[台本]ヒトが喜劇を所望せずにどうする!
・CAST…一人
○愉快で軽快で軽薄な悪魔
なんだ?この場で拙(せつ)の事を語れと?
そうかぁ!拙について知りたいかぁ!
だが!教えなーいっゾ!
教えてもらえると思った?残念!フハハハハハハハ!!
拙についてはこの物語を拝見し、赴くままに想像するが良い!!
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拙(せつ)が面白く、それに濃厚な”お説教(おはなし)”をしてやろう。
諸君!拙は思うのだ…
”大して心傷に浸りたい訳でもないのに悲劇だけを見るのはなんか辛い”と!
んんん?大きなお世話?フハハハハ!
お世話して貰えるなんて良いことではないかッ!
ともかく!悲劇を見て少々しんみりとして終わるよりも!
もっと!もっと喜劇を見てほっこりしたり、ゲラゲラ笑ったりする方が良い!!
さぁ!拙と共に笑おうではないか!フハハハハハハハハ!!
フハハハハハー…ん?なんだ?何故そんなに喜劇を押し付けるのか、だって?
フッ↑フフーン!それはだなぁ…
実は拙は悪魔なのである…言っておくが、どっかの人形ぶっている人間の
様な”なんちゃって人形”とは違い、れっきとしたモノホンの悪魔だ!
悪魔というものは元来、人間の嫌だなぁ~と思う感情、
悪感情を糧とするモノなのだ。
拙も漏れずそう言うモノなのだが、遠い遠い昔に同胞のつまり、悪魔から出る
悪感情を食してみたのだ。そしたらどうだ!なんと美味!!
どうすればこの味をまた食せるか、それを考えた。
考えに考えた結果!貴様ら人間を楽しませ、幸せそうな感情、
あえて名を付けるならば良い感情”良感情(りょうかんじょう)”で一杯にし、
同胞達の食料を減らし、しょぼーんとさせれば良いと気づいたのだ!
ついでに良感情も中々に良い味をしてるしな。
我ながら悪食で悪辣だが、そこはご愛嬌ということで。
それにそんなことはどうでもいいのだ。
確かに、愛する人にフラレたり、親しき人が亡くなったりしまったりした時に、
悲劇や悲曲を見たり聴いたりするのは実に良いことだ。全く悪いことではない。
そんな時にコメディや少年物の様な青臭いモノを見ても、
返って気持ちが沈む場合もあるし、そもそもイライラしてしまう。
しかし、だからと言ってずっと沈んでいるのもよろしくはない。
いくら落ち込んでも人間は、
…いや生きとし生ける物は生き続けなければならないのだ。
人間の寿命なんぞ高が知れる。しかし、貴様らにとっては短く大切な一生だ。
嘆くのは無駄な時間とは言わん。しかし、一度きりしかない大切な時間なのだ。
立ち尽くしているだけで喚くなどもったいないと思わんか?
思わんか…
まぁ、その気持ちはわからんでもないが、今は拙の意見を聞いてもらうぞ。
ハハハァ!その嫌そうな顔ぉ!微量ながら染み出る悪感情!美味しいぞ!
だが、とりあえず聞け。
嘆き、悲しみ終わる…そんな終焉はあまり面白くない。
如何に辛くても生きていかなければならない。
辛いから、苦しいから、だから死を選ぶ人間の事なんぞ知らん。
勝手に死ねば良い。あ、埋葬はお勧めしないぞ。グールは好きではないからな。
悶々と生きるには少々長い。それが人間の寿命だぞうだ。
終焉に関してはどうしようもない。
しかし、終わるならそれなりに綺麗な方が何かと良いだろう。
フッ…ただ、長く生きた訳でもない癖に”破滅して終わりたい”とか
ぬかす変態も居るがな…。
拙が人間ならば!笑って!満足して!一生を終えたい!と!願うだろう!!
貴様らの文化、”げぇむ”で知った言葉を借りるとして
”完全無欠のハッピーエンド”
これを…拙は貴様ら人間に押し付けたいのだ。
自分も含め、皆が笑って終われる。そんな遠い幻想の様な結末をな。
目指すだけで良いのだ。これを胸に生きて欲しい。
拙は…切実にこれを願う。”せつ”だけに。そう!”せつ”だけになっ!!
…おい。どうした。笑えよ。
まぁ、良い。
どっかの独りよがりな”へへ~ん夢だ夢だ~”とかほざく阿呆みたいに
まるで自分は悲劇のヒーロー、ヒロインなんですーって面する奴は
ポエムポエムしたその発言と
酔っ払いの様な奇行を録画録音され、眼前でリピートで流され、
辱められれば良いのだ!そんな奴らの絵空事に付き合っている暇は必要はない!
先程も言ったが、拙は嘆くのは無意味ではないと思っている。
嘆き苦しむことで罪を、十字架を背負っていることを自覚することもできる。
笑う事、安らぐ事は逃げであると許せぬ輩も居るだろう。
しかし、一時であれば笑う事、安らぐ事は決して悪くないのだ。
逃げるのではない。償う為に一時の人の時を過ごすのだ。
そう…”ひととき”だけにな…
でなければ、人間は壊れてしまう。償う事ができなくなってしまう。
更生する事ができなくなってしまう。すると元も子もない。
そう、何の意味もないのだ。
だから、この一時は、笑おうではないか。そして、明日を生きる糧にするのだ。
人間は飯食って寝て健康であれば、
あとはほんの少しの光があれば強く生きれるモノだ。
さあ!まずは覚悟するのだ!
笑うためにはまずはそれが必要だ!!
生きとし生ける物如何なるモノも必ず終わりがある!それは是非も無いことだ!!
どんな過去であろうとも貴様はそれと向かい合い、よろしくせなばならない!!
生きる以上貴様は未来と過去の己に顔向けできない様な生き方だけはするな!!
この世界はどうしよもない不条理で満ちている!都合良く事が進むと思うでない!!
他人とて同じだ!自分の思い通りにならないからこそ他人!
しかし無闇に避けるな!むしろなるだけ向かい合え!!
よし!次は昂ろうぞ!
己の心に火を灯し、自信をつけよ!
不可能なんぞ無い!夢を見よ!そして掴みに行くのだ!!
滾れ!そうすれば存外痛みなんて怖くない!!
あるがままの自分こそが最強なのだ!
弱くても良い!貴様らしさを見つければ良いのだ!!
生きる事を諦めるでない!諦めない事に意味があるのだ!生きろ!!
勝敗の分け目、己の采配で命運を分ける…ちょびっと怖いが面白かろう!!
ハッピーエンドやバッドエンドやトゥルーエンドなんぞという人目なぞ気にするな!!
自分の思うハッピーエンドを目指せ!
そして!笑え!
フハハハハハハハハ!!フハハハハハハハハハ!!
”ヒトが喜劇を所望せずにどうする!”
今、この世に”喜劇を欲する”という素晴らしくて高等で俗な欲を持つのは
人間のみなのだ!!フハハハハハハハハ!!
フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!
( ´ー`)フゥー...笑った笑った。
どうだ?少しは気が晴れたか?
では、拙は今からお食事の為にそこらじゅうに居るせっかくの食料を失い、
しょぼーんとしている同胞の元を回るとしよう。
ということで、拙はこれにて退場する。
鬱屈な悲劇であれば長々とするのも良しだが、
喜劇は長々とするとただただ鬱陶しいだけだ。
短く済ませ。皆の頭の中で思い出になってもらうのが良い。
ではではぁ…人間共よご機嫌よう。また、会う日まで!
フハハハハハハハハ!!
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END