検証29

このページでは以下を検証しています。

●QONECT Coin (コネクトコイン qonectcoin.com/jp_index.php)
●Synchronicity (シンクロニシティ synchronicity.limited/jp_index.html)→閉鎖
●QONECT AI LABO (コネクト・エーアイ・ラボ ai.qonect-lab.com/)
●Philippine global coin (フィリピン・グローバル・コイン、PGCコイン pgc.ph/)


まずQONECT Coin (コネクトコイン)というアルトコインに関係する以下の3つのサイトを検証します。

●QONECT Coin (コネクトコイン qonectcoin.com/jp_index.php)
●Synchronicity (シンクロニシティ synchronicity.limited/jp_index.html)
●QONECT AI LABO (コネクトエーアイラボ ai.qonect-lab.com/)

Twitterで幾つかのアカウントからコネクトコインへの投資勧誘が行われているようなので検証することにしました。Yahoo知恵袋で指摘を受けたのですが、2018年3月下旬にシンクロニシティからコネクトエーアイラボへの社名変更が行われたようでこれに伴い、シンクロニシティのサイトは閉鎖されてコネクトエーアイラボのサイトへの案内やリダイレクトもなく「Not Found」と表示されるされるだけになってしまいました。検証は社名変更前に行ったのでとりあえずシンクロニシティのままで説明し、最後の付記にコネクトエーアイラボの情報を書くことにします。さらにコネクトコインのサイトでも会社の所在地や電話番号が変更になり、以前は日本語表記が可能だったはずなのに英語表記しか出来なくなったようです。こちらの変更についても付記で説明することにします。

まずTwitterでの勧誘には有名サッカー選手の名前が使われています。

めい@仮想通貨ICO

公式と思われるTwitterアカウントではセミナーの開催が告知されており、セミナーでの勧誘が行われているものと思われます。。

勧誘目的と思われるブログも複数存在するようです。これらのブログ幾つかにも本田圭佑選手の名前が登場しているようです。

Killer公式ブログ あの大物サッカー選手も参入?モンスター級ICO ・QONECTが激アツな件・・

初めての仮想通貨 SNSに投稿するだけで稼げるICOコネクトコイン(qonect coin)とは!?

仮想通貨にどハマりしたど変態野郎のブログ 大型ICOコネクトコイン(QONECT)にあの大物サッカー選手も参入か!?

仮想通貨バブルの波に乗らないの?ヤバいですよ!

クリカレ QONECT(コネクト)

本田選手が関与している根拠(?)みたいなものとして週刊誌の記事が引用されていますが、引用されている記事や当該記事に対する本人のTwitterでのコメントを読んでも、関与は明確ではありません。

また仮に仮想通貨への投資や関与が事実としても対象の仮想通貨は何なのか全く分かりません。週刊誌の記事にある「カンボジア政府の後押し」、「福岡県の販売代理店で買える」などの記述を読むとコネクトコインとは別の案件である可能性が高いように思います。そして本田選手に関しては勧誘ブログや公式以外のTwitter投稿に何度も出てきていてもホワイトペーパー公式サイトには(以前はあったのかもしれませんが)現在では全く記載がないのでこれ以上掘り下げないことにします。

次に連絡先情報を検証します。コネクトコインのサイトの「特定商取引法に関する表記」は以下のようになっています。

>事業者の名称 株式会社 シンクロニシティ

>代表者代表取締役社長 大谷臣巧

>所在地 Suite504,South Tower,World Finance Centre, Harbour City, 17-19 Canton Road, Kowloo, H.K

>電話番号 +(852)2369 3683

>メールアドレス contact@qonectcoin.com

>URL http://qonectcoin.com

経営者が日本人としか思えない名前なのに住所は香港になっています。そしてこの香港の住所は検索すると香港のイエローページ(YP 職業別電話番号)を称するサイトにある「T.K. LAM C.P.A. COMPANY LIMITED」という公認会計士事務所の住所と一致することが判明しました。さらに電話番号も両社で一致してます。

