検証82

本ページで取り上げるサイトはいずれも仮想通貨取引所 (暗号資産交換業者) に該当すると思われますが、いずれも日本の金融庁が公表している暗号資産交換業者の登録リストに該当がありません。ここで検証するサイトの多くは日本語対応しており、さらに少なくとも一部のサイトについて日本人に向けた勧誘が確認されていて単に無登録の違法業者であるというだけでなく、詐欺目的のサイトである疑いが極めて濃厚と考えられます。

▼本サイトでの検証は名誉棄損に当たらないと考えます。→ 雑記1

「検証63」「検証64」「検証65」「検証66」「検証67」「検証68」「検証69」「検証70」「検証71」「検証72」「検証73」「検証74」「検証75」「検証76」「検証77」「検証78」「検証79」「検証80」「検証81で検証してきたTinderを始めとするマッチングサイト (出会い系サイト) やSNSで外国人による勧誘が行われているという共通点がある一連の詐欺仮想通貨取引所のサイトについての検証20ページ目です。「検証83」「検証84」「検証85」「検証86「検証87「検証88」「検証89「検証90「検証91「検証92「検証93「検証94「検証95「検証96「検証97「検証98「検証99「検証100「検証101「検証102「検証103「検証104「検証105「検証106「検証107「検証108「検証109「検証110「検証111「検証112」「検証113」「検証114」「検証115」「検証116」「検証117」「検証118」「検証119」「検証120」「検証121」「検証122」「検証123」「検証124」「検証125」「検証126」「検証127」「検証128」「検証129」「検証130」「検証131」「検証132」「検証133」「検証134」「検証135」「検証136」「検証137」「検証138」「検証139」「検証140」「検証141」「検証142」「検証143」「検証144」「検証145」「検証146「検証147」にも続編があります。勧誘の手口などについては「検証63」の最初に書いてあるので参照してください。 本ページでは以下のサイトを検証します。 検証項目は順次追加の予定です。


●Wisdom Medical Chain [WMCコイン] (ウイズダム メディカル チェーン www.wmc-web.com/)

●YFIGroup [YFIGトークン] (YFIグループ yfi.group/)

●YFIGroup [YFIGトークン] (YFIグループ yearnx.link/)


まず以下を検証します。

●Wisdom Medical Chain [WMCコイン] (ウイズダム メディカル チェーン www.wmc-web.com/)

●YFIGroup [YFIGトークン] (YFIグループ yfi.group/)

●YFIGroup [YFIGトークン] (YFIグループ yearnx.link/)

最初のサイトはTwitterのあくん 仮想通貨詐欺で騙された」というアカウントからの投稿で気が付いたサイトでウイズダム メディカル チェーンという新しい仮想通貨のサイトです。それ以外の2つのサイトはウイズダム メディカル チェーンのサイトと似たサイトとして見つかってきたサイトでYFIGトークンという新しい仮想通貨のサイトです。まずウイズダム メディカル チェーンの検証のきっかけになったTwitter投稿から紹介しておきます。以下は当該Twitterアカウントのプロフィール欄と詐欺にあってしまった経緯の説明の最初の投稿 (2020年9月24日付)のキャプです。

テキスト部分だけ以下に抜き出します。

>tinderでZoeと名乗る台湾人にマッチ→LINEへ→日本好き、日本に住みたい、日本人と結結婚したいアピール→親密になったところで→突然、仮想通貨で儲けて生活が変わったと切り出して来る→仮想通貨WMCがすごいと、ホワイトペーパー付きで連絡がくる→http://ZG.com、ビットフライヤーの登録方法をかなり丁寧親切に教えてくれる→早くWMCを購入すべきと急かしてくる→WMCを購入してしまう→

以下複数の投稿で経緯が説明されていてかなり長くなるので省略しますがTinderというマッチングサイトで中国系の美女と知り合ってからまさに「検証63」の冒頭で説明したような勧誘の手口でZG.com (www.zg.com/) という仮想通貨取引所に口座を作り、WMCという仮想通貨を購入するように誘導された経緯が説明されています。同じ9月24日付の投稿には勧誘役から自己紹介代わりに送られてきた中国系と思われる美女の画像が転載されています (以下のキャプ参照)。

