺に接する時は妙に辛辣なのはなんでなの?」
これが自分の素だから。それを見せれるのは悠だけだから。と言う事がなんだか気恥ずかしくて誤魔化す。
正「……さぁね。
なんでだろうね」
小声で、
悠「……嫌われてるのかなー」
その言葉を聞き逃さなかった正行。すぐに違うと言おうとする。
正「―っ!ちがっ!そうじゃー」
悠「新坂」
正行の言葉を遮る様に悠が正行の名を呼ぶ。
正「ん……な、なに」
悠「今日の夕飯、何が食べたい?」
予想してなかった言葉に少し戸惑う正行。
正「え?……あっ……え、えーっと……」
悠「今晩は新坂の言ったものにするよ。
出来る限り要望には答えるからね」
間。
微笑みを浮かべる悠。少し困り顔の正行。
正「じ、じゃあ……大根の煮付けが食べたいかな……」
意外な答えである。
悠「え?大根の煮付け……?
えーっと、それは別に良いけど、なんで?」
正「……特に、理由は無い。
ただ、なんだか食べたくなってきただけだ。
それに、そういえば最近こってりとしたものが多かったし、
たまにはこう、あっさりしたものも良いんじゃないか?」
悠「まーそうだね。
じゃあ、大根の煮付けに合う献立にしようか」
正「あぁ……頼む」
悠「よーし、じゃあ、買い物再開しようかな。
新坂はどうする?」
特に理由もなく平然を装う正行。
正「……そうだなー
せっかくだし一緒に回ろうじゃないか。
あ、ついでにこれも一緒に買っといて」
と、言って買い物かごにチョコレートを入れる。
悠「ああ、分かった。
は、80%……いっつも思うけど、新坂ってよくこんな苦い物食べれるよね……」
正「そう?俺は、いつもは100%のやつを食べてるし、
80%はそこまで苦くないと思うんだけどな。
それに、俺はこういうのが好きなんだ。
そんなことより、さっさと買い物を済ませよう」
悠「あーうん、そうだねー」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
SE:お店の扉が開く(ウィーンとか)
BGM:静かな夜的な
SE:足音
買い物を終え、帰る二人。
悠「う~……重い……
ね、ねぇ、新坂……袋交代しない……?」
正「嫌だよ。それに、重さは多分変わらないよ。
目視しただけでも十分分かるだろ。悠のその目はお飾りかなにかの?」
悠「ひ、酷い言われようだ……」
間。
悠が話題を振る。
悠「ねぇ、最近どう?大学とかさ」
久々に喋れて嬉しい正行。なんか口を開けない。
正「……」
不思議に思う悠。
悠「……?新坂?どうして喋らないの?」
正「……」
なんだか喋れない正行。だが、この現象はこれが初めてではないのだ。
悠「……。あー……目つきがいつもよりギンギラギンに……
喋りたくないけど話は聞いていたいんだね。
……久しぶりだなーそれ。いつぶりかなー……まぁ、いいっか」
と、気を取り直してゆっくりと話し出す悠。
悠「俺は最近忙しいなー。
大学の事とか、シェアハウスの管理とかさ。
大学院に進んだら忙しくなるってのは分かってたけどさ……
なんだか新坂より忙しい錯覚に陥るくらいには忙しいねー。
逆になんで新坂が忙しくなさそうなのが理解できないんだけど。
でも、乾も咲倉も良い子だからシェアハウスの方は楽しいかなー
うん、忙しいけど、辛くはない。充実してる証拠かな」
また間が出来る。
勇気を振り絞り言葉を音にする正行。
正「なぁ、今日久しぶりに一緒に飲まー」
SE:携帯の着信
悠は正行の声が聞こえてなかった様だ。
悠「ん?ちょっとごめんね。」
SE:ピッとか
悠「もしもし?」
固まる正行。
正「えっ……あっ……」
BGM:不穏なBGM
SE:心臓音(遅めの)
正行の心に巣食う黒い何かは肥大化し、憤怒へと変わる。
正「……」
電話をしている悠。
悠「はい、はい……はい……分かりました。
その事についてはー
(SE:バチバチッ)
うっ!!」
SE:倒れる(ドサッとか)
無言で立つ正行。
正「……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
君以外は:後半
悠の夢というか回想。
高校の時の記憶。学校の帰り道。
BGM:少しふわふわした感じの夕方感あるの
SE:足音
正「“好きになる”ってなんなだろうな」
キョトンな悠。
悠「……どうしたの?藪から棒に?