つまりこの住所は公認会計士事務所の住所を借りた架空住所の可能性が高いと思われます。そこでさらに社名や経営者名で検索して発見したのが表題の2つ目のシンクロニシティのサイトです。こちらのサイトには香港の連絡先に加えて東京の連絡先があります。香港の住所は中国語なのでよく分かりませんがコネクトコインのサイトにあった香港の住所と何故か全く異なっているようです。

会社書記役として「燊達顧問有限公司」なる社名が出ているのでこの書記役を務める会社の連絡先が記されているのかもしれません。「燊達顧問有限公司」の業務内容を確認したいところですが、検索して出てくる「燊達顧問有限公司」のサイトはウイルス対策ソフトから警告が出るのでアクセス出来ません。

この香港拠点の業務内容には「独自トークンの発行、販売」とあるのでこの香港のシンクロニシティがコネクトコインの発行元という主張になるのかと思われますが、香港に本当にシンクロニシティが実在しているかどうかは疑問です。

一方で日本の住所は東京の新宿になっていてこちらの代表取締役は香港の住所では2番目に出てくる人物になっています。

そしてこの日本の拠点の新宿の住所は検索してみると一連の検証で何度も登場しているRegusというバーチャルオフィス業者の拠点の住所と完全に一致します。また03-5326-3001というFAX番号はRegusの拠点の代表電話番号、03-5326-3000と一番違いです。まず間違いなくバーチャルオフィスのFAX番号でしょう。日本の拠点の業務内容は「QONECTアプリの開発 / 日本マーケティングの拠点」となっていますからコネクトコインの発行主体ではないという主張でしょうか?いずれにしろバーチャルオフィスの住所では情報開示として疑問を感じざるを得ません。ちなみに日本にも拠点があることが判明したので法人登録を調べてみるとシンクロニシティという社名と新宿の住所が一致する法人登録が見つかりました。

>法人番号 5011101081634

>商号又は名称 株式会社シンクロニシティ

>本店又は主たる事務所の所在地 東京都新宿区西新宿3丁目7-1新宿パークタワーセンターN30階

>最終更新年月日 平成29年10月20日

>変更履歴情報 公表以後の変更履歴について表示しています。

>No.1

>事由発生年月日 平成29年10月13日

>変更の事由 商号又は名称の変更

>旧情報 株式会社コネクトコイン

>No.2

>事由発生年月日 平成29年9月5日

>変更の事由 本店又は主たる事務所の所在地の変更

>旧情報 東京都新宿区西新宿7丁目5-25西新宿木村屋ビル>2階

>No.3 新規

>法人番号指定年月日 平成29年8月31日

つまり2017年8月31日に「株式会社コネクトコイン」という社名で法人登録、その5日後に住所を直ぐ近くのバーチャルオフィスの住所に変更、2週間後には社名を「株式会社シンクロニシティ」に変更しています。創業当時のたった2週間ですが「株式会社コネクトコイン」を名乗っていたのですからこの法人がコネクトコインに関わる法人で間違いないでしょう。

そして指摘するまでもないと思いますが、この法人は金融関係、仮想通貨交換業者などの登録など何も得ていないと思われます。しかし上で取り上げた勧誘目的と思われるブログの幾つかには金融機関との関与があるといった記述があります。例えば「仮想通貨にどハマりしたど変態野郎のブログ」には「QONECTコインの特徴」が以下のようにまとめられています。

特に第5項の

>⑤金融ライセンスを持つグループ会社ロンナル・フォレックス株式会社(http://www.ronnaru.jp)も関わるので安心/グループ傘下に取引所も持っています。 株式会社ビットワン(http://wwww.bit-one.co.jp

という部分が気になりました。ちなみにここで登場しているロンナル・フォレックスという会社はシンクロニシティの公式サイトにある水道昂希(すいどう こうき)という取締役の経歴にもアドバイザー業務を担った会社として登場しています(以下のキャプ参照)。

