はい、どうもみなさんこんにちは。テストが終わって一息ついた溝口です。なんだか久しぶりですね(デジャブ)。それは5月中は部活ができなかったのが原因ですが。まぁ、今月も張り切って、歴史の小ネタコーナーをやっていきましょう。今回は「制帽」について。この記事名を見た時点で、「いや、制帽ってなんだよ、帽子でいいじゃん」と思われた方もいらっしゃるかも知れません。


そもそも制帽とは

制帽、読んで字の如く、帽子のことです。世の中様々な帽子がありますが、この制帽というのは「特定の団体や職業に所属する人物が制服として着用が定められている帽子」のことです。つまりは、野球チームのキャップや小学生が登校時に被るあの黄色い帽子(色が黄色いかは地域差があります)も制帽の一つです。団体に定められていたら制帽!という感じですね。

定義は先程書いたとおりですが、皆さん、制帽と聞くとこんな帽子をイメージすること、ありませんか?

(画像提供:友人)

この形の帽子、色んな所で見かけますよね。自衛隊、警察はもちろん、警備員、パイロット、鉄道職員、救世軍のメンバーなどさまざまな職種の方がかぶっている帽子です。結構多くの男性は、子供時代一度はこの制帽に憧れたことがあるかと思います。格好いいですよね実際。筆者もそう思います。実際、この形の制帽を買おうと思った方も多いのではないでしょうか?わかりますよ、その気持ち。ですがこれ、買った友人の話によると某通販サイトで5000円近くするらしいです。とてもじゃないですが、子供に「おとーさん!あの帽子かっこいい!!買って買ってぇ!!」って言われて「うんいいよ。」って即答できる額ではありませんね…まぁでも、人生で一度くらいはこういう帽子をかぶってみるのも良いんじゃないでしょうか。


「制帽」の形は?

さて、先程の項で写真の帽子を制帽制帽と言っていましたが、実は「制帽」という名前の帽子の形は存在しません。「鹿撃ち帽」とか「シルクハット」のような特定の名前ではないのです。ではあの写真の帽子は何という名前なのか?というと、一般的に「制帽」と呼ばれている形の帽子は「官帽」という形の帽子です。世の中「制帽」というとだいたい官帽のことを指すため、官帽は一般的に制帽と呼ばれているのです。ちなみに、よくマンガなどで学生が被っている下の写真のような帽子は、

(画像提供:友人)

官帽に似た形ですが、この帽子は官帽ではなく、「学生帽」と呼ばれています。まんまですね()。なお、後述するように官帽にも多くの形のバリエーションがあるのですが、この学生帽にも多くのバリエーションが存在します。代表的なのは一般的な丸帽と、早稲田大学などで被られていた角張った形の角帽が存在します。写真のものは丸帽型で、帽子の天井の縁が波打っているので旧制第三高等学校型、通称三高型の学生帽だと思われます。丸帽には三高型以外にも、天井の縁を平坦に仕上げた旧制第一高等学校型、通称一高型の学生帽があります。官帽との違いはいろいろありますが、個人的には被ったときに帽子の天井が鍔のあたりまで出っ張らずにほとんど垂直になっているのが学生帽だと思っています。


官帽

現在では諸国の軍人や警察官、鉄道職員などに被られている官帽型の帽子。その歴史は、19世紀にまでさかのぼります。官帽の原型と言われているのは、19世紀の北欧の労働者達の被っていた帽子だと言われています。つまり、最初は軍用の帽子ではなかったのです。19世紀の時代の軍隊の帽子といえば、二角帽子(ナポレオンなどが被っていることで有名な帽子)やシャコー帽やケピ帽(シャルル・ド・ゴールが被っている帽子)などが主流でした。

官帽型の帽子は、ナポレオンがいろんなところでヒャッハーやっていた"ナポレオン戦争"時代の前後にロシア帝国やプロイセン王国に将校用の制帽として採用されたことから軍用の帽子として認知されるようになります。ケピ帽は誕生後多くの国の軍隊に制帽として採用されてきましたが、第一次世界大戦ごろからだんだんと各国で官帽型の帽子や独自の形状の帽子に更新され始め、現在では多くの国の軍隊や警察で官帽が制帽として採用されています。官帽というのは、意外と最近の帽子なのです。

ちなみに軍隊用語を多用することで知られているキリスト教プロテスタント系の救世軍のメンバーも、制帽として官帽を着用しています。

官帽にはさまざまな形があり、視覚的に見分けられる有名な物を上げると、

日本の警察や自衛隊などに採用される形の官帽、ニューヨーク市警などアメリカ警察で多く採用される縁の波打った官帽、ドイツなどでよく見られるトップが高く、鍔から正面の縁までほぼ垂直な形の官帽、日本の青年将校などがよく被っていたチェッコ式官帽、ソ連や中国、北朝鮮などの旧共産圏でよく見られるクラウン部分がものすごく大きな官帽など、さまざまな形があります。ちなみに、北朝鮮軍人の制帽はなぜあのような形をしているのかと言うと、単純に「自分たちが共産陣営だからソ連軍方式に習っている」、というのもありますが、一説によれば「欧米人に比べて体格が貧相なアジア人種が威圧感を出すため」らしいです。ようは帽子をデカく作って体をデカく見せようってことなのです。まあ確かに目の前に160cmくらいの人が立ってるよりも2m超えの人が立ってたほうが威圧感ありますし、人間自分より大きな物にはビビるので、結構理にかなってると筆者は思います。

国によって官帽の形やスタイルは変わりますが、大体がその国と繋がりのある国や連合に採用されている形の官帽のスタイルが採用される場合が多いようです。第二次世界大戦後の国の軍服を見てみると、大体東側ならソ連に、西側ならアメリカに習った軍服のスタイルをしていることが多いです。

