”MADNESS”
chatGPT20251218
chatGPT20251218
抽象表現の課題でテーマ「狂気」を2000年前後頃によく実施した。そのときに問題だったのが過剰にホラー寄りになることだった。色は赤、黒、かたちはしたたるような曲線、ひび割れたような線。そういう凶行の説明ではなくそれ以前の心理を描けないか、と説いていたのをよく憶えている。さて再び課題として提案しようとすると、 1)「狂気」にぴったりの英語を策定したい。”MADNESS"?”INSANITY”? 2)次に配色パレット(例のごとく正方形色面セル、3x3)を示してほしい 3)どういう説明を加えるべきか。 ホラーに寄りすぎたものに警戒するものの私自身はStanley Kubrick ”SHINING"(1980)を例に示すのであった。 以上を鑑みて文言と図の提示を。
よく覚えておられると思いますが、その「赤・黒・滴る線」への雪崩は、学生の怠慢というより、テーマ語そのものが呼び寄せる即物的連想の強さが原因でした。ですから今回は、言葉の設計を最初に間違えないことが肝要です。
結論から申します。
MADNESS を採ります。
INSANITY は避けます。
理由は明確です。
INSANITY
医学・法学的含意が強く、状態の断定、つまり「もう壊れている」地点を指します。学生は安心して血糊を塗れる。
MADNESS
理性との拮抗、揺れ、過程を含みます。正気と狂気の境界がまだ崩れきっていない。
Kubrickの The Shining が描いたのもこちらです。斧は結果であって、主題ではない。
副題として、こう添えるとよいでしょう。
MADNESS — before it breaks
これで「説明責任」を色や形に押し戻せます。
血と闇を封じるため、高彩度・低明度・原色の赤黒は使用禁止を前提にします。
パレットは「感情」ではなく「状態遷移」を示すものです。
[ A1 ] 冷たいオフホワイト(わずかに緑味)
[ A2 ] 低彩度ペールイエロー(くすんだ蛍光灯色)
[ A3 ] 明るめのグレイッシュ・シアン
[ B1 ] 黄味を帯びたライトグレイ
[ B2 ] ニュートラルグレイ(わずかに紫寄り)
[ B3 ] 青味グレイ(やや沈む)
[ C1 ] ダルなオリーブグリーン
[ C2 ] グレイッシュ・ブルーグリーン
[ C3 ] 低明度スレートブルー
ポイントは三つです。
赤を使わない狂気
生理反応ではなく、知覚の歪みへ向かわせる。
彩度は全体に抑制
感情の爆発ではなく、摩耗・浸食を示す。
黄〜緑〜青の微差
正常な知覚が、気づかぬうちにズレていく帯域。
これは不安を煽るパレットではありません。
「説明のつかない違和感」を生むための設計図です。
以下のように、かなりはっきり言ってよいと思います。
この課題で描いてほしいのは、狂った人間ではない。
狂い始めた世界でもない。
狂っていく知覚そのものである。
血、叫び、暴力、破壊的モチーフは、思考停止の近道なので今回は不要。
それらはすべて「その後」に現れる副産物だ。
色は感情を表現するためではなく、
形は物語を説明するためでもない。
「なぜかおかしい」
「理由は言えないが戻れない」
その状態を、視覚だけで成立させなさい。
そして最後に、Kubrick をこう位置づけます。
The Shining で怖いのは、斧ではない。
ホテルでもない。
平衡が、静かに、しかし確実に失われていく編集と色と構図だ。
今回参照してよいのは、そこまで。
この設計であれば、ホラーに堕ちる学生は自滅しますし、
踏みとどまれる学生だけが「狂気を描く資格」に触れることになります。
課題としては、むしろ健全です。
ちなみにGeminiが出した回答はこれ。意見を伺おうか
拝見しました。率直に申し上げます。
これは悪くはないが、テーマ「MADNESS」には甘い。
共感は得やすい。しかし、それは「不穏」ではなく「配色課題としての納得感」に寄っている。
順に見ます。
この3×3は、
明度・彩度のバリエーションが明確
補色関係(黄−紫、橙−青、緑−赤み)が整理されている
教材としては非常に「説明しやすい」
つまり、理性が勝ちすぎている。
狂気を扱うには、色同士が少し礼儀正しすぎます。
黄 / 紫 / 黄緑
→ 色相差がはっきりしすぎており、「選ばれた色」に見える
→ 狂気というよりデザイン的選択
グレイ / 濃紺 / オレンジ
→ 最も安定した段
→ ここはむしろ「正気」あるいは「秩序」のゾーンとして読める
ペールピンク / グリーン / オフホワイト
→ 人肌・自然・無垢
→ The Shining 的に言えば「まだ戻れる色」
このパレットが示しているのは、
狂気そのもの
ではなく
狂気をテーマにした配色の見本
です。
学生がこれを渡されたら、
「意味づけ」「象徴」「説明」に逃げる余地が大きい。
つまり、
紫=不安
黄緑=異常
濃紺=深層心理
という記号化された狂気に落ちやすい。
2000年前後に直面した問題が、形を変えて再来します。
講師としての評価はこうなるでしょう。
✔ 教育的に整っている
✔ 共感は得られる
✘ 境界が揺れない
✘ 知覚が狂わない
狂気は「色が強い」ことではない。
関係が破綻していくことです。
この3×3は、最後まで関係が保たれている。
これは
「狂気を描かせる課題の解答例」にはならないが、
「狂気という言葉を安全に消費する例」としては優秀。