そこでロンナル・フォレックスについて調べてみると確かに金融商品取引業者の登録(関東財務局長(金商)第289号)が登録業者のリストに確認されますが、公式サイトの会社概要の項目にある事業内容は以下の様になっていて仮想通貨関連の事業は含まれていません。

>1.外国為替情報通信コンサルタント

>2.外国為替取引

>3.バイナリーオプション取引の媒介

>4.各種情報の処理・提供並びにシステム開発

そしてロンナル・フォレックスのサイトには以下の様な告知が出ていて特にコネクトコインを名指しはしていませんが仮想通貨事業との関与を否定しているようです。

ロンナル・フォレックスがコネクトコインの事業に関与するという記述は本田圭佑選手の件と同じで公式サイトではなく勧誘ブログにしか確認されませんが事実なのかどうか疑わざるを得ません。

さらに仮想通貨発行元になっているシンクロニシティ・香港拠点の代表取締役となっている大谷臣巧(おおたにしげよし)という人名について検索してみましたが、「情熱社長」というサイトにそれらしき人物のインタビュー記事が載っていてRayXという会社を経営しているとあります。そこでこのRayX社のサイトを見ると住所や電話番号といった連絡先情報がない上に資本金600万円、従業員は5名という小さな会社と思われるのに事業内容だけはWebデザイン、IT事業、飲食店事業など非常に幅広いということが分かりました。

さらには同じURLアドレスで開運祈願、厄除けに役立つパワーストーンのブレスレットを販売する事業もやっていると書かれています。

ちなみにRayX社の所在地については法人登録で確認することが出来ました。

>法人番号 6011401016553

>商号又は名称 株式会社RayX

>本店又は主たる事務所の所在地 東京都板橋区南町6番9号

板橋区南町の住所を調べると「シーアイマンション池袋西」というマンションがあるようです。RayX社はマンションの1室にある会社ということになります。

シンクロニシティの取締役として名前が出ている宍戸暉という人物についても検索すると宍戸暉という名前のTwitterアカウントが見つかります。右のキャプにあるように「月利4%、毎月配当」という案件を紹介するとあります。月利4%、つまり年利48%という高利回りの投資が実在するかどうか疑わしいですし、それをTwitterでしかも投資対象など何も明らかにせずに紹介するというのは法的にも問題があるように思われます。このTwitterアカウントがシンクロニシティの取締役のアカウントであるならばシンクロニシティの経営陣について信頼性を評価することは難しいです。

そして販売するコネクトトークンの発行枚数は500億枚、その内50億枚をプレセールで販売するとなっています。プール (ロックアップ)の325億枚は後に売り出される分のようです。

最低購入枚数は20万枚、価格は1枚がおよそ0.01ドルとなっていますから最低投資単位が約2000ドル≒20万円余りということになります。

そしてプレセールで販売する50億枚を売り切れば50億円余りの資金を集めることになります。さらに総発行枚数をプレセールの価格で売れば500億円になります。今後の販売価格がプレセール価格より上昇するならさらに多くの資金を集める可能性もあることになります。

そしてこれだけ巨額の資金を集めて行う予定の事業の一応の説明がホワイトペーパーで述べられていますが、どうやらこの仮想通貨の販売でも採用されているらしいバウンティ報酬の様なシステムのようです。TwitterやInstagramなどのSNSを一括管理出来るソフトを開発して、SNSへの投稿を見た人による何かの消費行動に結び付けば(例えば飲食店情報が飲食店への来店、飲食に結び付けば)報酬が支払われるという話しのようですがはっきり言ってビジネスモデルとしての実現性とか新たな仮想通貨の必要性とか事業計画に説得力を感じません。

結論としてこの案件については会社情報の開示、経営陣の信頼性などにもかなり問題を感じます。ビジネスモデルの説得力も感じません。特に明らかに日本のグループによる仮想通貨なのに香港法人を使う必然性が全く感じられませんし、香港法人の実在も疑わしいです。責任逃れの為の実体のない香港法人ではないかとさえ思われます。投資は推奨しません。

