「クラフト紙」と不透明水彩について。
白い画用紙が基本です。
スタイル画や点景としての人物描写には描く速さと省略する能力を要します。
紙に着彩の場合、色鉛筆やパステル、透明水彩などが主たる画材です。透明水彩では白を使いません。薄く塗ることで明るい色を表せますし、塗り残しで想像力を喚起します。画用紙の白を活かす技法です。
メイクアップやそのほかで、色を混ぜること、発色を診ることに特化した実習をする際には透明水彩よりも不透明水彩の方が適しています。
下地の白に依存せず色味を確かめられるからです。下地が透けないように少々濃く塗り、パステル調の明るい色を出すのなら白の絵の具を混ぜます。しかしそういうはっきりとした目的のもとに制作しても、たやすく筆がすべる感覚を優先してしまい水分を多めに薄く塗ってしまう人がいかに多いことか。
メイクのレシピにおいても白い用紙に塗ります。どんな色を使うか、というのはよく解るものの、実際に皮膚に塗ってどう見えるかについてはわかりませんし、想像するしかありません。
1- 自然と濃く塗るように仕向ける
2- 人の皮膚の色味をも考慮する
教材について、そういうことを踏まえて考えてみますと
白い画用紙の代わりにクラフト紙を使うのは適しているように思いました。クラフト紙とは茶紙とも呼ばれる、ダンボールに似た色の包装紙のことです。厚口の画用紙と同等でA4規格サイズの商品も販売されています。
その、薄茶色をベースとして描くことは理にかなっていて、絵画の歴史にもそれに類する例を見ることができます。
▼かのレオナルドダヴィンチによる未完の作品
古典的絵画技法では下地の色は茶色か黄土色と決まっています。中〜低明度で、低彩度の暖色。上から重ねる色をあたたかく発色させるためです。仕上げに向かって、明るい色を表現するのに当然ながら白の絵の具を混ぜて使うことになります。
▼20世紀初頭オーストリア・ウィーンの画家エゴン=シーレのデッサン+着彩
薄茶色の紙(中明度)に描いております。明るい色を表現するのに白を使い、不透明に塗っております。そうしないと明るくならないからです。
「中くらいからやや明るい明度で、彩度が低い暖色」、それが凡そ日本人の皮膚の色です。
アマゾンより取り寄せました厚みのあるクラフト紙、A4判の写真です。
ダンボールよりもややオレンジの色味で、皮膚の色に近い感じがします。ワタクシの色黒かつ赤みの強い手の色と比べるとこんな感じです。お見苦しくてごめんなさい。手の色にはクラフト紙とほとんと同じ色の成分が含まれています。
この紙にポートレイトを描いて着彩すれば、皮膚の色について考察するのに適しつつ、明るい色の表現には絵の具を濃く塗らざるを得ないことになるはずです。それでももしヘタに薄く塗ってしまうとしても、あるいは塗り残しが生じることがあっても、ベースがこの皮膚に近い色だからノイズにならないし、色がよく馴染むと察します。
白い用紙でメイクのレシピを決めたあとで実際皮膚の上でどう発色するのか、クラフト紙に試し塗りすると想像しやすいのではないかと思います。