傲慢稚気の打消話

[台本]傲慢稚気の打消話

世界設定、場面情景

特に変わった事はない何の変哲も無い世界、つまり普通の世界、普通の日常から一変、舞台は未来へ。

彼は不条理に、覆す事の許されない結末に抗う。

これは九つの砕かれた物語の断片の一つ。その修復の物語。

※この台本は傲慢稚気の否定話の続編譚です。是非、そちらからやってもらえると幸いです。

登場人物

○蜘旗 浩満(くもはた ひろみつ)

高校二年生、17歳、男性

好青年感出してるけども発言の節々が妙に傲慢。そして時に冷酷。

だけど悪い奴ではないし悪気もない。むしろ割と優しくて良い子。

仲良し三人組の一人。主人公。

○最羽 美兎(さいはね みう)

高校一年生、16歳、女性

少し大人びている女性。

儚げで不思議な雰囲気を醸し出しているが、少々残念。

仲良し三人組の一人。

○十原 秀弥(つなしばる しゅうや)

高校三年生、18歳、男性

気さくな皆のお兄さん的人物。

よくふざけるが、三人の中では一番常識人で、なんだかんだで大人。

仲良し三人組の一人。

〇最羽 日葵(さいはね ひまり)

26歳、女性

美兎の姉。

元々は優しい性格だったらしいが、冷徹な人間。或いは子供とも言える。

忘れっぽいというか、どうでもいいことはすぐ忘れる。

○フィツァレスト

??歳、女性

突如現れた謎の人物。

機械的に冷静で真面目。

彼女の出現により彼らの人生は歪み始める。

〇フエゴ・ラドロン

30歳、男性

犯罪グループのリーダー。

復讐心に燃える男。人で無くなり浩満に立ちはだかる。

○イレギュラー(十原秀弥と兼ね役)

年齢不詳、男性

なんでもありのこの世界の員数外

蜘旗 浩満♂:

最羽 美兎♀:

十原 秀弥/イレギュラー♂:

最羽 日葵♀:

フィツァレスト♀:

フエゴ・ラドロン♂:

これより下から台本本編です。

───────────────────────────────────────

(夏休み前の昼間の学校の一室。)

秀弥:「……この手でどうだ?」

浩満:「無駄ですよ。

これで、チェックメイトです。」

秀弥:「ぐ……ぐぬぬぬぬ…………ん“に”ゃ“ーー!!また負けたぁ!!

チクショー全っ然勝てねぇ!!

なあ、やっぱこれって必勝法的なのがあんじゃねぇのーヒロミツ~?」

浩満:「ん~~~どうなんですかねー。

別にこのゲーム詳しいワケじゃないので何とも言えませんが、

シュウヤくんが勝てないのは……」

(浩満、立ち上がる。)

秀弥:「?」

浩満:「僕が強いからですよ?」

秀弥:「おうおう!言うじゃねぇかよーこんにゃろ!

生意気なガキは~……こうだっ!」

(秀弥、両手をわきわきしてから浩満に飛びかかる。)

浩満:「ちょっ、やめて!やめてください!アハハハ!アハハハ!くすぐったい!!

ヒィー!フィヒヒヒ!くすぐり殺されちゃう!アハハハハハ!!」

秀弥:「おりゃおりゃおりゃ!」

浩満:「アッハハハハハハハ!!」

間。

浩満:「……シュウヤくん、なんか忘れてません?」

秀弥:「ん?なんだよ?なんかあったっけ?」

浩満:「…………分かりません。でも、何かを忘れてる気がするんです。」

秀弥:「なんだぁ?課題かなんか忘れたのか~~?」

浩満:「いや、そういうのじゃなくて、なんというか、

その、凄く大切な何かを忘れてる気がするんです。

凄く……大切な……もの……いや、誰かを……」

秀弥:「ん~~~~????

誰かって……誰?」

浩満:「えっ……と…………いつも一緒に居た人がいない気がするんです。」

秀弥:「いつも一緒に居た人ぉ?」

浩満:「シュウヤくんも、一緒だった……気がします……

分かりませんか……?」

秀弥:「え~~~~……?ん~~~笛張(ふえばり)の事か?」

浩満:「違う。アイツは全然大切じゃないです。」

秀弥:「ひっでぇなおい。

……んー……マジでわかんねぇわ。」

浩満:「……そう!女の子!

女の子です!女の子の友達がいたはずです!!」

秀弥:「女の子、かー……んー……お前らの知ってる人っつったらー……

……隈河(くまがわ)?」

浩満:「違いますね。確かに僕の一つ下だった気はしますが違います。

クマガワさんと大して仲良くないです。むしろ仲悪めです。

別の人ですよ……なんだか出そうで出ないです……。

誰だ……」

秀弥:「……夢の中での話とかじゃねぇの?

俺、お前といっつも一緒に居るけどそんな奴記憶にないぜ?

俺とお前、この町一の仲良し二人組で親友。

もういいんじゃねぇの?思い出さなくて。」

浩満:「夢…………シュウヤくん、君はまた……ッ!

…………また……?」

浩満:「ぐっ!!」(頭が痛くなる)

~~~~~~~~~~~~~~~~

秀弥:『■■は……元々違う時代の人間だ……。

本来は俺たちと、■■は関わる事がなかった。

この5年間は長い長い夢だったんだ……!

俺とお前が一緒に見てた白昼夢なんだよ。』

(■■はノイズや無音の演出。)

~~~~~~~~~~~~~~~~~

(浩満、何かを思い出す。)

浩満:「…………。」

秀弥:「ヒロミツ?……大丈夫か?」

浩満:「……美兎(みう)……最羽(さいはね)、美兎(みう)……

そうだ、ミウさんだ……!」

(浩満、目が覚める。)