※付記

本項の冒頭に書いたように2018年3月下旬にシンクロニシティからコネクト・エーアイ・ラボへの社名変更が行われたようです。香港拠点はシンクロニシティのままですが住所電話番号が変更になり、サイトの日本語表示が出来なくなりました。日本での社名変更は法人登録で確認出来ます。

2017年9月 株式会社コネクトコインで法人登録

2017年10月 株式会社シンクロニシティに社名変更

2018年3月 株式会社コネクトエーアイラボに社名変更

と半年ほどの間に2度の社名変更、しかも本項の冒頭にも書きましたが社名変更に伴ってシンクロニシティのサイトはコネクトエーアイラボのサイトへの誘導やリダイレクトもなく閉鎖されるという異常な状況になっています。コネクトエーアイラボのサイトには社名変更したことが記されています。

今後も同様の社名変更が行われ、コネクトエーアイラボのサイトが閉鎖される可能性もあるかもしれませんが、その場合には法人登録を確認するべきかもしれません。コネクトエーアイラボの会社概要は以下のようになっています。

社名変更以外に第2の住所が出現したようですが電話番号は1つだけです。1つ目の住所はバーチャルオフィスの住所と思われます。また新しい社名でTwitterのアカウントFacebookのアカウントが作られているようです。またこれらのアカウントへの投稿によれば東京・福岡で勧誘目的かと思われるカンファレンスが開かれたようです。

香港のコネクトコインのサイト (qonectcoin.com/jp_index.php)も時期は不明ですが以前は可能だったはずの日本語表記が出来なくなり住所や電話番号が以前と変わったようです。

>Suite 827, 8/F., Ocean Centre, Harbour City, 5 Canton Road, Tsimshatsui, Kowloon, Hong Kong

>+(852)2157-9592

この新しい香港の住所も検索してみるといわゆるパナマ文書に複数の法人の住所として登場しているといった状況から架空住所の可能性が濃いと思われます。


●Philippine global coin (フィリピン・グローバル・コイン、PGCコイン pgc.ph/)

多数のTwitterアカウントから右に示すキャプの様な勧誘が行われていることから検証対象にすることにしました。詳しい情報は公開せずに個人的にLINEのグループに勧誘するなどしており、情報公開を避けようとしている意図が疑われます。

さらに「フィリピンが国家規模で進めていく国際仮想通貨」といった記述のある勧誘も見つかります。

フィリピン政府が関与などと主張されると「検証13」で検証したフィリピンの国家プロジェクトなどと主張しながらフィリピン大使館から関係を否定されたノアコインの案件を思い起こさずにはいられません。

まず表題の公式サイトですが、このサイトは全てが1つの画像データーで出来ており、文章の部分も全てテキストデーターではなく、画像データーになっています。その為にコピーペーストは出来ませんし、しばしば拡大しても非常に読みにくいです。多くの仮想通貨ではPDFファイルの形で提供されているホワイトペーパー(事業計画書)さえも画像データーで掲載されていて特にこの部分は読みにくいなどというものではありません。意図的に読みにくいまま放置されているのではないかと疑いたくなります。そして全てが画像データーなので当然記載内容が検索エンジンにも引っかからないようになっています。内容を転載しようとすれば全てタイプ打ちするしかありません。

まず例によって連絡先住所ですが以下のようになっています。社名はJaphil Global Coins Corp、住所は観光地で知られるセブ島のビルの11階ですが電話番号が無いことには違和感を感じます。

そして「Philippine global coin」で検索すると多くのフィリピンの新聞などの記事や公的機関から出た警告が見つかりました。記事や警告の当事者となっているのはフィリピン上院の議長を務めているAquilino "Koko" Pimentel III (アキリノ・ココ・ピメンテル3世)という政治家です。"Koko"というのはこの政治家の愛称のようで2017年4月には日本の国会を訪問しているようです。父親も上院議長などを歴任した名門の出身でフィリピンでは著名な政治家のようです。

この政治家とフィリピン・グローバル・コイン、コインの発行元になっているに関する警告や記事の幾つかを紹介します。

Senate of Philippines (フィリピン上院)からの警告 (2018年1月29日付)

かなり長くなりますが警告文全文を引用します。

>Koko slams cryptocurrency scam using his name

(アキリノ・ココ・ピメンテル3世が彼の名前を使った詐欺を全否定)

>Senate President Aquilino "Koko" Pimentel III on Monday hit a new swindling operation that uses his name and that of the Senate to attract victims.

