SATRIアンプ

SATRIアンプに挑戦
以前から気になっていたSATRIアンプを作ろうと思い立ちました。しかし肝心の部分はIC化されていて、ブラックボックスになっています。そこで試聴屋さんのHPで提供されている技術資料をもとに、その開発コンセプトなどを勉強してみました。電圧ではなくて、電流を増幅するアンプであると言うニュアンスは分かりましたが、私のアナログな頭に直接ピンとくるまでは、なかなか達しませんでした。ちょうどDACを製作していたころですが、同じMJ誌('95/06)にSATRIアンプの紹介があるではないですか、それもICではなくてディスクリートのパーツを使ったMORPHEUSと言う製品です。下記に示したこの回路を参考にして作ってみようと思いました。

しかし、どう見ても信号入力バッファからカレントミラーに接続される部分の動作点が理解できません。この電流増幅部の動作電流は何で決まるのだろうか、さらに、信号をこのようにいきなりハイインピーダンスの部分に入れられるのかどうか、悶々としていました。そこで自分なりに、このツナギの部分に手を入れる事にしました。カレントミラー2段プッシュプルの合計8個のトランジスタに、さらにPNP/NPN(C1815/A1015)のトランジスタをひとつずつ追加して、それらをベース接地回路で挿入しました。ベースバイアスはLEDによる定電圧回路を作り、カレントミラー全体の電流値は挿入したトランジスタのエミッタ抵抗でコントロールする方式を思いつきました(1.5mA/2mA)。これなら私の頭でも理解できる構成です。(後で、このMJ記事では絶対動作しないと思うようにもなりました)

なお、初段は2SK389(Dual FET)を使ったバッファ、終段は1056/J160のMOS-FETコンプリを採用しました。またDCサーボには、LF356を一段構成としました。片チャンネルで合計13個の半導体、1個のオペアンプ、そして2個のLEDを使うことになります。金田式より少し複雑な回路ですが、驚いた事に全回路のどこにもループバックNFBがないのです。そうか、ここにミソがあるのかと、初めてSATRIの設計コンセプトを実感として悟りました。(^^;

ケース内の下の方には電源トランスとケミコンが埋まっている。

基板はユニバーサルを用い、ケース上部にアングルで固定した。

片チャンネル毎に基板を分けている。上が後から作った方。

いくらか整然とした構成になった。トランジスタの耐圧が心配。

終段MOS-FETの部分。電源電圧は±40Vとした。初段とオペアンプには、±15Vを別途供給している。

電源トランスは±30V,130Wのシールド品。ケミコンを何とかしたいですね。基板のバリオームはあり合わせ。

さて、問題の「音」ですが、実に驚きました。金田アンプに勝るアンプがあったのか・・・・・!!!。
あまりコントロールされた音ではありません。歪も多めに感じます。しかし、何と自由で伸びやかなのだろうか。低音も程よく締まり、良く出てきます。いろいろなソースを聴いている内に、「これはあまりボリュームを上げる必要のないアンプだな」と感じるようになりました。CDの録音はこんなに凄いダイナミックレンジを持っていたんだな、小音量で聞いていても時おりビックリするような大きな音が出てきます。そして、音量変化と共に、音の輝きの変化が楽しめるのです。真空管アンプで感じたあの「音楽性」が、さらにシャープな音として感じる喜びを味わう事ができるようになりました。これからしばらくは、音にうるさい友人達と共に、あれこれ意見を交わしてみようかと思います。新たなオーディオの楽しみが生まれたような気がします。