BTLアンプ

BTLアンプ製作記

デジタルアンプの音の素晴らしさに魅了され、最近はこのアンプのみで音楽を楽しんでいました。果たしてデジタル増幅回路が優れているのか、あるいはBTLの特徴が現れているものか、音の秘密を解明する事を考えてみました。アナログアンプ最終版の製作としてBTL構成を取り上げ、デジタルアンプと勝負させることにしました。

まず先日の金田黒アンプを解体しました。ケースと電源部をそのまま使い、片チャンネルあたりパワー素子を4個、その他TrとFETが9個、LED 2本の構成で作りました。回路的には、金田アンプのドライバ段以降の差動(平衡)出力の処理をSEPPではなくてコンプリBTL合成する形になります。

また、全段NO-NFBにしました。ここも金田アンプとの差のひとつです。中点変動が心配で、DCサーボの必要性も考えたのですが、ゲインが少ないためか、結局なしで行けそうでした。BTLとして組み合わせると、単純計算で出力電圧2倍、電力4倍になります。しかし、逆に音が小さくなったように感じました。全く味付けの無い、おとなしい音になったせいのようです。

アンプ内部の全体写真です。電源電圧は±22V、トランスは2A型、ケミコンは 10,000+4,700μの2セット。ケースのパネルはアクリル板です。

初段は 2SK30Aの差動増幅+2SC1815/LEDの3mA

定電流回路。次段は2SB716差動増幅+2SC1815/LEDの定電流回路を2個で構成。

ゲイン配分は、初段が2倍、二段目が10倍、終段は1倍です。初段で平衡出力を得て、次の段で電流増幅します。SATRI回路にしたかったのですが、良い方法を思いつきませんでしたので、差動回路+定電流としました。

温度補償のTrを経て、終段UHC-MOSコンプリに送ります。この石は、2SJ554+2SK2936を用い、秋月で1個\200のものです。形とPcは全く違いますが、特性はコンプリであることを見つけたものです。

さて、問題の「音」ですが、どえらいものを作ってしまったような気がしました。最初は、デジタルアンプの音の良さと、BTL効果を分離する目的だけで製作したのですが、他にもいろいろ分かってきました。
・BTLにより、低音が力強くなり、迫力が増す
・音の色付けが全くなくなり、忠実性の優れたアンプとなる
BTLにする前の、個別のコンプリ状態で聴いた時は普通の金田アンプ程度に思いました。BTLにしてスワンに繋いだところ、今までになく床が響くような低音がでました。ただし、NO-NFBのため、DFが10程度しかない(と思われる)要因もあると思います。つまらない音かと言うと、そうでもありません。チェロの演奏では、シュタルケルの呼吸の音が鮮明に聞こえてきます。やはりパイプオルガンがデジタルアンプ並に出てきました。音の色艶はデジタルアンプの方が大きいように感じました。このアンプは「おとなしそうに見える」割にはスケール感があり、時に部屋を揺さぶるような迫力もでます。かと言うとピアニッシモの、か細いバイオリンの音を見事に再現します。一律の音ではなく、音楽ソースによって、今までには予想もしなかった感動を味わせてくれるような気がします。また、いろいろなCDを聴くのが楽しみになりました。