デジタルMULTIアンプの製作

ここ数ヶ月は、TA2020空芯コイル型のデジタルアンプで音楽を楽しんでいました。しかし、たまたまゲルギエフ指揮「春の祭典」のCDを聴いた途端、これをもっと大きなスケール感で聴きたくなりました。友人用に製作した山根式デバイダが、想像を越えた迫力の音だった事を思い出し、我が自宅でも導入する事を考え始めました。マルチアンプシステムを選んだのは以下の理由からです。
・TA2020のステレオ2系統出力を、高音・低音に分けることで、ICひとつで実現が可能である
・左右独立のモノラルアンプになるので、スピーカーケーブル最短の構成にできる
・スーパー・ツィータをグレードアップしたかったので、これがやり易くなる
・フルレンジSP(FE108EΣ)の10kHz以上を切って、コーンの多次元振動を取り除ける

上の写真が完成したものですが、10kHzクロスオーバー、スーパーツィータは PANASONICの5HH10を新調しました。フォステクスのT90Aを狙っていたのですが、デジタルアンプをつないで、いきなり壊れるのが心配なので、ステップを踏む事にしました。

音を一言で表現すると、モヤの無い澄み切った音でしょうか。Vnソロの音は今までの良さを残したままで、大編成の管弦楽が凄いです。トライアングルの音が俄然クリアになりました。ブラスも張り裂けるような響きです。従来アンプのストリングスが、もどかしく感じられます。試しにジャズを聞いてみたら、これがまた素晴らしいです。キースジャレットのミュンヘンライブでは、まさにそこへ参加しているような錯覚になりました。ドラムスのシンバルと言うのか、ハイハットと言うべきなのか、素晴らしい高音です。レベルを上げても耳障りになりません。

SPケーブルは40~50cmになりました。これも効いているかもしれません。フルレンジSPの高域をストンと落とした事で、弦楽器などの歪みを取り除き、完全分離されたスーパーツィータで、さらに超高域が再現できているものと思います。全体に柔らかめの音ですが、時折りビックリするような高音がでてきます。ブラスが強烈に響きます。低音はシマリが出てきて、むしろレンジが広がっています。どんなジャンルの音楽でも余裕を持って再生できる環境に大きく一歩前進したと感じます。スーパーツィータ 5HH10は能率が高いので、高音用のボリュームは2/3くらいで使っています。

音はさらに柔らかく、ワイドレンジになりました。T90Aに換える気がしなくなりました。PANASONICのユニットは、高音域のインピーダンス上昇が少ないため、デジタルアンプにはモッテコイのユニットだったせいかも知れません。いろいろなソースを聴いていると、特にコンサートホールのざわめきが、とても良い雰囲気で伝わってきます。ブラスも一段とシャープになりました。狙い通りの効果が出ると、嬉しいものですね。

【製作編】
ケースは、ICMの古い外付けHDDユニットを使いました。35WのSW電源をそのまま流用します。TA2020一個を2wayアンプとして使います。山根式の10kHz 12dB/OCTデバイダ内蔵です。苦労したのは入力ケーブルを通じての回り込みが起き、発振気味でしたが、これはフェライトビーズ一個で直りました。電源ポップノイズがかなり大きくなりました。TA2020入力のボリューム開放状態のところに、デバイダから直付けされたコンデンサが入っているからです。しかし、これも解決しました。500Ωの抵抗と3900uFのケミコンで、TA2020アンプ部とデバイダ電源部に時間差を作り、まずまずのレベルになりました。

本体のメイン部分。空芯コイル10uHを自作しました

ケースの裏側の電源は、鉄板でシールドされている

入力は1系統、出力2系統のターミナル

前面には高音調整のボリュームを配置

音楽を聴くのが、ますます楽しくなりました。唯一の問題は、FM放送に入るノイズが大きくなったこと。許容範囲ではありますが、いずれは若松から購入してある12V 4Aの最新式と交換するかもしれません。とりあえずは、フェライトビーズやトロイダルコイルによるフィルタを各所に入れて対策を終えました(FM TUNERの電源部とアンテナ回路にも、COMMONモードノイズフィルタを入れました)。

【後日談】

電源ノイズ対策第2段も兼ねて、若松で購入しておいた 12V 4AのSW電源に交換しました(2003/11/23)。
ノイズがゼロにはなりませんでしたが、音の変わり様にビックリしました。トゲの無い、極めて高品位な、力のある音と言えば良いのでしょうか・・・・。今まで使ってきたものは、全て 5V,12Vの兼用だったのに対して、今度は12V専用でフルに4A取れる訳ですから、当然かもしれません。今更ながら、デジタルアンプの電源が大事である事を、思い知らされました。