浩満:「ミウさん!!!」

フィツァレスト:「気が付きましたか。」

浩満:「……ッ!」

フィツァレスト:「まさか、この時代の洗脳技術から自力で抜け出すとは。

さすが蜘旗 浩満(くもはた ひろみつ)ですね。」

浩満:「…………貴女は……というか、ここは……」

フィツァレスト:「私は、フィツァレスト。

最羽 美兎(さいはね みう)の姉、最羽 日葵(さいはね ひまり)のメイドアンドロイドです。

そしてここはクモハタ ヒロミツの時代より先の未来で、言ってしまえばここは牢獄です。」

浩満:「…………ほう、貴女がフィツァレストさんですか。

ミウさんを連れ出したのが、貴女ですか。」

フィツァレスト:「そう睨まないでください。」

浩満:「僕にちゃっちぃ洗脳をしようとしたじゃないですか。まぁ、無駄だったようですが。

だとしても睨まずにはいられないですよ。」

フィツァレスト:「そうですか。ならば、仕方が無いですね。」

浩満:「さて、ちょっと質問良いですか?」

フィツァレスト:「なんでしょう?」

浩満:「ミウさんはどこですか?」

フィツァレスト:「教えません。」

浩満:「ミウさんはどこですか。」

フィツァレスト:「教えません。」

浩満:「ミウさんはどこですか。」

フィツァレスト:「何度、聞いても教えません。

諦めてください、クモハタ ヒロミツ」

浩満:「そうですか。それは残念です。

では質問を変えます。」

フィツァレスト:「なんでしょうか。」

浩満:「ミウさんは今どうしてますか。」

フィツァレスト:「……。」

浩満:「それも教えてもらえませんか?」

フィツァレスト:「……クモハタ ヒロミツ、自分自身の事は、自分の身については何も聞かないのですね。」

浩満:「どうだっていいですからね。僕の質問に答えてください。

ミウさんは今どうしてますか。」

フィツァレスト:「……サイハネ ミウは、サイハネ ヒマリと一緒にいます。

家族水入らずの団欒がしたい、とサイハネ ヒマリ言っていました。」

浩満:「そうですか。教えてくれてありがとうございます。

せっかくなので聞きましょう。牢獄なんかに閉じ込めて、洗脳なんてしようとして、

僕をこれからどうするつもりですか?」

フィツァレスト:「身体検査をしたところ、タイムジャンプによる身体の異常が見られなかったので、

再び念入り洗脳、いえサイハネ ミウに関する記憶を消去し、元の時代に戻します。」

浩満:「うわぁー。怖い。恐ろしいですね。

元の時代に返すだけでは済まさないのですね。」

フィツァレスト:「はい。貴方は危険ですからね。」

浩満:「危険だなんて、大袈裟ですよ。」

フィツァレスト:「とても危険ですよ。貴方は。」

浩満:「あ、気になるので聞きますが、

タイムジャンプによる身体の異常って例えばどんなことがあるんですか?」

フィツァレスト:「異常、と一言で済ませていますが、単純な体調不良や異形化などが考えられます。

今貴方が閉じ込められてるキューブ、檻ですが、異形化した際に備えたモノです。

ところで、クモハタ ヒロミツはどうやってタイムマシンを入手したのですか?」

浩満:「フエゴさんから頂きました。」

フィツァレスト:「フエゴ?フエゴ・ラドロンがですか?」

浩満:「はい。厳密には彼の部下に、ですけどね。」

フィツァレスト:「フエゴ・ラドロンが誰かにタイムマシンを譲るとは思えません。

……生きているのですか?」

浩満:「さあ、どうでしょうね。多分生きてるんじゃないですか?」

フィツァレスト:「……。」

浩満:「……仲間の安否が気になりますか?」

フィツァレスト:「いいえ、あれは存外しぶといので、死んでなさそうで残念なだけです。

では、私はこれで。

また後程、様子を伺います。」

浩満:「……さて、どうしたものでしょうか……。」

~~~~~~~~~~~~~~

~最羽家~

日葵:「おかえりなさい、ミウ。」

美兎:「……ただいま戻りました。ヒマリ姉さん。」

日葵:「あら……たった3日会わなかっただけでかなり大きくなったわね。」

美兎:「私の時間では、5年間が経ちました……。」

日葵:「あら、あらあら……14歳差の姉妹だったのに、9歳差になっちゃたわね。

まぁ、大した差異ではないわ。」

美兎:「……何故、私を呼び戻したのですか?

世界線変更とかは関係ない……のですよね?」

日葵:「世界線変更……?そうね、私はそんな話は知らないわ。

私がミウ連れ戻した理由ね……

家族が家出したら帰ってくる様に言うのが当然じゃないかしら?

たった二人だけの家族じゃない。」

美兎:「……。」

日葵:「どうしたのかしら?ミウ?」

美兎:「姉さんが、二人っきりにしたんじゃないですか。」

日葵:「?

どういうことかしら?」

美兎:「姉さんが、父さんと母さんと妹を、麗(うらら)を殺したんじゃないですか……!

何故殺したのですか……!そして何故私は逃がしたのですか……!」

日葵:「……?

そうだったかしら?私、父様と母様、それにウララ……?を殺したのかしら?

んー……どうだったかしらねー……。」

美兎:「姉さん……!まさか、3人の事忘れたのですか……!」

日葵:「そのようね。なんで殺したかは覚えていないけれど、

きっと私にとって不要だと感じたからじゃないからかしらね。

3人の事は忘れたけれど、ミウ、貴女の事、私は忘れてないわ。

だって私、貴女の事はとっても好きだもの。

ああ、逃がした理由だったわね。

多分、そうねぇ。貴女の私の見る目に少し……

茫然というか、呆気にとられたというか……そもそも貴女を殺す気は無かったのよ。

だから別に逃がしたとかそんなんじゃなくて、

んー……なんて言えば良いのかしらね?」

美兎:「おかしいよ……姉さんやっぱりおかしいですよ……!」

日葵:「……その目。」

美兎:「え……?」

日葵:「嗚呼、分かったわ。私、その目にショックを受けたのだわ。

愛してやまないミウから受けたその恐怖の視線。

昔はあんなに懐いていたのに……。」

美兎:「……あんな場面見て恐怖を抱かない人はあまりいないです。

それに、昔の姉さんと今の姉さんはまるで別人です……。」

日葵:「そうかしら?

ああ、そっか、ミウの時間では5年も経っているのですものね。

可哀そうに、5年間一人孤独で過ごしていたのですか?

嗚呼、可哀そうで可愛い私の妹。改めて、おかえりなさい。」

美兎:「……。」

フィツァレスト:「ただいま戻りました。サイハネ ヒマリ。サイハネ ミウ。」

日葵:「あら、おかえりなさい。フィツァレスト。何をしていたの?」

フィツァレスト:「いえ、少し見回りをしていただけです。

お夕飯の準備が出来ています。」

日葵:「そう。じゃあ、お夕飯にしましょう。

ミウ、一緒に食べましょう。」

美兎:「……はい。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

浩満サイド

浩満:「んー……せめて施錠されてるらしきものがあれば……

見事に立方体の透明箱、継ぎ目の無い美しいフォルム……いえ、困りましたね。

……誰かー!齢17の純粋無垢で清廉潔白、迦陵頻伽(かりょうびんが)なか弱い少年が

監禁されてますよー!!助けてくださーい!!」

間。

浩満:「…………やっぱりだめですか。

なんならなんか純粋無垢で清廉潔白、

迦陵頻伽(かりょうびんが)なか弱いなんて事無いと野次が聞こえますね……。

そもそも、この声は外に聞こえてるんですかね。」

イレギュラー:「聞こえてるぜ。」

浩満:「ッ!誰ですか……?」

(物陰からイレギュラーが現れる。)

浩満:「……!しゅうy──」

イレギュラー:「イレギュラー。俺の名はイレギュラーだ。」(浩満の言葉を遮る様に)

浩満:「……イレギュラー……?例外……?」

イレギュラー:「そう、例外、員数外、この世界の住人じゃない者だ。」

浩満:「…………。

そんなイレギュラーくんは何故ここに?」

イレギュラー:「それはヒロミツ クモハタ、お前をここから出す為だ。」

浩満:「ほう。それはとても助かります。

しかし、何故僕を助けてくれるんですか?」

イレギュラー:「理由?理由かーまぁ、どうでもいいじゃねぇか。」

浩満:「どうでも良くないです。

一方的に助けられる関係というのは絶対に信じられません。」

イレギュラー:「そうか、まぁ、言うことは分かる。

そうだな。お前に事態の収拾を手伝って貰う為だ。

詰まるところ、利用させてもらう。」

浩満:「事態の収拾?どういうことですか?」

イレギュラー:「ミウ サイハネを救い出し、お前らの時代に返す。

そして世界を開放する。」

浩満:「ミウさんを僕らの時代に返す……?

どういうことですか……?

彼女はこの時代の、僕らから見たら未来の人間ではないのですか?」

イレギュラー:「ああ、ミウはこの時代の人間だ。

だが、俺はお前らの時代に居た方が良いと思ってんだよ。

だから、そうなるようにする。

それに、大事なのは後者だ。

いや、お前にとっては前者なのだろうが、俺にとっては後者だ。」

浩満:「…………。

あ、そうですよ。世界を開放するってなんなんですか。」

イレギュラー:「それは……外を実際に見た方が説明しやすいな。

着いてこい。」

浩満:「分かりました。なので出してください。」

イレギュラー:「あ、そうだった。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

浩満:「……わぁ~~~~まさに未来って感じの建物ばかりだぁ~~~~~」

イレギュラー:「……お前にしては暢気な感想だな……

そんなことより、空見ろ、空。」

浩満:「空?……別に普通の夜空じゃ……いや……

この空……もしや、映像ですか……?」

イレギュラー:「そうだ。この空は投影された偽物だ。

この世界は、この星は、巨大な球体に包まれている。

それをこの時代の人々は“外殻(がいかく)”、或いは“人造の空”と呼んでいる。」

浩満:「何故、そんなもので覆われているんですか?地球は。

誰が……」

イレギュラー:「何故覆われているか、それはこの星を守る為だ。

外宇宙からの脅威たち、飛来物、太陽その他諸々。色々だ。」

浩満:「写真とか動画とっとこ。」

イレギュラー:「……。」

浩満:「あ、失礼。太陽からも守っているのですか?」

イレギュラー:「ああ、この時代だと、もう太陽は害でしか無いそうだ。

理由は色々ある、詳しい事は面倒だから説明しねぇ。

それにクソどうでもいいしな。

そして、誰が作ったか、だが、まぁ、言っちまえば500年程前の人類だ。」

浩満:「……そうだ。この時代は、僕らの時代からどれくらい先の未来なのですか???」

イレギュラー:「それは教えられない。

色々と影響しかねないからな。」

浩満:「そうですか……。

というか、解放ってもしかして、あの外殻を破壊する、ということですか?」

イレギュラー:「その通りだ。」

浩満:「何故破壊するのですか?あれは地球を守ってくれてるはずですよね?」

イレギュラー:「ああ、だが同時にあれはこの星を害してもいる。

さっき太陽はこの時代では害でしかないと断定されたって言ったよな?」

浩満:「言いましたね。」

イレギュラー:「それは間違いだったんだよ。」

浩満:「なんですかそれ。この時代の人たち阿呆じゃないですか。」

イレギュラー:「そう言うなよ。決断の結果、間違えてただけだ。

とりあえずあれを破壊するのを協力してくれ。」

浩満:「……既に助けられている手前、断る事は出来ませんね。

ですが、どうするのですか?

僕はただの高校生です。なんかものすんごいパワーを隠し持ってたりしませんよ。」

イレギュラー:「……そうだな。お前の力はそういうのには向いてないな。

だが、策はある。」

浩満:「その策とは?」

イレギュラー:「サイハネ家だ。」

浩満:「サイハネ家……それはミウさんの……って事で良いですよね?」

イレギュラー:「良いぜ。ミウの家には外殻をどうにか出来るナニカがある。」

浩満:「なるほど、そのナニカを使って外殻を破壊し、

その上でミウさんも奪い返すということですか。」

イレギュラー:「話が早いな。そういうこった。

じゃあ早速行くぞ。クモハタ!」

浩満:「はい!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~

~某所にて~

フエゴ:「くゥ……!はァ……はァ……。

成功……したのか……。」

(辺りを見渡すフエゴ・ラドロン。そこにはフエゴの部下たちが待っていた。)

フエゴ:「よォ……!久しいなァ……!ワタシの可愛い部下たちよォ!!

ワタシは、帰ってきたァ……!!!」

(部下たちは歓声をあげ、喜ぶ。)

フエゴ:「さぁてェ……来てるんだろうゥ……この時代にィ……少年……いィやァ……ヒロミツゥ……!

死にはしなかったがァ、貴様を不幸にィ、いやぶっ殺す為に帰ってきてやったぜェ……。

待っていろォ、必ず探し出してやるゥ!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

空を見上げる美兎。

美兎:「…………偽物の空……。」

日葵:「あら、どうしたのミウ?食事の手が止まってるわよ?」

美兎:「あ、いえ……

…………フィツァレスト。」

フィツァレスト:「はい、なんでしょう。サイハネ ミウ。」

美兎:「貴女もあの時代の、本物の空を見たのでしょう?

どう……思いましたか……?」

フィツァレスト:「……。

私は何も思いませんでした。

何分、私は人では無いので。所謂、感性というものはありませんので。」

美兎:「そう……ですか……。」

日葵:「空?空がどうかしたの?美兎。」

美兎:「え、っと……その、私が飛んだ時代の、過去の空は本物でした。

この時代の空の様に時間によって変わるのではなく、

日によって、条件によって様々な色を、様々な表情を見せてくれる……

……私、とっても好きだったんです。本物の空が。」

日葵:「そうなのね。

……でも、不規則に変わる空ってなんだかとても怖いわ。

あれなのでしょう?カミナリ?という光って大きい音を立てて、

もしも当たったら死んじゃう電気が空から降るのでしょう?私、怖いわ……。」

美兎:「あはは……確かに雷は怖かったです。でも、いつも降ってくるわけじゃないんですよ?」

日葵:「それでも怖いわ?

やっぱり今の完璧に管理された人造の空の方が私は好きよ。」

美兎:「そうですか……、まぁ、言う事は分からなくも無いです。」

日葵:「そうでしょう!なのに、父様ったら、人造の空を破壊する研究をしていたのよ?」

美兎:「え?」

日葵:「なんでも、人造の空に命令を送って崩壊させようとしてたらしいのよねー。

……あ、思い出したわ。だからあの三人を殺したのだわ!

良かったわ!ミウのおかげで三人の事を思い出せたわ。ありがとね。

私の可愛いミウ♡」

美兎:「え……そ、そんな理由でお父さんとお母さんとウララを殺したの……?」

日葵:「そうよ?

嫌なモノは嫌って主張すべきだもの。だから私はそうしたわ!」

美兎:「……嘘……そんなくだらない理由で……」

フィツァレスト:「本当ですよ。サイハネ ミウ。

サイハネ ヒマリは外殻の破壊を止めるべく、

サイハネ シンジとサイハネ イヴ、サイハネ ウララを殺害しました。」

日葵:「全く持ってくだらなくないわよ?ミウ?

あの三人は人類を、この星を殺そうとしたのよ?

それは人には有り余る程の大罪。何て言ったって大量虐殺なんてものじゃないもの、

惑星殺しなんて、もう人類にこれ以上生んじゃいけないわ?

私は、正しい事をしたわ。

ええ、私の平穏を守る為に、ね。」

美兎:「……ッ!やっぱり姉さんは間違ってるよ!

何も殺す事なんてなかったじゃない!

姉さんは変わった!もう昔の姉さんじゃない!!

貴女は私の姉なんかじゃ──」

(グサリッ、美兎の手の甲に日葵の持っていたフォークが突き立てられる。)

美兎:「──イッ……!!

──あっああ……!」

日葵:「ミウ?その言葉の先は、たとえ愛すべき私のミウでも口にするのは許さないわ。

……ごめんね?ミウ?痛かったでしょう?私が傷薬塗ってあげるからね……?」

美兎:「いらない……!」

日葵:「あら……あらあらあらあら……フィツァレスト……ミウ、反抗期かしら……?」

フィツァレスト:「サイハネ ミウはそういう年頃ですので、可能性はあるかと。」

日葵:「そう……じゃあ、許すわ。反抗期ってそういうものだものね♪

私はミウを受け入れるわ……。だって私は貴女の姉──」

美兎:「姉なんかじゃない!!」(日葵の台詞を遮る様に)

日葵:「ッ!!」

フィツァレスト:「……。」

美兎:「そうだ……!私は、最羽 日葵(さいはね ひまり)!貴女と決別する……!」

日葵:「ああ……ああ……!なんて事を言うの……!

私たちはこの世界にたった二人の家族じゃない……!」

美兎:「だとしても!私は決別する!

もう貴女には怯えない!逃げない!」

日葵:「なんて事を言うの……!なんて事を言うの……!!

……!そうよ!分かったわ!

お前、さては私の可愛い可愛いミウじゃないわね……!?

よくも、私を騙したわね……!

殺す!お前も殺す!!」

美兎:「……ッ!貴女はそうやって父さんも母さんもウララも切り捨てたのね……!」

日葵:「死になさい!!」

美兎:持っていたナイフで私のはらわたを抉らんと接近する。

早い。到底私では防げない、そう確信した。

日葵:「死ねぇええええ!!」

美兎:「くっ!ツナシバル君……!クモハタ先輩……!」

美兎:刃は私の腹部目前、次の瞬間切り裂かれる、そう覚悟していた。

──が、その刃が私の身体に触れる事は無かった。

日葵:「…………どういうつもり?フィツァレスト。」

美兎:「……ッ!」

美兎:私の目の前にはフィツァレストが立っていた。

ヒマリ姉さんと対峙する様に、私を庇う様に。

フィツァレスト:「申し訳ございません。少々、約束事をしていまして。」

日葵:「へぇー……どんな約束?」

フィツァレスト:「『ミウが未来に帰ってピンチになったら、ミウの味方をしてくれ』という約束です。

約束主は匿名でお願いします、とのことです。」

美兎:「……!」

日葵:「そう……そんな匿名性を盾にしてる様なやつの約束の為に、私を裏切るの……?」

フィツァレスト:「サイハネ ヒマリを裏切っているのではありません。約束を破らない様にしているだけです。」

日葵:「あら……!そう……!素敵ね……!

貴女、そんな屁理屈が言えるなんて思ってなかったわ……!!」

