盲目の彼には
美人のお母さんがいる
私が訪ねて行くと
(私でなくてもだろうが)
いつもコーヒーを出してくれる
私のはブラックで
ソーサーにお砂糖とミルクが
ついている
彼のには
最初から
ミルクが入っている
ああ 母の愛
我が子の好みを
よくよく知っている
三十数年の愛
目の見える私には
母はミルクを入れてはくれない
それよりも
私は自分で
コーヒーを淹れる
それでも
私にも
母の愛を感じる
瞬間がある
長電話に付き合ってくれる時
貴重なアドバイスをくれる時
車で送ってくれる時・・・・・・
母の愛は止まらない
母の愛は小さくとも偉大だ
母になれなかった私は
誰に愛を捧げよう
この人か
あの人か