めぐみ・4
今日は駅で待ち合わせ。約束通り待ち合わせの5分後にめぐみさんが登場。
「駅前で人目に晒されるのが嫌なので、後から行きますね」
最初に出会ったときの興奮。何百人といる人ごみの中でめぐみさんは、余りにも普通の人と違いすぎる圧倒的な体格差を、本人の目立ちたくない気持ちと裏腹に、見せ付けていた。
今日のめぐみさんも、雑踏のはるか遠くから現れたときには、もう隠しようもない強烈な存在感を発揮してしまうのだ。
小さな人影の中からも大きく飛び出してしまう長身は決して見間違えようもない。
駅前のブックオフへ。今日はめぐみさんの自宅へお呼ばれしてしまったのだ。
「オーディオシステムって言うんですか? 恵子がセッティングしてくれたんですけど、プロジェクターで映画を見るとすんごい迫力なんですよ」
ということでDVDを借りてめぐみさんの家で見ることになったのだ。高い陳列棚、そびえるばかりのDVDの壁。でもめぐみさんに一声掛ければどんなに高いところも、そびえる身長とさらに長い長い腕で届いてしまうのだ。
「便利でしょ、家では、脚立代わりにいつも使われてるんです」
今日のめぐみさんは前回に続きなかなか挑発的な服装だった。細い体型に比べて豊かな胸の谷間が見えそうな深い切れ込みのノースリーブのニットに、シースルーのスモック。スカートはミニ、に見えてしまう普通の女性なら膝下20センチくらいの黒。でもめぐみさんには膝上10センチ。そして36センチの濃茶のロングブーツ。
人込みをよけながら、めぐみさんの顔も見たい、でも胸の膨らみがちょうど目線に来てしまう。かといって上を見上げて
ばかりいると足下も危ない。ちょっと、ぎくしゃくした様子が伝わってしまったみたいで、
「ごめんなさい、身長差を考えないでこんな服着て来ちゃって」
「でも、ちょっと嬉しいですけど」
「はい、それを期待してサービスして着てきたんです、へへ」
前回の、一歩進んだスキンシップを更に加速させたい気持ちが彼女から伝わる。きっと、性的というよりも、体のふれあい求めているような子供っぽい気持ちがめぐみさんにはあるようだ。初デート以来、手をつないだり肩を組んだり(もちろん僕は立っているときは大きすぎるめぐみさんの肩に手は届かないけど)を頻繁に求めるのだった。
今日はめぐみさんの腰に手を回してみる。でも、めぐみさんの大きいストライドと上下動に僕の短い手はついていけずに
腰というより背中に手を掛けるのが精一杯。あきらめて手をつなぐ。大きな父親が子供と手をつなぐように、僕は腕が上に上がり気味になってしまう。 瀟洒な住宅街の中。
予想通り、品のあるいい家のお嬢さんなのだろう。
「こんなものが見たいんですか」
彼女は不思議そうに言う。めぐみさんのまさに成長の記録。彼女のために僕も一応自分のアルバムや卒業写真、
ビデオを持ってきた。
誕生。3900g。生まれたときから標準を超える体格。2歳の亜沙美さんもかわいい。
「おかあさんは身長何センチなんですか?」
「母は168センチ、ずいぶんと大きめですね。で、お父さんが180センチなんです。でもお姉さんだってお父さんより
5センチも大きいし、わたしに至っては31センチ超ですから、遺伝というより突然変異に近いかもしれないです。親戚でも私たちみたいに大きな人はいませんから」
1歳の誕生日。3歳の亜沙美さんと。
「もう、兆候がではじめてますね。体格では2歳も離れてる感じがしないですもん。顔は本当に幼児と子供みたいですけど」
3歳、幼稚園入園。もう顔以外は子供っぽさがなくなって、すらっとした手足。
「もうこんなになっちゃいました。お姉ちゃんは年長さんですから、きりっとした顔してますけどわたしはこんな幼児顔。
なのにこの体格差は何でしょう?お姉ちゃんの頭が私の肩先」
入園式の集合写真
「わたしだけ小学生の体格。制服が私だけ違うデザインみたい」
「めぐみさん、地面に立っているのに一段上に立っている子より大きいですよ」
「はい、本当に小さいときから段違いに大きくて.....。年齢相応に見られたことがなかったです」
ブルーのストライプ柄のワンピース。ほかの園児はひざ下が少し見えるだけなのに、めぐみさんはひざ小僧が
すっかり見えてしまっている。
袖からもにょっきりと細い腕が伸び切って本当に幼稚園児には程遠い。
「あっという間に背が伸びてしまうんです。ひざ下の制服もすぐにこんなになってしまって…」
幼稚園の写真は、もうどれを見てもめぐみさんの言うとおり、一人だけ小学校高学年の女の子が紛れ込んだような場違いな感じになってしまう。恵子さんの言うように男の子達に注目されて意地悪をされてしまうのもある意味仕方がないような、激しい違和感がめぐみさんの体型にはあるのだった。制服からのぞく、もうすでに長い脚や腕。
みんなの中に交われない頭3つ分も大きく突き出してしまう身長。そして、アンバランスにおとなしいめぐみさんの性格。
「でも、まだ幼稚園のころはよかったんです。年齢が上に見られても普通の女性の身長より小さかったから。
小学校に入ったくらいから、わたし、本当に常識を超えた身長に育ってしまってどこにいても、何をしていても好奇の
視線を浴び続けることになってしまったんです。」