ただなんにせよ、官帽その洗練された見た目や機能性から各国に採用され、現在では軍人や警察官など公的機関に勤務する者の象徴のような扱いを受けています。

(画像提供:友人)

こんな感じで拳銃などと合わせるだけでもう、強そうですよね(小並感)。こんな感じで人を寄せ付けるような魅力を持つ官帽は、一般の人に「あ、この組織入りたいな」と思わせる力も持っています。


まぁこの写真は…銃だけでもいいですけどね!(ゴリ押し)



略式制帽

さて、上で述べたとおり多くの組織で採用される官帽型制帽。たしかにスタイリッシュなのですが、メッシュ素材でないとあまり通気性がよくなかったり、かさばったりするためあまり戦闘などの激しい運動についていくことができるとは思えません。そこで登場するのが略式制帽、通称略帽です。略帽には様々な形があり、戦時中のナチスドイツの規格帽や、ギャリソンキャップ、ブーニーハット、ベレー帽など様々な形が存在しますが、日本国内で一番有名な略帽といえばやはり旧軍の戰闘帽でしょう。

(左:筆者蔵 右:友人提供)

上のような形の帽子が「戦闘帽」です。戦時中を描いたドラマや映画などではよく登場する形で、日本軍に興味のない若い方からは「ダッセー、あんな帽子被って戦うとかないわ」とか思われている帽子です。この戦闘帽は昭和五年から大日本帝国陸軍で採用されたのを皮切りに、海軍でも昭和十二年に艦内用帽として濃紺(第一種軍装)、白(第二種軍装)、の戦闘帽型の帽子が採用され、後に現在でも人気の高い開襟の第三種軍装が採用されたと同時に緑のものも制定されました。また、1940年から制定された国民服の帽子も戦闘帽型の帽子が制定され、工場や男子学生の制帽となるなど、民間にも浸透しました。戦後はコスプレ以外で着用される機会は減りましたが、現在では警察や消防、鉄道や商船会社などで広く略帽として制定されています。

陸軍型と海軍型の戦闘帽の違いは帽章で判別できます。帽章とは簡単に言うと所属している団体や組織を表すマークのことで、前項の官帽に付いているようなマークです。戦闘帽では、陸軍は五芒星の、海軍は錨の帽章を取り付けていました。さらに細かく言えば陸軍は兵から下士官向けの略帽はそのまま、将校向けは台座を付けて星章を縫い付けていました。なので上の略帽は兵・下士官用略帽です。海軍は帽章を兵用は錨のみ、下士官は桜と錨、士官は桜と錨と抱き茗荷の帽章を取り付けていました。また、海軍では略帽をかんたんな階級章としても使っており、士官は二本、下士官は一本のストライプが帽章の下に描かれていました。

もともとこの戦闘帽、特に陸軍のものはヘルメットの下に被ることを想定していたため、伏せ撃ちをするときに邪魔にならないように短い庇となっています。筆者が手元の戦闘帽とM4カービンで試したところ、(視界には入ってきますが)ほんとに邪魔にならないようになっています。また、陸軍は夏や台湾以南の南方地域では直射日光を防ぐための帽垂れ布を付ける事があり、この形がおそらくみなさんが一番よく思い浮かべるであろう「日本兵の帽子」だと思います。

ちなみに、この戦闘帽、見ずらいですがこのホームページのどこかに被って写真に写っている人物がおります。気が向いたら探してみてください。


その他の制帽

さて、ここまで2つの制帽について紹介してまいりましたが、上で紹介したものだけが制帽ではありません。国や会社、組織によって様々な制帽が存在します。

制帽として定められている主流なものとしては、主に女性用の制帽として採用されるハイバック帽や部隊ごとのアポロキャップ(野球帽)、海軍の水兵用によく採用される水兵帽、ドイツのものが有名なクラッシュキャップ、宗教上の理由で着用されるターバンやフェズ帽などがあり、これらの帽子は世界中の組織で制帽として被られています。制帽と言っても、一口にはくくれないのです。これ以外にも様々な帽子が様々な組織で採用されているので、みなさんも街に出たときに、そのような帽子を探してみるのも良いのではないでしょうか。


帽章

ここでは制帽に付属する帽章についてお話します。

帽章とは先述した通り、組織のシンボルであり、たいていは旗やマークを図案化したものや、モットーを形に表した物が多いです。例えば共産圏は鎌と鎚、ドイツは鷲など。大体下の写真ようなものです。下の例は極端ですが。

(画像提供・制作:歴史研究同好会某部員)

材質は所属する立場によって違う場合があり、例えば士官用は金属製、下士官以下は布台座に図案を縫い付けたもの、のような区別がある場合があります。

帽章を付ける場所も組織によって違い、クラウンに付ける場合(例:中国人民武装警察部隊)、はちまきに付ける場合(例:大日本帝国陸軍)、両方に付ける場合(例:ドイツ国防陸軍)、クラウンとはちまきにまたがる形で付けるもの(例:日本の警察)など様々な場合があります。


まとめ

今回はあまり注目されることのない「制帽」についてお話していきました。街でよく見る官帽などの制帽ですが、あまりどの形の帽子がどんな名前なのか考えたことは少なかったのではないでしょうか。これからもこのコーナーで「どうでもいいけど、ちょっと役に立つ」かもしれない知識を配信して参りますので、どうぞこれからもよろしくおねがいします。




※ここでは救世軍に所属する信者の方々のことを「メンバー」と表記していますが、これは救世軍内には役割などによって分けられた「階級」が存在し、「兵士」などとひとくくりに表記すると失礼が生じると考えたため、「メンバー」と表記しています。