しかし「検証63」以降で検証してきた類似案件の例から言ってこの美女が実際に勧誘を行っていたかは疑問でしょう。台湾在住と自称しているのに雪景色を背景にトナカイ (?)と映る画像はちぐはぐな感じを受けます。個人のインスタグラムの投稿画像などをネットから拾ってきて勝手に転用している可能性が高いと思われます。

とにかくこの美女の画像を使って勧誘され、ZG.com (www.zg.com/)という仮想通貨取引所からWisdom Medical Chain (WMC) コインを購入したものの結局は換金、出金出来なくなり、勧誘役の美女とも連絡が途絶えてしまった経緯が詳しく書かれています。このZG.comについては後述します。

さらにこのWMCコインへの投資を同様の手口で勧誘され、換金出来なくなったという被害報告はこれだけではありません。あくん 仮想通貨詐欺で騙された」9月25日の投稿で引用されているExposing Wisdom Medical Chain (WMC) SCAM (www.wisdommedicalchain.com/)という英語のサイトでもWMCコインを詐欺であるという警告が出ており、マッチングサイトのTinderで東洋系の女性によって投資勧誘されるという手口の説明が記されています。またこのサイトに埋め込まれているYoutube動画ではMOONSHIPという名前でTinderに登録していた東洋系の女性から勧誘された経緯を説明していますが、この勧誘役は23歳で日本の東京都港区在住であると自称していたようです。以下はその動画と動画のキャプですがこのMoonshipを名乗る勧誘役 (おそらく画像とは全く別の人物)もZG.comにビットコインを送ってWMCコインを買えば儲かると称していたようです。

そこでこれらの投稿にある表題のWMCコインのサイトに行ってみました。以下がサイト冒頭のキャプです。表示言語は英語のみです。PDFファイル形式のホワイトペーパーも用意されており、こちらも対応言語は英語のみです。

上のキャプの左側にはウイズダム メディカル チェーン (WHC)という仮想通貨プロジェクトの簡単な説明が書いてあります。このプロジェクトの評価については後述します。

このサイト冒頭部を見てまず気になったのは右側にあるノートパソコンなどをイラスト化したと思われる画像で「検証63」以降で検証してきた中国系の詐欺サイトにあった数々のイラストと画風、印象が似ているように思われました。これまでの検証ではしばしば互いに極めて酷似したサイトが画像検索で複数見つかることが多かったのでこのイラストについても画像検索に掛けてみました。すると予想通りこのイラスト部分だけでなく明らかにウイズダム メディカル チェーンのサイトと似たサイトが複数見つかってきました。特に2つのサイト、本項表題の2番目、3番目の共にYFIGroup (YFIグループ)という名前のサイトは互いに酷似しているのですが日本語表示にも対応しており、日本人向けに勧誘が行われる可能性が高いと思われたので以下にキャプと簡単な情報を以下にまとめます。

まず本項表題の2番目のサイト、YFIGroup (YFIグループ yfi.group/)のサイトのキャプです。

次は本項表題の3番目のサイト、YFIGroup (YFIグループ yearnx.link/)のサイト冒頭部のキャプです。

2番目、3番目のサイトはURLアドレスは異なるものの互いに極めて似ています。サイトのタイトルさえYFIグループで同じです。ウイズダム メディカル チェーンのサイトは英語表記にしか対応していませんでしたが2つのYFIグループのサイトは英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、韓国語、日本語、中国語、香港語の8ヵ国語対応になっています。画像検索に使ったパソコンのイメージ画像みたいなイラストがウイズダム メディカル チェーンのサイトと一致しているのは当然ですが、これら3つのサイトはこの冒頭部以外でも明らかに似ている部分があります。例えば以下はウイズダム メディカル チェーンのサイトにある「WMC Project Profit (ウイズダム メディカル チェーン プロジェクト)で得られる利益」という項目のキャプです。「PAST (過去)」「NOW (現在)」「FUTURE (将来)」という3項目に分けてイラスト付きの説明文が並んでいます。