~~~~~~~~~~~~~~

イレギュラー:「……なんか知らんが、ヒマリ サイハネとフィツァレストが戦っているぞ……!

しかも見た感じフィツァレストがミウを守ってるって感じだな。」

浩満:「ほう、それは好都合ですね。

フィツァレストさんに加勢して色々と上手い感じに纏めて任務遂行と行きましょう。

行きましょう。」

イレギュラー:「おう!」

(バリン、と窓が割れる。)

フィツァレスト:「……ッ!」

日葵:「何事ッ!」

浩満:「窓を割って格好良く参上!」

美兎:「クモハタ先輩!?どうしてこの時代に!!?」

浩満:「どうも、ミウさん。さっきぶりですね。

楽しい夏休みを過ごす為に連れ戻しに来ました!」

イレギュラー:「よお!フィツァレスト!約束、守ってくれたようだな!

加勢するぜ!」

フィツァレスト:「は?約束?誰ですかアナタ?

しかし、加勢は素直に助かります。助力を要請します。」

日葵:「何勝手に勝利ムードになってるのよ!」

バンッ!

浩満:「──うッ!!」

美兎:「え……?」

イレギュラー:「は……?」

フィツァレスト:「ッ!」

美兎:その瞬間何が起こったのか分からなかった。

銃声の様な鋭い破裂音……いや、あれは多分銃声だ……。

それが鳴った瞬間、その凶弾がクモハタ先輩を襲い、一瞬の静寂が生まれた。

日葵:「日和るには早かったわね。」

美兎:凶弾はヒマリ姉さんから放たれたものだった。

一体どこに銃を隠し持っていたのだ?

一体どうやって的確に先輩の腹を抉ったのだ?

分からない。私は思考を放棄してしまった。

イレギュラー:「クモハタッ!

……ッ!おい!ヒロミツ!しっかりしろ!!」

日葵:「あなたたち、邪魔よ。

部外者は出て行って!」

イレギュラー:「ッどわぁっ!!」

フィツァレスト:「……!二人を窓から……!」

日葵:「きっと綺麗に潰れているわ。それでも醜いでしょうけど。」

美兎:「クモハタ……先輩……。」

日葵:「……ミウ?貴女のせいよ?」

美兎:「わた、し、の……?」

フィツァレスト:「サイハネ ミウ!耳を貸してはいけない!!

──がっ!」

日葵:「黙って。フィツァレスト、貴女はもういらないは。さようなら。

……ええ、そうよ?ミウ。貴女が過去に飛ばなければ、

あのクモハタセンパイとかいう人は死なずに済んだわ?

もっと言えば、さっきみたいに私に逆らわなければ

彼らきっと出しゃばってこなかったでしょうねー?

そうじゃない?」

美兎:「私のせいで……先輩が……」

日葵:「ねぇ、やめましょう?ミウ。反抗期なんて何にも良い事無いわ?

やっぱり貴女は私と一緒にいましょ?

大丈夫よ。私はあのクなんとかみたいにいなくなったりしないわ?

