何年ぶりだろうか
学生時代の友人と
昔なじみのアイヌ料理店
サークルの仲間と飲んだテーブルは
今もまだそこにあり
「OさんとKさんとSさんと・・・ほら、あの辺りに・・・」
懐かしがる私に友人は
「ああ、あの時はTくんとつきあっていたんだな」
と目を細めた
私は
心の中でつぶやいた
「私もTさんが好きだったのよ」
なぜ常連だったTさんの名前を口にできなかったのか
彼女は知るまい
それでいい
あれからさらに二十年が経過し
しかし
思い出は風化しない
音信の途絶えた彼女の
古い恋の思い出は
私の苦い痛みでもある