何度も抱き合ったりキスをしたりしているうちにあっと言う間に目的地が近づい て来た。
とても内気でとても大きな麻衣は、僕にだけは積極的な麻衣だったようだ。
年上の僕は、これ以上ない努力で、胸に触れることだけは必死でこらえた。
麻衣に 見透かされたくないのと、その一線を超えてしまったら今度は僕の中のブレー キがきかなくなってしまうのが恐ろしかったのだ。 見慣れない都会の景色。
それをぼんやりと見つめる麻衣の横顔。早起きで少し眠いのか もしれない。
見れば見るほどに愛らしい麻衣の顔。好意を寄せる人にだけ向ける無防備な笑顔。 僕の理想をそのまま具現化したような麻衣のスタイル。 佳代子の、長身でひたすら細いのにしっかり女らしい体型も捨てがたい。でも、 麻衣の暴力的なまでに急激な曲線を描くスタイルは、僕の心を常に激しく刺激す るのだ。
2つの膨らみの魅力、長身女性どころか普通の女性にもあり得ない規格 外のサイズ。常に重々しく揺れ動き、いやらしく形を変える大きな大きな膨らみ。 意識して抑えてきた感情が、自分の中で急速に大きく膨らんで来るのを、僕はど うすることもできなかった。
本当なら今すぐにでもホテルに駆け込みたいくらい に欲望は高まっていたのを、必死に押し殺しているのだった。
『アトラクションってシート大きいのかなぁ。みんな身長何センチ以上からって 書いてあるけど、何センチまでって書いてないの。私、ちゃんと体が収まるかなぁ』
僕の気持ちなど知りもしない麻衣は、これから向かうテーマパークのことで頭が 一杯になっているようだった。 ダークブルーの艶めかしいタイツに、サイズ40センチ、高さも5センチあるエナ メルのヒール。ボリュームも長さも規格外に豊かな麻衣の下半身。脚を組んで、か かとを外して爪先だけヒールをぶらぶらさせ、熱心にガイドブックを読み込んでい る。重なり合う太ももの重量感。そこから連なるどこまでもどこまでも長いふくら はぎ。タイツ姿は、生足とはまた違った欲望を刺激する。大人っぽい麻衣の姿に、 僕は冷静でいることが出来ない。
駅に着き、車内ではあれほど近かった麻衣の顔がまた70センチも上空に遠くなって、 彼女の類い希な姿態がまた人前に晒される。ちょっと緊張の高まる麻衣の手を握 り、気持ちだけは麻衣をエスコートしていく。
朝のラッシュ時にぶつかる。東京と変わらない雑踏の中に身をおいてさえ、上半 身が飛び出してしまう余りにも大き過ぎる麻衣。さらに衆人に見上げられ顔を赤 く染める麻衣の胸元は余りにも豊か過ぎて、大きく揺れ動くことを止めてはくれない。 何度か人混みをよけようと立ち止まり、その度に、僕の後頭部(のずいぶん上の方) に麻衣の豊かな膨らみがぶつかる。
『あん』
その度にため息ともつかない麻衣のつぶやきが漏れ、それだけで僕は気持ちは、 どうしようもなく高まってしまうのだ。 駅から直通のバスに乗る。遠方からの観光客が列をなしてバスターミナルへ向かう。
麻衣の行きたがったテーマパークへは30分で着くはずだ。3列シートの リムジンで麻衣にはやや窮屈だが、通常のバスでは座ることさえできないので良 しとしてもらおう。 人気のアトラクションが早く乗れる特別パスを事前に準備してある。 ギリギリ開門前までに間に合うはずだ。
『最初が肝心よ。まず混雑するセサミまでダッシュ。そのあとすぐにスパイダー マンに行って、それからT2とウォーターワールド。着替えだってしっかり用 意してあるんだから。それからあとは混雑具合で決めるの。電光掲示板があるか らそれをチェックして決めましょ』
気合いの入り方が違う。短い2人の週末をとことん楽しもうとしているようだっ た。
『小学生の時からずぅーっと行きたかったんだー。だけど、家族のみんなはディズ ニーでいいって言うし。でも、おにいちゃんと一緒に来られるなんて夢みたい。初 デートがUSJなんて、超しあわせ。』