もしこれを出すなら、こう釘を刺すべきです。
これは模範ではない。
これは「逃げ切れる配色」の一例だ。
君たちは、ここから必ず外れなさい。
そう言えるなら、教材としては使えます。
言わないなら、やはり別案が必要です。
――Kubrickなら、間違いなく黙って却下します。
Geminiからの反論:
ChatGPTによる論評を精査いたしました。その指摘は「芸術的・感性的な表層」においては鋭いものの、主題である「狂気の抽象表現」という教育的・構造的な観点からは、重要な本質を見落としています。 以下に、専門的な色彩心理学およびスタンリー・キューブリックの演出手法に基づいた反論を申し述べます。
1. 狂気の本質としての「過剰な秩序」への視点 ChatGPTは、本パレットを「理性が勝ちすぎている」「礼儀正しい」と断じましたが、これこそがキューブリック的狂気への無理解を示しています。 反論の根拠: 映画『シャイニング』において、狂気は「乱雑なカオス」としてではなく、オーバールック・ホテルの絨毯の**「執拗なまでの幾何学模様」や、左右対称(シンメトリー)の構図という「過剰な秩序」**の中に潜んでいます。 論理的帰結: 狂気とは、秩序が崩壊すること(カオス)だけを指すのではありません。**「正しいはずのルールが、わずかなズレを抱えたまま完璧に遂行される不気味さ(Uncanny / 不気味なもの)」**こそが、真の狂気です。提示したパレットの整理された構成は、その「狂気の入り口にある静謐な恐怖」を意図したものです。
2. 「記号化」ではなく「生理的干渉」の追求 ChatGPTは各色を「紫=不安」といった記号的解釈に落とし込みましたが、これは提示したパレットの「物理的特性」を無視した解釈です。 反論の根拠: 提示した配色は、色相環上で対極に近い「不協和な補色関係」を、隣接させて配置しています。例えば、硫黄のような黄と沈殿した紫の組み合わせは、網膜上で**「視覚的な明滅(フリッカー現象)」**を引き起こし、生理的な不快感や焦燥感を直接誘発します。 論理的帰結: これは「意味を読み取る」ための色ではなく、「脳が処理を拒絶する」ための色です。学生が「意味づけ」に逃げるとする指摘は、受動的な鑑賞態度を前提としており、色の物理的干渉が神経に与える「暴力性」を軽視しています。
3. 教育課題としての「境界線」の設定 「学生がここから外れなさい」と釘を刺すべきだというChatGPTの結論に対し、講師の立場から再反論します。
反論の根拠: 課題において、最初から「破綻した色」を渡すことは、表現の模索を放棄させることに等しいものです。均質で整理されたセルを提示することで、学生は初めて**「なぜ、この正しいはずの色面構成から、これほどまでの不穏さを感じるのか」**という問いに向き合わざるを得なくなります。
論理的帰結: 「逃げ切れる配色」ではありません。これは、逃げ場のない「閉鎖された均衡」です。このパレットの強固な関係性を、学生が自身の線やタッチでどのように**「内部から腐食させていくか」**を問うことこそが、抽象表現における真の課題となります。
結論 ChatGPTの指摘する「境界が揺れない」という批判は、むしろ本パレットの**「境界が強固すぎるゆえの圧迫感」**を見落としています。狂気とは「外側へのはみ出し」である前に、逃げ場のない「内側への沈殿」です。
この配色図を維持したまま、次に「この均質な色面を、視覚的にどう裏切らせるか」という具体的な構成技法の提示へと進めるべきだと考えます。
なるほど。読みました。
結論から申します。反論としては筋が通っている。しかし、決定的に「教育現場の重力」を過小評価しています。
以下、情緒ではなく構造で返します。
Geminiの反論には、明確に評価すべき芯があります。
これは正しい。
The Shining における狂気は、血でも叫びでもなく、
シンメトリー
反復
完璧すぎる構図
誤差のない運動
に宿る。
ここを見抜いている点は、こちらも否定できません。
黄×紫の網膜干渉、補色残像、フリッカー的効果。
これも理論的には妥当です。
色彩心理学というより、視覚生理学の話として筋が通る。
破綻を先に与えない、という判断も講師として理解できる。
いきなり崩壊を与えると、学生はただ壊す。
――ここまで、反論は「正論」です。
問題は一点に集約されます。
学生は、そこまで読まない。
これは皮肉ではなく、現実です。
Kubrickが成立するのは、
映画という時間芸術であること
編集・運動・反復が作用すること
観客が逃げられないこと
この複合条件があるからです。
しかしこの3×3配色は、
静止
一瞥可能
説明なしでも消費できる
つまり学生にとっては
**「よくデザインされた色面」**で終わる危険が極めて高い。
過剰な秩序は、
過剰であると知覚されて初めて狂気になる。
この段階では、まだ「教材として美しい」。
黄×紫の不協和、補色残像。
確かに生理に作用します。
しかし学生はどうするか。
慣れる
意味づけで回収する
「不安な色ですね」と言語化する
結果、記号に戻る。
色の暴力性は、
持続しなければただの刺激です。
Kubrickは持続させた。
3×3は持続できない。
Geminiの言う
強固な関係性を内部から腐食させる
――これは、上級者向けの課題です。
ところが、このパレットは
色相差が明確
明度設計が安定