 一方で以下は2つのYFIグループのサイトからのキャプです。こちらはエアドロップの参加方法とかYFIGという仮想通貨のクラウドファンディング方式での販売方法や発行条件の説明をやはりイラスト付きで3項目にまとめている部分です。比較の為に英語表記のキャプを示します。以下順にYFIグループ (yfi.group/)のサイト、YFIグループ yearnx.link/)のサイトからのキャプです。

2つのYFIグループのサイトでは互いに区別が出来ません。ウイズダム メディカル チェーンと2つのYFIグループのサイトで比較すると記されている文章などは全く異なるのですが文章の上にあるイラスト部分が青と赤の線で描かれた手書き風のイラストとなっており明らかに雰囲気が似ています。イラストの作者は同一人物の可能性が高いように思いますし、2つのYFIグループのサイトが同一グループによるサイトであるだけでなく、ウイズダム メディカル チェーンも含めて同じグループによるサイトである可能性は極め高いと思われます。

ウイズダム メディカル チェーンの画像を画像検索に掛けて見つかってきた他のサイトは基本的に中国語表示にしか対応していないのですが仮想通貨関連と思われるサイトについては簡単に触れておきます。まずは以下のサイトです。

▼RMBTT (www.rmbtt.com/)

中国語表記にしか対応していないのでGoogle翻訳に頼って内容を確認しようとしました。以下は「結論 (中国語原文では結語)」という項目のGoogle翻訳による日本語訳の結果です。

RMBTT (Trust Token)というイーサリアムのシステムを使った新しい仮想通貨を発行してアジア太平洋地域での貿易などに伴う決済に使うというプロジェクトのようです。運営会社は香港のBeautiful Link International Co. Ltd.となっていますが連絡先情報は見当たりません。この「Beautiful Link International Co. Ltd.」を検索してみると法人登録情報らしきものだけ見つかりました (以下のキャプ参照)。中国語表記だと「美麗鏈接國際有限公司 」になるようですがやはり住所など連絡先情報や運営者情報は開示されていないようです。

▼广拾云际 [GOSH CLOUD SERVICE] (www.goshcloud.com/)

これも中国語にしか対応していないサイトでGoogle翻訳に掛けてみるとマイニングマシンの販売を業務としているようです。上のキャプに示したサイト冒頭部、左側に見える文章のGoogle翻訳の結果を以下に示します。

>Guangshi Yunjiはワンストップマイニングサービスを提供し、その代理店はさまざまなワンストップマイニングマシン製品を販売しています。選択の原則は、安全性、効率、透明性、高歩留まり、および高コストのパフォーマンスに基づいており、すでに所有しているエンティティに基づいています。マイニングマシンは、Guangshiクラウドコンピューティングパワー製品を発売し、中小規模の投資参加者に費用対効果の高いクラウドコンピューティングパワー製品を提供しました。 

このサイトには以下のキャプに示しましたが連絡先情報があります。住所は上海になっていますがどれほど信用できるかは不明です。経営者情報は見当たりません。

これ以外の画像検索で見つかってきたサイトは仮想通貨とは関係ない業務内容であると書かれているか、あるいは業務内容に関する記述が見当たらないサイトです。サイト名とURLアドレス、簡単な説明をまとめます。

▼financeicon (www.whats-new.cn/)

以下はサイト冒頭部のキャプで表示言語は中国語のみです。業務内容はビッグデーターの分析となっているようですがウイズダム メディカル チェーンなどのサイトと明らかに似ていて同じ系列としか思えません。

連絡先情報部分とそのGoogle翻訳の結果のキャプを以下に示します。

办公地址

地址:上海市奉贤区奉城镇东街98号3幢

邮编:201203

电话图标地址:

