論文が採択されました(2020.7.21)

投稿日: Jul 21, 2020 2:25:50 AM

以下の論文が,「老年社会科学」に掲載されることが決まりました。

田渕恵・小島康生 (2020) 「乳児と視線が合うこと」が認知症高齢者の行動に与える影響. 老年社会科学

【要約】

本研究の目的は,認知症高齢者と生後12か月未満の乳児との交流場面において,「乳児と視線が合うこと」が認知症高齢者の行動に与える影響を明らかにすることであった。グループホームに入居中の高齢者5名(全員女性;年齢は83-97歳)を対象とし,5名の乳児(男児3名,女児2名;3-9か月)とのその親を研究協力者とした。高齢者5名が着座している場所に母親が乳児を抱いて近づき,1組ずつ高齢者と乳児が対面する場面(高齢者5名×乳児5名=25場面)を記録した。高齢者の4種類の行動(笑顔,発話,手を伸ばして触れる,なでる・あやす)の生起時間を,乳児と視線が合っている場合(視線あり)と合っていない場合(視線なし)に分けて測定し,視線の有無によって各行動の生起時間比率が異なるかを検討した。その結果,全ての行動において,乳児と視線が合っている場合の方があっていない場合よりも有意に行動が生起していた。2者間で互いに積極的な相互作用や言語的反応がなくても,乳児とただ「視線が合う」だけで,認知機能低下が認められる高齢者において自発的なコミュニケーション行動がより生起することが分かった。

キーワード 認知症高齢者,乳児,アイコンタクト,世代間交流,世代性

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本研究は,生後12か月未満の赤ちゃんと認知症高齢者との交流場面において,視線が合うことによって認知症高齢者の行動にどのような変化があるのかを明らかにした研究です。赤ちゃんと視線が合っている場合と合っていない場合に分けて,認知症高齢者の行動を観察・分析した結果,「視線が合う」だけで,「笑顔」「発話」「手を伸ばして触れる」「なでる・あやす」という行動が活性化していることが分かりました。また,認知機能レベルが高い高齢者は「発話」が,低い高齢者は「なでる・あやす」という行動が生起しやすいことも分かりました。

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