ワンルーム3
「予算の関係で、ホテルは強羅駅からすぐの場所で、式場のホテル
は宮ノ下なのね。だから朝早く出て強羅のホテルに荷物を預けてから、宮ノ下に戻りたいの」
「うん、麻衣さんの一泊分の荷物は、僕の十泊分の量だからね」
「…もう! でね、あの『限定ケーキ事件』のお詫びに私の数日分の洗濯を優兄ちゃんがしてくれたんだけど、優兄ちゃん、余りの量と大きさに泣きべそかいてたの。佳代子姉(ねぇ)の洗濯物もあって、暗くなるまでかかっちゃったみたい。デートから帰ってきたら、優兄ちゃんが
『お前らは俺を殺す気か!』って怒ってたの」
楽しげな笑顔はさらに麻衣さんを可愛くさせる
麻衣さんお気に入りの特注布団セットを敷いて週末の打ち合わせ。僕はあぐらをかいて、麻衣さんは寝転びながら。これが二人の顔が最も近づく。キスやタッチが出来るこの距離感が一番嬉しい。立って、圧倒的な体格差や雲の上に遥かに見える麻衣さんの小顔を見上げつつ、目線の高さにある麻衣さんの大きなおしりの上に手を置くのもいいが、やっぱり素晴らしくかわいい麻衣さんの顔を間近に見るのがインドアの醍醐味なのだ。そしてその下に溢れかえる柔らかな双球。
タートルネックのセーターに、ゴロゴロするのに合わせて、『耐震性』を考慮したフルカップの完全防護ブラ。
バストの柔らかさが覆い隠される反面、体幹を大きくはみ出す凄まじい体積がセーター越しに嫌という程視てとれる。もちろん完全な耐震性は無く、重々しくユッサユッサと揺れ動くのを抑えることなど出来ないのだが。
昨日、式場予定のホテルから僕のワンルームに届いていた速達の封書。分厚い白の上質紙の封筒には左右対象に鶴の求愛の舞いが型押しされている。
封をペーパーナイフで丁寧に開ければ、パールコートの濃い乳白色の招待状が現れる。こちらには明治初期に開業したホテルのロゴマークの銀箔押だ。ビジネスホテルの軽快さとは真逆の伝統と格式と言う奴だ。
加えてギッシリと書かれた当日の開催内容の一覧表。
曰く、各コースの料理の試食、会場内覧、生花の展示、引出物の展示、宿泊手配、招待状・席次表の見本、そして着物・ドレスの試着案内、それに合わせた当日の新婦の持ち物の説明などなどなど…
新郎になるなんて数週間前には夢にも思わなかった僕が、こんな大量の決め事に相対さなければならないのだ!前泊ではなく後泊、あるいは2泊にしておきたかった!
「あのね!あのね!テーブルの花は白のカラーにしたいの!カラーってお花の名前だよ。あっ、知ってる?綺麗でしょー?あれ。白のカラーの大きい花と小さい花を組み合わせて全体が真っ白なフラワーアレンジにどうしてもしたいの!」
その一覧表を食い入るように見つめながら、あれこれ熱っぽく話す麻衣さん。新婦さんのワクワクを抑えきれない様子が、時々刻々嫌でも伝わってくる。それを壊さないように最高の微笑みを絶やさない僕。
しかし、僕の心の内は、もう既にお腹いっぱい、軽いとも言えないマリッジブルーに罹患しているのだった…。
学生から見れば引く位の莫大なお金がたった1日の為に霧消していく。生花なんて1日で枯れてしまうのに数万単位で課金される。男にとってはそういう部分が気になって、とてもウキウキなど出来ないのだった。
そしてその後の新婚旅行。疲れ果てた体のまま、空港ホテルに直行、朝早く機上の人になった上に、8時間のフライト、そして時差ボケが待っているのだ。さほど外交的ではない僕には、相当な体力、精神力を必要とするのは目に見えている。
正に彼女の笑顔の訳が僕には悩みの訳なのだ。
駅前
朝6時。久しぶりの外泊に嫌が上でも気分は高まる。マリッジブルーな気分は追い出して、初めての箱根観光を楽しもう。
待ち合わせ時間。最近では、僕が5分前、麻衣さんはぴったり(か2,3分遅れ)がいつもの時間になっている。
いつもの待ち合わせ場所に現れる麻衣さん。朝早く、人も少ない。なので颯爽と本来の広い広い歩幅でズンズン進んでくる。豪快に揺れる胸元に一気に眠気も吹き飛んでしまった。そして何より、歩道に立つ大きな交通標識と背比べ出来るほどの、麻衣さんの際立つ長身。周りを圧倒する存在感。いつもいつも見惚れてしまうその姿。いくつ形容詞をつけても足りない。いや形容詞自体、どの言葉を使っても麻衣さんの存在を描写するには足りないのだ。