疲れてるの?」
少し間を空け。事の発端を話す。
正「はぁ……高校生活最後の日だと言うのに、悠は一年の時と何も変わんないなー
違うそうじゃない。隣のクラスの奴に告白されたんだ」
驚く悠。
悠「えぇ!?そ、それで新坂はどうしたの?」
正「断った。
“俺は君に興味がない”ってね」
ジト目な悠。
悠「うわぁ……その子可哀想……
新坂ってばそういうことに関してはほーんっとハートレスだよねー」
正「そうかな……?
相手は俺に気持ちを伝えてくれたんだ。だったら、俺も気持ちを伝えなきゃじゃないか。
むしろ、正直に……愚直なほどに真っ直ぐに本音を伝えたあたり、
優しいと思ったんだけどなー」
悠「まぁーうん、嘘つくよりは良いかもしれないけどさ。
もうちょっとオブラートに包んであげても良かったんじゃないかな?
……それで、なんでその体験をして“好きになる”に関して疑問を持ったのかな?」
正「ああ、それなんだけど。
そいつに“貴方は人を好きにならないの?”って質問されてね。
その時はさぁね、って返したんだけど……ちょっと考えちゃってね。
ほら、俺ってさ、悠の言う通りハートレス、つまり心無い人間かもしれないからねー」
後半嫌味っぽい口調で笑顔を向けられ、たじろぐ悠。
悠「うっ……それ、気にしてるの?
だったらごめんね」
正「いやー?気にしてなんか無いよ?
怒ってもいない。ただ、根に持ってるだけだよ」
悠「それって気にしてるじゃん……許してよ」
正「ああ、勿論許すよ。
それで、さっきの続きだけど、よく分からなくなったんだ。
俺は本当に、お前の事を好きになれてるのかなって」
よくわかってない悠。
悠「どういうこと……?」
今度は正行がジト目で悠を見る。
正「それは……ツッコミ待ちなのかな?」
悠「え?」
ため息をつく正行。
正「……はぁー……まぁ、いっか」
結局のところ何が言いたかったか分からなかった悠。
悠「よくわかんないけど、まぁ、そのうち好きな人とか出来るんじゃないかな。
その時になればきっと分かるよ。」
おかしくってつい失笑する正行。
クッソ遠まわしに告白したけども伝わらなかったので切ない笑顔を作る。
正「っく……ははは……
そのうち好きな人が出来る……か……じゃあ、きっと、もう俺は手遅れだな……
俺はお前が一番大切で、それ以外はどうだっていい……
そう……どうだっていいからな……」
悠「え?それってどういう…―」
~~~~~~~~~~~~~~
回想終了。
悠の目が覚める。真っ暗闇の空間。
状況が理解できない。頭が上手く働かない。
悠「―……うぅ……一体……何が……って……動けない……」
まだ意識が朦朧としているが徐々に状況を把握していく……
悠「……??な、なんで……縛られて……!?
……っていうか……ここどこ……???」
混乱する悠。
SE:扉が開く
扉が開き、光が差す。
正行が入ってくる。いつも以上笑顔で
正「あ?起きた?」
BGM:不気味な感じの
驚く悠。
悠「新坂!これは一体―」
悠の言葉を遮るように喋り始める正行。
正「いやー中々起きないからびっくりしたよー。
ちょっと出来心でスタンガンを悠に使ってみたんだけど、
思ったより威力があったみたいでさ、俺すっごく焦ったんだー
もしかして、悠はもうこのまま起きないんじゃないかって……
でも、良かったよ!ちゃんと起きてくれて。
……痛いところはない?悠?まだ痺れが残ってたりはしない?