だって、私は、貴女のお姉さんだもの……。」

美兎:「せん……ぱい……。」

~~~~~~~~~~~~~~~~

(窓の外では)

イレギュラー:「──ッ!い……ッ……

はっ!ヒロミツ!」

浩満:「……。」

イレギュラー:「おい!ヒロミツ!しっかりしろ!起きろ!おい!!ヒロミツ!!!!」

浩満:「……。」

イレギュラー:「ああ、ああ……!!頼む!起きてくれ!ヒロミツ!

死ぬな!死なないでくれ!!」

浩満:「……。」

イレギュラー:「ミウを連れ戻すんだろ!?一緒に夏休み過ごすんだろ!!?おいってば!

ヒロミツ!!!!!」

フエゴ:「今お前ェ……ヒロミツって言ったかァ……?」

イレギュラー:「え……?」

(フエゴが現れる。)

フエゴ:「言ったよなァ?ヒロミツってよォ!!」

イレギュラー:「お前は……!」

フエゴ:「お?ワタシの事を知ってそうな顔だなァ。

そうだよォ、ワタシが悪名高きバンデラアラニャのリーダー、

フエゴ・ラドロンだァ。

ヒロミツはどこだァ……?」

イレギュラー:「……ッ!ヒロミツを、どうするつもりだッ!」

フエゴ:「ああァ?まぁ、良いか、教えてやるよォ。

ワタシはヒロミツを殺すために探しているんだよォ!」

イレギュラー:「ッ!!」

(イレギュラー、浩満を胸に抱く。)

フエゴ:「……おォい、まさかァ、その無様に血だらだら流してんのがヒロミツかァ?」

イレギュラー:「ちっ、違う!」

フエゴ:「嘘を吐くなよォ。バレバレな嘘を吐くのは時間稼ぎ以外ではしない方が良いぞォ。

……チッ、死にかけじゃねぇかァ……。

…………。

くっくっく……ハッ!ざwwwまwwwぁwwwなwwwいwwwねwwwェwww

しwwwょwwwうwwwねwwwんwww

アーッハッハッハッハー!アーッハッハッハッハー!!

はァースッキリした。お前らァ、アレを、ヒロミツを根城まで運べェ。」

イレギュラー:「さ、させるか!

ヒロミツをどうする気だ!」

フエゴ:「ああァ?傷を治してやるんだよォ。」

イレギュラー:「……は?なんの為に……?」

フエゴ:「復讐の為さァ。」

イレギュラー:「……ッ!ヒロミツは渡さない!」

フエゴ:「ああァ~~~~~~~貴様面倒臭ェなァ。

お前らァ、こいつもついでに連れていけェ。」

イレギュラー:「―おいっ!離せ!離せってんだコラー!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~

浩満、夢の中。

フィツァレスト:「真実です。

だからお願いします。

サイハネ ミウを説得してください。」

秀弥:「くそっ!」

フィツァレスト:「……。

アナタたちとの約束を破る形になってしまったのは、

        私の落ち度です。申し訳ございません。」

秀弥:「……。」

フィツァレスト:「……ですが、脅かされるのは、貴方の日常なのですよ。ツナシバル シュウヤ。」

秀弥:「……一つ、頼みがある。」

浩満:シュウヤくん……?

フィツァレスト:「なんでしょう?」

秀弥:「ミウが未来に帰ってピンチになったら、ミウの味方をしてくれ。頼む。」

フィツァレスト:「……何故、その様な事を。」

秀弥:「ミウは家族から逃げる様にこの時代に来たって言ってた。

その時代の友達や頼れる人のところに逃げるとかじゃなく、過去にだ。

それって未来に帰ったらミウには味方がいないってことじゃないかって思ったんだ。

だから頼む!ミウを!一人に、独りに!しないでやってくれ!」

浩満:シュウヤくん……

フィツァレスト:「……。」

秀弥:「じゃねぇと俺はミウを説得しない、いや出来ない。

俺が初めてミウと会った時、アイツは震えていたんだ。孤独に震えていた!

そして今、俺たちがミウの居場所になってやれたのに、どうしようもない理由で、

孤独になろうとしている。そんなの、不憫過ぎるじゃねぇか?

頼む……!お願いだ……!俺に出来る事ならなんでもやる!

たとえミウの事を忘れろってんなら忘れる!

ただしミウを独りにしないと約束してくれたらだ……!

頼む……!!」

フィツァレスト:「……分かりました。了承します。その約束、絶対に忘れません。」

秀弥:「……すまねぇ……ありがとう……いや……ありがとうございます……!!」

~~~~~~~~~~~~~~~

(浩満、目が覚める。)

浩満:「シュウヤくん!!」

フエゴ:「よォ、起きたかァ。少年。いィや、先輩ィ。」

浩満:「えっ。」

イレギュラー:「ヒロミツ!」

浩満:「えっ。」

フエゴ:「なんだァ?先輩ィ。まるで鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてェ。」

浩満:「……スゥーーーーーーーーーーーーーー……少し、情報量が多すぎて……。

……貴方、フエゴ……さん、ですよね?」

フエゴ:「ああ、そう通りだァ。

お前に会う為に頑張って帰ってきたんだぜェ?先輩ィ?」

浩満:「……そうですか。

で、イレギュラーくんは何故縛られてるんですか?」

フエゴ:「暴れまくるもんだからァ大人しくする為に縛っておいただけさァ。」

浩満:「……まぁ、なんか分かります。

で、これが一番の疑問なんですが、なんでフエゴさん僕の事先輩って呼ぶんですか?」

フエゴ:「そりゃあァ、先輩がワタシの先輩だからだよォ。」

浩満:「貴方のような悪辣そうで年上の後輩を持った覚えはありません。」

フエゴ:「それでも先輩は私の先輩なんだよォ。

それに、ワタシは生まれてこの方ずっとこの組織にいたから、

学生になった事がないだよォ。

ワタシも誰かを先輩だの後輩だのと呼んでみたいだァ。」

浩満:「くっ……!何も分からない……!

それで、フエゴさんは何故僕を助けてくれたんですか。

僕に逆恨みしてた様なので、

殺される筋合いはあっても助けられる筋合いは無いはずです。」

フエゴ:「…………逆恨み、ねェ……。

相変わらず口の減らねェガキだァ……。

そうだなァ。言っちまえばワタシが先輩を殺す為に助けたんだよォ。」

浩満:「なるほど、悪辣ですね。」

イレギュラー:「やめろ!ヒロミツを殺すな!

てめぇ、ヒロミツに指一本でも触れてみろ!ぶっ殺してやる!!」

フエゴ:「おおォ~~~~こわィ、こわィ。

縛られた状態で強い言葉使っても滑稽なだけだぞォ。

さァて、クモハタ ヒロミツゥ。立てェ。」

浩満:「……分かりました。」

フエゴ:「先輩ィ。覚えてるか?ワタシたち全員の事をォ。」

浩満:「覚えていますとも、僕の殺戮機構に対し、

命からがら生き延びたとても運の良い敬意を表するに値するフエゴさんとその部下、

総勢77名ですよね。皆さんの顔もしっかりと覚えています。」

フエゴ:「そうかァ。それは良かったよォ。先輩は残忍だが記憶力は高いんだなァ。

そうだよ。貴様に殺されかけた77人だァ。

皆貴様を殺したくて殺したくて仕方なかったぜェ。

……これから貴様をじっくりと殺すゥ……77人全員でなァ!!」

イレギュラー:「やめろ!!」

浩満:「怖いですね。

皆さんそんな怖いことしないで欲しいです。」

フエゴ:「嫌だねェ。お前の言う事なんか聞かねぇよォ。」

浩満:「それはどうでしょう?

皆さん、皆さんが持ってる武器を手放してください。

あと、フエゴさんが持ってる武器も。」

フエゴ:「はァ?何いってんdっておィ!何ワタシの武器取り上げてんだァ!

………………おォイ、お前らァ……何故武器を下に置いているゥ……?」

イレギュラー:「……何が起きているんだ?」

フエゴ:「ヒロミツ貴様ァ!ワタシの部下に何をしたァ!!」

浩満:「特別に教えて差し上げましょう。

あの時、あ、あの時というのはフエゴさんたちが死にかけた時の事です。

僕は皆さんの生死確認をしながら、

生きている人に洗脳、というか催眠術をかけてたんです。」

フエゴ:「催眠術……だとォ……!?」

浩満:「はい。実は僕、昔からそういうのが得意なんですよ。

なので、今回も使いました。

そして僕が皆さんに掛けた催眠術は僕への“絶対服従”です。

正確には十代後半の年齢の人間のお願いに対しての絶対服従ですけど。」

フエゴ:「絶対、服従……だとォ!

クゥッ!催眠術なんてそんな都合の良い力が貴様に備わっていて良いものかよォ!!」

イレギュラー:「……本当になんでもありだなアイツ。」

浩満:「事実、あるんですよ。都合の良い力が。僕には。

さて、次のお願いです。

貴方たちのリーダーのフエゴさんを取り押さえてください。」

フエゴ:「ぐゥッ!!お前らッ!離せェ!!目を覚ませェ!!」

浩満:「申し訳ございません。フエゴさん。

傷を手当てしてくれた事はとても感謝してます。

ですが、僕には、僕らにはやらないといけないことがあるので。

イレギュラーくん、大丈夫ですか。

さ、急いで美兎さんのところに戻りましょう!」

イレギュラー:「お、おう!」

浩満:「というか、イレギュラーくん、僕の事最初“クモハタ”って呼んでたのに

   いつの間に下の名前で呼び始めたんですか。不敬ですよ。」

イレギュラー:「…………あッ!!」

浩満:「…………。……まあ、特別に許してあげますよ。」

(浩満、イレギュラー去る。)

フエゴ:「まっ!待てェ!!こォのっ!ヒロミツゥウウウウウウウウウウウウウ!!!!!!!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