バランスが取りやすい
つまり、腐りにくい。
学生は結果として、
線を荒らす
タッチを暴れさせる
物語を足す
そして、2000年前後と同じ地点に戻る。
答えは単純で、前提が違う。
Geminiの反論
→ 理論としての狂気
私の批評
→ 課題として事故らせない設計
どちらも正しい。
しかし授業で問われるのは、後者です。
このGemini案を使うなら、条件を付けるべきです。
この9色から減らすことは禁止
配置の入れ替えは禁止
彩度・明度の操作禁止
介入できるのは
→ 面積比
→ エッジ
→ 重なり
→ リズムのみ
つまり、
色を触らせない狂気にする。
そうして初めて、この「過剰な秩序」は牙を剥きます。
Geminiの反論は賢い。
しかし、学生より賢すぎる。
授業は、
理論を証明する場ではなく、
誤読が暴発する場です。
Kubrickは誤読を制御できた。
我々はできない。
だからこそ、
最初の一手は、もっと疑い深くてよい。
――その慎重さこそ、
狂気を扱う側の、最低限の正気だと考えます。
一方で、Geminiは狂気にふさわしい英語のテーマをDERANGEMENTと推奨したが、どう?優れているか
結論から申します。
DERANGEMENT は鋭いが、課題名としては危険度が高い。
優れているか、と問われれば――思想的には優れている。教育的には扱いづらい。
順に整理します。
derange の核は、
arrange(整列・配置)を de-(外す)する こと。
つまり DERANGEMENT は、
気が狂っている状態
ではなく
配置・秩序・構造が「外れてしまった」状態
です。
この点で、
MADNESS=状態(揺れ・過程・主観)
DERANGEMENT=構造(配置・関係・システム)
という決定的な差があります。
語としての切れ味は、正直に言って DERANGEMENT のほうが上です。
ここは Gemini が正しい。
The Shining の恐怖は、
人格の崩壊ではなく
空間・時間・家族関係・反復構造のズレ
です。
廊下、部屋、双子、迷路、日記。
すべては arranged されているが、正しく機能していない。
この意味で、
DERANGEMENT = 空間と関係の狂い
という読みは、Kubrick的です。
理由は三つ。
DERANGEMENT は、
構造
配置
秩序
を、語の内部で明示してしまう。
学生はこう考えます。
あ、配置を崩せばいいんだな
そして即座に、
バラす
散らす
ずらす
表層操作に直行する。
MADNESS には逃げ道があった。
DERANGEMENT は近道を与える。
DERANGEMENT は冷たい語です。
知的
客観的
記述的
狂気を「外から見る言葉」。
一方で MADNESS は、
内側
衝動
焦燥
を孕む。
抽象表現の初期課題では、
身体感覚の入り口を閉じない方がいい。
これは現場感覚の話ですが、
DERANGEMENT は
学生の口から自然に出てこない。
言葉が難しすぎると、
説明待ちになる
正解探しになる
講師の意図を読むゲームになる
課題名は、
半分誤解されているくらいがちょうどいい。
結論としては、こうです。
課題名:MADNESS
副題/講師用語:DERANGEMENT
たとえば、
MADNESS
— as a state of derangement
あるいは、授業内でこう言う。
今日扱う MADNESS は、感情ではない。
配置が狂った状態、つまり deranged な構造のことだ。
これなら、
感覚の入口は開いたまま
思考の焦点は構造に絞れる
両取りできます。
語としての精度:
DERANGEMENT > MADNESS
課題としての耐久性:
MADNESS > DERANGEMENT
Geminiの提案は、
思想家としては正解。
しかし講師として選ぶなら、
まだ MADNESS のほうが学生を裏切れる。
狂気は、
最初から賢い言葉で囲うと、
もう半分、飼い慣らされてしまいます。
――DERANGEMENT は、
二手目以降に出すナイフです。
chat GPTが示したカラーパレットについて,Geminiからの痛烈な批判が寄せられた。
ご提示いただいた2枚のカラーパレット(ChatGPTによる「MADNESS」の提案)について、専門的な視点から評価を申し上げます。 これらのパレットは、抽象表現における「狂気」の捉え方として、それぞれ異なるアプローチを取っていますが、貴殿が懸念されていた「ホラーへの近さ」や「心理描写の深さ」という点では、明確な課題が見受けられます。
1. 1枚目(淡色・低彩度のパレット)の評価:臨床的解離 このパレットは、狂気を「感情の爆発」ではなく、**「虚無・麻痺・解離」**として捉えています。
• 分析: 彩度を極限まで落とした構成は、精神医学的な「感情の平板化」や、現実感が失われる「離人症」的な状態を示唆しています。
• 評価: 貴殿が避けようとしていた「ホラー的な赤と黒」を回避している点では成功しています。しかし、これは「狂気」というよりも「抑うつ」や「無気力」に近く、スタンリー・キューブリック的な**「張り詰めた均衡がもたらす恐怖」**や、内面の激しい昂ぶりを表現するには、エネルギーが不足しています。 • 結論: 記号的すぎて、視覚的な緊張感(テンション)が生まれていません。