春まで高校生だった麻衣にとって、新幹線で2時間半も離れた場所へ、しかも泊ま りの旅行、気分が高揚しない方がおかしい位だろう。 渋滞もなく何とか開場前に間に合った。 公式の開門時間より早く門が開き、一斉にお目当てのアトラクションに走り出す 。優待パスの対象外で一番混むところへ走るのだそうだ。
普段は周りの目を気にして決して走らない麻衣。歩くときにさえ、胸の揺れを最 小限に押さえるように常に意識してゆっくりゆっくり歩くのだ。 中高と運動会のリレーでさえも決して全速力で走ることをしなかった麻衣。
『私が絶対に走らないのは、もちろん人の目が気になるのもあるんだけど、ここ 数年はほかにもっと大きな理由が出来ちゃったの。何かわかる?』
悪戯っぽい顔で聞く麻衣。
『胸のせい?』
『うん、Tシャツとか伸びる生地以外の服だと、私が思いっきり飛んだり跳ねた りすると、ブラウスの部分が絶対に壊れちゃうの。 ボタンが飛ぶだけならあとでなおせるけど、縫い目がほつれたり、薄手の布だと 縫い目から生地が破れちゃうの…。この大きくて重たいおっぱいが暴れると簡単 にビリッてなっちゃう。特注の洋服が壊れちゃったら、ホントに泣きたいほど悲 しいのよ。 でも、今日だけは特別な日なの。朝の順番取りだけは絶対に譲れないんだから。 だから、私よく考えて、思い出したの。おっぱいがどんなに暴れても大丈夫な洋服 が一つだけあったって。だから今日はデニムのワンピースじゃなきゃだめだった のよ。去年の服だからバストがきつめで恥ずかしいんだけど… だって全速力で走らなきゃいい場所がとれないんだもん!』
今まで見たことがない麻衣の積極的な面が、僕にはとても新鮮に見えた。
『まもなく開門となります。お荷物お忘れなくご準備ください』
アナウンスが流れ緊張が高まる。 麻衣にとって夢にまで見た時間がはじまった。内気な麻衣がこんなにも積極的に 体を動かすのを僕は初めて見たのだった。 開門と同時に麻衣は大きな大きなストライドで目的のアトラクションに向かって ものすごい勢いで走るのだ。 スタッフの人たちもさぞびっくりしたに違いない。見たことも聞いたこともない ほど大きな女性が大きな大きなおっぱいをユッサユッサと揺らせてまっしぐらに 自分のところへ向かってくるのだ。大人しく内気な麻衣は、いつも周りの視線を 気にして、ゆっくりゆっくりと行動する。決して慌てたり大きな動きをすること はない。 しかし、今日は違う。普通の18歳の女の子のように、自然に感情をあらわし行動 に移すのだ。 元気に走り、体全体を使って驚き、笑う。 アメリカの都市をそっくりに再現した園内で、麻衣は、自然に開放的に振る舞っ ているのだった。 僕といるせいなのか、施設の雰囲気のせいなのか僕には分からない。
でも、麻衣 の本当に嬉しそうな姿を見て、この旅行に対する罪悪感は半分は消えたような気 がしたのだった。 もう半分の罪悪感。来週には佳代子とも罪滅ぼしの旅行に行こうと心の中で決め たのだった。 麻衣の全てを受け入れるために、今夜の準備も怠りなく進めた。麻衣の初めての 夜はできる限りいい思い出になって欲しいと思うのだ。女性としても、麻衣は素 晴らしいのだということを、男性の僕はしっかりと伝えなければならない。