浩満:「僕は一体どれくらい気を失っていましたか。」

イレギュラー:「丸一日ってところだな。」

浩満:「そうですか。では急ぎましょう。ミウさんが心配です。」

~~~~~~~~~~~~~~

~美兎サイド~

美兎:「……。」

日葵:「嗚呼、ミウ……私の可愛い妹……愛してるわ……。」

美兎:「……。」

日葵:「何も反応してくれないのね。いけずな子……。

でもそんなミウもお人形さんみたいで可愛いわぁ……。」

美兎:「……。」

日葵:「ミウ……貴女はもう何も考えなくて良いわ……。

全て私に任せなさい……。

貴女が私と決別するなんてムリだったのよ。」

美兎:「む、り……。」

日葵:「そう……ムリだったの……。」

美兎:「……。」

美兎:やっぱり……私にはムリだったんだ……。

日葵:「あら……?あらあら……虫がまた入ってきた様ね……。

待っててね?ミウ?」

美兎:「……。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(最羽家地下)

浩満:「この地下室に外殻を破壊するナニカがあるのですね。」

イレギュラー:「ああ、そのはずだ。

……にしても、色んなもんがあんな。

地下室のラボ、ふむ、サイハネ家って絵に描いた様な発明家なんだな。」

浩満:「その様ですね。

早くそれっぽいもの見つけてミウさんを連れ戻しましょう。」

イレギュラー:「おう。

……ッ!どうやらお姉様が俺たちに気付いたようだぜ。」

浩満:「早かったですね。

しかし、予定通りです。

どうせどれがナニカ……外殻破壊マシーンか分からないですし、適当に……これとこれを拝借……。」

イレギュラー:「雑だなおい!」

(地下室のドアが開かれる。)

日葵:「虫の皆さん。御機嫌よう。」

間。

日葵:「…………あら?電気点かないわね?それに、人の気配を感じないわ?

気のせいかしら………………そのハズはないわよね。」

~~~~~~~~~~~~

浩満:「そのハズがあるんですよね~~~~~~~!!」

イレギュラー:「まさか本当にばれないとは……!」

浩満:「正直賭けでしたが、暗闇の中でも視覚を頼ってしまう人間の性質が上手く行きましたね。

さあ、早くミウさんを探しましょう!」

イレギュラー:「おう!そして今度こそ本物の外殻破壊マシーンを見つけるぞ!!」

浩満:「はい!」

浩満:そう、僕が言った瞬間でした。

サイハネ家の壁が大きな音を立てて破壊されました。

イレギュラー:「なんだッ!?」

フエゴ:「ヒィイイロォミツゥウウウウウウウウウウ!!!!!!!!!」

浩満:「うわぁ!フエゴさんがまた現れたぁ!!!」

イレギュラー:「しつけぇなコイツ!!」

フエゴ:「しつこくて結構だァ!!

ワタシはァ、ヒロミツゥ!貴様を殺すゥ!!

死んでいった仲間たちの為にもなァ!!」

浩満:「申し訳ありませんが、今取り込み中なのでまた今度にしてもらえませんかー!」

フエゴ:「ダメだァ!!

貴様がやろうとしてる事は阻止するゥ!!」

浩満:「何故ですか!」

フエゴ:「ヒロミツゥ。貴様ァ、何度世界を滅ぼす気だァ……!」

浩満:「逆です。僕はむしろ救う為に動いているのです。」

フエゴ:「信じられるかよォ……!先輩ィ!

貴様は貴様の時代より少し先の未来で時間遡行を行った大罪人、

ナインディストラスト だからなァ!!」

浩満:「はい?ないんでぃす……?また新しい衝撃の真実ですか?」

フエゴ:「そうだよォ先輩ィ。アンタはたとえミウ嬢が先輩らの時代に来なくてもあの後、

時間遡行を行うんだよォ。どうやって時間遡行を行ったかどうかは謎のままだがなァ。」

イレギュラー:「……。」

フエゴ:「そして先輩が時間遡行をした証拠、未来を見てきた証拠としてェ、

写真や映像を撮ってきていたんだァ。」

浩満:「あの投影された空を……ですか?」

フエゴ:「いいやァ、違う……。

先輩が撮ってきた空は普通の青い空だったァ。」

浩満:「どういうことですか。」

フエゴ:「アンタが世界に1000年先も空は今と変わらず青いままだと思わせてしまったァ。

それ故に、人類は安心してしまったんだよォ。」

浩満:「1000年……。」

イレギュラー:「知ってしまった人類は、堕落しちまったんだ。

結果、ヒロミツが生きている間に空は青さを失っちまった。」

浩満:「それで僕が嘘をついただの、僕のせいで堕落しただのと責められて罪人扱いですか?

それって言い掛かりも良い所じゃないですか?」

フエゴ:「それだけ済めばお前の言う通り、言い掛かりも良い所だァ。

だがなァ、貴様は罪人が罪人たらしめる行いをしちまったァ。

自分ではなく堕落した人類共が悪いと……まァ、ごもっともだがァ、

“とりあえず”と言って人類の全体人口を半分に減らしたんだァ。」

浩満:「大量虐殺ですか。まぁ、やりかねないですかね。」

フエゴ:「そうだァ。その行いは間違い無く大罪人だァ……。

まぁ、そういうことだァ。先輩の言う事は信じられない。

信じたとしても殺す事に変わりはないがなァ!!!」

イレギュラー:(ッ!ヒマリが上にあがってくる気配が……!このままじゃまずいかもな!!)

浩満:「繰り返しますが貴方の様な後輩を持った覚えはありません!!!」

イレギュラー:「ヒロミツ!ここは任せた!!」

浩満:「えっ!ちょ!待って下さい!!」

フエゴ:「お前は逃がさねぇよォ!!」

浩満:「じ、銃弾で通せんぼって心肝を寒からしむる事しますねぇ!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

日葵:「なに??さっきの大きな音???上で何が起こってるの……!」

フィツァレスト:「それ以上、進ませません。サイハネ ヒマリ。」

日葵:「……フィツァレスト。貴女、まだ動けたのね。」

フィツァレスト:「私、アンドロイドなので。」

日葵:「そう……で?何故上に行かせてくれないの?」

フィツァレスト:「サイハネ ミウを、守る為です。」

日葵:「……メイド人形風情が……私に逆らう気なの?」

フィツァレスト:「ええ。もう私は貴女に捨てられた身なので何の憂いもなく約束を守れます。」

日葵:「裏切り者。」

フィツァレスト:「貴女が私を切ったのです。

……何故、サイハネ ヒマリ、貴女は変わってしまったのですか。」

日葵:「変わった?どういう事かしら?私は昔からこうよ。」

フィツァレスト:「……まさか、人類史の改竄の影響で──」

イレギュラー:「それは違うな。」

フィツァレスト:「ッ!!」

日葵:「誰?」

イレギュラー:「俺はイレギュラー。この世界の員数外。」

日葵:「本当に誰?」

フィツァレスト:「私も知りません。」

イレギュラー:「知らなくていいんだよ。

さて、ヒマリ サイハネの人格の急変、それは人類史の改竄の影響じゃあない。

いや、だが外れてはいない。

人類史の改竄はミウ サイハネが戻ってきた事で辛うじて免れた。

だが、ヒマリ サイハネに異変が起きたのはミウが過去に飛ぶ前だ。」

フィツァレスト:「ふむ、確かに。

今回の件はサイハネ ヒマリの奇行によるサイハネ ミウの逃避。

そしてサイハネ ヒマリの奇行の原因はサイハネ シンジの外殻破壊計画の阻止、と

認識していましたが、原因は更に前だというわけですね。」

イレギュラー:「ああ、その通りだ。

まぁ、確信したのはついさっきだがな。」

日葵:「なに勝手に話を進めているの?私は、昔からこうよ。

変わってない。何も変わってなんかいないわ。」

イレギュラー:「ああ、お前がそう思うのも仕方ないぜ。

お前は“この世界線のヒマリ サイハネじゃない”んだからな。」

日葵:「???

どういうことかしら?」

フィツァレスト:「サイハネ ヒマリの人格の急変は人類史の改竄の影響ではないが、外れてはいない……なるほど、

サイハネ ヒマリにのみ人類史の改竄が適応された、いえ、むしろ適応されきれなかった。」

イレギュラー:「そうだ。

殺人鬼としてのヒマリ サイハネの世界線がなぜか存在していたが、世界の機構通りに消失した。

だが、部分的に残ってしまったんだ。

詰まる所、人類史の修正の過程で“バグが発生”したんだ。」

フィツァレスト:「バグですか。」

イレギュラー:「ああ。コイツはヒマリ サイハネでありながらヒマリ サイハネじゃない。

世界のバグによって来訪せしヒマリ サイハネの姿をした“イレギュラー”だ。」

日葵:「私が、イレギュラー?」

イレギュラー:「ああ。俺と同じこの世界の住人じゃない員数外だ。

お前の登場によりこの世界は砕かれたんだ。」

日葵:「そう。そうなのね。でも、だからどうしたと言うの?

イレギュラーである私を、どうしようっていうのかしら?」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

浩満:「さて……どうしたものでしょうか……!」

フエゴ:「どうしようもないだろォ?先輩のお仲間もどこか行ってしまい、

ここは貴様のホームグラウンドじゃないが為にあの時の様な一方的な蹂躙も出来なァい。

詰み、だよォ。」

浩満:「そうかもしれませんね。でも、そうじゃないかもしれませんよ。

僕ら人間は毎度毎度最善手を、有効手を打てるわけではありません。

それは感情故か、知性故か、個性故か、それは分かりませんが失敗しがちです。

貴方が考えた詰みの手を本当に打つか、それはまだ分かりません。」

フエゴ:「ほゥ。それは何故だァ?」

浩満:「まだ、打ってないからです。」

フエゴ:「……ハァ……。まァた時間稼ぎかァ。

しかし、貴様はこの時間の間に何をやるかァ、どんな場を整えるか分からないからァ、

“撃たせて”もらうよォ!ワタシの詰み手をォ!!!」

(フエゴ、銃を構える。)

浩満:「くっ!駄目か!では今の最善策!地下室から持ってきたものを投げる!

