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「もう我慢ならん! 次はプールに行こうよー!」 薫のお買いものにつきあった帰り、おれは叫んだ。
再会して、何度目かのデート。彼女のその壮大な姿態に、会うたびにため息をついてしまう。2mを超えた常識はずれの身長。 それなのに、モデルを遙かに超えた15頭身のプロポーションは、均整がとれて、痩せすぎでもなく、ごつくもない、出るところは ものすごく、細いところはひたすらに細い、まさに俺の理想の体型なのだ。
今日の彼女は、俺の希望に応えて、ミニ。しかもレザー。薫のありのままの体型をしっかりと見せてしまう。そして胸元。 ノースリーブのシャツは胸元が少し深く切れ込んでいて、しかも素肌に張り付くほどにちいさめなのだ。看板や、天井の低い地下道で、 薫がちょっとからだを屈めただけで、ただでさえ大きすぎる胸は、大きく波打ち、切れ込みから大きく小山のように盛り上がる。
「うわー! 服から胸がはみ出してるよ! 」
「市販のを買うと自然にこうなっちゃうの! 高い服ばっかり買ってらんないんだから」
そして今日の彼女の身長は220センチ。とうとう20センチのヒールで来てくれたのだ。 俺の身長では胸元をのぞくことすらできない。遙か頭上にそびえる薫の顔は首が痛くなるほど顔を上げないと見ることさえできない。 実際、薫とのデートの後は、首が凝って仕方がないくらいなのだ。 肩を組んで歩けない俺たちは、俺は薫の腰元、薫は俺の肩に手をかける。でも今日は腰の位置も一段と高く、歩幅もあまりに 違いすぎて、10分もしないでお互いくっつくのをあきらめてしまった。離れてすぐ
「あー疲れた! シンジがあんまりちっちゃいから体を曲げないと肩に届かないんだもん。」
「人のせいにする? 確かに平均身長には足りないかもしれんが、5センチくらいだぞ。40センチオーバーの薫に 言われたくないなー」
「言ってみたかっただけだよー」
サイズがない薫の買い物につきあうのは並大抵のことではない。 靴は新宿、小物は池袋、渋谷にはもちろん寄る。東京横断だ。電車での移動に、汗だくになってつきあった。 体力のある薫は疲れた様子もなくデパート、ショップと歩き回る。歩幅の違う俺はヒーヒーいいながら小走りになってついて回った。
「よし、私の死のロードにつきあってくれたんだから、来週はご希望におこたえしましょ」
「やったー!」
「じゃぁ、これから水着を買いに行きましょう」
「うわー、やめてくれー」
「じゃぁ、プールはなしね」
「つきあう。つきあいます」
「前から目をつけてたやつがあるんだ。ハイビスカス柄でパレオのついたの。 ビキニよビキニ」
「ひゃー。いくいく!」
「ねーねーこれどう? ちょっと着てみようか」
デパートの5階、特設水着売場というところでふたたび買い物のお付き合いをする。 どう見ても薫の巨大な姿態には小さすぎるビキニを 「あーん。これいい。これ着たい」 とか言って軽く10分は眺め続けるのだ。
「目星はつけてあるんだろ?」
と聞いても
「だってこれもいいじゃない? すぐには決めらんないよぉー」
個人的には早く試着までいって欲しいのだが、それを言っちゃー身も蓋もないので、そこは我慢する。
「よーし、これちょっと着てみる」
やった! ビキニを手に試着室のカーテンを最敬礼するように大きく体を屈めて入っていった。 試着室から頭を飛び出させて洋服を脱ぐ薫。衣擦れの音を聞きながら妄想を逞しくする。 しばらくして試着室の上から背伸びをした薫の顔がニュッと突き出し、
「ちょっと小さすぎたみたい...。見てみる?」
カーテンの中に首を突っ込んでみる。1畳ほどの室内に、ビキニ姿の薫がもじもじしながら立っていた。 2mの薫。上から下まで透き通るように真っ白な肌。余りの大きさに何度も首を上下させないと全身が見られない。 1mをはるかに超える脚。ボリューム満点の太股、お尻。引き締まったウエスト。そして、ヒップに合わせてサイズを選んだのだろう、 ブラは余りにも大きなバストの2/3を隠すのが精いっぱい、胸の谷間から大きく溢れだし、盛り上がって、 カップ自体も胸から大きく浮いてしまっていた。
「うわー。俺的には最高だけど、これじゃ人前に出られないだろ?」
「当たり前でしょ。サービスよ。ブラだけ3サイズくらい上じゃないと。 ちょっと店員さん呼んできて」
ここから薫に合うブラ探しがはじまり、店員さんと、サイズと柄の折り合いを付けるのにまた30分かかり、 俺は完全に疲れ切ってしまって、エレベーターホールのベンチで座り込んでしまった。 3本目のタバコを吸い終えた頃ようやくにこにこ顔の薫がやってきた。
「なんとか、柄とサイズの折り合いがついたわ。一軒目で見つかるなんて、らっきーーーー」
ずんずんと自分の歩幅で家路を急ぐ薫の後ろ姿を見ながら、すっかり薫のペースに乗せられて、 尻に敷かれていく自分を意識しはじめていた。
とうとうこの日がやってきた。週末が遠かったこと。目的地は横浜にある室内プール。 薫の遅刻癖がまた出はじめた。駅へ向かう人混みから頭3つ分も大きな薫が、雑踏をなぎ倒しそうな勢いで走ってくる。 ただでさえ大股な薫が、その2mの巨体を上下させ、全力で走ってくる様はいつ見ても豪快だ。 カーテンのように長い特注のロングコートをマントのように広げて、白い息を吐きながら走る薫。 厚手のセーター越しにも、隠しきれない大きな胸はダイナミックに揺れて、もう、それだけで幸せな気分になってしまう。
