「エージェント・オレンジ」における戦場記者の装い

先日、我々歴史研究同好会が主催する演劇企画「ヒストリー・アクト・リバイバル」の上映作「エージェント・オレンジ」の撮影が終わり、皆様に向けて予告編映像が公開されました。予告編は、監督や役者、脚本等だけでなく編集も行ってくださった三矢先生のセンスが光る素晴らしい物になっておりますので、ぜひとも御覧ください。

ところで、予告編の中に、主人公の報道記者、ケント・S・ミレットが戦場を取材するシーンが含まれているのに気づかれた方はどれほどいらっしゃるのでしょうか。

戦う兵士を取材する主人公ミレット

戦場を取材するシーン。奥でカメラを構える青い服を着た人物が主人公、ケント・S・ミレット(演:すずきのサシミ)

まだ公開前なので、余り詳しいことは話すことができませんが、画像で示しているシーンが、戦場を取材しているシーンです。銃を構える二人の米軍兵士の姿を、ミレットが後ろからカメラで撮影しています。

このシーン、上記の通り戦場を取材している、という設定ですが、それを踏まえると、皆さんはおそらくミレットの服装に違和感を覚えられると思います。

兵士二人は迷彩効果のある緑色の戦闘服を着ているのに対し、ミレットは目立つ青いジャケットを羽織っているだけです。戦場にいる自覚があるのか?というような服装ですね。

舞台版がこうなってしまった理由は単純に軍服が足りなかったこと、画面が軍服だらけだと誰が誰だか見分けがつかないことなど、様々有るのですが、一番の理由は着替えに取れる時間がないため、他の場面の衣装を流用せざるを得なかったことです。街中を取材するシーンでも軍服を着ていたら、記者というキャラクター性が薄れてしまいますからね。


舞台では様々な都合で平服を着たまま戦場に駆り出されたミレット記者ですが、実際のベトナム戦争の戦場記者たちは、もちろん戦闘服やヘルメットを着用して取材に出ています。日本記者クラブのWebページの「取材ノート」でも、実際にベトナム戦争を取材した特派員の方が戦闘服を用意してもらった、というようなことを語っておられます。

ちなみに、当時の記者の中には、サイゴン(現ホーチミン市)の市場で装備を集めたという方もおり、歴研のホーチミン取材 にて訪問したヤンシン市場 で装備を集めたという方もいらっしゃったそうです。


何はともあれ、舞台「エージェント・オレンジ」は、2023年10月7日公開です。ぜひともお楽しみに!


執筆者:総帥