ホテルはテーマパークにもっとも近い場所を予約してある。麻衣の希望通り、全 てUSJ漬けのプランなのだ。奮発してパークビューの部屋を押さえた。施設の夜景 がきれいできっと麻衣も喜んでくれるはずだ。 ベッドは連結可能なトリプル。ファミリーユースを想定して作られた部屋だが、 僕たちは、3つ全てをくっつけて3メートル15センチのベットとして横に使うの だ。麻衣でもゆったりと足が伸ばせる。 そんなことを夢想しながらも、僕が待ちこがれる夜は、まだ遙か彼方にあって、 ひたすら麻衣を喜ばせるために、あちらに並び、こちらに並びを延々と繰り返す 。麻衣には言えないことだが、余りテーマパーク好きではない僕にとっては、結構しんどい時間が続くのだった。しかし、アトラクション自体は非常によく出来 ていて麻衣でなくとも十分に楽しめるものばかりだった。 あんまりはしゃぎすぎた麻衣は、『ウォーターワールド』では、本当に水浸しに なってしまった。客席の中で一番目立ちすぎると、このアトラクションの売りの 一つである、ナビゲーターが撒く大量の水を、たっぷり浴びることになるのだ。 ただでさえ目立つ麻衣の大柄な肢体で、あろう事か大きく手を振ってナビゲータ ーにアピールしてしまったのだ。 レインコートもほとんど役に立たないほどの大量のシャワーに、周りのみんなが 避難する中、麻衣は本当に楽しそうに水をそのまま受けてしまった。ついでに横 にいた僕もしっかりと水浴びをすることになった。
ショーが終わってから僕は、クスクスと楽しそうに笑う麻衣の手を引き、一時退場して荷物を預けたホテルに戻ることにした。 食事は外がおすすめというガイドブックに従って、ついでに昼食もとろうという 計画だ。 残念ながらデニム生地では下着は全く透けない。そんな理由もあって麻衣はこの 服装で来たのだろう。 麻衣は先週デパートで受け取ったばかりの特注の洋服に着替え、僕の前に現れる 。 僕の予想通りの素晴らしい服装だった。 以前から僕が麻衣にリクエストしていた、パンツスタイル、麻衣はそれを着て僕 の前に現れてくれたのだ。
『ホントは恥ずかしくてヤなんだけど…。おにいちゃんが見たいって言うから… 』
麻衣は脚の長さを気にして普段はパンツは絶対に穿かないのだ。そして『おしり もバーンッて大きいのが目立っちゃう』という理由で、ゆったりとしたスカート を好んで身に着けているのだ。 でも、僕は、麻衣の見せたくないパーツの方が断然見てみたい。そして今日はそ の姿態を強調する服を麻衣は着てくれたのだ。 僕の胸元に届こうとする、どこまでもどこまでも長い脚。それを支える壮大なボ リュームをたたえたヒップ。ベルトの長さが余って後ろまで届いてしまうほど急 激にくびれてしまうウェスト。 靴はどう見ても市販の男性用の倍の大きさもあるブーツ。 そして、上半身。 あっさりとしたフリルのついた白のブラウスに腰丈より短い紺のショートジャケ ット。大きく突き出してしまう胸を気にしてか短めのマフラーを首に巻いている 。もちろんマフラーはウェストまで垂れ下がるどころか、大きく広がる胸元の上 にちょこんと乗っかるような有り様だ。 麻衣の着るジャケットは初めからボタンをかけるサイズには作られてはいない。 余りに大きな胸を覆い隠すように作ると、ボタンをかけないときに生地が余って 、見た目がよくないので、コートや大きめのジャンパー以外は、はなから羽織る ことしか出来ないのだ。 白のフリルシャツの中でタプタプと波打つ二つの膨らみは、デニムのかっちりし たシルエットから、ブラが透けるほどにリアルに見て取れるようになって、本来 の柔らかな感じが、しっかり伝わってくる。
『なんかおっぱいにおにいちゃんの視線をすごく感じる…でもだいぶなれてきた よ!』
ボリューム満点だが、それに比べてもはるかにスラリと背が高い、麻衣の姿。そ れがはっきりと分かるパンツスタイル。だからこそ余計に、アンバランスに巨大 なバストに目が行ってしまうのだ。周りからの視線も、堂々と大股で歩くパンツ 姿の超長身女性に、畏敬の念を払うような雰囲気さえ感じる。 堂々と歩く大きな女性は、誰の目にも、美しく見えるのだ。僕は、密かに、麻衣 に自信を与えることが出来た嬉しさを感じていた。 目の回るほど忙しいテーマパーク巡りも、ようやく一段落過ぎて、冬の早い夕暮 れが近づいてきた。 いよいよ、僕が待ちこがれた夜がやってきたのだ。
つづく