+021 123456789

邮箱图标chinamoney@qifeiye.com.cn

オフィスの住所

住所:上海、鳳西区鳳城町東通り98号館3号館

郵便番号:201203

電話:+021 123456789

メール:chinamoney@qifeiye.com.cn


住所は上海市内と書かれています。しかし上で取り上げた广拾云际 [GOSH CLOUD SERVICE]の上海の住所とは異なります。 住所やメールアドレスについてはまた後述します。

▼亿清 [Billion Settlement] (www.yiqingip.com/)

このサイトも表示言語は中国語のみです。業務内容はスマートコントラクトテクノロジーとか決済サービスと記されているようです。連絡先情報は見当たりません。以下にサイト冒頭部のキャプを示します。

▼星泰丰森 (www.xtfs.top/?post_type=products&page_id=32901)

このサイトも表示言語は中国語のみです。星泰丰森の正式名称は北京星泰丰森广告有限公司となっており、广告有限公司という名前から予測が付くように広告代理店のような業務を行っていると書いてあるようです。下にサイト冒頭部のキャプを示します。

このサイトにある連絡先情報は左下のキャプに示します。また右下にはGoogle翻訳の結果を示します。住所は北京市内になっているようです。

▼AIOps (www.aiops.com.cn/)

これも中国語だけのサイトでさらに極めて情報量が少なくて何を目的としているサイトなのかさえ分かりません。QRコードがあるだけで所在地情報などは全くありません。

まとめると本項で検証対象にしている3つのサイトには偶然とは思えないほど似ている中国語にしか対応していないサイトが6つも確認されているということになります。これら6つのサイトについて業務内容と所在地情報だけ抜き出してまとめます。

▼RMBTT (新規仮想通貨発行) 所在地:香港

广拾云际 [GOSH CLOUD SERVICE] (マイニングマシン販売) 所在地:上海市静安区

▼financeicon (ビッグデーター分析) 所在地:上海市鳳西区

亿清 [Billion Settlement] (決済サービス) 所在地:記載なし

▼星泰丰森 (広告代理店) 所在地:北京

▼AIOps (業務内容不明) 所在地:記載なし

最初の2つは仮想通貨関連ですが3~5番目の3つのサイトは仮想通貨とは無関係な業務となっています。最後のAIOpsというサイトはまだ未完成なサイトなのか情報が少なくて目的さえ分かりません。とにかく幾つかのサイトに記されている所在地情報はバラバラで互いに全く一致しません。しかしこれらのサイトが互いに偶然とはとても思わないほど似ているのも確かでサイトの運営元は同じという可能性も充分に考えられます。サイトは互いに酷似しているけど運営元が異なるのか、それとも運営元は同じだけど所在地情報がデタラメなのか解釈が困難です。

これら画像検索で見つかってきたサイトにある連絡先情報について先にまとめましたが本項の直接の検証対象である3つのサイトでも当然連絡先情報を探しました。しかし開示されている情報は極めて限定されています。

まずウイズダム メディカル チェーンのサイトではわずかにサイトの下端にメールアドレス (wisdommedicalchain@gmail.com) が記されているだけです (以下のキャプ参照)。しかもこれは無料登録できるgmailのアドレスで論外としか思えません。

さらにウイズダム メディカル チェーンのサイトからはPDF版のホワイトペーパー (英語版)がダウンロード出来るのでやはり連絡先情報を探してみましたが全く見当たりません。

標題の2番目、3番目に掲げた2つのYFIグループのサイトについても連絡先情報を探してみましたがこれら2つのサイトについてはメールアドレスさえ見当たりません。ホワイトペーパーも公開されていないようです。連絡先情報は皆無ということになります。これ以外にはどれほど信頼出来るかは分かりませんがWho Is情報に連絡先が見つかる場合があります。例えば以下はウイズダム メディカル チェーンのサイト  (www.wmc-web.com/)のWho Is情報です。

ここで連絡先情報が記されているのは赤枠で囲った部分です。以下に書き出します。

>Registrant Name: Qifei Ye

>Registrant Organization: Qifeiye Internet Co., Ltd.

