次第に眠りに落ちる者が増え、千佳ちゃんと麻衣さんだけが残った。 俺も横になり眠りにつく寸前だった。 小さく聞こえる会話。
『千佳ちゃん、今日はありがとう。武藤くんの告白を演出してくれて』
『ふふふ、どういたしまして。武藤くんが物凄い口調で麻衣ちゃんの素晴らしさを力説するの。見た目はあんなに 大きくても、繊細であんなに優しい人はいないって。だから、武藤くんのために今日の打ち上げを企画したのよ』
『私が見ても、武藤くんは大丈夫。女性を大切にしてくれると思うよ』
『ありがとう千佳ちゃん』
『ほら、また泣いちゃだめだよ。お礼はまた今度ね』
『ありがとう…、千佳ちゃんは何でもお見通しなんだから…』
本当に千佳ちゃんは恩人だ。一体どうやってお礼をしようか、今度麻衣さんと相談しよう。
『麻衣ちゃんの横にくっつくと自分が子供で麻衣ちゃんがお母さんみたいな感じですごく安心出来るの。 大きくて怖いっていう人は、麻衣ちゃんをよく知らないからよ。あと、胸が大きくてやわらかくて、それで、 ひんやりしてて、気持ちいいのよ』
『さすが千佳ちゃん、よく知ってるね。私の胸は大き過ぎて体より少し体温が低いみたい…。 真冬はおっぱいが冷たくて痛くなることがある位』
『私が猫なら夏の定位置は麻衣ちゃんのおっぱいよ』
『胸自身は涼しくても、私はこれを抱えてるせいでいつでも暑いんだから』
『背中とかブラ周りはいつも汗かいてるもんね』
『もー、千佳ちゃんは、イヤなとこまで、しっかり見てるんだから』
『でも麻衣ちゃんは太ってるんじゃないから。超巨乳よ』
『やだー、千佳ちゃん、それは言わないでー』
大胆な二人の会話。横になって寝付く寸前だった俺は、一人興奮を抱えて寝た振りをすることとなった。 さらに夜も更け全員が眠ってしまった。夜中に帰った2人以外の6人が、ベッドやベッドサイドで毛布に くるまって寝ている。千佳ちゃんがちゃっかりベッドを独占している。 テーブルの横では壁にもたれ掛かって眠る麻衣さん。自分の激しい大きさを気にして横にならないようだ。 確かに脚を投げ出しただけで女性の身長に近いスペースを使ってしまうのだ。 始発電車が動き出す頃、携帯のバイブの振動音がして、麻衣さんは静かに帰る準備を始めた。 俺もゆっくりと起き上がり、麻衣さんに目で合図をして、一緒にマンションを出た。 玄関にある一際大きなミュール。40センチというサイズはふつうの女性の靴の4倍は大きく見える。当然、 かかとは3センチ位しかないが、一足で、だいたい玄関の3分の1の面積を占めてしまっているのだ。 感嘆の目でミュールを凝視する俺に
『恥ずかしいからあんまり見ないで』
ささやく声は妙に艶めかしく響く。 玄関を体を斜めにしてくぐり抜け外に出る。
『よいしょっと』
普通の女性なら意識さえしないで出来ることが麻衣さんにとっては大変な仕事になってしまう。 廊下に出てからも、階段を降りるのでも、麻衣さんは常に屈みながら歩かなければならない。 上空はもうすっかり明るくなっている。 交通標識や案内看板、建物や電話ボックスからの電線、思いもよらないものが麻衣さんにとってはバリアとなる。 それを器用に避けながら歩く麻衣さん。
『小学校の頃はこの身長に慣れていなくて、よくぶつけたのよ。でも、人並み外れてからもう10年近く経つから、 すっかり慣れっこ。それでも結構頭をぶけることがあるけど…』
早朝、駅への長い道のり。恋人の朝帰りのような状態だ。麻衣さんはどう思っているだろう。ただし、 遠目には体格差で、男女が逆に見えてしまうかもしれない。 視線の端を横切る麻衣さんの長い長い脚。ミュールの激しい大きさ。声の聞こえる位置のなんという高さ。 そして俺の視界の左上には、ゆらゆらと形を変える半球状の膨らみがそびえているのだ。 ただ横を一緒に歩くだけで、幸福な気持ちに満たされてしまう。 麻衣さんはさらに