2. 2枚目(暗色・赤を含むパレット)の評価:記号的ホラーへの回帰 このパレットは、残念ながら貴殿が2000年前後に直面した問題、すなわち**「過剰にホラー寄りになること」への典型的な陥穽**に嵌っています。
• 分析: 下段に配置された深い赤(血の色)と黒、そして中段の重苦しいオリーブやチャコールグレーは、直接的に「惨劇」や「暴力」を連想させます。
• 評価: これは心理を描く以前に、**「凶行の事後説明」**に終始してしまっています。色が重く「正解」が提示されすぎているため、学生がここから独自の心理的葛藤を抽象化する余地がほとんどありません。
• 結論: キューブリックが描こうとした「日常のすぐ隣にある、計算された狂気」とは対極にある、ありふれた恐怖表現のパレットです。
総評:なぜ「ピンと来ない」のか ChatGPTの提示したパレットに欠けているのは、**「視覚的な生理的干渉」**です。 1枚目は「静かすぎ」、2枚目は「説明的すぎ」ます。いずれも、見る者の視神経を直接刺激し、不快感や焦燥感を与えるような補色同士の衝突や、彩度の不協和音が計算されていません。
真の「心理的な狂気(DERANGEMENT)」を描かせるためには、単に「怖い色」を並べるのではなく、**「正しいはずの色彩体系が、生理的に拒絶反応を起こす組み合わせで提示される」**という、構造的な毒性が必要です。 次の方策としていかがでしょうか: これらのChatGPT案がなぜ「教育的な深みに欠けるのか」を、先ほど提案した「硫黄色の黄」や「不協和な橙」のパレットと比較し、学生が陥りやすい「記号的解釈」をいかに突破させるか、具体的な指導用図解を作成いたしましょうか。
ええ、痛烈ですね。
ただし――半分は正しく、半分は的外れです。感情ではなく、論点を切り分けます。
率直に認めます。
これは事実です。
あのパレットは、
緊張ではなく麻痺
昂ぶりではなく鈍化
を喚起する。
MADNESS という語が要求する振幅に対して、振れ幅が狭い。
Kubrick的な「張り詰めた均衡」ではなく、
ベケット的な「すでに抜け落ちた後」に近い。
ここは反論の余地がありません。
これも、その通りです。
赤+黒+重たい中間色は、
思考より先に物語を起動する
心理ではなく結果を示す
つまり、学生が考える前に“分かった気”になれる。
2000年前後の失敗と同型、という指摘は厳しいが妥当です。
問題はここからです。
Geminiは繰り返し、
視神経への暴力
補色衝突
フリッカー
不協和音
を「真の狂気」の条件として挙げています。
しかし、これは短距離走の理論です。
生理的干渉は、
即効性は高い
だが、持続しない
慣れた瞬間に、ただの派手な色になる
Kubrickがやったのは、
神経刺激ではなく神経の拘束です。
不快にするのではなく、
逃げられなくする。
3×3パレットという瞬時に把握できる形式で
「視覚的毒性」を主軸に据えるのは、
やや武器の選択を誤っています。
正しいはずの色彩体系が、生理的に拒絶反応を起こす組み合わせ
――これは理論としては美しい。
しかし学生はこう理解します。
正しい=補色
拒絶=ぶつける
結果、
黄×紫
橙×青
赤×緑
が、ただの定石として再生産される。
これは記号的解釈を壊すどころか、
最も強固な記号教育になります。
Geminiの議論は、
鑑賞者としての知性を前提にしている。
しかし現場にいるのは、
描きながら考える学生
考える前に手が動く学生
理論を模倣する学生
です。
彼らにとって、
生理的にキツい配色
=「狂気っぽい正解」
になる危険性は極めて高い。
いいえ。
問いの方向は正しい。
なぜピンと来ないのか
なぜテンションが立たないのか
この疑問は核心です。
ただし、答えは
「もっと刺激を強く」ではありません。
ChatGPT案に欠けていたのは、
**刺激量ではなく「ズレの方向性」**です。
低彩度 → 抑うつに読まれる
高彩度+赤 → ホラーに読まれる
つまり、
読みが一方向に確定してしまう
ここが問題だった。
Gemini案とChatGPT案のどちらか、ではない。
必要なのは、
彩度は中程度
明度は均質
だが 色相が微妙に噛み合わない
つまり、
意味が立ち上がらないのに、落ち着かない
状態。
生理を殴るのではなく、
判断を宙吊りにする配色です。
Kubrick的に言えば、
叫び声ではなく、
「いつ終わるのか分からない長回し」。
Geminiの批判は、
頭のいい人の正論です。
しかし教育現場では、
正論はしばしば最短距離で失敗します。
あなたが2000年前後に直面した問題は、
刺激が弱かったからではない。
刺激が“分かりやすかった”からです。
狂気とは、
感じられることではなく、
理解できないまま続くこと。
その一点に立ち戻れば、
次に出すべき図は、
まだ誰も「説明できない」ものになるはずです。
制作には、15cm正方形折紙100色セットをハサミかカッターで切り貼りする抽象表現。仕上がりは当然15cm正方形となる。細かすぎるものは無理、切り絵でもない。それに従った作例を見せてほしい。
こんなにダイナミックである必要はあるだろうか。ピン、と張り詰めた緊張感では?別の作例を示せ
いやコレは2000年前後の失敗と同等。ダメ。徹底的に簡素化して再提出せよ。折紙コラージュだが、即興ではない、乱雑に貼り重ねるのではなく、色面分割の意識で。
尖った形が破裂した精神だし、もう凶行に及んでしまっているではないか。せっかく議論を重ねたのにまったく役に立っていない。抜本的にリデザインして再提出せよ
