中学生の頃、確か理科の授業だったはずだ。
「みみずを持ってきなさい」
と言われた。
授業が終わり、「みみずは畑の耕作者」だと教科書の隅に書かれていたのを思い出した私は、側にいた友達に、
「そのみみずちょうだい」
と言った。嫌われ者のみみずを友人たちは喜んで私にくれた。
それがクラス全体に伝わり、女子のほとんどが奇妙な目をしながら、私にみみずを差し出した。
「こんなにいらないのに」
と思いながらも断れず、私は大量の野太いみみずを抱えて家へ帰り、広くもない庭に解き放った。
それが今日、父はへび大のみみずを発見したという。あの時の生き残りか、はたまたその子孫か。
「あの人は変わっている」
そう思われたであろう中学生の頃の思い出は、クラスメートたちの好奇心に満ちた好意の瞳と共に私の心に残っている。