『私、背も胸もいまだにどんどん育っちゃってる。おにいちゃんもそうだけど、武藤くんもそれを聞いてすごく ドキドキするんでしょ?』
突然、切り出す麻衣さん。余りに図星な言葉に息をのんでいると、麻衣さんは続けて、
『見るだけの人は気楽でいいね。無邪気に大きければ大きいほどいいなんて言うんだもん』 『この大きな大きな体と胸を抱えて生活することがどれだけ大変か分かって欲しいの』
『でも、それが何より大好きなの知ってるから、私、我慢する。もう、ここまで大きくなっちゃったら、 あと10センチや20センチ背や胸が大きくなったって、大して変わらないもの…』
麻衣さんは、堰を切ったように、自分の、余りにも類い希な体への思いを、俺に伝え始めたのだった。
『小学生の頃は自分の成長が本当に怖かった。女の子の自分だけが、どんどんあり得ないほどの大きな大きな体に成長して、 見たこともない巨大な姿に変わっていくんだもん。低学年で、もう最上級生よりも大きくて、あっという間に、 おかあさんもおとうさんも軽々と追い抜いて、それでもさらに狂ったようにグングン大きくなっていくの』 『とめどなく大きくなり続ける私の体。新しい洋服はたった半年で小さくなって、裾や袖はすぐに縮んで、 白い腕や脚が突き出してしまうの。お気に入りの洋服もあっという間に小さくなって。何度泣いたか分からないわ。 「どうして女の子の私が、こんなにどんどん大きくなってしまうの」って。おねえちゃんも信じられない位に大きくて、 みんなを驚かせていたの。中2で2メートルを超えていたから。それだけで新聞の地方版が取り上げた くらいのニュースだった。でも、私は小学6年生で2メートルを超えちゃった! もう街中の有名人。 姉妹で歩くと全員の視線が集まって、みんなびっくりしているの。あり得ないものを見てしまったような 凄く驚いたような顔で』
『でも、私の成長期はまだ始まったばかりだったの。雲を突くほど大きいと思っていたおねえちゃんが、 みるみる小さくなっていくの。でも、そのおねえちゃんは2メートルを遙かに超える大きな大きな女の子なのに。 今では、あり得ないほどの超長身のおねえちゃんよりも頭一つ分を遙かに超えるほど、さらに大きくなっちゃった…』
『でも、私の成長は身長だけでは終わってくれなかった。小学校高学年になると、私は自分の体の別の部分に 苦しめられ始めたの。スラッとして今でもスタイルのいいおねえちゃんとは、全く違う体型に、 さらにずんずん成長していってしまった。そう、この大きな重たい胸……見て』
国道を横切る交差点。信号待ちで立ち止まる俺たち二人。人気はないが車は間遠に行き交う。 麻衣さんに促され俺は向き合う。 麻衣さんはゆっくりとかかとを上げ、爪先立ちから体を下へドスンと落とした。 キャミソールを激しく前に突き出させる大きな大きな隆起は、水を入れた、バスケットボールよりも 巨大な風船のように前後左右に波立ち、上下に暴れまわるのだ。いつまでも胸元あたりのさざ波と、 全体の揺れは収まらない。わずかな体の動きでさえ、肉感的に揺れ動いてしまう麻衣さんの巨大な膨らみ。 豪快に暴れまわる巨大な膨らみに、大きく目を見張る俺。俺はその余りの豊満な膨らみにめまいを感じていた。 言葉はもちろん出ない。
『こんなに大きくて重たくて、嫌らしくユサユサ揺れちゃう。すべての人から激しい好奇の視線を注がれて、 ひどい言葉も絶え間なく聞こえるの。 武藤くん、本当に、こんなに何もかも大きすぎる私でいいの?』 沸き起こる様々な感情を押し殺して、平静を精一杯装いながら、