>Digital Currency Co., Ltd. (DCC) claimed that it has partnered with the Senate of the Philippines for the release of a virtual currency called the Philippine Global Coin (PGC), using pictures of the Senate chief to buttress its claims.

>"There is no partnership between me and DCC, or the Senate and DCC. I met with these people as a matter of courtesy to visitors. I am shocked at their bold claims of an agreement between us using pictures that politicians normally have with visitors", said Pimentel.

>The Senate leader explained that the Senate cannot issue currency, as it is the mandate of the Bangko Sentral ng Pilipinas. Pimentel is concerned that DCC might target OFWs, putting their hard-earned savings at risk.

>He said, "I ask our OFWs to be wary of those who use the names of government officials and institutions in investment schemes. The government will never engage in activities that will profit off their sacrifices and hard work. Always check with the Philippine Embassy to verify individual claims of this nature."

概略としては「デジタルカレンシー (DCC)」という会社が上院議長であるアキリノ・ココ・ピメンテル3世と共同して「フィリピン・グローバル・コイン (PGC)」という仮想通貨を発行すると称し、上院議長との面談の様子を写した写真を使って宣伝しているようだが、そういった事実がないと警告しています。ピメンテル氏によれば面談したのは事実だが単に表敬訪問を受けただけのつもりであったのに共同事業の合意があったかのように写真が宣伝に使われている件については衝撃を受けているとも書かれています。さらにDCC社がフィリピンの海外出稼ぎ労働者(Overseas Filipino Workers, OFWs)がDCC社の詐欺の標的にされるのではないかという懸念を表明しています。

Philippine News Agency (フィリピン ニュース局)からの警告 (2018年1月29日付)

記載内容の主旨は上の上院からの警告と同じなので省略します。

Securities and Exchange Commision Philippines (フィリピン証券取引委員会)からDIGITAL CURRENCY CO. LTD. (デジタルカレンシー社)への警告 (2018年2月9日付)

この警告ではピメンテル氏がデジタルカレンシー社との関係を否定したことを引用し、デジタルカレンシー社がフィリピンで投資を募るのに必要な登録を得ていないことを明確にして勧誘を受けても投資しないようにといったことが述べられています。

Manila Bulletin (フィリピンの英字紙)の記事 (2018年1月29日付)

公的機関からの警告だけでなく複数の報道機関でもピメンテル上院議長がデジタルカレンシー社、フィリピン・グローバル・コインとの関係を否定したという記事がかなり大きく報じられています。タイトルを見れば分かるように最初に引用した上院からの告知と同様、この件を仮想通貨の詐欺(SCAM)と断じています。

これだけ多数の警告や報道がフィリピンから出ているのですが、フィリピン・グローバル・コインの公式サイトにはこの検証を書いている2018年2月の時点ではピメンテル氏の名前は全く見つかりません。代わりに「Relationship between the Company and the Philippine government (当社とフィリピン政府との関係)」という項目で強調されているのはフィリピンの現職大統領であるドゥテルテ氏の弟、エマニュエル・ドゥテルテ(Emmanuel Duterte)氏との関係です。左のキャプはドゥテルテ氏とフィリピン・グローバル・コイン側の副社長の奥野という人物が会談した件が掲載された地元の新聞の記事ということになっています。調べてみると現職のドゥテルテ フィリピン大統領には確かにエマニュエルという名前の弟がいることは確かなようですが、この人物がフィリピン政府で何らかの職責を負っているかどうかについては確認出来ません。