>Registrant Street: Jinji Lake Av. #1355   

>Registrant City: Suzhou

>Registrant State/Province: Jiangsu

>Registrant Postal Code: 215021

>Registrant Country: CN

>Registrant Phone: +86.051267671223

>Registrant Email: info@mail.qifeiye.com


日本語に訳すと以下のようになります。

登録者氏名: Qifei Ye

登録法人: Qifeiye Internet Co., Ltd.

住所: Jinji Lake Av. #1355, Suzhou,  Jiangsu,  215021

電話番号:+86.051267671223

登録者メールアドレス:info@mail.qifeiye.com


住所は中国江蘇省の蘇州市となっており、電話番号は中国の国番号 [+86]から始まっています。そしてこの江蘇省蘇州市の住所や「Qifeiye Internet Co., Ltd.」という法人名がWho Is情報に出てくるのはこのサイトだけではありません。具体的には上で関連サイトとして取り上げたサイトの中でRMBTTのサイト (www.rmbtt.com/) と广拾云际 [GOSH CLOUD SERVICE]のサイト (www.goshcloud.com/)のWho is情報にも登録者として「Qifeiye Internet Co., Ltd.」という名前が出てきます。そしてこの Qifeiye Internet Co., Ltd.」を検索するとこの法人の公式と思われるサイト (www.qifeiye.com/) が見つかってきました。以下が見つかってきたサイトの冒頭部のキャプで表示言語は中国語のみです。

このサイトに書いてあることをGoogle翻訳に掛けてみましたがどうやらウェブサイトを簡単に構築するためのツールとかテンプレートを提供している会社のようです。業種から考えてこの会社がWMCコインの開発、発行元であるかどうかは疑問かもしれません。しかしサイトの構築に関与している可能性はあると思われ、WMCコインプロジェクトの運営者に関する情報も保有している可能性はあるかもしれません。

次に運営陣に関する情報も探してみましたがめぼしい情報は見つかりません。ウイズダムメディカルチェーン (WHC) のホワイトペーパーには「Key Team」という項目があって7名ほどの運営者に関する記述があるのですがこの手のホワイトペーパーで普通は公開されている運営陣の人物画像がありませんし、紹介文も具体性に欠けている印象があります。さらに紹介されているのはプロジェクトの責任者ではなく、開発に関与したエンジニアといった立場の人たちばかりのようです。例えば最初に紹介されているYang Chenxingという中国系かと思われる名前の人物の紹介は以下のようになっています。

>Yang Chenxing: Bachelor of Mathematics and Master of Computer Science; six-years experience of software development; a Graphene community code contributor; familiar with blockchain underlying technology development, rich experience in P2P network development; a good command of C/C++, Python, Shell; worked in Vobile as Senior Development Engineer.

数学で学士学位、コンピューターサイエンスで修士学位を得たとなっていますが、大学名や卒業年度は記載がありません。ソフトウエア開発で6年の経験があるなどと書いてありますがやはり具体性に欠けた情報ばかりで固有名詞が出てくるのは唯一最後にVobileというソフトウエア開発会社でエンジニアとして働いていたという記述だけです。このVobileという会社はアメリカの会社で検索してみると日本にも支社があるようですが、このYang Chenxingという人物が在籍していたかどうかは確認出来ません。

プロジェクトの運営責任者が紹介されずにシステムの開発担当者の紹介がある、但し画像はないし紹介文に具体性が欠けているという状況にはかなり違和感があります。さらにそもそもこのWMC (ウイズダムメディカルチェーン)という仮想通貨はイーサリアムのシステムを使っているようです。右は公式サイトからのキャプですがWMCの総発行枚数が20億枚であり、ERC20というイーサリアムのシステムを使った仮想通貨であると明確に書いてあります。その後のステージで独自のシステムを開発するようなことも書いてありますがその意味は不明です。そしてイーサリアムのシステムを使うならば自分で仮想通貨を作った経験があるわけではありませんが特別な知識は必要ない、簡単に仮想通貨を作ることが出来るはずです。ホワイトペーパーで紹介されているエンジニアみたいな人たちは実在の人たちなのかさえ疑わざるを得ません。