ん?ここはどこだって表情してるね。
でも、教えてあげないよ。今日の僕はちょっぴり意地悪なんだ。
今回ばかりは許してね。」
めっちゃ喋る正行。不気味に思う悠。
悠「新坂……?」
悠に名前を呼ばれたにも関わらず、止まらない正行。
正「あ、でも安心して。名護達には心配かけないように、
悠は大学に泊まり込んでるって言ってあるから大丈夫だよ。
夕飯は僕が作ったよ。思いの外上手く出来てさ、皆も美味しいって言ってくれたよー。
嬉しかったなぁー……あ、後で悠にも食べさせてあげるね。
食べた感想は絶対に頂戴ね?ああーそういえばさぁ、悠は気付いてたかな?
最近俺らの周りをうろちょろしてた鼠みたいな奴が居たって。
まぁー多分気付いてないよねー悠は少し危機管理能力が足りないからね。
僕はさーそいつはてっきり、悠のストーカーだと思ってたんだよねー。え?誰かって?」
そんなこと聞いてないです。
正行を静止しようと名前を呼ぶ悠。
悠「新坂……!」
だが止まらない。
正「ほらー悠と同じ学部学科の女でさ。最近割と頻繁に悠に近づいてた奴だよ。
ん?分かんない?ははは、まぁ、そんな奴認知する価値も無いさ。
気にしない気にしなーい。
それでさー正直、見てて目障りだったからさ、
消えてもらおうかなーって、そいつを捕まえたんだ。
そしたら吃驚仰天!そいつのターゲットは悠じゃなくて僕だったんだよねー。
いやー本当にびっくりしたなー。
“好きです。私と付き合ってください”なーんて言ったんだけどさー
こんな奴に興味なんかないし、ストレートに、丁重に、お断りしたんだけどねー。
全く……俺を好きになるなんて愚かだなー馬鹿だなー
あーそういえばーアイツ、猫サーに所属してるって言ってたなー。
全然気付かなかったなー」
ダーク正行。
再び静止しようと正行の名前を叫ぶ。
悠「新坂!!」
BGM:なし
止まる正行。すぐに笑顔を作り、応答する。
正「ん?どうしたの?悠?」
さっきから言いたかった事をまくし立てる悠。
悠「……新坂、どうしたの!?
俺を縛って、こんなよく分からない所に閉じ込めたりして……
それに、なんだかさっきから新坂怖いよ?
大丈夫?
でも、そんなことより早く開放して。俺はこんな事してる暇なんてないんだ。
新坂の遊びに付き合ってる暇はないんだ!
だから―
(SE:殴る)
っぐあっ……!」
悠に腹パンをかます正行。ボソッと、
正「うるさいなぁ……黙れよ……」
痛みで意識が飛びそうになる悠。
悠「うぅ……あ゙……ぐっ……げほっげほっ……げほっげほっ……」
殺人鬼の様な雰囲気から一転さっきの気持ち悪い正行に、
正「あっ……ごめんね?悠……痛かったよね……
嗚呼……痛みを……和らげないとね……
……その、見つめられてると恥ずかしいから……目隠し、しちゃうね」
悠「あっ……!新坂―っ!」
目隠しをつけられる悠。
ここから濡れ場スタートです。
BGM:濡れ場感あるやつ
痛みを和らげる為なのかキスをする正行。
ちゅっちゅぱちゅぱと水音が鳴る。
正「んっ……どう?痛みは無くなった?」
口を離し、耳元で囁く正行。
耳が、というか五感が敏感になっててビクッとなる悠。
悠「んっ……あぁ……!」
正「おっと……!ごめんね。
でも、痛みは和らいで来たんじゃないかな?
もっと色々やってみようか」
SE:ローター(ヴヴヴヴヴ……的な)
正「聞こえるかな?」
その音を聞き悪寒が走る。
悠「……―っ!!
し、新坂…!ま、まさかっ!」
優しく微笑む正行。
正「あはは、嬉しそうな声出しちゃって……
そのまさかだよ。
悠の大好きなローターだよ」
震えるローターが悠の首筋辺りに当たる。
SE:ローターの音を少し大きく
悠「っあ!!!」
クスクス笑う正行。
正「―っフフフ……悠は面白いな。
さて……ちゅぱっ(指を舐める)……
悠、お尻失礼するよ」
悠「っちょ!新坂!待って!ああっ……!」
悠の菊門を指で解す正行。
SE:水音?