例えば「Japino.net'」という日本に居住するフィリピン人の為のサイトにこのエマニュエル・ドゥテルテという人物が2017年7月に東京で開かれたイベントに出席したという記事があるのを見つけましたが、肩書はドゥテルテ大統領のYounger Brother (弟)とあるだけです。そしてエマニュエル・ドゥテルテ氏と奥野という人物が会談したという2018年1月12日付の記事をSunStarというフィリピンのニュースサイトで確かに確認出来ましたが、その記事の冒頭部は以下のようになっています。

>A JAPANESE investor has partnered with a Filipino capitalist to form a company that will introduce bitcoin to Filipinos. Takanori Okuno and Emmanuel Roa Duterte formed Japhil Global Coins Corp. (J-PGC) and will set up headquarters in Cebu.

日本の投資家とフィリピンの資本家がフィリピンにビットコインを導入する会社を共同で設立することで提携合意した。すなわち(日本の投資家)奥野氏とエマニュエル・ドゥテルテ氏がJaphil Global Coins Corp (J-PGC)という会社を設立して本社をセブ島に置くといったことが書いてあります。この記事でのエマニュエル・ドゥテルテ氏の肩書はcapitalist (資本家)ということになり、フィリピン政府で何らかの官職に就いているとは思えません。また創設した会社の目的は「フィリピンにビットコインを導入すること」となっていてフィリピン・グローバル・コインなどという仮想通貨の名前は出てきません。さらに記事の引用を続けます。

>J-PGC president Duterte said they aim to introduce the virtual currency to Filipinos so they can take advantage of its uses such as in remitting money, investment and cashless payment. The company, however, is still waiting for their Securities and Exchange Commission (SEC) papers and license from the Bangko Sentral ng Pilipinas (BSP).

但しエマニュエル・ドゥテルテ氏を社長とするJ-PGC社は証券取引局(SEC)とBangko Sentral ng Pilipinas (BSP、フィリピン中央銀行=日本の日銀に相当)から認可を待っている状態であるといったことが書かれています。フィリピンでも仮想通貨交換業者を営むには日本と同様に許認可が必要ということでしょう。そこでフィリピン中央銀行のサイトでJ-PGC社に認可が下りたのかどうか確認を試みましたが確認出来ません。サイトの検索機能を使ってもJ-PGC社の名前は出てこないのです。そもそもJ-PGC社の設立で合意したという記事が2018年1月12日付なのですから1カ月半しか経っていない2018年2月末現在で認可が下りているとは思えません。また既に指摘しましたがこの記事にはビットコインをフィリピンに導入するという事業と書かれていて「フィリピン・グローバル・コイン」については一言も触れられていないのです。それなのに表題のフィリピン・グローバル・コインの公式サイトには運営元としてJ-PGC社の名前が記されているのです。

再度まとめるとここまでの検証範囲でこの案件については以下の様な問題点があります。

1) フィリピンのピメンテル下院議長の名前を勝手に使って勧誘を行っていた形跡が認められ、複数のフィリピンの公的機関から警告が出ている。

2) 何の官職にも就いていないと思われるフィリピン大統領の弟を経営者に据えたことが事実であっても「フィリピンが国家規模で進めていく国際仮想通貨」と主張するのは欺瞞としか思われない。

3) フィリピンで必要と思われる仮想通貨交換業者の認可を得ていないと思われる。

ここまで主にフィリピンで出ている情報を検証材料にしてきましたが、この案件では既に日本のデジタルカレンシー社とか奥野という人物の名前が登場しているのでこれらについてさらに検証を進めることにしました。まずデジタルカレンシー社ですがこの社名には聞き覚えがあります。すなわち「検証8」のベネフィットクレジットコインの検証で登場した社名と全く同じです。そこで「検証8」で検証したデジタルカレンシー社のサイト(digitalcurrency.tokyo)を見ましたがフィリピン・グローバル・コインに関する記述は見つかりません。名前が一致していても別のデジタルカレンシー社が存在するのかとも思いましたが、検索するとベネフィットクレジットコインの勧誘サイトに以下の様な記述を発見しました。