自棄のやんぱち!!」

(浩満、何かよく分からないものを投げる。)

フエゴ:「今日日聞かねぇなその言葉ァ!!!

ッ!!!????

ぐわぁああああああああああああああ!!!!!」

浩満:「…………なんとかなっ……うわぁ……。」

フエゴ:「やっ……やって、くれる、じゃねぇかァ……先輩ィ……」

浩満:何が起こったのか、端的に言うとフエゴさんの顔面の右側が抉り消えていた。

僕が投げたモノが何なのか、それは分からないけれどもなんだか恐ろしいもの、という事は分かった。

フエゴ:「ハッ……俺の、右側の顔面だ、けがどっかに転移、飛んで行ったようだなァ……

狙っ、たか偶然か、そ、れは分からんが、さす、が、先輩、だァ…………。」

浩満:「……運が悪かったですね。

これでは助からないでしょうね。安らかに眠ってください。」

フエゴ:「いやァ?……まだ、終わりじゃあ、ねぇ、よォ……!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

日葵:「貴女たちは私に殺されて終わりよ。」

イレギュラー:「フィツァレスト!ヒマリ サイハネの動きを止められたりするか!!?」

フィツァレスト:「止めるくらいであれば余裕でしょう。」

イレギュラー:「じゃあ!頼む!」

(イレギュラー、フィツァレスト走り出す。)

日葵:「何をやっても無駄よ!

……ッ!!何?」

イレギュラー:「なんだ!?」

フィツァレスト:「……!!」

(天井を突き破り何かが降ってくる。)

日葵:「なんなの!?

何が落ちてきたの!?」

(化け物と化したフエゴが落ちてくる。)

フエゴ:「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ァ゛!゛!゛!゛」」

フィツァレスト:「これは一体……!」

イレギュラー:「またまたなんだコイツ!?」

浩満:「──っいてて……落ちたんですか……?って、イレギュラーくん!」

イレギュラー:「ヒロミツ!おい!あのでかくて赤黒いやつはなんだ!!」

浩満:「フエゴさんです!なんかよく分かんない注射器的なの自分で刺してああなりました!」

日葵:「フ、エゴ……?」

フィツァレスト:「異形化ですか。」

浩満:「え?異形化って、タイムトラベルした時の身体の不具合のことですか?」

フィツァレスト:「はい。察するにフエゴ・ラドロンは薬物によって異形化を抑えていたのでしょう。

その抑えていた物を一気に開放した結果があれなのでしょう。

というか、やはり生きてたのですね。」

フエゴ:「「ク゛モ゛ハ゛タ゛ヒ゛ロ゛ミ゛ツ゛ゥ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛ウ゛!゛!゛!゛!゛」」

浩満:「あんな姿になってもまだ僕ですか!!」

イレギュラー:「お前をぶっ殺す為にあんな姿になったんじゃねぇのか???」

浩満:「まぁ、そうでしょうね!

あれどうすればいいんですか!?」

フィツァレスト:「そうですね。薬物投与での開放であれば、薬物投与での抑制を行えば良いと思われます。」

イレギュラー:「なるほど!それで!その抑制する薬はどこにあるんだ!!」

フィツァレスト:「この部屋にございます。」

フエゴ:「「シ゛ネ゛エ゛エ゛エ゛ィ゛!゛!゛!゛ヒ゛ロ゛ミ゛ツ゛ゥ゛ウ゛ウ゛!゛!゛!゛!゛」」

浩満:「うわああああ!こっち来たぁああああああ!!」

イレギュラー:「ヒロミツ!俺は薬を探す!お前はあいつのヘイトを取っておいてくれ!!」

浩満:「分かりましたあああああああ!!!なるはやでお願いしますねえええ!!!!!」

イレギュラー:「場所を教えてくれ!フィツァレスト!」

フィツァレスト:「こちらです。」

浩満:「話し合いをしましょう!フエゴさん!」

フエゴ:「「ウ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!゛!゛!゛」」

浩満:「そも話が通じないという感じですかぁ!!イレギュラーくん早くー!!!」

フィツァレスト:「これです。イレギュラー。これをこのピストルに詰めてあれに撃ち込んでください。」

イレギュラー:「おう!いっけぇ!!フレアァ!!」

フエゴ:「「グ゛オ゛オ゛!゛!゛」」

浩満:「ナイスです!」

イレギュラー:「やったか!?」

フィツァレスト:「何故そこで旗を……」

フエゴ:「「……どうにかなると思ったのかァ?」」

フィツァレスト:「!!」

フエゴ:「「フィツァレストォ……今、ワタシは正気を失い、

異形化抑制薬『AntiDeformed(アンチデフォルメド)』を打てば治まるとォ……

思っていた様だが、残念だったなァ。正気だよォ。ワタシはァ。

ただ、アンチデフォルメドでワタシが元に戻るか分からなかったから打ってもらった、

というわけだァ。結果はこの通りィ!元には戻らなィ……ッ!!

ハハハ……ハハハハハハハハ!!!」」

浩満:「何故そんな姿になってまで僕を殺そうとするのですか!」

フエゴ:「「ワタシが貴様を殺したい理由なんて人間であっても人間でなくても変わらないよォ!!

復讐だァ!人の身では成しえなかったァ……

やりたくなかったァ……こんな手を、だけどこの手しか無かったァ!!

クモハタヒロミツゥ!貴様を殺す為だけにワタシは、俺は人を辞めたァ!!

もう俺は後戻りできない!!負けられないんだァ!!」」

イレギュラー:「やばいofヤバイじゃねぇかぁ???この展開!?!?」

浩満:「だとしても!僕だって負けられません!

僕はミウさんを連れて帰って楽しい夏休みを過ごすのです!」

フエゴ:「「その願いをぶっ壊してやるよォ!!」」

日葵:「フエゴなの!?」

フエゴ:「「!!」」

日葵:「貴方、本当にフエゴ、フエゴ・ラドロンなの……!?」

フエゴ:「「君は……ぐっ……!頭が……!君はッ……!!」」

日葵:「覚えてないの……?私はヒマリ、最羽 日葵(さいはね ひまり)……!

貴方の恋人よ……!」

フエゴ:「「ヒ、マ、リ……!!?」」

日葵:「貴方……!生きてたのね……!良かったわ……!

私、貴方が死んだと聞いてとても悲しかったのよ……?

でも、良かったわ……本当に良かった……!」

フエゴ:「「俺が……死んだ……?どういうことだ……?

いやそれは良い……君は……!!

ひ、ま、り……誰なんだ……忘れてはいけ、ない、と、心に、身体に刻み込んだはずの名前……!

あ、あああ……ッ!!」」

フィツァレスト:「フエゴ・ラドロンの動きが止まった……?

いえ、それよりも、サイハネ ヒマリの、フエゴ・ラドロンが死んだ、というのは一体。」

イレギュラー:「……ッ!!そうか!

あのヒマリ サイハネの世界線ではフエゴ・ラドロンは死んでいるんだ!多分!

それが理由かは分からないが例の凶行をしたのかもしれない……!

そして今、姿は違えど死んだはずのフエゴ・ラドロンに会った事で、

イレギュラー;ヒマリ サイハネの存在が揺れ始めている……!

ヒマリを倒すのであれば今しかねぇ!!」

浩満:「僕だけ置いてけぼり食らってますがどうにかなるのですね……!?」

イレギュラー:「いや、依然変わりなくやばいofヤバイだ!」

浩満:「くぅ……!困りましたね……!!」

日葵:「覚えてないの……?

フエゴ、私の事忘れちゃったの……?」

フエゴ:「「くっ……すまない……君が、ヒマリなのか……嗚呼、美しい……」」

日葵:「ああ……フエゴ、貴方は姿が変わっても、私の事を忘れても、貴方は貴方なのね……

少し、安心したわ……。」

フエゴ:「「ヒマ、リ……」」

浩満:そう、彼が呟いた瞬間、

世界が音を立ててひび割れていく。

日葵:「なに……?」

フエゴ:「「何が起こっている……!?」」

日葵:「うっ……!何……?頭が……!」

(日葵、気絶。)

フエゴ:「「ヒマリ……!おい!しっかりしろ!ヒマリ!!」」

フィツァレスト:「世界が……壊れて行っている……?」

イレギュラー:「世界がイレギュラーの、消し損ねた別世界線のヒマリ サイハネを認識したんだ!