『麻衣さんはもっと自信をもっていいと思う。俺は、もう、麻衣さんのせいでのぼせて倒れそうだもの…』
『お家からしばらく出られなくなっていたのは、前に話したでしょう。ここまで立ち直れたのは、自分のこの体を、 ようやく受け入れられるようになったからなの』
『そう。麻衣さんは世界一スタイルのいい女の子だよ。』
『自信をもっていい?』
『自分のスタイルをもっと自慢していいと思う』
『ありがとう…』
再び目を潤ませる麻衣さん。 鳴り出すアラーム、5時半の時報のようだ。
『もうこんな時間! ごめんなさい、急がないとお母さんに叱られちゃう』
急ぎ足になる麻衣さん。当然、俺は競歩のような早足になってしまう。 豪快に暴れる胸元。 麻衣さんは俺の左手をまさぐり手をつないだ。 大きな手のひら。余りの大きさに指先しか触れることが出来ない。大人と子供のようにサイズが違いすぎるのだ。 駅に着き、麻衣さんと離れなければならなくなった。
『今日はありがとう』
『それは俺の方だよ。』
『あんな風に言葉で言ってもらったの初めてだったから、私、呆然としちゃった。で、ひたすら泣きじゃくっちゃって…』
夜のことを思い出したのか、再び上気している麻衣さん。
『またラインします』
麻衣さんは急に腰を屈め太ももに手をかけた。膝を大きく曲げ、上半身も90度近く折り曲げてようやく頭の高さが同じになる。 遙か上空にいた麻衣さんの小さな顔が間近に現れドキリとする俺。そして、胸元が露わになり大きな二つの膨らみと 深い深い谷間が覗いてしまったのだ。 少しいたずらっぽい笑顔と、緊張が入り混じった麻衣さんの表情。 圧倒的な胸元と、麻衣さんの幼くかわいい表情とをオロオロと交互に見てしまう。 不意に麻衣さんは目をつぶった。動揺する俺のことは気にせず、目をつぶり待つ麻衣さん。 本当は何時までも眺めていたいが嫌らしいと思われてはまずい。 勇気を出して急いで麻衣さんに口づける。
『よくできました』
にっこり微笑む麻衣さん。呆然としたままの俺。
『またね』
麻衣さんの言葉で我に返る。 柔らかい麻衣さんの唇。女性の唇は俺の想像をはるかに超えて柔らかく、衝撃的だった。生々しい感触が消えず、 いつまでも立ち尽くしていた。胸元の壮大な眺めも目に焼き付いて離れない。バストは一体どれほど柔らかいのだろうか。 パスモで改札を抜けていく麻衣さん。自動改札は膝のすぐ上だ。体を少し屈めてカードをタッチしている。 太ももから上が丸見えで、少し体を横にして通り抜けている。 日常の風景が、麻衣さんが現れるだけで、異彩を放ってしまうのだ。 麻衣さんは、天井から吊り下げられた案内板に顔が隠れてしまうので、体を横に屈めながら手を振る。 手を大きく振り返す俺。 満面の笑顔に包まれた麻衣さん。 大きな大きな麻衣さんの笑顔は、今、俺に向けられているのだ。性的な興奮とは違う、言いようのない大きな 幸福感に満たされていった。
とは言え、早く家に戻って麻衣さんの画像と動画を早く見たい、というのも正直な男の気持ちだった。 いや、本当は、何より本当の麻衣さんの肉体に早く触れてみたいのだ。 60センチを超える身長差、体のラインをはみ出してしまう程に大きく成長してしまった胸。そして、 いまどきの女の子とは思えない、優しい物腰。その豪快な姿態と、優しい性格のアンバランスさが俺の 下半身を激しく刺激してしまうのだ。 大胆さと、コンプレックスが交互に飛び出す麻衣さんに、しばらく翻弄されることになるのだろうと、俺は感じていた。
つづく