WMC (ウイズダムメディカルチェーン)がイーサリアムのシステムを使ったERC20トークンであるということが分かったのでイーサリアムのシステムを使った仮想通貨の情報を集めているEtherscanというサイトで情報を探してみると確かにWMCの情報を確認することが出来ました。以下にWMCの情報の冒頭部のキャプを示します。

総発行枚数が20億枚という数字は公式サイトの記述と一致します。しかしホルダーの数が59人、トランスファーの回数が160回という数字は非常に低調としか言いようがありません。以下はWMCのホルダー保有枚数上位のリストです。

総発行枚数・20億枚の内、19億8465万枚余り、発行枚数の99.2329%が1つのアドレスにあります。要するにこの仮想通貨は殆ど投資家からの注目を集めておらず、売れていないということになります。これではWMCが仮想通貨として普及し、価値が上昇することなど全く期待出来そうにありません。

売れ行きが悪いということに関連しますがこのWMCという仮想通貨は最初に引用したTwitterへの投稿にあったようにZG.com (www.zg.com/)といいう仮想通貨取引所が購入の窓口になっていたようです。しかしこの検証を書く為にZG.comのサイトに行ってみるとWMCを2020年9月30日付で上場廃止にしたという告知が出ています (以下のキャプ参照)。

この告知には上場廃止の理由はプロジェクトを精査した結果として上場廃止を決めたとあるだけで具体的な理由は記されていません。そして気になるのは告知が2020年9月28日と上場廃止のわずか2日前であることです。WMCはこれ以外の取引所で取引されていることを確認できないのでWMCのホルダーの中には告知に気が付かず、換金の手段を閉ざされてしまった、梯子を外された状態に陥った人もいた可能性が高いように思います。告知には上場廃止によって不利益を被る顧客に謝罪したいと書いてありますが果してこれが顧客の利益を考えて最善の決定だったのか疑問を感じます。

またそもそもこのZG.comという取引所は信頼出来る取引所なのかという疑問があります。WMCのプロジェクトを精査した結果として上場廃止にするぐらいならもっと早い時期に精査を行ってWMCの販売窓口の役を引き受けるべきではなかったはずです。販売窓口を引き受ける際の審査は甘くて上場してから審査をやり直して告知から2日で上場廃止というやり方で被害者が出たとすればこの取引所に詐欺に協力するような悪意があったのではないかと疑われても仕方がないように思います。但し「検証63」以降で検証してきた短期間で閉鎖されてしまう数多くの取引所とは異なり、ZG.comは仮想通貨データーベースのCoinMarketCap取引所情報が見つかりますし、アクセス状況を解析出来るサイトで調べてみると以下のキャプに示したように1日当たりの独立訪問者数が9万5000人ほどあります。

しかしアクセス数がかなりあるというだけでは信頼出来るサイトとは言えません。以下はこのZG.comというサイトの冒頭部のキャプですが対応言語は中国語、英語、韓国語となっています。

このサイトの「About Us」のページを見るとシンガポールに登録があるという記述があるのですが、シンガポールの連絡先は開示されていません。英語表示を選択した場合にも中国語の表示が残りますし、サーバー情報のプロフィールが全面的に中国語です (以下のキャプ参照)。運営者に関する情報は何も開示されていませんがほぼ間違いなく中国系のサイトと思われます。

それなのに国別のアクセス状況を見ると日本からのアクセスが圧倒的に多いという奇妙な結果になります。以下のキャプに示したようにページビューの97.3%、訪問者の88.6%が日本からです。

そしてこのZG.comについて最も不審を感ずるのは同じIPアドレス上に複数の仮想通貨交換業者のサイトがあるという点です。以下がZG.comと同じIPアドレス (109.94.169.150)上にあるサイトの一覧です。

