めぐみ・5
「恵子と私です。2年生。はじめて同じクラスになったときです。身長差はこれくらい。」
他の子よりも頭ひとつは大きな恵子さんもめぐみさんと並ぶと大人と子供の身長差。
「引っ込み思案な私もなぜか恵子とはすぐに仲良くなりました。背も、もちろん私に比べれば遥かに小さいけど、
恵子もクラスでは飛び抜けて大きかったから、なんだか安心できて。」
「私立の学校に転校することになったんだけど、本当に編入試験の要綱や日程、試験勉強まで恵子がリードしてくれたの」
「ぐんぐん大きくなり続ける私。ほかのクラスメイトは余りにも人と違う私から距離を置いて、私も、もともと社交的じゃないからみんなと交われなくて…。でも恵子だけが私のことをわけ隔てなく付き合ってくれて、彼女は友達がたくさんいるのに、私とよく出かけたりしてくれたんです」
「私を除いてクラス1大きな恵子。私立学校に移ってもやっぱり一番の長身でした。でも、私は本当に別格の大きさでした。あっというまに先生も含めて学校1の身長になって、その後はひたすら独走態勢です」
めぐみさんのさまざまな写真やビデオを見て、ぼくはもう興奮でどうにかなりそうだった。
興奮も冷めやらぬ状況だったが、ぐっと隠して、映画の上映を促す。
「さ、上映の前にお酒の準備。」
と言って、彼女はおつまみの用意をしにキッチンに向かう。めぐみさんはワイン、ぼくはビール。
体をこれ以上ないほど曲げてまな板に向かう。果物ナイフのように小さな包丁と、まな板。まるでおままごとの
おもちゃのよう。めぐみさんと比べるとなんでも本当に小さく見える。
キッチンの天井にこすりそうなめぐみさん。ガスレンジの上にある換気扇フードが邪魔で(めぐみさんの肩先にフードがある!)体を屈めてフライパンを覗き込んだり、離れて体を時折伸ばしたり、規格外のサイズを持て余しているのがいじらしい。
ぼくの視線を見つけて
「お料理はとっても大好きなんですよ。でもすぐに腰が痛くなっちゃう」
普通の女性の背丈よりも長そうな手作りのエプロンをしてお料理をするめぐみさん。うっとりするような光景を見てぼくは興奮を隠せなかった。 おいしそうな料理が並ぶ。
リモコンを操り、大きく深いソファーに腰掛けるめぐみさん。でも、長過ぎる脚は大きく山なりに突き出てしまう。
いつものように脚を斜めに傾け体も僕のほうに倒す。僕はといえば深く腰掛けると、完全にソファーに埋もれてしまうのだ。
「さすが長身一家だけあってソファーも大きいね」
彼女はぼくの様子を見て笑いながら、
「ええ、家具も輸入品が多いんです。お金持ちじゃないけど、お姉さんも私も小さいいすやテーブルでは脚が
ぶつかってしまうから」
ようやく本来のメインイベント、映画鑑賞にはいる。
泣けると評判の外国映画でちょうど二人とも見損ねていたのだった。
序盤から号泣しそうなほど悲しいストーリー展開、二人の感性は近いようで、何度か顔を見合わせ
(いいね)
(うん)
といった気持ちを表情で交わす。
映画もクライマックスにかかったところで彼女が手を握ってきた。長い長い腕をゆっくりと伸ばし、彼女の側に出していた手をつかんできたのだ。
感動的なラストシーンの後、映画が終わりメニュー画面に戻る。彼女のつないだ手は次第に強くなっていった。
DVDを取り出そうとした僕は、その強く握る手の意味、彼女の気持ちを察した。
彼女に向き合って彼女以上に強く手を握り返す。女性の柔らかな手。
そして見つめあう。
恥らい、目線を落とす彼女。
そして、僕は続ける。
「キスしていいですか」
目線を落としたままの彼女の体は電気が通った時のようにビクッと動き、そして、身じろぎもしなくなった。
長い時間の後、消え入りそうな声で
「…はい」
彼女は体を斜めに傾け、目線はやっぱり下に落としたままだった。 ぼくは片手をつないだままソファーから上半身を起こし、体をゆっくりと彼女の方へずらしていく。ゆっくりとつないだ手を離し彼女の肩に手をかける。
顔をそむけたままのめぐみさん。ぼくは肩から長い長い首筋に向けて手を動かす。すると彼女は上気した顔を少しずつぼくのほうへ向ける。
彼女は顔を右に傾け、ぼくは左に傾けて静かに唇を合わせた。
彼女の緊張と熱が唇から伝わる。高熱があるような熱い唇。乾いてちょっとだけ荒れた、でも本当にやわらかい唇。
両肩に手を回すめぐみさん。大きなめぐみさんにぐるりと包まれてしまう。中腰になっていたぼくは体をくるりと回転させ彼女の横にすとんと体を沈める。彼女の体はゆっくりと崩れ、ソファーに上半身を横たえた。
二人とも酔っている。でも、しらふでは恥ずかしすぎて何もできないのはお互いわかっているのだ。
しばらく見つめあい、キスを何回かしたあと、
「胸、触ってもいいですか?」
本当は次回にしようと思っていたこの言葉を、こらえきれずに発してしまった。
おずおずと切り出した僕の声に
「は、はい」
と少し緊張のこもった高い声で答える。
横になってもつんと上を向いた二つの膨らみ。でも、ブラが突き出たのではない中身のたっぷりした量感のある膨らみ。
片手では隠しきれないほどの大きさなのだ。いつも体の大きさに目を奪われて、こんなにもボリュームのある膨らみとは
思わなかった。右手をめぐみさんの左胸に当てる、ブラ越しでもやわらかさが伝わる。指が胸の中に埋もれていく。
めぐみさんの体がすこし反り返る。左手も彼女の右胸に触れる。左右から上に向けて持ち上げて見る。ものすごい
ボリューム感に気持ちが高ぶる。
それを見越していたのか、めぐみさんは、
「ここまでにしてください。 続きは…どこか…、旅行に出かけて、…」
めぐみさんの気持ちを尊重して、仕方なくぼくは手を離した。
高ぶる気持ちを必死でこらえて、最後に体を起こしためぐみさんを強く抱きしめて、離れた。
めぐみさんの家に行って以来、なんとなくめぐみさんとの会話に緊張感の残るようになっていた。
ぼくは早めに関係を進めないといけないと感じていた。その日から何度目かの電話口で、
ぼくは切り出した。
「今週末、泊まりで旅行しませんか」
やや長い沈黙の後、めぐみさんは、やさしく、でも少しきっぱりとした口調で、
「はい」
と答えた。
「どこがいいですか」
「田中さんとなら、どこでもいいです」
いまだにぼくのことを田中さんと呼ぶめぐみさん。そこがなんだか気になるけれど、あえて何も言わないでいる。
ネットでホテルを検索した。
いままで出かけたことのない場所を探す。ついにめぐみさんと一夜を共にするのだ。
続く