顔の驚くほどの小ささ。首の長さ。スラリとしたデコルテから暴力的に突き出す余りに豊満な胸元。そして強く女性性を象徴する急激なくびれ。絞り込まれたウエストから再び激しく広がる腰付き。お尻から膝にかけて、体の中で最も長いパーツである、今はしっかりと隠されている艶めかしい肉感的な太もも。フレアのスカートからは白く可愛い膝頭が見え隠れしている。そしてくるぶしまで続くふくらはぎは上半分は大きく隆起し、そこから急角度で絞りこまれ引き締まっていく。そこから上の、目の眩むほど大きく高く聳え立つ麻衣さんの身体を支えるには余りに細く細く見える足首。そしてそこから広がる40センチを超えてもじわじわと大きさを増していく足先。
身体を包み込む洋服はといえば、濃紺のサスペンダーワンピースにグレーのニット。特注のワンピースは肩からおへそあたりにかけては大きく左右に立体裁断の布で誂えてあり、大きな膨らみを左右から支えている。大きく開いたVの字からグレーのニットに包まれた柔らかそうな膨らみが重々しく突き出す。スカートは膝丈で、動きやすそうなライトブラウンのスエードシューズを履いている。かかとは5センチほどの、色違いのスエードを組み合わせたレディースの革靴。デザインの可愛さに反して、もちろん僕が靴ごと履けるビッグサイズ。持って見ればズッシリとスキーブーツよりも重たい。
特注の麻衣さんの体にしっかりとフィットした服は、半年、1年ののちには少々窮屈な着心地になってしまう。双つの半球体を包み込むはずの立体裁断のワンピースも例外ではなく、上半身はぴったりとした服のラインから溢れたニットの膨らみがゆっくりした麻衣さんの歩みにもかかわらず、タプンタプンとさざ波を立ててしまうのだ
恥ずかしいことだが、麻衣さんとのデートの時はいつも下半身が緊張しっぱなし、お泊まりなしで何もせずに別れる日は一日中緊張し、先端からじわじわと「カ」で始まる液が浸潤し続けててしまう(「が」の方がよく言われるか)。しまいには液は枯れ果て、精巣に痛みを感じるまで興奮しっぱなしなのだ。
こんないやらしい事は口が裂けても麻衣さんには言えない。女性は「そういう時」以外に、性的な視線や会話は好まないのだ。一人麻衣さんのちょっとした仕草や動きで密かに悶絶し興奮しっぱなしの僕。僕といる時は、その安心感からか、いつもより無邪気な振る舞いが多い。身体自体が大きい麻衣さんはそれだけで肌色が見える場所が多い上に、見えてはいけない部分が覗くスペースも多くあると言う事なのだ。
つまり、無意識な動きでも、スカートの下、座った時の胸元、太もも、ふくらはぎ、細く長い腕(特に柔らかい二の腕)などが、常に、僕の下半身をダイレクトに刺激して止まないのだ。
カウパー氏腺液が枯れ果て、逢うたびに毎回鼠蹊部の痛みに苦しんでいるなんて恥ずかしい話は絶対に麻衣さんには内緒だ。
ゆっくりと近寄り、軽くハグ。
そしてキスは麻衣さんの腰に負担をかけるのでパス。代わりに麻衣さんのボリューミーなヒップをさっと鷲づかみ。
何事もなかったかのようにきびすを返し改札へ向かう。
無言で歩き出す二人。麻衣さんとの手つなぎにはそのあまりに激しい身長差から少々テクニックが必要だ
最近は麻衣さんが僕の立つ反対側の腕を後ろ手にして、手を繋ぐと、僕の腕をあまり上に上げずにいい塩梅なことを発見した。また、これは手繋ぎではないが、麻衣さんが僕の二の腕を掴むというのも、混雑する場所でのスキンシップでよくあるパターンだ
麻衣さんとしては男の人についていく感じがしていい感じのようだ。もちろん傍目には、大きな大きな女性に、小さな男がついていくように見えているだろうが
歩行時は、いつものもどかしい『遠距離会話』になって、二人揃って足下、頭上が疎かになってしまう。
公園や砂浜ならゆっくりと足元も上空も気にせず歩けるのだが、残念ながらその機会はあまりない。