これら同一のIPアドレス上にあるサイトを確認してみましたが現在でもアクセス出来る以下のサイトは全て仮想通貨取引所のサイトのようです。

▼HomiEx (www.homiex.com/) 対応言語は英語と中国語

▼BGOEX (www.bgoex.io/) 対応言語は英語と中国語

▼CoCo Coin (www.cococoin.com/) 対応言語は英語と中国語

▼NVEX (www.nvex.io/) 対応言語は英語、中国語、ロシア語

▼chiliz EXCHANGE (www.chiliz.net/) 対応言語は英語、中国語、香港語、韓国語、日本語、ベトナム語、ロシア語、トルコ語、アラビア語

▼Bimin Global (www.bimin.co/) 対応言語は中国語、英語、韓国語、日本語、ベトナム語、アラビア語

▼BBEX CRYPTO EXCHANGE (www.bb.exchange/) 対応言語は中国語、英語、日本語

▼MKEX (www.mk.exchange/) 対応言語は中国語、英語、韓国語、ベトナム語、日本語、インドネシア語


ZG.com (www.zg.com/)を含めれば現在稼働中のものだけで9つもの仮想通貨取引所のサイトが同一のIPアドレス上にあることになり、偶然とは到底思えません。日本語表示に対応しているサイトだけで4つもあります。運営元は同一である可能性が高いと思いますがこれだけのサイトが存在する意味が分かりません。

そしてもっと問題なのは同じIPアドレス上にあるけれど既に閉鎖されているサイトです。以下の2つのサイトが同じIPアドレス上にあったけれども既に閉鎖されているサイトです。

Beex.one (www.beex.one/)

Wellbtc (www.wellbtc.vip/

1つ目のBeex.oneというサイトについては情報が少ないですが検索するとMedium.comというサイトに2019年12月付のHow to Deposit on BEEX.one?というタイトルの記事が見つかりました。この記事によればやはりこれは仮想通貨取引所のサイトだったようでBEEという独自の仮想通貨を扱っていたようです。さらに探してみると仮想通貨データーベースのCoinMarketCapにも情報は皆無ですがBeexという仮想通貨取引所が存在していたことを示す登録が見つかりました。何故閉鎖されているのかは全く不明です。

そして問題は2つ目の閉鎖されているサイト、Wellbtc (www.wellbtc.vip/) の方です。このサイトは「検証65」で検証していますがAkso Coin (Aksoコイン) というTwitterで詐欺という指摘があった仮想通貨を販売していたサイトです。しかもその勧誘の手口がまさに「検証63」冒頭にまとめたマッチングサイトを舞台とした勧誘であったことが報告されています。同じIPアドレス上に幾つもの仮想通貨取引所のサイトが存在していることにも違和感がありますが、既に閉鎖されていて詐欺コインとしか思われないAksoコインの販売窓口であったWellbtcがZG.comと同じIPアドレス上にかつては存在していて同じグループの運営かもしれないということになるとZG.comはWMCコインとの関係においても善意の第三者で単に審査が甘かっただけという見方が難しくなってくるように思います。つまりある程度はWMCコインの危うさについて知り得ていたのではないかと疑わざるを得ません。日本語表示には対応していないけれど日本からのアクセスの割合が非常に多いZG.comあるいはZG.comと同一のIPアドレスにあって日本語表示に対応している4つのサイト、すなわちchiliz EXCHANGE (www.chiliz.net/)、Bimin Global (www.bimin.co/)、BBEX CRYPTO EXCHANGE (www.bb.exchange/)、MKEX (www.mk.exchange/)については日本の金融庁から出ている暗号資産交換業者のリストにない、つまり登録を得ていない違法業者ということにもなりますし特に警戒が必要と考えます。

次に表題の2番目、3番目、2つのYFIGroupのサイトで販売されていたとみられるYFIGトークンについてです。この仮想通貨については既に書いたようにホワイトペーパーが公開されておらず、2つのYFIGグループのサイトで開示されている情報も充分とは言えません。