「幼稚園年長。もう普通の小柄な大人の女性くらいありますね。ほんとうに制服が中学校のもののよう。」
髪を左右でゴムで留めた、かわいい女の子の顔。でも、体は本当に大きく、同じ組の園児たちはめぐみさんの胸かおなかのあたりまでしかないのだ。
「これ、見てください。おばあちゃんと撮った卒園記念の写真。おばあちゃんより私が大きいんです。おばあちゃんは
150センチもなかったから。でも、幼稚園生の孫に身長を追い抜かれるなんて、びっくりしたでしょうね」
「集合写真。当然端に立たされてます。でも、最上段のコと同じくらいの身長。先生を抜いてクラス1大きくなっちゃってました」
「以前も話したと思いますけど、恵子が一緒に転校してくれなかったら私、不登校になってたかもしれない。本当に辛い時期でした。150センチ台で入学して年々10センチ以上も伸びつづけていくんです」
DVDに焼かれたビデオを見る。まめなお父さんのようで綺麗に編集してある。
入学式152センチ、2年生165センチ、3年生178センチ。
ここで、私服から、私立のセーラー服に変わる。 小学校低学年の集団の中にもう大人の男の平均身長もはるかに超えてしまったモデル並みの身長の女の子が紛れ込んでいるのだ。
「同級生とは体格が違いすぎて外で遊ぶのは苦手でした。50センチも大きな私は、なわとびでもドッジボールでもみんなの足を引っ張るから、いつも体育の授業以外は教室にいることが多かったです。お医者さんからあまり運動をするとさらに背が伸びてしまうといわれていたし、第一、本を読むのが一番好きだったから」
めぐみさんの体は、学年を上がるにつれて、廻りの同級生から大きくはみ出したサイズが、さらにグングングングンと大きく大きく育っていくのだ。どんなに遠くからとったビデオでもめぐみさんがどこにいるのか手に取るようにわかる。
毎年開かれる合唱コンクールのビデオ。まるでめぐみさんの身長コンクールのように廻りから激しく差をつけて成長していくめぐみさんが一目で分かってしまう。家族の集合写真も、母親を2年生で、父親を4年生で追い越し、あとはただひたすら天に向けてズンズンと伸び続けていくのだった。
「高学年になるともう、非常識な大きさになってしまって、せっかくのかわいいセーラー服なのになんだか大人の女性が
コスプレしてるみたい。でも、もうすでに大人の男性が見上げるほど大きくなってしまっていました。」
かわいくあどけない少女の笑顔に180センチ近い身長。
「もう、同級生は男女とも全員私の胸元より下になっちゃいました。本当に常識はずれの大きさですね。でも、まだスーパーモデルかバレーの選手の身長ですよね。これくらいの身長で止まっていたらどんなによかったろうって思います。でも、ここから私の本当の成長期が始まったんです。」
4年生184センチ、5年生192センチ、卒業式203センチ。
すっかり大人の女性らしくなった今のめぐみさんに比べて、本当にか細い体。少女体型の、顔立ちも少女そのもののめぐみさん。外国人のようながっしりした体格でない、本当に少女の背がずんずんと高く伸びていくのだ。
「2mの小学生です。三学期の身体測定で2mを超えてしまって、どれだけ泣いたかわかりません。恵子は慰めてくれた
けど、11才の女の子が男子バレーの選手にもいないほど大きくなってしまったんです。 いまでもそうですけど、街の有名人でした。姉妹そろって大きくて、私がさらに飛び抜けてデッカイんです。おかあさんと中1のお姉さんが同じくらいお父さんが180センチそして小6の私が2m」
「家でも玄関や部屋の扉は屈まなければ通れなくなって、よく頭をぶつけるようになりました。そして、家から一歩出たとたん、いつも誰かの視線を気にするようになっていました。見る人見る人がみんな驚いたり、変な目で見たり、こそこそ耳打ちしたり…」
「いまでも2mのセーラー服とってあります。当然もう小さすぎて着られないんですけど…」
中学に入ってブレザーの制服に変わる。 集合写真はめぐみさん以外の全員と、胸から上が完全に飛び出しためぐみさんという非常に違和感のある写真になっていく。でもそれも、年を経るごとに差が開き、めぐみさんをフレームに収めるために他のクラスの写真より明らかに画面を広く撮影しており、みんな小さくしか写らなくなってしまっているのだ。
「中1で208センチ、2年生で213センチ、ようやく伸びがゆっくりになってきて、それはとってもうれしかったんだけど、見たことも聞いたこともないほど大きな大きな女の子になっちゃっていました」
「常に好奇の視線が私に注がれるようになって、お家にいるのが好きな子になっていました。どこにいても、何をするにも大きな大きな体が目立ってしまって、中学生でしかない私はいつも心無い視線や言葉におびえる少女になっていたのです。エスカレータで短大までは出たけれど、結局就職できないでいまは家事手伝いです」
本当に余りにも大きすぎることは、何一ついいことがないんだなと、めぐみさんのことがかわいそうになってしまった。
でも僕の気持ちはそんなめぐみさんの苦労とは裏腹に大きければ大きいほど素晴らしいと感じてしまうのだ。
なんだか申し訳ないような、でも、その分めぐみさんを少しでも励ましてあげよう、と思うのだった。
続く