「はぁはぁ、ごめん。また遅れちゃった」
「歩幅があるんだから、俺よりも早く着くはずだろ」
「準備に時間がかかっちゃったのよ」
電車の道行き、天井に届きそうな薫を見上げて気がついた。
「気のせいかもしれないけど最初に会ったときから大きくなってないか?」
「ぎくッ! やっぱりわかっちゃう? この半年で5センチも伸びてるの。胸も同じくらい育っちゃって、 洋服がまたきつくなり始めてるの」
「先週も気になってたんだ。薫、すごいいやらしかったもん。やっぱり第2成長期だな」
「やだー、成長期が2回もあるなんて! ただでさえ普通じゃない女の子なのに これ以上大きくなりたくないよー!」
「じゃぁ、いま何センチ?」
「それを聞く?」
「うん、知りたい!」
「もう、私だって少しは気にしてるんだからね」
「でも、俺は大きな薫が大好きだ」
「203センチ」
「じゃあ今日は223センチだ。すごいね!」
「すごくない」
「すごいよ、ますます魅力的になったよ」
「私の魅力は身長だけなの?」
「いや、そうじゃないけど」
「女性に体型のことを聞くなんてホントは失礼なんだからね!」
「ごめん」
「そうやって、すぐあやまるー」
薫も、本当のところは身長のことをすごく気にしているようだった。2m、しかもまだぐんぐん大きくなり続けているのだ。 毎日、人前にでるたび、心ない言葉を浴び続けていた薫のことを思い出し、ごく当たり前のことに気を配れなかった自分を 少しはずかしく思った。
電車は目的地の駅へと到着した。薫は大きく体を屈めてドアをくぐり抜ける。電車の中では思い切り猫背だった薫は、 ホームに降りた途端、駅名標にぶつかりそうなほど大きく大きくのびをして
「あー、しんどかった! さ、ここからは直通バスで一直線よ。もー、なに暗い顔してるのよぉ! 気にしてないわよ、そんなに」
「やっぱり気にしてるじゃん」
「当たり前でしょ。女性にコンプレックスはつきものよ。それも私の場合は超特大の」
「それもまだぐんぐん大きくなってる」
「もー! ぐんぐんはやめてよ」
駅を降りバス停まで歩く、
「あ、このバス、やだ満員! また変な姿勢で立ちっぱなしかぁ」
バスの中の薫はかなり悲惨な状況だった。ぎゅうぎゅうの車内で、天井に手をかけ顔を真下に向け膝を折った状態。
「うう、またもやしんどい...」
「もうちょっとだ、がんばれー」
「言葉に心がこもっていない」
「ほんとは惚れ惚れと見ている」
「うー、身勝手な、この状態がどんだけきついか味あわせてやりたい」
ついに現場到着。更衣室で二手に分かれ、どきどきしながら着替える。プールサイドにでてひたすら彼女を待つ。
2階にある女性の更衣室から恥ずかしそうに薫が降りてきた。身長2mを超え、バストも太股もこれ以上なく成長しきった 大人の女性の姿態。でも、そんな壮大な姿態とはまるで正反対にもじもじと恥じらいながらゆっくりとスロープを下りてくる。 一緒に降りてくる子供や母親、若い女性たちの中で上半身がまるまる突き出して、周りを圧倒するようにそびえる薫。 そのアンバランスな光景に、惚れ惚れと薫を眺め続けた。
ゆっくりと俺の前へ歩いてくる薫。小学校で別れたときには、少し見上げれば向き合えた薫は、いま、遙か頭上から俺を 大きく見下ろしていた。
「やっぱり胸がきつかったみたい。これでもHカップ用のブラなのに... あんまり見ないで」
確かに、その眺めは壮観だった。おそらく100センチはある大きな大きな胸は、どんなに大きくても既製の水着には遙かに 大きすぎた。アンダーも普通の女性に比べて大きな薫は、ただでさえ胸が大きく見えてしまう。それなのに、さらに特大の胸が その上に盛り上がっているのだ。胸の谷間はHカップの壮大なブラからさらにはみ出し、左右の胸はぴったりと くっついてしまっていた。 そして203センチの姿態。身長の半分を遙かに超えた長い長い脚。30センチの素足から伸びる、引き締まった足首、 ボリュームのある太股。小さすぎず大きすぎないヒップ。か細いウエスト、そしてバスト、細く長い首筋、身長に比べて アンバランスなほどに小さな顔。 ゆっくりと俺に向かって歩いてくる薫。胸元を波打たせ、顔を真っ赤にしている。
「悩殺された?」
「うん」
「よかった。そうでなきゃこんな恥ずかしい思いした意味ないもん」
プールサイドを歩く薫はまさに別世界の人だった。モデルを遙かに超えた15頭身の均整のとれた姿態を大きくそびえさせ、 1mを超える脚はまぶしいほどに白い。
「もう、あんまり見つめないでよ、ただでさえほかの人たちの視線がすごいのに...」
「こんなにすばらしいカラダ見るなって言うほうが無理だよ、本当に最高だ」
「やっぱり刺激が強すぎるみたいね」
「うん、すんごい強い」
大きく揺れ動くバストだけでもものすごいインパクトなのに、彼女の身長は203センチ。数ある長身女性を眺めてきた俺でさえ 何度会っても慣れることさえできないほどに、彼女の身長はあまりに大きすぎるのだ。
つづく