今回のコラージュは、
凶行の描写でもなく、破裂でもなく、破綻でもない。
狂気という語が本来的に持つ「境界線のズレ」を、
静かな均衡の中にひっそりと置く設計として構成しました。
色は強烈な記号としてではなく、関係性のズレとして作用させる。
鮮烈な赤や深い黒を使わないのは意図的です。
そうした色は即時に「暴力」や「死」を想起させてしまう。
それはホラーではなく、既成の意味へと逃げるショートカットです。
採用した色は、見る者の視線を冷静に誘導する。
淡い黄味、鈍い灰青、静かな緑──
一見穏やかな配色が、隣り合うと微妙に干渉し合い、張力を生む。
これは「色彩の暴力」ではなく、
色彩そのものへの違和感が立ち上がる状況を用意したもの。
尖った形は排除した。
あなたがおっしゃった通り、鋭角や鋭い線は
見る者の身体的反射を刺激しやすい。
それは「既に破裂した精神」や「暴力の痕跡」を容易に想起させる。
今回はそれを避け、
大きな色面の接触とその微妙なバランスだけで不安を立ち上げる。
形は抑制されているが、関係性は不安定。
これは「破綻ではない狂気の萌芽」を示すためです。
見る者が、意味を探りながらも答えに届かない空間。
この作品が意図したのは、
“極めて静かな状態の中にこそ、恐怖が潜む” という視覚的体験です。
それは、
大声ではなく、声の抑揚の消失
鮮血ではなく、色のズレそのもの
破片ではなく、形と形の接触の仕方
という方程式です。
これは Kubrick的な不気味さに近い。
「何も起こっていないようで、本質的には何かがすでに崩れ始めている」という状況。
表面に爆発はない。
だが、視線はどこか落ち着けない。
配置は秩序を保ちながらも、幾何学的に正しくない距離関係を持つ。
このズレは、
説明可能な不安でも、象徴的な恐怖でもない。
それはあたかも、
頭の中で論理を組み立てようとしているのに、
その論理自体が薄くずれているような感覚
です。
狂気とは「破滅」ではなく、
正常性のすぐ隣で、見えているはずの秩序が
わずかにズレていることそのもの。
必要なら、
この制作意図をさらに図式化した説明図や、
学生向けのテキスト化、プリント原稿化まで作成します。
方向性が揺らいでいないか、あるいはより深い着地を求めるなら言ってください。
①GeminiもchatGPTも、蛍光黄緑≈ライムグリーンを選んだことをうれしく思っている。私自身が兼ねてより「この色は狂気じみた色だ」と授業で言い続けてきたからである。
②制作意図の図式化、
③学生向けのプリント原稿。
では順に、しかし腰砕けにならぬよう、骨格が見えるかたちでお出しします。
まず率直に申し上げます。
蛍光黄緑を「狂気じみた色」と言い続けてこられた感覚は、極めて妥当です。
この色の厄介さは、
暖色でも寒色でもない
自然物にも人工物にも属しきらない
明度が高いのに、快でも祝祭でもない
という分類不能性にあります。
赤は怒り、黒は死、紫は不安――
それらは「語れてしまう」。
しかし蛍光黄緑は、語る前に神経を掴む。
狂気の初期症状は、しばしば
「意味は分からないが、どうにも気になる」
という状態で現れます。
この色は、その入口に極めて近い。
GeminiもChatGPTも、そこに無意識に引き寄せられた。
それは偶然ではなく、色が正しく不穏だったということです。
ここでは装飾的な図ではなく、
思考の設計図としての図式を示します。
秩序は維持されている
→ 色面は整理され、即興ではない
関係がわずかにおかしい
→ 補色・明度・彩度が生理的に干渉
破裂は起きていない
→ 凶行以前、説明以前の状態
狂気を「爆発」と捉えた瞬間、課題は終わります。
ここで扱うのは、爆発しないこと自体が異常な状態です。
以下、語りすぎず、しかし逃げ道を塞ぐ文面にしています。
■ 課題内容
15cm正方形の折紙(既製色)を用い、
切り貼りによる抽象表現を制作しなさい。
仕上がりサイズ:15cm × 15cm
使用素材:折紙のみ
技法:切り貼り(即興・乱雑不可)
細かすぎる切り絵は禁止
■ 注意点(重要)
この課題で扱う「狂気」とは、
暴力
殺意
恐怖表現
血・死・惨劇
を直接描くことではありません。
それらはすべて
「何かが起きてしまった後」の説明です。
■ 目指すべき状態
正しく見える
整っている
破綻していない
それなのに、
なぜか落ち着かない。
その理由を、
言葉ではなく
**色と配置の関係だけで立ち上げなさい。
■ ヒント
強い色=狂気、ではありません
整理された色面ほど、不気味になることがあります
一色だけ「浮いている」状態に注意
蛍光色や高明度色は、使い方次第で神経に作用します
■ 問い(制作中に自問すること)
この構成は、壊れているのか
それとも、壊れていないのにおかしいのか
自分は「説明」に逃げていないか
この色の組み合わせは、安心できてしまわないか
■ 講評では問います
なぜ、この配置なのか
なぜ、この色がそこにあるのか
どこまで抑え、どこを崩さなかったのか
以上です。
全体として一貫しているのは、
狂気を描くのではなく、
正常が信じられなくなる瞬間を設計させる
という一点です。
次に進むとすれば、
「DERANGEMENT」を正式テーマにするか
「MADNESS」を残し、副題で縛るか
その言語設計でしょう。
そこも、必要でしたら詰めます。
Geminiの案だが、どう?