フエゴ・ラドロンがヒマリ サイハネを認識したからか、

ヒマリ サイハネがフエゴ・ラドロンを認識したからか、それは分からないが、

修正を開始したんだ!」

フィツァレスト:「しかしそれだけで世界ごと修正するとは……雑な仕事ですね。

これはもう止められないのですか?」

イレギュラー:「ああ、多分もう止められないだろうな……残念ながら。」

フエゴ:「「ヒマリ……

…………。

世界が終わる……そうかァ……。

クモハタヒロミツ……世界が終わる前に、貴様を殺す。」」

浩満:「世界の終焉が迫っているというのにまだそれですか。」

フエゴ:「「だからこそだァ。

……最後に、質問だァ、先輩ィ……いや、少年。」」

浩満:「……なんですか。」

フエゴ:「「少年には、好いてるヒトはいるかァ?」」

浩満:「……何故今それを聞くのですか。」

フエゴ:「「純粋な好奇心、興味だよォ。

死んでしまったらそれを聞くことは出来ないからなァ。」」

浩満:「いませんよ。」

フエゴ:「「そうかァ…………少年は嘘が下手だなァ……ま、良い……

……さて、いないなら容赦なく殺せるゥ!いても殺すがなァ!!

死ねェ!!ヒロミツゥ!!!」」

浩満:「貴方にだけは殺されません!!」

フエゴ:「「そう言って逃げるのは余りにも格好悪いぞォ!!!」」

イレギュラー:「くッ!フィツァレスト!あれどうにかならないか!?」

フィツァレスト:「分かりません。しかし、どうにかしましょう。

…………!これは……」

イレギュラー:「どうした!」

フィツァレスト:「外殻破壊装置です。」

イレギュラー:「はぁ!?このタイミングで見つかるのか!?

というか、装置ってか兵器じゃねぇか!ミサイルじゃんかよ!!!」

フィツァレスト:「このスイッチを押せば発射されます。」

浩満:(あれは……!さっき僕が拾ったのと同じ……!)

イレギュラー:「よし!コイツをフエゴ・ラドロンに目掛けて……!

──っぐあぁああ!!!」

フィツァレスト:「くっ!!」

フエゴ:「「押させないよォ!これ以上無茶苦茶させるものかァ!!」」

浩満:「イレギュラーくん!!」

フエゴ:「「終わりだよォ……ヒロミツゥ……」」

(フエゴ、外殻破壊装置のスイッチを壊す。)

フエゴ:「「見えた一筋の希望は潰えゥ……貴様を助ける人々は再起不能ゥ……。

死ねェエエエ!!!ヒロミツゥ!!!!!」」

浩満:「無駄ですよ。」

フエゴ:「「はァ???」」

浩満:「これで、チェックメイトです。」

(浩満、スイッチを起動する。)

フエゴ:「「なにィいいいいいいいいいいいいいいいいい!!???」」

浩満:「スイッチは、“二つ存在”したッ!!」

フエゴ:「「こんな無理筋ィイイイイイイイイあってたまるかよォオオオオオオオオオ!!!!」」

浩満:打ち出されたミサイルは彼に直撃し、空に撃ちあがる。

ミサイルに予めインプットされたのか偽物の空へ目掛けて、空(くう)を走る。

フエゴ:「「あって良いものかァ!こんな事がァ!まかり通って良いものかァ!こんな通りがァ!

世界がヤツにィ!ヒロミツにィイイ!甘すぎるんだよォ!!!!」」

浩満:もはやミサイルも彼も見えない。

そして、外殻に外殻破壊装置が着弾する。

フエゴ:「「グオオオオオ!!ハチャメチャすれば良いってもんじゃないだろォ!!!!

あ゛あ゛あ゛あ°あ°あ°あ°あ°あ°あ°あ°!°!°!°」

浩満:「うっ!……光……?」

浩満:空を覆っていた偽物の空が剥がれていく。

その隙間から零れる青と白、そして──

イレギュラー:「太陽……か。」

浩満:外殻は打ち消された。

人類は500年ぶりに空を見る事になる。

町から様々な声が聞こえる。

それが歓喜なのか、悲鳴なのか、それは僕にとっては興味の無い事だ。

イレギュラー:「ぐっ……ヒロミツ……なんとか、なったみたいだな。」

浩満:「はい。そんなことよりも、ミウさんを!」

イレギュラー:「そうだな!この世界はもう崩壊する!

早くミウの所に行って連れ出して過去に戻れ……!!」

浩満:「はい!」

フィツァレスト:「……。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(美兎の居る部屋の前)

浩満:「ミウさん!」

美兎:「……!先輩……?先輩!無事だったんですか!?」

浩満:「はい!僕です!ヒロミツです!無事です!明朗快活元気一杯です!

そんなことよりここを開けてください!

この世界は崩壊するそうです!

僕らの時代へ、僕らの町に戻りましょう!」

美兎:「世界が……終わる……?」

浩満:「詳細は省きます!

さあ!早く!」

美兎:「……駄目です。」

浩満:「え……?

どうしてですか……?」

美兎:「私は、先輩にたくさん迷惑をかけました……。

それこそ、命に関わるほどの……

私は、そちらへはいけません。」

浩満:「そんなこと……命に関わってないですし、僕は気にしてませんから……!

ここを開けてください……!お願いします……!!」

イレギュラー:「おい!もう時間がない!

無理矢理な事はしたくなかったがヒロミツとミウがいるこの空間ごと過去に飛ばす!

異論は無しだ!」

浩満:「あっ!ちょっと待ってください!」

イレギュラー:「なんだ!」

浩満:「貴方は僕を、僕たちを知ってますよね?」

イレギュラー:「……何が言いたい。」

浩満:「貴方は……いえ、君はシュウヤくんですよね?」

イレギュラー:「……は?誰だそれ?

じゃあな、ヒロミツ。ミウとそのシュウヤクンとやらによろしくな。」

浩満:「ちょっ!待ってくだ──」

イレギュラー:「ミウを頼んだぞ。ヒロミツ。」

浩満:世界が暗転する。

次に目に映ったのは真っ白な空間。

そして白い扉。

その先に一体何があるのか、僕は何も説明されていないけれど、

分かった。知っていた。

間。

イレギュラー:「……俺が諦めた未来を、掴んでくれヒロミツ。

   さて、次だ……。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~消えゆく世界のどこか~

フエゴ:「……んん……こ、ここは……俺は……生きているのか……?

というか、人の姿に戻ってる……」

フィツァレスト:「生きていましたか。」

フエゴ:「……!!……なんだァ……フィツァレストかァ……。」

フィツァレスト:「はい。フィツァレストです。」

フエゴ:「……ヒマリはァ、どうしてる。」

フィツァレスト:「……彼女の自室にて寝かせています。」

フエゴ:「……そうかァ。」

フィツァレスト:「フエゴ・ラドロン。貴方、サイハネ ヒマリの記憶を取り戻したのですね。」

フエゴ:「ん?ああ、思い出したよォ。さっきなァ……。

そう、多分人間に戻ったのがきっかけで、かなァ……。

なあ、なんで元に戻れたか、アンタは知ってるのか……?」

フィツァレスト:「はい。どうやらあの外殻は異形化された人間たちで形成されてた様です。

如何なる衝撃にも耐えうる不死身とも言える肉体を利用して作られた偽物の空。

実に効率的ですね。」

フエゴ:「ハッ……気持ちわりぃだけじゃねぇか……。」

フィツァレスト:「そして、貴方が受けたミサイル、外殻破壊装置は言ってしまえば巨大なアンチデフォルメド。

あれが外殻に着弾することで異形化した人々に元の人間に戻る様に命令をし、

貴方も同様に命令され元に戻った、といったところでしょう。」

フエゴ:「なるほどなァ…………少量のアンチデフォルメドじゃ戻らないワタシも、

馬鹿でかい量のアンチデフォルメドには敵わないか……

まぁ、数の暴力というか、でかいパワーで殴られりゃ、どうしようもないよなァ……。」

フィツァレスト:「……もう間もなく世界の崩壊しきる様ですね。

サイハネ ミウとクモハタ ヒロミツは元の時代に戻ったようです。

なので、修正だけでなく、改竄も起きると思われます。」

フエゴ:「そうかァ……なァ、フィツァレスト、ワタシとヒマリの出会い、知ってるかァ?」

フィツァレスト:「ええ、サイハネ ヒマリから何度も、何度も何度も聞いています。

なんでも、大学で出会ったとか。」

フエゴ:「ああ、その通りだァ。

だが、学生同士じゃなく、誘拐犯と学生、という感じだけどなァ……。

………………一目惚れ……だったなァ……。」

フィツァレスト:「ええ、そう私も聞いています。

何故、サイハネ ヒマリが貴方に恋をしたか、わかりかねます。」

フエゴ:「ははは……言ってくれるじゃないかァ……。

でも、改竄された後の世界の過去にはミウ嬢が存在し、

それ故にヒロミツはバンデラアラニャを組織しないかもしれないから……

あの大学でヒマリに会う事はないだろうなァ……。」

フィツァレスト:「……。

そうですね。世界線が変わって、変わらず同じ人物、同じ流れだとは限りません。

それは私も同じです。」

フエゴ:「そうかァ……。

    なあ……もしも世界線が変わったとしたら、ワタシとアンタは、仲良くよろしくやってると思うかァ?」

フィツァレスト:「思いませんね。

だって私は貴方の事が嫌い……いいえ……大っ嫌いですから。」

フエゴ:「フッ……ハッハッハァーーーー!!

初めて意見が合ったなァ!ワタシもアンタの事が大っ嫌いだよォ!!!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~

浩満:「ミウさん。……そこにいるんですよね……?」

美兎:「……。」

浩満:「いますね。……良かったです。」

美兎:「……なんで、先輩は私にそこまで必死になってくれるんですか……。」

浩満:「……当然じゃないですか。

僕は、ミウさんを大切な友達だと思っています。

だから必死になれるんです。必死になったんです。」

美兎:「だけど私は、本当は、本来は先輩やツナシバル君の隣にいない存在です。」

浩満:「もう……ミウさんもですか……

いいですか!僕にとっては、ミウさんが隣にいるのが本来の形です!

