痴漢 1997.7
電車の中
泣かないように
前方をにらんだ
撫でてゆく何か
生温かい何か
私の持っていない何か
見も知らぬ何か
彼をにらんだ
にらんで無視した
彼は何かを引っ込めた
――ジッパーの奥に・・・・・・
泣くより
彼の顔を見てやりたかった
みてみたかったのに
やり切れなくて
彼は退散していった
痴漢――それが彼の名前