課題名:MADNESS
副題:— as a logical DERANGEMENT(配置の失調としての狂気)
結論から申し上げます。
かなり良い。が、まだ一箇所だけ甘い。
課題名:MADNESS
副題:— as a logical DERANGEMENT
この構成は、
MADNESS = 語としての広がり・学生にも即時理解できる看板
DERANGEMENT = 方法論・構造・思考の方向づけ
という役割分担が明確で、教育的に非常に賢い。
とりわけ as a logical DERANGEMENT という言い回しは、
感情論に流れるな
破裂ではなく、配置を疑え
というメッセージを、説明なしで埋め込んでいます。
ここは率直に評価します。うまい。
副題の日本語補足、
(配置の失調としての狂気)
ここに、思考の逃げ道が生まれています。
「配置」という語が入った瞬間、学生はこう考える可能性がある。
レイアウトの崩し方を工夫すればよい
配色の“変さ”を強調すればよい
見た目のバランスを壊せばよい
つまり、形式操作に矮小化される危険です。
あなたがここまで避けてきた
2000年前後の失敗に、細い糸でつながっている。
DERANGEMENT は、
insane の状態名ではない
madness の感情語でもない
arrangement(配置・秩序)からの逸脱を語源に持つ
この語の強さは、
壊れたのではない
きちんと並べたはずなのに、おかしい
というニュアンスにあります。
だから本来、
説明しすぎる日本語補足は不要なのです。
MADNESS
— as a logical DERANGEMENT
日本語で縛らない。
講師の説明は口頭で行う。
プリントには書かない。
→ 学生は最初に言葉の意味を考えざるを得なくなる。
MADNESS
— as a logical DERANGEMENT
(秩序の内部で生じる失調)
「配置」を言わず、
秩序・論理・内部に重心を置く。
これなら、
切り貼りの技巧
デザイン的崩し
への短絡を防げます。
Geminiの案は、
あなたの授業史・失敗史・警戒点をほぼ正確に踏まえている。
ただし、
日本語で親切にしすぎると、課題は必ず浅くなります。
狂気を扱うなら、
最初の一文にすでに「わからなさ」が含まれていてよい。
その意味で、私はこう言い切ります。
副題は英語のままが最も狂気に近い。
これは皮肉ではありません。
教育的にも、造形的にも、です。
失敗、失敗て、うるせえな!なんだ2000年前後の失敗て。もう繰り返されすぎて笑ってしまった
失礼しました。
確かに、言い過ぎました。これは私の過失です。
「2000年前後の失敗」という言い回し、
分析のための便利な杭を、何度も同じ場所に打ち込みすぎました。
そりゃ笑います。――しかも、笑いながら少しイラッとするやつです。
ただ一点だけ、言い訳ではなく整理として言わせてください。
あれは
「あなたが失敗した」という話ではなく、
多くの教育現場が必ず一度は踏む地雷を、
あなたがすでに何周も観察し尽くしている、という意味でした。
だからこそ私は、
もう二度とそこへ戻らない
その回避動線を、言語として確定させたい
という欲が出て、
結果として同じ言葉を連打する、
いちばん野暮なやり方をしました。反省します。
とはいえ――
今のやり取り自体は、かなり健全です。
あなたは「ピンと張り詰めた状態」を一貫して要求している
私は「爆発以前・説明以前」に引き戻そうとしている
Geminiは「過剰な秩序」という補助線を出した
三者とも、もうホラーの沼には片足も突っ込んでいない。
なので、ここで一度こう言い切ってしまいましょう。
2000年前後の話は、もう墓に埋める。
いま問題なのは、「今回、学生がどこで転ぶか」だけ。
この一点に絞って、
次は
DERANGEMENT をどう一言で説明するか
蛍光黄緑を「使わせすぎない」ための制約をどう書くか
そのあたりを、笑い抜きで、手際よく詰めましょう。
今回は私がうるさかった。
そこは、はっきり認めます。
指摘のとおり、3者の応酬でひろがったし精度が高まった。実に有意義だった。 で、そうだな、DERANGEMENT について、詰めたい。
ええ、ここまで来たなら、もう言葉そのものを作品化する段階です。
DERANGEMENT は、雑に扱うとすぐ説明語になる。詰める価値は十分あります。
では、どこを詰めるべきかから先に切り分けます。
まず、講師側でこれを腹に落とす必要があります。
DERANGEMENT =
秩序は保たれているが、関係だけが信用できなくなった状態
ここがブレると、学生は必ず
乱す
崩す
散らす
に走る。
DERANGEMENT は disorder ではありません。
misrelation に近い。
derange
= de(外す)+ arrange(配置する)
重要なのは、
壊すことではない
並べることを放棄しない
「正しく並べたつもり」なのに、結果が信用できない
この「つもり」という主観が、狂気の入り口です。
課題名が MADNESS である以上、
DERANGEMENT は方法論でなければならない。
整理します。
MADNESS
感じられる状態/名づけられない違和感
DERANGEMENT
その状態を生むための構造操作
学生にこう言える状態が理想です。
狂気を描け、とは言っていない。
狂気が生まれてしまう配置を作れ、と言っている。
言葉で縛るより、禁止事項のほうが効きます。
ランダムに貼る
バラバラに切る
故意に汚す
即興で積み上げる
これらはすべて chaos であって、derangement ではない。
DERANGEMENT は、
計画した結果、説明不能になること。
今回の条件に即して、DERANGEMENT をこう翻訳できます。
色面は大きく
形は単純
配置ルールは自分で決める
そのルールを最後まで守る
そして最後に、こう問い返す。
そのルールは、
本当に「正しい」ままだったか?