それでも右のキャプに示したYFIGroupのサイトの記述を見るとYFIGの総発行枚数が9万枚であり、そのうちの1万枚をエアドロップで配布すること、WMCコインの場合と同様にERC20、つまりイーサリアムのシステムを使っている仮想通貨であることが分かりました。ちなみに2つのYFIGのサイトでこの部分は全く同じです。

そこでWMCコインの場合と同様にイーサリアムのシステムを使っている仮想通貨の情報サイトであるEtherscan(etherscan.io/)でYFIGの情報を探してきました。以下に見つかってきた情報の主要部のキャプを示します。

ここにある情報によればYFIGトークンの総発行枚数は9万枚となっていてYFIGのサイトにあった情報と一致していてこれが検証対象のYFIGトークンでと思われます。そしてこのEtherscanの情報ではYFIGトークンの相場はゼロ、時価総額もゼロになっています。これはYFIGトークンについて相場が成立していないということではないかと思われます。仮想通貨データーベースのCoinMarketCapで探してもYFIGトークンの情報は見つかりません。YFIGトークンを取引出来る仮想通貨取引所の情報は見つからないということになります。

しかし上のキャプに示したEtherscanのYFIG情報によればYFIGを保有するアドレスが1458も存在する、トランスファーが18025回も記録されているとなっています。エアドロップも含めて何らかの取引、YFIGトークンの送付がそれなりの回数行われているはずということになり、調べてみると2つのYFIグループのサイトから共通してリンクがあったYFIグループのTwitterアカウント (twitter.com/yfi_group)に以下のキャプに示した2020年10月19日付の投稿を見つけました。

YFIGトークンはUniswap (uniswap.org/) という非中央集権方式の取引所で取引されている、現在の相場は1YFIGが0.71134ETH、ドル建てなら265ドル57セントであると記されています。そこでこのUniswapについて調べてみるとCoinMarketCapに以下のキャプに示したUniswapの情報を見つけました。

この情報によればUniswap (uniswap.org/) はイーサリアムのシステムを使った仮想通貨相互の取引に特化した交換所であるとなっていて非中央集権式なのでイーサリアムのシステムを使ったERC20トークンであるなら上場審査のようなものはなくいきなり取引出来るようです。そしてUniswapのサイトにあるYFIGトークンのチャートを以下に示します。

上で引用した2020年10月19日付の公式Twitterアカウントからの投稿にあったように2020年10月19日に取引が開始され、確かにYFIGトークン1枚が0.7ETH前後で取引されたようですが直後に暴落してこのキャプを取得した2020年11月4日の時点では0.034ETH、ドル建てでは13ドル71セントと取引が開始された時点の相場のおよそ20分の1になっています。さらに出来高の推移を以下のキャプに示しましたが上場当日と思われる10月19日に出来高の大半が集中しており、翌日の10月20日にもわずかな出来高があるのが分かりますが、それ以降はチャートに出てこないほどに出来高が殆どないようです。

このYFIGトークンがどう見ても順調な滑り出しとは思えない状況にあるのは確かでしょう。

そもそもYFIGトークンについてはホワイトペーパーも見当たりませんし、WMCコインについてもサイトの説明やホワイトペーパーを読もうとしてみましたが殆ど何が書いてあるのかさえ分からないという状況です。具体性に乏しく全く説得力を感じないのです。WMCコインもYFIGトークンもイーサリアムのシステムを使った仮想通貨ですから例えば決済のスピードといった基本性能の部分で他の仮想通貨との差別化は困難と思われます。何千種類もある仮想通貨の中ではよほど特長的なものがない限り生き残ることなど出来ないでしょう。そして実際にWMCコインは総発行枚数の大半が売れ残って上場した仮想通貨取引所からは理由が不明ですが短期間で上場廃止になっている状況、YFIGトークンについても取引開始直後に暴落してその後は取引自体が枯れてしまっているという結果になっているのですから投資家の関心、評価を得られているとは思えません。運営元に関する情報開示なども到底適切なものとは思えません。改めて言うまでもないでしょうがこれらの仮想通貨への投資は全く推奨出来ません。