正しい世界線では違っても僕にとっては正しいんです!」

美兎:「だけど!駄目です!ムリなんですよ!

私は、先輩たちと一緒にいられはしないんです……!」

浩満:「何を根拠に……!」

浩満:タイムマシンが元の時代に辿り着けば、この謎の空間から解放され、

ミウさんを連れ出す事が出来るのだろうか、多分、出来ないと思う。

そんな気がするのです。例え、この空間から解放されたとしても、

ミウさんがこの扉を開いてくれないと、

元の時代に戻っても意味がない、そんな気がする。

浩満:「……夏休み…………。

一緒に計画建てたじゃないですか……。

一緒に楽しもうって、一緒の思い出を作ろうって……

お願いします。閉ざさないでください……。」

美兎:「……。」

浩満:「貴女がいない夏休みなんて、物足りなさすぎるんです。」

美兎:本当は、私もクモハタ先輩やツナシバル君と一緒にいたい……。

けれど、私がいる事でまた彼らを苦しめるかもしれない。

嫌だ。そんなの嫌だ。二人が苦しむ姿を見たくない……。

二人が如何に大丈夫だ、と平気だと言ったって……。

美兎:「私も、先輩たちが大切です……。

だから、だからこそ……!一緒にはいられないんです……!

二人に会いたい……!私も一緒にいたい……!!

けれど!二人の苦しむ姿を見たくないんです……!」

浩満:「ミウさん……。」

秀弥:「──らしくねぇじゃねぇかよ。二人とも。」

美兎:「……!」

浩満:「シュウヤくん……!?

なんで──」

浩満:なんでここにシュウヤくんが、そう口にしようと思った。

だけど、多分、理由だとか理屈だとか、そういうのはここには無いのだろう。

だって、僕たち三人は──

秀弥:「──俺たち三人はあの町、いや世界で一番仲良しの三人組で親友じゃねぇか。

ヒロミツとミウ、お前らがいねぇと始まんねぇんだよ。」

美兎:「だけど……私がいると……」

秀弥:「俺たちが苦しむ?上等じゃねぇか。

俺もヒロミツもかなりの曲者だぜ?

そんな俺たちが苦しませられるなんて、やれるもんならやってみろってんだ。

それにさ。苦しむ俺たちの姿が見たくないんならよ。

ミウ、お前が俺たちを守ってくれよ。」

美兎:「……え?」

秀弥:「俺は、お前とヒロミツを守る。ヒロミツは俺とミウを守ってくれるはずだ。

三人で互いを守って、助け合っていこうぜ?

そうすれば俺たちが苦しむことは……苦しむことが起きても早期解決だぜ!」

浩満:「シュウヤくん……。」

秀弥:「……そして!ヒロミツ~~~!お前マァジでらしくねぇよ~~~!」

(秀弥、浩満の頭をわしゃわしゃする。)

浩満:「えぇ?僕ですか???」

秀弥:「そォーだよー!なに扉一枚にゴマついてんだよ!

いつものお前だったこんなん強引にこじ開けんだろ?

“この世界は僕の思い通りに出来てます。”とか言ってよォ!!」

浩満:「でも、この扉はミウさんにしか──」

秀弥:「そんな事、誰が決めたんだ?オラァ!!」

(秀弥、扉を蹴り破る。)

美兎:「ツナシバル君!?」

浩満:「そんなパワーキャラでしたっけ!?」

秀弥:「ははは、お前ら息ぴったしじゃねぇかよ~~

……なあ、もう格好付けるのやめようぜ?」

美兎:「……。」

浩満:「……。」

浩満:僕らは互いに目を合わせた。

そして一拍間を置いて。

美兎:「いひひひひひ!」

浩満:「あははははは!」

美兎:笑いが漏れてしまった。

根本的な解決になったのか、それは分からないけれど、

それでも、私は二人と一緒にいたいんだ……。

そう実感した。

秀弥:そして、世界は明転する。

次に目に映ったのはいつもの俺らの町だった。

~~~~~~~~~~~~~~~~

フエゴ:これから語られるのは、新しい世界戦。

かつての俺を知らない、フエゴ・ラドロンの17歳、学生の時の出来事。

~どこかの学園内~

フエゴ:「んン?」

(日葵、廊下を歩いている。)

フエゴ:「やァ!」

日葵:「きゃ!

……貴方は?わわっ!綺麗な花……。」

フエゴ:「俺はフエゴ・ラドロン。よろしく。麗しいレディ。」

日葵:「レディだなんて……そんな、口が上手いのですね。フエゴさん。」

フエゴ:「本当の事を言ってるだけだよォ。

あ、フエゴ、で良いよォ。して、君の名前はなんだィ?

良かったら教えてくれないかなァ?」

日葵:「ふふふ……私は、最羽 日葵(さいはね ひまり)って言います。よろしく。」

フエゴ:「ヒマリちゃんかァ……良い名前だねェ。」

日葵:「私もヒマリで良いわ。」

フエゴ:「そうかい?ねぇ、良かったらこの後一緒に──」

フィツァレスト:「待ちなさい。」

(フィツァレストっぽい人が割って入ってくる。)

フエゴ:「んン?なんだァアンドロイド生徒会長じゃあないかァ……。」

フィツァレスト:「なんだ、とはなんですか。あと、私はアンドロイドじゃないです。立派な人間です。」

日葵:「会長どうしたの?」

フィツァレスト:「ヒマリ。貴女これから私とお昼食べる予定でしたよね?」

日葵:「ええ、そうね?」

フィツァレスト:「そうですよね。

と、言う事でフエゴ・ラドロン、さようなら。」

フエゴ:「ちょっ!ちょいちょいちょいちょい!なァに勝手に締めてんだァ冷徹女ァ!!」

フィツァレスト:「なにって、これから私たち昼食なの。急いでるの。」

フエゴ:「お前いっつもヒマリちゃんと一緒じゃねぇかよォ!!」

日葵:「ヒマリでいいよぉ~」

フィツァレスト:「はい、だから今日も一緒に食べるんです。」

フエゴ:「今日は別にいいんじゃないのかァ?

俺もヒマリちゃんとお昼食べたいんだよォ……!」

日葵:「ヒマリでいいですよー」

フィツァレスト:「駄目です。私は貴方とヒマリを二人っきりにしたくないです。

男の人は……特に貴方は信用出来ませんから。」

日葵:「ねぇ、だったらさ~」

フエゴ:「なんでだよォ!ただ一緒にお昼ご飯食べるだけだよォ!

何も心配する事はねェ!!」

日葵:「ねぇねぇー」

フィツァレスト:「信じませんよ。男な上に不良の貴方の言葉なんて。」

フエゴ:「なんだとォ!?」

日葵:「ねぇってば!!!!!!」

間。

フエゴ:「ン~~どうしたんだィ~~?」

フィツァレスト:「なんでしょう、ヒマリ。」

日葵:「三人一緒でお昼食べようよ?」

フィツァレスト:「……。」

フエゴ:「……良いよォ。」

フィツァレスト:「不服ですが、それで妥協しましょう。」

フエゴ:「ああ、妥協だァ。よろしくな、アンドロイド生徒会長ォ。」

フィツァレスト:「……ハァー……貴方本当に失敬ですね。

私の名前はアンドロイド生徒会長ではなく──」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(現代、夏休み初期、蜘旗家)

秀弥:「うおおおおおお!!!終わらねぇえええええ!!!!」

美兎:「この学校の夏季課題多すぎません????」

浩満:「ファイトですよー二人ともー麦茶おかわり要ります?」

美兎:「お願いします!」

秀弥:「おう!

ってかお前はなんで課題やってないんだよ?」

浩満:「僕ですか?

そりゃあ、もちろん、もう終わってるからですよ。」

秀弥:「なんだよ~~~~~抜け駆けかよぉ~~~~~~。」

美兎:「先輩が一緒に夏季課題やるって計画建てたのに一抜けってなんか違くないですか??」

浩満:「違くないですよ。ええ、違くないです。

そもそも、僕は夏休み始まる一週間前には課題をすべて終わらせていますからね。」

美兎:「え?」

秀弥:「は?」

浩満:「どうなさいました?」

美兎:「……夏休みの予定決めたのって……一週間前、ですよね……」

浩満:「はい、そうですね。」

秀弥:「じゃあ、なんでわざわざ予定に課題を終わらせるなんて組み込んだんだ……?

よくよく考えたらわざわざ組み込み必要無いよな……?」

浩満:「そうですね。

一応一日全教科2ページ、或いは2枚ずつすれば終わる様に出来てますからね。

まぁ、各自それぞれのペースで、いえ、実際は毎日課題をするという時間を設ける事で

学校にいなくとも勉強をするという姿勢、習慣をなくさない様にする事が長期課題の本当の目的というか狙いですからね。」

秀弥:「うんちくは良い。」

美兎:「何故、組み込んだんですか。」

間。(浩満、立ち上がる。)

浩満:「それは……

僕の優秀さを知らしめ、秀弥くんと美兎さんのもがきあがく様を

特等席で眺める為ですよ。」

秀弥:、美兎:「「なんだコイツゥ!!」」

───────────────────────────────────────

END