やはりベネフィットクレジットコインとフィリピン・グローバル・コインには同じグループが関与しており、ベネフィットクレジットコイン(クレジットコイン)の検証に登場したデジタルカレンシー社がフィリピン・グローバル・コインについても関与していると考えてよさそうです。

同様にYumiya.workという勧誘サイトには2017年12月14日付で書かれた「期待大!ベネフィットクレジットコインBCCとフィリピングローバルコインPGC」というタイトルの文章があります。

ここから一部を抜粋します。

「上院議長のアキリノ・ココ・ピメンテル3世」の名前であるべきと思われる部分が「フィリピン上院議員のアキノ氏(フィリピン政府のNo.3)」になっていたりしますが、やはりベネフィットクレジットコインのグループがフィリピン政府との正式なプロジェクトを勝手に名乗ってフィリピン・グローバル・コインへの投資を勧誘していた可能性が高いようです。その後、フィリピン側から警告が出たことによって上院議長の名前が公式サイトなどから消えたと考えるのが合理的でしょう。そしてこの勧誘サイトには以下の様な記述が続いています。

>デジタルカレンシー松田智社長のFacebookにフィリピン政府とのやり取りの際の写真が載っています。(下の写真は中央のシンボルと被っているのが松田社長です)ちなみにデジタルカレンシー社の社長は松田という名前ではなく、デジタルカレンシー社のサイトの会社概要によれば関口葵という人物のはずであり、「検証8」で触れたように前社長が松田智という人物だったはずで違和感があります。

いずれにしろデジタルカレンシー社の現社長あるいは前社長がフィリピン政府(?)と直接交渉したと主張しているのですからやはりデジタルカレンシー社が主導的な役割を果たしているものと思われます。

さらにエマニュエル・ドゥテルテ氏と会談してきたという奥野 (Takanori Okuno)という人物ですが、本人と思われる人物のインスタグラムに会談の場面が投稿されているようです。

この奥野高徳なる人物がエマニュエル・ドゥテルテ氏と握手している写真は先ほど引用したベネフィットクレジットコインの勧誘サイトにも掲載されています。さらにこの人物のインスタグラムアカウントを見ると風俗嬢のスカウトマンとして荒稼ぎした経歴をテレビに出演して語ったことがあるようです。出演したテレビ番組の記事では「歌舞伎町の悪質スカウトマン」を語ったなどと紹介されています。この経歴をどう評価するかは人によって違うかもしれませんが少なくとも金融の専門家ではなさそうですし、個人的には信用に値する良心的な人物と考えることは難しいです。同じグループによるベネフィットクレジットコインの案件と同じで投資は推奨しません。

※付記1

在日フィリピン大使館の公式サイトに日本人からの問い合わせがあったということで以下の警告告知が2018年3月16日付で出ています。フィリピン・グローバル・コインおよびベネフィットクレジットコインについてフィリピン上院とパートナーシップを結んでいるというフィリピン・グローバル・コイン側の主張を全面否定するとなっています。

※付記2

この案件で重要な役割を担っていると思われる奥野高徳という人物が傷害容疑で逮捕されたようです。

仮想通貨PGC(フィリピン・グローバル・コイン)日本人取締役が逮捕

グローバルニュースアジア 配信日時:2018年5月1日 23時30分

>2018年5月1日、仮想通貨PGC(フィリピン・グローバル・コイン)を発行するJ-PGC(本社・フィリピン セブ島)の、奥野高徳(オクノタカノリ)取締役が、警視庁に逮捕された。

会社役員の男、傷害容疑で逮捕=ハンマーで知人殴る-警視庁

時事通信 2018/05/01

>東京都港区の路上で2016年12月、知人の男性ら2人を殴り重傷を負わせたとして、警視庁捜査1課は1日までに、傷害容疑で、会社役員の奥野高徳容疑者(39)=渋谷区代官山町=を逮捕した。