週に2回はスーパー銭湯に行く。
ワンルームの浴室ではゆっくり出来ない加奈、大きな大きな身体を伸ばせる大浴場は何よりの休息なのだ。
電車で2駅先のそこは、わざわざ温泉から汲んできたお湯を使った、ジェットバスや泡風呂など本格的な設備の揃ったスーパー銭湯だ。
週末は必ず二人で、午前中に行く。とにかく空いているのが一番好きな加奈に合わせて朝食後にすぐ出発するのだ。
朝食は加奈の手作り、アジの干物に納豆。安くないアジは週末専用だ。
炊きたてのご飯に赤だしの味噌汁。
僕は1杯、加奈は3杯もおかわりをしてしまう。
僕は26センチ、加奈は36センチのスニーカーに足を通し、出発する。36センチのスニーカーはまるでスキーのブーツのようだ。それでも最近はきつくて爪先が痛くなってきたそうだ。僕より10センチオーバーでは到底おさまりきらない加奈の成長力なのだ。
男性用のLLサイズのジャージは加奈が穿けば自然に七分丈になる。最近では六分丈になりつつあるが。上半身は3LのTシャツにニット。首もとにスカーフ。突き出した胸元のせいでおへそが見え隠れする。
男性用のラージサイズの服を纏っても、遠目には細身に見えてしまう、加奈の壮大なスタイル。縦への圧倒的な大きさが為せる業だ。
中腰の上に身体をひねり、なんとか玄関をくぐり抜ける加奈。天井の照明もギリギリで、深く頭を下げたまま廊下を通り抜ける。更に窮屈なのはエレベーターだ。対角線上に身体を屈め、両腿に左右の手をそれぞれ当てて、不自然な中腰の姿勢をなんとかやり過ごす。
『お疲れ様』
ついそんな言葉が漏れてしまう。
ようやく背筋を伸ばせる街中も、加奈にとっては、安全な場所とはとても言えない。
さすがに電線ははるか上空だが、普通の背丈ならぶつからない高さにある電柱の足場も、加奈の場合はまれに顔のあたりに棒が突きだしていることがあるのだ。
看板や標識も危ない。足元も上空も、同時に見なければならない加奈は大変だ。
気づいたときには僕が
『標識!』とか
『看板!』と大きな声で伝えるのだ。規格外のサイズの加奈は、ただ道を歩くだけで、結構危険な目に逢ってしまうのだ。
自動改札も加奈は苦手だ。普通の男性が腰の辺りにあるタッチ面が、加奈にとっては太ももの下側、膝のすぐ上あたりになってしまう。歩きながら屈む姿勢は、見ていて大変そうだ。
『コンビニのレジも、コピーもATMも嫌い。だって私が大嫌いな中腰じゃないと、どれもダメだから』
『でも加奈が背を伸ばして操作できるATMは、きっと大人の男性でも踏み台が必要な高さだと思うけど』
『分かってる。言ってみただけ』
ちょっと機嫌を損ねたようなので、手を繋ぎ電車を待つ。加奈の頭の天辺は、天井から吊るされた駅名板に触れてしまいそうだ。
加奈の大きな手をゆっくりと振りほどき、腰に手を回す。その位置は、肩に限りなく近く、いやいつの間にか追い越してしまったようだ。
鋭くくびれた加奈の腰に、僕の腕はぴったりと納まり、位置も、形も、腕を載せるためにあるようだ。
近づくと、ボリュームたっぷりのヒップは安定していて、男の腕が載ったくらいではびくともしない。
加奈の長い長い腕が僕の左肩にまとわるように降りてくる。首筋、肩に細く長い指が優しく触れる。
2メートルを超える位置から僕の首もとに到達する加奈の左手の長い指が、僕の胸元を這う。
えもいわれぬ快感に股間は冷静でいられない。
小顔の加奈の笑顔は遠近感が狂った画像ように、駅名板にぶつかりそうなほど、はるか彼方に小さく見える。
『ん?どうしたの?』
長い長い首を傾げる加奈。巨大な姿態とアンバランスな童顔。そして何よりも自分だけに向けられた笑顔。悩殺されそうな気持ちを圧し殺して平静を装う。
『なに?おしりまた大きくなっちゃった?』
『ていうか、胸でしょ?』
『さらっと気にしてることを言う!』
恥ずかしげにちらりと胸元を見やる加奈。
『お給料出たら渋谷に付き合って…。またサイズアップしちゃったパーツがいくつかあって…』
『パーツって言うか…』
『もう!酷いことばっかりわないの!』
腰をポンポンと叩く。遠すぎて撫でられない頭の代わりに、腰を叩くのは頭を撫でるのと一緒だと決めてある。そして、人差し指でお尻のえくぼの辺りをキュッと押すときは『(よかったら)キスして』、鷲掴んだら『すごくキスしたい』そんなサインが身長差67センチの二人で出来上がっていた。
『ごめん』と言いながら、人差し指でお尻を押す。
『知らない』
その声がして5秒も経たないうちに大きな身体が僕に覆い被さり、キリンの水飲みのように遥か上空から加奈の唇がゆっくりと降りてきた。
加奈の大きさに酔いしれる。こんな幸福な思いをしている長身女性好きの男は世界で何人もいないだろう。
圧倒的な体格差。手や足、腕や脚のパーツの長さ大きさ。そのどれもが今までに見たことがない程段違いに大きく、長い。
紛れもない女性なのに、全く別の生き物のように感じることもある。あるいは幼児と母親のような関係性なのか。
とにかく普通の女性にはない圧倒的な魅力を感じるのだ。
スーパー銭湯に向かう加奈はいつもとても嬉しそうで、こちらも楽しくなってしまう。
何よりも洗い場が広いのが嬉しいようで、家風呂では長い長い手脚を伸ばして洗うなんて夢のまた夢なのだ。だいたい、ユニットバスの中に入っただけでもう、頭は下向き、中腰で、まるで小さい箱に入ったようになってしまう。洗い場の小さな椅子に座っても、まるで体育座りのように脚は上空に突きだし、両足は洗い場の端にぶつかり、すっかり身動きがとれないほどに加奈の身体が占領してしまうのだ。
そのなかで身体を洗うのはさらに大変な作業だ。ユニットバスの壁や浴槽に手足がドカドカとぶつかり、外にいても加奈が、自分のその大きすぎる身体と格闘している様子が手に取るようにわかる。
何軒も回って探し出した大きめの浴室とはいえ、当然加奈がゆったり浸かれる広さではない。膝は大きく突きだし、上半身はすっかり現れたままだ。
それでも、通常のユニットバスでは入ることさえ出来ない(入ったら一人で出られない)のだ。
軽く二時間は出てこない加奈のことは気にせず、自分のペースでゆっくり入浴したあと、休憩スペースで昼寝をしていると、いつも加奈が起こしに来るのだ。
でも今日は日頃の銭湯付き合いを感謝して、カップル専用の個室風呂に加奈が一緒に入ってくれるのだ。
加奈の大きさの都合もあり、二人でお風呂に入ることは今までなかった。ついに僕の希望が叶い、二人風呂が実現したのだ
つづく