300Bシングルアンプ

真空管アンプ復活の勢いで、5~6年前に手がけた2A3 & 300B兼用のテスト機をリファインしてみることにしました。これは6BX7のシングルとPPの違いを知ると言う意味でも興味をもちました。2A3sのカソードパスコンをBGに変え、できるだけ現在のノウハウを盛り込んでリファインしましたが、音に活気が無くて魅力を感じませんでした。ヒーターが交流点火なので、スワンにつなぐとSN比も許容外、バランスが取りきれません。そうだ、どうせ直流供給にするのなら、300Bでやってみようと方針を変えました。ヒーターが2.5→5.0Vになるので、一層SN比が悪くなりました。直流に変えて、さらにバランスを取り直してOK。動作点は、270V 50mA、バイアス-50Vの軽いところにしています。音はグッと良くなりました。初めて2A3と300Bの違いをはっきりと感じたように思います。音のツブダチと重量感がアップしています。ここで6BX7シングル、6BX7-PPとの比較を行いました。シングルで比べると、6BX7の何ともいえない味わいに軍配があがりますが、300Bもなるほどと思わせる魅力があります。大編成オケのブラスやチェロの音などで、重厚感と繊細さの両面を発揮してくれました。しかし、6BX7-PPとの比較では、圧倒的にPPの勝ち。特に大編成の楽曲でそれぞれの楽器の分離度が違いました。それに、どのCDをかけても音楽的に聴こえるのです。300Bは、ちょっと録音の悪いCDでは散々でした。

シングルとPPの話になりますが、6BX7はシングルでも半導体アンプに近い、鮮度の高い音がします。PPにするとその特徴を残したまま、二次歪が打ち消され、多少おとなしい音になったように感じますが、ややボリュームの上がった曲のピークでは、グンと鮮度が前に出てきます。この辺が音楽的に聴こえる原因の一つではないかと思いました。MJ 5月号で、6BX7シングルの製作記事がありますが、私は直結なら必ず良い方向になるとは思いません。カソードにあれだけ大きな抵抗を入れて、その電圧ドロップ分に相当するデカップリングの電解コンデンサが、どれだけ音に影響するかを考える必要があります。同じ5月号で、PPとSEPPの考察記事がありましたが、なるほどと思いました。シングルやSEPPでは、音の信号が必ず電源のケミコンを通過するが、PPは違うとの話が出ています。これは説得力がありました。

さて、手持ちの半導体アンプ二種とも比較を行いました。金田式No.139型のバイポーラと比べると圧倒的に6BX7-PPが良い。MOS-FETコンプリ+カレントミラー型と比較すると、甲乙つけがたい感じです。曲によって判断が違ったりします。でも、どちらかと言うと6BX7-PPの方が音楽を楽しめそうな気がします。次回はお嫁入りしてしまった金田式FET型と比較を行いたいと思います。