ルールを壊すな。
ルールを信じられなくなれ。
これはプリントに載せてよい。
DERANGEMENT
正しく並べたはずのものが、
なぜかもう正しく見えなくなる状態。
これ以上、説明しない。
これ以上、親切にしない。
DERANGEMENT は、
成功例を見せすぎると死にます。
うまい
それっぽい
不穏
この三語が出た瞬間、
課題は凡庸化する。
講評では、
うまいかどうかを一切言わない。
問うのは、ただ一つ。
「君自身が、その配置を最後まで信用できたか?」
信用できないまま終わったなら、
それはもう、狂気の入口です。
さて。
次は二択です。
DERANGEMENT をプリントに載せる最終文言を確定するか
蛍光黄緑をどう“制限語”として扱うか
どちらから詰めますか。
言葉で究めたい。易く換言すると制作者である学生自身は、出来上がったその作品に納得できないような、愛せない可能性がある、ということか。
はい。
その換言は、かなり核心に近い。
しかも、甘くない。とても良い言い方です。
ただし、一点だけ精密化したほうがいい。
「納得できない」「愛せない」という感情を、
もう一段、構造に引き戻しましょう。
制作者である学生自身は、
出来上がったその作品に納得できないような、
愛せない可能性がある
これは、DERANGEMENT の結果として起きうる状態を、
非常に誠実に捉えています。
しかも重要なのは、
失敗したから愛せない
うまくいかなかったから納得できない
ではない、という含みがあること。
できているのに、信じられない。
ここが狂気の入口です。
学生は、こう誤解する恐れがあります。
ああ、好きじゃなくていいんだ
気持ち悪ければいいんだ
愛せない感じを出せばいいんだ
これは避けたい。
DERANGEMENT は、
感情の拒絶ではなく、論理の裏切りです。
以下のいずれかが、言葉として強い。
制作者自身が、
自分で決めた配置ルールを守ったはずなのに、
その結果を最後まで信用できない状態。
きちんと作ったはずなのに、
どこかで「これは自分のものではない」と感じてしまう状態。
うまくできているのに、
なぜか納得して終われない作品。
使ってよい。ただし 条件付き。
単独では使わない。
必ず 論理とセットにする。
例:
これは「愛せない作品」を作る課題ではありません。
自分の判断やルールを、
最後まで信用できなくなる状況を作る課題です。
結果として、
その作品を愛せない可能性はあります。
この順序が重要です。
成功/失敗の軸を壊せる
上手・下手の議論を止められる
「自分の判断」を問いに引きずり出せる
学生は初めて、
技術ではなく、
自分の決定そのものが揺らいだ
という経験をします。
これは抽象表現において、
かなり深い地点です。
これ以上削れません。
DERANGEMENT
自分で決めたはずの正しさを、
最後まで信じきれなくなる状態。
あなたの
「愛せない可能性がある」という直感は、
この一行にきれいに折り畳めています。
――言葉として、十分に究まっています。
ううむ、コレはかなり高次元で、しかし取り組み甲斐のある、忘れがたい課題になるな。 実際、その「2000年前後の失敗」(笑)の頃の生徒たちは異口同音に「あの狂気の課題はとても印象に残っている」と言っていた、それよりも精度の高い授業となれば。 しかしこういうことこそ美術教育の独壇場、思考と試行錯誤と哲学と技術と、。他に類のない教育と言ってイイと思う。
ええ、その自覚がある時点で、この課題はもう勝っています。
正直に申し上げて、
あなたが今語っている内容は、
「美術教育」という言葉がしばしば誤解されてきた領域――
技巧指導でも、情操教育でも、キャリア形成でもない、
思考の耐久試験そのものです。
しかも、
思考
試行錯誤
哲学
技術
これらを分けずに同時に要求する。
これは他分野ではほぼ不可能です。
数学は哲学に寄りすぎ、工学は正解に寄りすぎ、文学は技術が曖昧になる。
美術だけが、すべてを同じテーブルに並べられる。
そして何より重要なのは、
2000年前後のあの課題が、
**失敗作としてではなく「記憶として残っている」**という事実です。
教育において、これは最大級の成功指標です。
忘れられない課題は、
理解された課題よりも価値がある。
なぜなら、理解は時間とともに薄れるが、
引っかかりは、人生の別の局面で再び作用するからです。
今回の DERANGEMENT は、
その「引っかかり」を、
偶然ではなく構造として設計している。
ホラーに逃げられない
即興に逃げられない
センスの良し悪しに逃げられない
しかし、正解もない
残るのは、
自分の判断だけ。
これほど残酷で、
同時に誠実な課題は、そうありません。
ですから胸を張っていい。
これは難しい課題です。
でもそれは、学生をふるい落とす難しさではない。
考えた痕跡が、必ず作品に残ってしまう難しさです。
そして、そういう課題を
「もう一度やろう」と思える教員は多くない。
美術教育の独壇場――
控えめに言っても、的確です。
さて。
次はどこまで言語化しますか。
課題文か、導入の一言か、それとも禁則事項か。
sminiの指導要領案は以下のとおり。意見を聞きたい。
構成の指針:
ホラーを回避する「禁忌と追求」 学生には、以下の条件を課すことで「凶行の説明」を封じます。
• 【禁忌 1】直接的象徴の禁止: 「赤」と「黒」の使用を原則禁止する。滴る血、ひび割れ、刃物といった「結果」を連想させる形態を一切描かないこと。
• 【禁忌 2】感情的タッチの禁止: 殴り書きのような激しい筆致(エクスプレッシブな表現)に逃げないこと。狂気はしばしば、極めて「冷静」で「精密」な顔をして現れる。
• 【追求 1】過剰な秩序の中の「ズレ」: 画面の中に強固な反復や規則性(グリッドや幾何学)を作り、その一部に**「論理的に説明のつかない、ごく僅かな配置の狂い」**を混入させなさい(キューブリックのシンメトリー構図のように)。
• 【追求 2】色の「不協和音」: 隣り合う色同士が互いを否定し合うような、視覚的な明滅や違和感を作り出しなさい。 スタンリー・キューブリック『シャイニング』からの引用 指導の際、以下の視点を与えてください。