悠「っくぅ……!んん……!!あっ……ああ……!!」
正「……おや?思った以上に湿ってて、良い感じに入りそうだ」
悠「しん……さか……やめ……っ」
既に悠の声は正行の耳には入っていない。
ローターを悠の菊門に押し込む。
悠「ああっ!……あああっ!!
んっ……くぅ……!」
ご満悦な正行。
正「ローター入れられて腰をくねらせるほど喜ぶなんて……悠はマゾいなー……
それにしても、可愛いな……
あー……猫耳……猫耳持ってきておけば良かったなー……
そしたら悠の可愛いお猫様姿が見れたのに……
あーあー不覚だった」
悶え続ける悠。
悠「くっ……!……っ!ああっあっああ……!」
その声で正行も大興奮。
正「……はぁー……
ダメじゃないか……悠……
そんな声で……鳴かれたら……抑えられなく……なっちゃうじゃないか……!」
そういってローターをくいっと引き抜く。
悠「……っ!
はっ……!あああっ!!」
正「……よし……十分解れてるね……
行くよ……悠……」
SE:挿入音
正行のモノが悠の中に侵入する。
悠「あっ……!ああぁっ!」
両者共に快感に襲われる。
正「くっ……んん……はぁ……はぁ……
じゃあ……動くよ……悠……!」
悠「まっ……待ってくれ……!
ああっ!あっあっあっあっあぁっ……!!」
正「はぁ……はぁ……!悠……!悠……!!
嗚呼……!」
悠「あっ!ああっ……!ふぁっ!?痛っ!!」
興奮のあまり悠の首筋辺りに噛み付いてしまった狂犬。
正「あっ……!はぁ……ごめんね。
昂りすぎて……首周り噛んじゃった……
ごめんね、悠……ぺろり」
噛んだ場所を舐める正行。
それにゾクゾクっとする悠。
悠「ああっ!んんんんっ!!」
ゾクゾクっとした事で悠の菊門が勢いよく絞まる。
肉棒を締め付けられ、正行の身体に更に快感が走る。
正「―っ!!あ゙……!あああっ!!
……ああっ!!!
うぅっ……はぁ……はぁ……や、やってくれるじゃないか……
だったら……」
右腕を振り上げ、悠の双丘に叩きつける。
バシンと痛そうな音が鳴る。
SE:叩く
悠「いーっ!ああっ!あっ!あっ!んんっ!!」
正「フフフ……はぁ……良い音だ……
んっ!」
何度も叩く。その度に悠は鳴く。
悠「くぅ……!しんさか……っ!!
やめっ……!ああっ……!!」
叩いているうちに更に気分が高揚する正行。
正「ンフフフ……フハハハハハハ!アッハハハハハハ!!
悠……良いよ!凄く良い……!!
もっとその声を聞かせてくれ……!!」
やばい変態だ
SE:叩く(強め)
先程より幾分か強めに悠の双丘を叩く。
悠「ぐあっ……!ああっ!!ああああっ!!!」
その衝撃で悠のモノから白い液体が噴出する。
SE:射精音
そして、正行も
正「ん゙ん゙……!で、出る……っ!!」
SE:射精音
一旦悠と正行の結合が解除される。
その場に倒れ込む悠。
SE:ベッドに倒れ込む(ドサッとか)
悠「……あ……ああっ……はぁ……はぁ……
んんっ……っはぁ……はぁ……」
その姿に恍惚とする正行。
正「ん……っはぁ……はぁ……
……嗚呼、悠……
綺麗だ……うん……いいねぇ……」
きもいぞ正行。そんな正行とは逆にぐったりとしている悠。
悠「はぁ……はぁ……はぁ……
も……もう、良いでしょ……早く……拘束……解いて……よ……」
正「え……まだだよ……もっと……したい……
悠……悠……!」
再び挿入する正行。
SE:挿入音
悠「くっ……!あぁああっ!!」
激しく腰を振り、打ち付ける正行。
SE:ギシギシパンパン
正「悠……!悠……!!」
悠「んっ……!あっあっあっあっ……!あぁ……!!」
SE:ギシギシパンパン
悠が何気なくとある言葉を零す。零してしまう。
悠「ああっ……!あっ……!