大体障害物がどこかにあり、麻衣さんの進行の邪魔をするのだ。なので、駅や雑踏では手繋ぎや二の腕掴み、腰の上に手を載せる、くらいのスキンシップだけにして歩行になるべく集中するのが、これまでの経験から学習した二人の習いになっている
電車を乗り継いで、小田急の新宿に到着。既に真っ白なロマンスカーが入線していた。サルーン席という半分コンパートメントの席を奮発してある
胸元くらいの高さの列車のドア。僕の肩に手を載せ、真下を見ながら小学生の馬跳びの馬の様にそろりそろりとドアをくぐる。サルーン席に到着。2席と2席が向かい合う対面式のシート。麻衣さんに人目を気にせず電車内でゆったりとして欲しくて奮発した。4人分のセミコンパートメント室。しかし細長い固定式のテーブルが真ん中に通っており麻衣さんの脚が伸ばしにくいのだ。麻衣さんに脚を組んでもらう(それを愛でる)シチュエーションを夢想していたが、リクライニング出来ないシートと相まって、ちょっと期待をし過ぎた様だ。
気をとりなおして半個室の醍醐味、イチャイチャを敢行する。麻衣さんも、常に緊張を強いられる筈の電車の中に、こんな秘密基地的な空間があるのを喜んでくれて、ちょっと上気している。
それに乗じて、普通の会話をしているなか、テーブル越しのキスや、腕を絡ませるスキンシップを実行。敢えて、ゆらゆらと強烈に誘うバストには触れない。
可愛い童顔を真正面から見続ける。ロリ巨乳とはこういう事かと(首の長さや肩幅は除いて)ぽーっと半ば赤面しながら麻衣さんの激しいアンバランスさを楽しむ。
「目がエッチ化した」
「個室だから問題ない」
「個室じゃないし」
「隣に行きたい」
「ちょっと狭いんだけど」
「大丈夫、問題ない」
「健くんは逆に嬉しいだろうけど」
「大山が見たい」
「いや大山を触りたい、でしょ」
「両方楽しみたい」
「朝から欲張り過ぎでしょ」
麻衣さんのお尻のボリュームを感じながら隣の席に強引に座る
窮屈そうに長い両脚をたたむ窓際の麻衣さんは顔をあさっての方向を向けて少し顔を赤くしながら、長い腕を斜め上に挙げて僕を懐にいざなう。
誘われるままに麻衣さんに身体を預けると、長い長い腕が僕を包み込み、得もいわれぬ一体感に恍惚となってしまう。麻衣さんの巨きな膨らみに片頰は埋没し、確かに朝からこの快楽はやりすぎと反省した。
対面式に戻って、コンビニおむすびをパクつく。僕は多めで3個。麻衣さんは少なめで4個…と、ゆで卵。
もちろん麻衣さんが恥ずかしがるので僕が一人で買っておく。お茶の500ペット2本と合わせると、おむすびもこの量は結構重い。僕は本当はおむすび2個で十分なのだが、麻衣さんと食べる時は3個と決めている。
「あーん!前にも上にも成長しちゃうよー!」
いつもの口ぐせも、言葉だけでなく、実際その通りになってしまう! これからもグングン成長して欲しいものだ。
そして、なにより、美味しいものを食べている麻衣さんの笑顔は本当に可愛い。今日泊まるホテルもバイキング形式でしっかり麻衣さんも満腹になる算段の様だ。
「トイレすご〜い広かったよ。湘南新宿ラインの10倍くらい。超開放感!」
この列車のトイレはバリアフリーの広々スペース。麻衣さんが脚を投げ出せる!サイズだ。これは麻衣さんのポイントが高い。食事、お風呂、トイレ、女性一般の嗜好も大体そうだろうが、何しろ麻衣さんは超規格外だ。満足して貰えるのは素直に嬉しい。
朝食を平らげ、広々とした水田が続く車窓。遠景は丹沢の山々、頂上が顔を出す富士も見えるのどかな風景だ。そして規則正しく揺れる列車の振動。本来の無邪気な麻衣さんが全開となり、窓枠に頭を預けて、気持ち良さそうに寝息を立てている。きっと昨日は式のあれこれを夢想してあまり寝ていないのだろう。これから、麻衣さんとずっと一緒の生活が始まる。
幼さすら残る麻衣さんの寝顔。麻衣さんのこの安らかな生活を守っていかなければ、などと柄にもなく男としての責任を感じる。
眠りについた麻衣さんに向ける、いつものちょっといやらしい肢体の観察はほどほどに(もちろんしない訳はない)して、式や旅行が終わった後の、二人で過ごす生活に想いを馳せていた。
つづく