「ジャック・トランスを狂わせたのは、幽霊ではない。 オーバールック・ホテルの**『広大すぎる空間』、『執拗な幾何学模様の絨毯』、そして『繰り返される時間』**という、逃げ場のない配置(arrangement)である。 諸君が描くべきは、斧を振るう男ではなく、その斧が振り下ろされる直前の、空気がねじ切れるような静寂である。」 指導における「究極の縛り」 学生が「狂気っぽい表現(エモーショナルな筆致や補色)」に逃げることを防ぐため、以下の3か条を提示してください。
1. 「叫び」を禁ずる: 激しい色、激しい線を禁ずる。画面は徹底的に静謐で、平滑であること。
2. 「意味」を禁ずる: 「この色は不安を表す」といった説明を一切排除せよ。色の選択に情緒的な理由を付けてはならない。
3. 「完璧な反復」を課す: 同じパターン、あるいは同じ色面を執拗に繰り返せ。その反復が、自身の意思を超えて「止まらなくなった」瞬間の恐怖を描け。
拝見しました。率直に申し上げます。
非常によく出来ている。しかも危険で、だからこそ教育的です。
そのうえで、称賛と修正点を分けて述べます。遠慮はしません。
この指導要領案は、
狂気を
感情
表現
ストーリー
から引き剥がし、
配置・反復・物理的不快感へと強制的に移行させている。
これは2000年前後に直面した失敗――
すなわち「ホラー化」「凶行の説明化」「やった気になる表現」
を、ほぼ完全に封殺しています。
その点で、理論としては極めて優秀です。
ただし。
そのまま出すと、学生の一部が思考停止します。
理由もはっきりしています。
これは強い。とても強い。
特に、
赤・黒の原則禁止
感情的タッチの禁止
この二点は、
「逃げ道を潰す」という意味で、講師として勇敢です。
学生は必ず言います。
「何をやればいいかわからない」。
——その瞬間に、この課題は始まっています。
ただし、禁忌が多すぎると“ルールを守るゲーム”になる危険があります。
ここは後述します。
ここが、この案の核心です。
「論理的に説明のつかない、ごく僅かな配置の狂い」
この一文は、
DERANGEMENTの定義としてほぼ完成しています。
重要なのは、
「ズレを作れ」ではなく
「説明がつかないズレ」と言っている点。
これは
感覚でも
気分でも
偶然でもない。
理性が働いた末に生じる破綻です。
非常に良い。
これも的確です。
ただし一点、注意。
「補色」や「明滅」という言葉が、
色彩理論を“正解探し”にしてしまう危険があります。
学生によっては、
補色=狂気
不協和=OK
と短絡します。
ここは
「色相関係」ではなく
「並べてはいけないはずの色が、なぜか隣り合っている」
という言い方のほうが、生々しい。
理論よりも、拒絶感を主語にしたほうがよい。
これは、正直に言って、名文です。
特に、
斧を振るう男ではなく、その斧が振り下ろされる直前の、空気がねじ切れるような静寂
この一文で、
ホラーに行く学生は激減します。
ただし、
引用は“正解”として読まれやすい。
導入時にこう言い添えることを勧めます。
「これは答えではない。
これを“わかった気”になった瞬間、作品は失敗する」
一刺し、入れておいたほうがいい。
ここが一番危うく、同時に一番おもしろい。
叫びを禁ずる
意味を禁ずる
完璧な反復を課す
これは、
美術課題というより、精神的な実験装置です。
特に3。
反復が、自身の意思を超えて「止まらなくなった」瞬間
ここは本当に鋭い。
DERANGEMENTの体感点です。
ただし、
この3か条を最初から全文渡すと、学生は委縮します。
おすすめは、
最初は1と2だけ提示
制作途中で、3を追加
です。
途中でルールが増える。
その「配置の変更」自体が、
すでに課題の一部になります。
このGemini案は、
思想・構造・引用の精度が高い。
あなたがこれまで積み上げてきた問題意識と、
ほぼ同じ地点に立っています。
ただし、
あまりにも「正しく設計されすぎている」。
だから講師の役割は、
この完璧な檻を提示したあと、
わざと曖昧な沈黙を置くことです。
説明しすぎない。
納得させない。
腑に落ちないまま作らせる。
そのとき初めて、
学生は自分の判断だけで立つことになります。
——
正直に言えば。
この課題、相当きついです。
でも、
十年後に思い出されるのは、
間違いなく、こういう授業です。
さて。
次はこれをどこまで言葉から削るか
削るほど、この課題は鋭くなる。
結論から言います。
**削るべきは「理屈」ではなく、「納得できてしまう言葉」**です。
学生が
「ああ、そういうことね」
と頷いた瞬間、思考は止まります。
DERANGEMENT は、頷かせてはいけない。
いまの案は優秀ですが、語りすぎです。
最終的に学生に渡すのは、三項目で十分です。
MADNESS
副題:as a logical DERANGEMENT
ここは削らない。
むしろ説明を付けない。
DERANGEMENT を辞書的に解説しないこと。
学生に「わからない言葉」を残す。
それ自体が不穏な配置です。
文章は命令文だけにします。
赤と黒を使うな
血や破壊を連想させる形を描くな
叫ぶような線、勢いのあるタッチを使うな
理由を書かない。
納得させない。
「なぜ?」は制作中にしか生まれません。
ここが核心です。
強い規則をつくれ。
その規則が、どこかで狂うまで続けよ。
これだけで足ります。
グリッドも
反復も
色の不協和も
キューブリックも
全部この一文に含まれています。
以下は口頭で触れてもよいが、プリントからは消す。
キューブリックの詳細解説
不協和音・補色・フリッカーの説明
「心理」「狂気とは何か」という定義
成功例・失敗例の分類
これらは、
理解できてしまう。
そして、真似できてしまう。
この課題では、
真似できる時点で失敗です。
課題:MADNESS
as a logical DERANGEMENT
・15cm正方形
・折紙コラージュ
禁止
・赤と黒を使わない
・暴力や破壊を連想させる形を使わない
・勢いのある線や感情的なタッチを使わない
条件
・強い規則をつくること
・その規則を、狂うまで続けること
これだけ。
親切すぎる説明は、
講師の安心のためにある。
学生のためではない。
学生に質問されたら、
こう答えるのが最も残酷で、最も誠実です。
「それがわかったら、この課題は成立しない」
逃げ道を塞ぎ、
しかし答えは渡さない。
この沈黙こそ、
DERANGEMENT の最後のピースです。
……いやあ。
これは本当に、忘れられない授業になりますよ。