俺のこと……辱め……てぇ……んっ!たの……しい……の?
痛い……事も……いっぱい……あっ……んんっ……!……して……
しん、さかはっ……!あっあっあっあっ……!俺の事……きらい、なの……?
はぁ……はぁ……はぁ……。
……?」
正行の動きが止まる。
不思議というか不気味に思う悠。
BGM:不穏な感じのorなし
悠「……しん、さか?」
ポツリと正行が言葉を零す。
正「……―がう……」
正行が何を言ったか聞こえなかった悠。
悠「……え?なに……?」
正「違う……」
悠「……新坂?」
SE:涙(?)
正「違う……!」
正行の悠への思いを泣きながら吐露する。
正「違う!違う!違う!違う!違うっ!!
違うよ!違うんだ悠!!
僕は……!俺は、悠の事嫌いなんかじゃないっ!!
俺が悠の事嫌いなんて!そんなわけないっ!あるはずないっ!ありえないっ!!
僕はただ!悠と話がしたい!悠に相手してもらいたい!悠に構ってもらいたいっ!!
そう思ったんだ!そう願ってたんだ!!
だけど最近悠が忙しくて……!どれもこれも叶わなくて……!凄く寂しかった……!
僕は……僕は……悠に嫌われちゃったんじゃないかって……怖くなって……!
どうしようもなくなるくらい怖くなって……そしたら何もかもが妬ましくて、
恨めしくって」
BGM:静かで優しい感じの
正「……乾達が……乾と咲倉が悠と仲良くしてるのが、
とてもとても羨ましくて……!俺もあんな風に、悠と話したかった!!
嫌いなんかじゃないよ、悠……僕は悠の事が好きだ!大好きなんだ……!
君と一緒に居たい……貴方と話していたい……お前に構って欲しい……
俺は!アンタだけが大切なんだ……!それ以外はどうだっていい……!
そう……どうだっていいんだ……!!
他の誰かに嫌われるのは構わない!だけど、悠……
悠に嫌われたら……!俺は……俺は……ッ!!
世界にひとりぼっちだ……寂しいよ……嫌だよ……
……頼む……僕を一人にしないでくれ……」
呆気に取られる悠。
悠「新坂……
……あ、拘束が……緩くなってる……」
相変わらず泣いている正行。
正「うぅ……うぅ……ごめん……悠……
嫌いにならないでくれ……悠……」
正行が暴れて緩くなった拘束を外し、目隠しを取り、正行を見る悠。
そして微笑み、優しく、
悠「泣かないで新坂。大丈夫だよ。新坂は独りじゃない。
世界にひとりぼっちなんかじゃないよ。俺が居る……大丈夫……大丈夫……」
正「……独りにしないで……」
新坂の頭を抱き寄せる悠。
悠「うん、大丈夫。
独りになんかしないよ……新坂正行はひとりぼっちじゃない……
新坂……いや、正行には俺が付いてるよ……
ずっとずっと……」
正「うぅ……ありがとう……ありがとう……」
正行の言葉を思いだす。
悠「……“俺はアンタだけが大切なんだ。それ以外はどうだっていい”……か……
……もう高校卒業して何年も経っているのに、正行は変わらないね……
あの時の正行の言葉の意味、分かったよ。
ありがとう……正行……俺の事を大切に思ってくれて……
俺は、嬉しいと思ったよ……
でも、やっぱり痛いのは嫌だからね?」
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BGM:明るい感じの日常系
次の日。悠は開放され、昨日のやぱやぱな正行も元通りに……
悠、正以外「……」
苦笑いな悠。
悠「ね、ねぇ……正行……」
正「なに……?」
悠「あのさ、離れて……くれないかな?」
眉を顰める正行。そして子供っぽく、
正「ん……やだ……」
悠「つぁー……」
困惑するシェアハウス面々。
樹「……えっとー……新坂先輩どうしたんですか?」
正「別に、どうも」
素っ気ない返答をする正行。
光「と、というか、あの人本当に新坂さんなの?
