構図、構成の基本
構図、構成の基本
絵でもデザインでも、画面の中に見えない仕掛けをつくる。
鑑賞者の目が釘付けになる方法のひとつに視線誘導がある。
「の」の字を描く視線誘導を講じろ とかつて大学の恩師から教わりました。
POST-IMPRESSHIONISM*の、巨匠。セザンヌ大先生。*後期印象派という日本語は間違っています。正しく訳すと「脱・印象派」つまりもはや印象派ではない人たち、という意味です。多角視点、空間的に見ると不自然、違和感たっぷり。立体のとらえかたと 物の見ることについて考察しつづけた。パブロピカソとジョルジュブラックによる大発明「キュビスム」の礎です。今に続くデッサンの方法もセザンヌ先生の教えの賜物。
さらに申しますと、視線誘導の神様でもあります。
サブリミナル的ですね。今後、ものを見る、仕掛けを見破る、あるいは自分で表現するときのために、知っておくほうがいいと思います。
構図の基本として、画面の中に三角形を潜めるというのがあります。以下、順を追って見ていきましょう。
正方形の画面に、正三角形をどーんと。とても安定しています。左右対称です。強い→重たい→動かない。・・・退屈。ちなみに左右対称には「正面性」という意味合いが付着します。図学用語で”FRONTAL”と言います 。正面性には「正しさ」があります。真正面に向き合う→対峙する→睨み合い・・・息苦しさ。私が愛する映画 ”SHINING"(1980)にはシンメトリー構図のオンパレードで、恐怖感を煽る絵作りがなされています。恐ろしくも美しい。観ておくべき映画です。
さて、三角形をちょっと変形してみます。
動きが出ます。
頂点に視線がいきます。
3つのポイントの色の彩度を変えてみましょう。
見る順番が自然とできます。
濃い方から淡い方へ誘導されます。さらに、
大きさに差をつける→奥行きの演出です。
これが「絵画的空間」の基本。
さてこれを発展させて、
2つの三角形を配置し、重なった部分。これはまちがいなく画面の最重要ポイントとなります。
色を強調すると意図が明確になり...
ちょっとずらして図案の妙を発現。
この図に、視線誘導を感じますか。言い換えると、見えない矢印をいくつか感じ取ることができますでしょうか?
さらにアレンジを加えることで...
反時計回りに動き回り始めた感じがしませんか。これは「説明」ではなく、鑑賞者を誘導するもの。そういう暗示をつくることも【表現】のひとつです。ちなみにイラストレーションとは本来「説明」という意味なんです。純粋芸術では、ない。
小さな点を付けてみたりすればさらに複雑な仕掛けができそうです。けれどやりすぎると絵としては弱くなります。そこの見極めがなかなかにむずかしい。
画面の中にいくつかの三角形の構図を仕掛けとして描いてみて、色面で構成してみましょう。
追記:
例えば大小さまざまのハートだらけでもいいし、具体的モティーフを使用してもよいし、配色は自由だし、白い下地が見えていても構いません。
あまりに自由だとむしろ難しく思えるのも事実です。
この課題はデザインでありながら実は絵画的思考を要します。風景画や静物画の、遠景/中景/近景を採り入れてみてください。つまり3層構造です。セザンヌの絵にも、ファブリック、白布+器、果実という3層構造になっています。3層レイヤーで考えると視線誘導を構築しやすいでしょう。
これも3層構造を示唆しています↓