風がささやく黄金の街は
甘い匂いに満たされていた
後ろの籠に
子どもを乗せて
ママチャリの私は
一心不乱に
ペダルをこいでゆく
鰯雲の笑う
きらめく青空のもと
「ママ」しかしゃべらない
この子の幼さが
キンモクセイの香に
満開の笑顔となる
職はなくなり
夫もなくした
けれど
私に残された
希望はある
懸命にペダルをこぎながら
海へ向かって坂を上る