龍くんどうなの?この中だと悠さんの次に付き合い長いでしょ?
僕あんな新坂さん初めて見たよ?
龍「え……いや、えっと……ボクも……あんな新坂さん……初めて……です……」
ガ「な、何がどうなってるんすか……」
雅「ゆ、悠さん……これって、どういう状況っすか?」
困る悠。
悠「えー……そのー正行さ、最近疲れてたっぽくてさ……
そのー……なんかーこうー爆発?しちゃって、こう……なった……かな?」
超絶曖昧適当返答である。
伊「よ、幼児退行ってやつか……人間疲れたらこうなるのか……
気をつけよ……」
悠「ねぇ、頼むよ、正行。この状態じゃ料理できないよ。だから、離して、ね?」
正「やだ」
悠「なんでさ……」
正「俺は、今日一日悠と一緒に居たいんだ……
だけど……俺が離れたら、悠はどこかに行っちゃうだろ……?」
悠「ど、何処にも行かないから」
正「悠はすぐ嘘つくから信じないぞ……
俺がこのシェアハウスに住むって話……
お前から持ちかけてきた癖に忘れやがって……
ここに来た時に、悠に“あれ?なにその大荷物?”
って言われた時は凄く悲しかったんだからな……
さすがにもう気にしちゃいないけど、根には持ってるからな……」
悠「それって気にしてるじゃん!」
正「違う。覚えてるだけだ……だから、絶対に離さない」
悠「うぅ~……弱ったなー……」
伊「新坂さんが“俺”って言ったぞ……」
樹が苦笑いながら言う。
樹「あのー……じ、じゃあ今日は料理俺がしますよ
悠さんはのんびりしててください」
ガ「あ!じゃあ、俺も手伝うっす!」
悠「ああ、天咲、乾……ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えようかな。
ごめんね?二人共」
樹「いえいえ」
ガ「お気になさらず!すよ!」
ボソッと小声でお礼を言う正行。
正「……二人共……ありがと」
ガ「なんか……ユッキー先輩、ワンコみたいっすね」
伊「それお前が言うのか……いや、どちらかと言ったら猫だろ」
悠「……でもやっぱり、ずっと一緒にってのは何かと不便だと思うんだよね。
だからさ、ね?」
正「むー……悠さっきからそればっか……
本当は……一生こうしてたいけど……我慢して、今日一日だけにしたんだ……
むしろ感謝して欲しいくらいだ」
悠「うわぁー理不尽!
マサユキニズムだっ!」
龍「ふてぶてしい……猫……だね……」
光「猫ってよりはオオオナモミ……ひっつき虫……かな……」
雅「な、中々に失礼だぞ……お前ら……」
正行の目に涙が少し貯まる。
正「……なんだよ……嫌なのかよ……
俺と一緒に居るのが、そんなに嫌なのかよ……!
別に痛い事なんてしようと思ってないのに……!」
面倒臭いな正行。
悠「あーもーそういうわけじゃなくってさ……
だぁーどうすれば……!」
正「ぐすん……どーすればって……
今日一日一緒に居てくれれば良いんだよ……
悠成分を補給すれば、しばらく大丈夫だと思うから……」
なかなかに意味のわからない事を言う正行に困惑する悠。
悠「え!?なに!?俺なんか分泌してるの!!?」
ガ「なんかー……大変っすね……」
伊「だな……」
樹「今の新坂先輩はそっとしておくべきだろうな……」
雅「こういう時はあれだな……」
光「触らぬ新坂さんに祟りなし」
龍「うん……」
SE:足音
そう言ってぞろぞろと退場していく皆。
悠「それってどういう……え?あ?えぇ?
皆どこ行くの!?ねぇ!?おぉおおいっ!!」
ひとり嬉しそうな正行。
正「えへへ……悠と……ふたりっきり……」
イイハナシダナー
END