さんざん大騒ぎをして機内の注目を浴びてしまった僕達。麻衣さんは、飛行が安定した途端、緊張が解けたのかスースーと寝息をたてて眠ってしまった。
麻衣さんは長い長い脚を、一生懸命折り畳み小さく縮こまっている。でも膝頭はすっかり僕の脚に寄りかかってしまう。驚異的な長さなのだ。
飛行機のトイレは狭く麻衣さんの脚が納まり切らなかった。悪戦苦闘する麻衣さんをCAの女性が見兼ねてファーストクラスのトイレに案内してくれたようだ。
中腰のまま二階へ上がって行く。着陸でも散々大騒ぎしてすっかり機内の有名人になってしまった。
ようやく着陸した飛行機。ゆっくりと空港のウイングに接岸して、乗客が降りはじめる。
現 地時間で0時を過ぎた深夜の空港はまるで昼間のように混雑していた。いろいろな人種が集まり、外国語が飛び交う。麻衣さんは、初めての外国で、ひどく緊張 しているようだ。長い腕を伸ばし両手のふさがった僕の腰に手をかける。何しろ麻衣さんの姿は注目をあつめてしまうのだ。白人黒人現地の人達からも一斉に視 線を浴びて、麻衣さんは消え入りたいような不安げな表情で僕を見下ろしている。
『どこにも行かないでね。はぐれちゃったら泣いちゃうから』
『大丈夫。何があったって麻衣さんのことは見失いようがないから』
『もう』
ツアーのみんなから離れないように気をつける。20分以上待たされてようやくツアコンの人に連れられてバスへ向かう。ムッとする空気。亜熱帯のグアムは湿度も気温も想像以上だ。
大きなバスの一番後ろをキープして麻衣さんはなんとか腰掛けることができた。ステンレス製の大きなバス。外国のバスですら麻衣さんの体型は完全に想定外の大きさなのだ。
深 夜の市街地に向かって進む大型バス。高台にある喧騒の空港から、オレンジ色の街灯だけが続く深夜の道路へ。たくさんの人がいた空港は遠い過去の事のように 思える。手を強く握り、不安を払拭しようとする麻衣さん。長い指先を絡めて僕の小さな手はすっかり覆い隠されてしまう。
ガソリンスタンドとコンビニだけがまばらに現れる。
ホテルに着く。ようやく緊張がほぐれたのか麻衣さんは好奇心いっぱいに辺りを見回す。
『すごく広いロビー。かっこいいホテルね』
ツアコンの日本人女性がチェックインをしてくれている間にホテルの設備をチェックする。
『道路ぎわのホテルの敷地にセブンイレブンがあったでしょ?お部屋に着いたらちょっと見に行こ!』
真夜中なのに元気いっぱい、普段おとなしい麻衣さんは仮の姿なのだと思う。
『朝食はキーカードの中に入っているこのクーポンを入り口で渡してください。朝7時から開いていますので、早めにすましてください。バイキングスタイルですから取り分けたものはかならず召し上がるようにお願い致します。集合時間は8時半。この場所に集まって下さい』
『1401号室だって』
『ここ眺めのいいホテルらしいよ』
『やったー!明日が楽しみ!』
金ぴかのエレベーターで14階まで向かう。麻衣さんは大きく身体を屈めて、乗り込む。室内でも同じ姿勢でないと天井の照明にあたってしまう。
回りの視線を気にして、緊張する麻衣さん。
ようやく14階に到着し、敬礼のようにドアをくぐり抜ける。
客室の天井はやや低めで麻衣さんの身長より少し高いくらい、250センチ位だろうか。
『じゅうたんがフカフカ~!すごい~!』
キラキラした眼で辺りを見回す。
もう、夜中の1時を過ぎているのに、元気いっぱいの麻衣さん。
1401号室に入る。バルコニーもあるツインルームだ。
麻衣さんの大きさを考えると、ダブルベッドで斜めに横になるか、いろいろ考えたがシングルをつなげばダブルよりも長くなることに気づいて事前にベッドの移動が可能か確認しておいたのだ。
ようやく2人きりになれた。抱き合いキスをしようとする。
でも、抱き合うと僕はすっぽり麻衣さんの胸の下に入ってしまうのだ。
麻衣さんに屈んでもらってようやく胸元に僕の顔がたどりつく。
膝に手をかけて九十度のお辞儀をしたような状態になって、初めて麻衣さんの小さな顔が目の前に現われた。160センチにも届かない
少女のような顔立ち。
顎も頬も全く突き出していない、身長はもとより大人っぽくさえないかわいらしさなのだ。
『成長ホルモンは手足にはものすごい効き目があるのに顔は童顔のままだね』
『もー、またもや気にしてることを…』
いい終わる前にキスで口をふさぐ。
つづく