☆高齢者は他者からの拒絶に傷つきやすく,認知機能の低さや状況評価がそれを調整する

投稿日: Mar 22, 2016 2:55:31 PM

Cheng, Y. & Gruhn, D. (2015) Age Differences in Reactions to Social Rejection: The Role of Cognitive Resources and Appraisals. Journals of Gerontology: Psychological Sciences, 70(6), 830–839.doi:10.1093/geronb/gbu054

(Abstract)

【目的】社会的拒絶は人生において,全ての年齢の人が味わう社会的ネガティブな経験である。この社会的拒絶によって受ける影響が,高齢者と若者とで異なるか否かについては明らかにされていない。本研究では,直接的な拒絶に対する反応の年齢差と,認知機能や状況に対する評価の調整効果を調べた。【方法】83名の若者(18~26歳)と53名の高齢者(60~86歳)が,もう一方の参加者から受容あるいは拒絶されるという状況下で,オンラインインタビューを受ける,という課題を行った。ここでは,インタビュー前後の,参加者の主観的感情と自己複雑性を調査した。【結果】高齢者は,若者よりも拒絶されたことによる傷ついた感情を報告した。この年齢差は,認知機能と状況評価によって調整されていた。高齢者の被拒絶群において,認知処理速度がより遅く拒絶をよりネガティブに評価している人の方が,より傷ついたという感情を報告していた。拒絶された高齢者は,被受容群の高齢者よりも,自己表出の複雑性が低かった。一方,若年者の被拒絶群と被受容群では,自己表出の複雑性に差はなかった。【考察】本研究の結果は生涯発達の理論に大筋合致しており,さらに,社会的拒絶の影響の年齢差を議論する際の,認知的処理の重要性について強調することが出来た。