配色の学習で得た色彩感覚を実際に活用するときに問われるのは、構成のセンスである。その基礎として「平面視」について解説し、そのあとで構成について学習していく。
「平面視」について
「シルエット」で物を見る。そのシルエットを枠でとらえる。そうすると枠内にシルエットの余白ができる。
物のかたち=「ポジティブスペース」
周りの余白=「ネガティブスペース」
このふたつのバランスを見ることが「構成=COMPOSITION」の原点である。
かたちを見て描く
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とりあえず輪郭線を描くことから始まるのだが
シルエットで見る
アウトラインに集中できる
さらに...
枠で囲むようにして観察
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おおよそのタテヨコ比率がこれで判る
ちなみにこれ 1:1.78
余白のかたち
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余白のかたちを描くという発想
意外とこのほうが正確なかたちを描ける
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以上「立体の平面視について」でした
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ここからが本題
シルエットで見る図案、構成について
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「地と図」という言葉があります。
私たちは白を下地として考えがちですので上図では黒いかたちを「図」として見る、それを【向き合う横顔】としての意味を見出すことができます。一方で余白は無意味と見なして気に留めないのが普通です。しかし上図では白いスペースのほうにも【グラスのかたち】としての意味を見ることができるので無視するわけにはいかない。ではどちらが「地」でどちらが「図」なのか。
「地」も「図」も等価値で見ること。意味があろうとなかろうと、常にネガとポジの両方に注目してかたちの調和を実現しようとすること、それが構成の要です。
「地と図 ≒ ネガとポジ」
くるくる入れ替えて見る訓練
これを模写するとき:ふたつの向き合う横顔を描こうとするよりも、シンメトリーのグラスを描く心持ちで臨むほうが上手に描けます。画力もまた脳内トレーニングによるものです。
4つの黒いかたちがあります
これらを組んでいきます
さて、どうなるか
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黒いかたちはダミーでした。白いスキマのほうに意味が発生してしまった『ネガポジ逆転』のお話。
【枠があるから成立する話です】
ネガポジくるくる転換 !!
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WHITE&BLUE
「ネガポジくるくる転換」を念頭に進めます。ここで参考にしたい重要な作家を ふたり挙げます。
HENRI MATISSE と ELLSWORTH KELLY 。どちらもカラフルな作品をたくさん生み出した画家ですが、ここでは「かたち・構成」に特化するため、2色使い BICOLORバイカラーの作品だけを見ていきます。
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HENRI MATISSE 1869 - 1954
”BLUE NUDE"
晩年の傑作
自作の青い紙を切貼
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かたちと配置の推敲
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人体の比率とか どうでもいい
ギリギリなのがカッコいい
勝手に色を反転してみた
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どうですか。う〜ん、...やっぱ「青い裸体」という、やっぱちょっとふつうではないギョッとする感じがイイんですよね、キレ味よくて鮮烈で。...
「白い裸体」だとまあ、...平凡?ぬるいというか...
ていうかなんか染物っぽい。ていうか女湯?
地と図の配色、 大問題
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ELLSWORTH KELLY 1923 - 2015
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KELLYの写真作品
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で、以下のふたつの作品では、特に
色のついたかたちの無意味な感じがクール!
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上の作品をもとに 身近な例で考える
サンドイッチを作るとき
パンの耳を包丁で 直線切り落とし
切り落としのイメージ
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そういえば 切れ端を
捨てずにとっといた
いらない部分は
無意味なかたちだが
おもしろい
無 意 味 の 寄せ集め
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Photoshopで画像加工
それなりにキマった感じになる
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KELLYのそっくりさん(日本人作家)
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今回の課題:BICOLOR
● B5の画用紙「白」
● 色紙「青」
● 切り抜くかたちは生物でもOK
MATISSEの ”BLUE NUDE" みたいに「白」と「青」でコラージュします。白と青の紙は 既製品でOK。特別なニュアンスを出したい場合は、入念に選んで買うか、自分で絵の具を塗って作るか。クリーム色とか白に近いライトグレイッシュで雰囲気のある「白」を、とか。高級感のある「青」を、とか。マティス先生は色紙を自作したそうです。いずれにせよ前もって準備しておいてください。
「青」のほうもできればB5サイズで準備しましょう。青を下地として制作すると、ちょっとちがう感覚でこれもまたおもしろいと思います。
紙厚について。切り貼りの段差をどう見るかという問題があります。紙が薄ければフルフラットの印刷物のような感じで、厚ければ貼り重ねた断面がレリーフ効果をもたらすことでしょう。
インクのような淡い「青」だと、味わいは出ますが白地とのコントラストが弱くなり、今回の目的から外れます。かたち(フォルム)の演習ですので、エッジの利いたものにしたい。濃い青を選んで買うか、ポスターカラーで濃く塗って作りましょう。
制作の時間は「かたちと配置に悩む、切る、貼る」に集中して、2点、3点と、なるべくたくさん制作するほうが充実すると思います。
わざとはみ出すように配置して、貼ったあとで矩形にトリミングすると力強い構成が期待できます。
抽象絵画、抽象的デザインについてよくわからない。でも、ずっと見ているとそのよさを理解し始める。抽象画の方がむしろ飽きずに見ていられることに気づきます。さらに自分で作ってみることで美についての発見があります。難しく考えずに、とりあえず切れっぱしを適当に組み合わせてみるだけでもいいんです。
3色にするとさらにおもしろく、むずかしく
ポジティブとネガティブの蛇足:
漫画家でさえメガネを描くのが下手だったりします。レンズのかたちばかり見るからいけないんです。全体のシルエットとポジとネガのバランスで、見る。
ほら、こんなとこに富士山がありました。
最後に:ネガポジ的言語表現の考察
ある物事について説明しようとして、それそのものを言い表すことはむずかしく、ほかの似た何かで例示したり、比喩表現を積み重ねたり、あるいは「それ以外のこと」との比較で、目的のものの外郭をイメージさせたりすることは...実に多い。
例えば「朝食」を英語で「BREAKFAST」と言う。morning meal(朝の食事)では物足りないのか...BREAKFAST=断食終了。寝てる間 何も食べなかったのを終わらせる行為が朝食。
ネガでポジを表現している。
「FREE」「freedom」は「解放」という意味。(例:sugar free→砂糖が入っていない商品)。福沢諭吉による翻訳で「FREE」に「自由」という語を当てたらしい。
自由は「自らに由ること」。主体的で、哲学的。FREEと自由、ネガとポジの関係と言える。